レミリアの帰宅と同時に現れた親父に俺は、衝撃と恨みが混ざった顔を表す。
ジュウゴロウ「そこを動くな親父!今俺がぶん殴って・・・」
サイ「早まらないでください会長さん!」
サイが俺の両脇を押さえて身動きを取れないようにする。しかし俺を取り押さえるということは、暴れ牛を1人で抑えているのと同じで、俺がサイの腹にエルボーをしただけで解かれる。
すかさず親父へ走りだして右拳をスピードとあわせて叩き込もうとしたその時、俺は前進をやめて後ろへステップを踏みながら下がる。横から来た赤い槍に狙われていたからで、その槍を持つのはレミリアだ。傘は自分の足元に置かれている。
ジュウゴロウ「気化しても知らないぞ?」
レミリア「コレでも2時間以上は保てるわよ?」
背中の羽は小さく焦げている。太陽の光は肉が焦げ、雨の水は肉が腐るって聞いたことがあるが、本当に焦げるとは思ってはいないほどだ。
親父「待ってくれジュウゴロウ!」
突然親父が俺の前に出る。やっと殴られる気になったようだ。
ジュウゴロウ「じゃあそこで正座し、俺を改造したことによって殺めた罪なき人間に懺悔しろ。そうしながら俺に殴られろ」
親父「ああ・・・・・・だが、これだけは言わせてくれ。お前を改造したのは、母親の幸せのためだと・・・」
ジュウゴロウ「御袋にか?御袋は俺を産んですぐ死んだだろ?」
親父「私はあの時叶える力を失った・・・母親手さえできない私など、父親ではない・・・そんなときに私の助手が私に手を貸して・・・」
ジュウゴロウ「助手だって?俺の過去にそんな覚えないぞ?」
何かの間違いかと思っていたが、その時にレミリアが傘を手に話しかけてくる。
レミリア「ジュウゴロウを改造した理由は彼の言う通りだけれど、これを行ったのは彼の助手、ジャミラよ」
ジュウゴロウ「ジャミラ・・・あとで世話になったあいつか・・・ !?待てよ、改造したのは親父じゃないのか!?」
レミリア「いいえ、彼は手伝っていただけ。全てはジャミラの命令を受けて改造したのよ」
サイ「そんな話が・・・」
ジュウゴロウ「親父・・・何かの冗談だろ?」
親父「すまん、許してくれ。ジュウゴロウ・・・『逆らえば息子を殺す』と脅迫されて、手の内ようがなかったのだ・・・ほんとにすまない!」
ジュウゴロウ「なん・・・だって・・・・・・!?」
そんな・・・気もあってたあいつが・・・俺を裏切ってやがったのかよ・・・!
全部親父だと思っていたが・・・悪いのは全部、ジャミラじゃねぇかよっ!!
ジュウゴロウ「親父・・・」
膝をつけながら泣く親父を見て俺は顔を近づけた。
ジュウゴロウ「俺は今知った。・・・親父は悪くないし、犯人が誰か分かった」
親父「!」
ジュウゴロウ「ようやくだよ。パルキアを陰で操る犯人は誰か・・・それは間違いなくジャミラだ!!」
親父「何!?ジャミラが・・・!?」
サイ「パルキアがこの世界にいるんですか!?」
ロウダイ「そういうこと」
空から鎧鳥ポケモン、エアームドに乗りながら降下してくるのは、山で知り合ったあのトレーナー、ロウダイだった。
サイ「あ!この人って・・・ロウダイさん!」
ロウダイ「やぁどうも」
レミリア「・・・それでジュウゴロウ、その話は本当なの?」
ジュウゴロウ「ロウダイが言うには本当だ。あと、ジラーチやロトムがここへ来たのも、パルキアの空間能力で飛ばされてきたせいらしい。このままだと他のポケモンが送られてくることになるが・・・奴の場所を突き止めなくては」
「それなら心配無用です」
また誰かがやってきた。今度は女みたいだが・・・
レミリア「アジトは見つかったかしら?」
「小町が調査を行った結果、冥界の森と判明されています」
ジュウゴロウ「それよりも、お前は誰なんだ?」
「おっと、これは申し送れました。私は閻魔の四季映姫・ヤマザナドゥと言います。キバシ ジュウゴロウさんですね?」
俺を知っているようだ。でも閻魔って確か、全長6メートルもあってデカい尺を持った男って聞くけど・・・一般人サイズに本を持った女と言う、実に逆なイメージである閻魔だ。
ジュウゴロウ「そうだが・・・?」
映姫「実はというと、貴方の罪が酷いんですよ。1000人も殺害しただけでなく、器物破損に窃盗、現在罪滅ぼしをしているつもりが、未成年で酒を飲んでいてさらにイカサマでの大富豪や暴力集団との乱闘、さっきでもそこの人の腹を叩いたそうじゃないですか。こういうことをするから他の人は困ることが起きて・・・」
ジュウゴロウ「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
あまりにもな口うるささに俺は大声を上げて黙らせた。
映姫「そういう声も他人からは迷惑を掛けて・・・」
ジュウゴロウ「その口うるささにはバルト以上に手を焼かされるっつーの!!」
レミリア「二人ともストップ。今は喧嘩してる所じゃないでしょ」
親父「そうだぞ。早く止めなくてはますます進行する状況だ」
う~む、確かに・・・。俺と映姫は喧嘩をやめてこれからの行動を考える。
映姫「まずは小町の元へ向かいましょう。ジュウゴロウさんも来て下さい(あとで決着はつけますけど・・・)」
ジュウゴロウ「いやでも付き合ってやるさ(喧嘩は一度も負けたことないけどな・・・)」
レミリア「私は館にいるけど、どうやらまた客が着たみたいよ」
