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艦隊 真・恋姫無双 160話目 《北郷 回想編 その25》

いたさん

ようやく戦い終了? 11月と12月お休みするかも。

2021-10-16 14:21:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:696   閲覧ユーザー数:679

【 終戦 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊 にて 〗

 

 

『馬鹿ナ……ソンナ………馬鹿ナァァァァッ!?』

 

『ふふん、どうやら無事に任務を果たしてきたみたいね。 まあ、三国の将兵が合同で行うんだから、失敗する方が可笑しいんだけど………』

 

 

此方に向かう集団、いや三国の軍勢を見る南方棲戦姫と桂花の温度差はかなりの物。 別の言い方をすれば、明暗を分けたと言っても差し支えがないだろう。

 

どちらがどちらなど、野暮な事など言わない。 

 

無論、悲壮な覚悟で前線に出ている長門やネルソン達は、ただ目を丸くして唖然としていたが。

 

 

『────フフ、フフフ! こんなに笑うことなんて、本当に久しぶりよ!』

 

『おおッ! あれから久しく見れなかった華琳様の麗しき微笑み! この夏侯元譲、間近に見れて光栄地獄ですッ!!』

 

『春蘭………それを言うなら光栄至極よ。 それとも、私の笑顔は悪鬼羅刹の類いとでも言うつもり?』

 

『と、とんでも御座いませんッ!! ど、どうか! 平に、平にお許しをッ!!』

 

 

盛大な春蘭による謝罪の声が響く中、南方棲戦姫は我に返り、辺りを慌てて見渡す。 当然ながら、逃走を図る為だ。

 

 

『グゥゥゥ! ナラバ………!!』

 

『待てッ! 先程の華琳様の無礼、貴様を捕縛することで償わせて貰うぞぉぉぉぉッ!!』

 

 

南方棲戦姫は逃走しようと動き出すが、逃がすものかと春蘭も間髪入れずに襲い掛かる。 初動では南方棲戦姫の方が早いが、春蘭の動作も大型肉食獣のように素早く迫った。

 

そのため、後少しの所まで近付くが、南方棲戦姫は片側の16inch三連装砲で砲撃、その攻撃の対処に春蘭は全力を尽くすことになり、まんまと逃走を許すはめとなる。

 

 

『何をやってるのよ、春蘭ッ!? アイツが逃げて行くじゃない!!』

 

『う、うるさいぞ、桂花ッ! 私だって油断していた訳ではないんだッ!! アイツが、変な飛ぶ武器を使ってきたから───』

 

『言い訳している暇があるので、何とかしなさいよ! せっかく私が一刀の為に頑張ったのに!!』

 

 

こうして、春蘭の手より逃れた南方棲戦姫だが、周囲は未だに囲まれている。 しかも、新手である三国の将兵も来ているのだ。 このまま行けば、包囲網は厚く逃走は不可能。

 

だが、南方棲戦姫も馬鹿ではない。

 

残りの艦戦を逃走途中に発艦し、艦娘や将兵達を攻撃。 また、16inch三連装砲を海面に発射し、爆撃の水柱で目眩ましに使うなどして、距離を取った。

 

そして、攻撃で混乱を生じた包囲の綻びを見つけ、そこに更なる砲撃を撃ち込み、穴を開け急いで逃走。 背後を見る間も惜しい状況の中、ひたすら一目散に海面上を走り抜ける。

 

もはや、北郷も狙えず、艦娘達を轟沈させる役目も中途半端のまま果たせず、ただただ生き残る事だけを考えて、前へ前へ向かったのだ。

 

 

────こうして、数日間にも及んだ南方棲戦姫との戦いは、双方多大の犠牲者を出しながらも、追撃から逃れた艦娘達の勝利という結果で終わることとなったのだ。

 

 

 

◆◇◆

 

 

【 提督 の件 】

 

〖 南方海域 ?? にて 〗

 

 

『………ん、うん? 俺は………』

 

 

場所は移り、南方棲戦姫に攻撃された一刀達であったが、現在、一刀自身は乗船していた漁船の甲板に、大の字で仰向けになったまま倒れていた。 

 

ただ、急に起きた強烈な頭痛のあまり気を失い、今の状況が良く理解できない。 目を開けたいが、自分の身体へ覆いかぶさる柔らかい物に塞がれ、状況が分からなかったからだ。

 

ただ感じるのは、重くはないが適度の温もりがあり、しかも仄か(ほのか)に漂う香り鼻腔を擽(くすぐ)る。 

 

意識をしっかり保たないと、思わず二度寝を考えてしまう誘惑に駆られ、必死に抵抗するため首を振った。

 

 

『な、何だ? 何か……柔らかい物が……』

 

『…………あっ………ん……』

 

『────ぶふぅ!?』

 

 

振っていた頭に、何かしら柔らかい弾力ある塊に当たると、艶(なま)めかしい声が聞こえた。 思わず大声を出しそうになるのを必死に我慢していると、上から声が聞こえた。

 

 

『お、お目覚めでしたか……提督?』 

 

『────!』

 

 

思わず声をした方に顔を向ければ、その柔らかい物は赤面する神通である。 聞けば、一刀が倒れた後に敵からの攻撃が接近するのを知り、慌てて覆い被さったのだという。 

 

 

『御無事で……あ、安心……しました。 ですが、そ、その……そんな……強引に触られると……私、混乱しちゃいます。 べ、別に……不快では……無いのですが……』

 

『…………そ、そうか、それはすまなかった。 俺は大丈夫だから、そろそろ離れてくれないか?』

 

『………………………』

 

 

身を挺して助けてくれた事に感じ入った一刀は、礼を言って退けて貰おうとするが、神通は何故か動かない。 どこか損傷で動けないのかと尋ねるが、身体には支障が無いとの事。

 

たが、呼吸が荒くし、濡れたような視線で一刀の顔をじっと見つめる。 これは熱でもあるのかと、額に手を当てようとするが、神通に身体を拘束され腕や足さえも動かせない。 

 

だが、神通の様子は明らかに可笑しいのだ。 まるで、愛しい者に接するかのように────

 

 

『………って、俺にか!?』

 

『どういうこと……でしょうか。 て、提督のお顔を見ていましたら………身体が……火照って来てしまいました……』

 

『────ちょ、ちょっと! 待て待て待てぇぇぇ!?』

 

 

この危険な雰囲気の中、一刀