サイ「誰なんですかそれは?」
魔理沙「それは私だぜ!」
またまたやってきたのは魔理沙だった。リベンジしに来たようではないみたいだが・・・
ジュウゴロウ「話、聞いてたか」
魔理沙「私も一丁ついていくことにするぜ!ってか、先に行ってるぜ!」
と言い残しながら魔理沙は冥界の方角へ飛び去って行った。
ジュウゴロウ「それじゃあ行くとするか、サイ」
サイ「ええ、あのときを思い出します」
俺とサイは勢いよく服を掴んで空へ放り投げる。俺は「R」と書かれたロケット団スーツ。サイは「M」と書かれたマグマ団スーツへと早変わりする。
親父「向かいましょう。彼のいるアジトへ」
映姫「では皆さん、先導しますのでついてきてください」
映姫が飛び上がると同時に、ボーマンダ、エアームド、リザードンが彼女のあとを追って飛び立った。
レミリア「後は頼むわよ、ジュウゴロウ・・・」
レミリアはそう祈りながら館へ戻っていった。
冥界というのはあの世と同じ意味をする世界であるが、その森へやってきたときには、深い霧の中に幽霊がさ迷っている。いや、こちらを見ているような・・・
ジュウゴロウ「俺みたいに生命力を吸わないよな?」
映姫「例え強い妖怪相手でも、私の前に出ることはありません」
ロウダイ「じゃあ貴方がいない場合となりますと?」
映姫「吸われているのは確実です」
迷いの無い答え方だ。適当に判決しているのか良く分からないが、閻魔というだけあって決める覚悟が彼女からあった。
ジュウゴロウ「どちらにしろとも、歓迎されないわけか・・・この薄気味悪い森、俺が想像してたよりも怖さを感じるが、サイ、大丈夫か?」
サイ「すみません、ちょっと胸が苦しくて・・・緊張してるとかそうではないんですけど、なんだか邪悪な気配が・・・」
アドも心配している。お前は来る気があるのか分からん奴だが、引き返す余裕など何も無かった。
親父「奴が何を仕掛けてくるかは分からん。とにかく急ぐとしよう!」
「閻魔様!お待ちしてしました!」
霧の奥から釜を持った女がやってくる。
サイ「会長さん、あれって・・・」
ジュウゴロウ「死神だな」
間違いなく死神だ。といっても俺たちをあの世へ送るような奴ではなさそうだし、映姫の部下であるようだ。それに映姫は小町って呼んでいたから、彼女がきっと・・・
映姫「こちらにいるのが死神の小野塚 小町です。それで様子は?」
小町「いまだに彼が出入りする様子は無いんですけど、白黒の魔女が入っていきました」
ジュウゴロウ(あいつかよ・・・)
魔理沙、お前絶対捕まるぞ。
一同はそのアジトの入り口へ向かった・・・のだが、その正体は太い木に裂けた光の穴があるだけだった。
サイ「あの、小町さん・・・これは何かの間違いでは?」
小町「とんでもないですよ!内部を見てみましたが、コレがアジトに繋がっているんです!」
ジュウゴロウ「繋がっている? 直じゃなくてか?」
小町「はい、この中をくぐると別の場所にいるんですよ」
なるほど。つまりここは入り口ではなく、アジトに繋がるトンネルということか。
ジュウゴロウ「それじゃあいくか」
と、意気込みで俺は穴へ入る。
サイ「それなら僕も!」
サイも続いて入ると、ロウダイ、親父、映姫、小町も順に穴へ入った。
やってきたのはまさにアジト・・・というより、アジトの惨害だった。魔理沙がやったものではなさそうだが・・・それになぜか懐かしい感じである。
ジュウゴロウ「まさかここ、ロケット団アジトか?」
親父「うむ、確かにここはロケット団アジトだ・・・。まさかと思うが私たちは、幻想卿から現代へ戻ってきたということか?」
サイ「それって・・・僕達が帰れる手段を見つけたことじゃないですか!」
サイは喜ぶ。確かにお前の意味ではそうだろう。だが3人がまだあっちにいる。俺とサイだけでは自分のアジトに帰れない。
ロウダイ「やっぱり自分の世界も悪くはないねぇ・・・。派手に荒れすぎですけど・・・」
ジュウゴロウ「悪かったな・・・。ここはどうやら、武器貯蔵庫だな」
俺は何か使えそうな道具があるかを探してみるのだが、どれも壊れたものばかりで使えない。
舌打ちをする俺だが、なぜか武器が無い理由が今はっきりと分かったのは言うまでもない。
魔理沙「ヘヘヘッ、いい宝が集まったぜ!ここはどうかな?」
大量の機関銃や手榴弾を手に入れて大喜びな魔理沙がやってきているのは、原石や細胞サンプルが保管されている資料室である。
そこら中にある石を見てはすぐ袋(何処から取り出したかは知らない)に詰めていく魔理沙。ふと彼女が取っている石の間に何かの液体が残ったビンが現れる。透き通る青色の液体である。
魔理沙「ん~・・・飲んでみるか!」
ゴクッ
魔理沙「ん。コレいけるじゃねぇか・・・って、なんか眠く・・・zzz・・・」
魔理沙はその場で眠りについてしまう。
第22話でした。
なんとジュウゴロウはジャミラに作られた改造人間だった!
そんな事実を知った彼らは冥界の木からまさかの現代入りでロケット団アジトへ来日。
しかし魔理沙が飲んだ謎の液体が彼女の身に何かが起きる!
その真相は次回のお話でどうぞ!
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ポケットモンスターの世界に住むトレーナー達が幻想郷へやってくる不思議な物語。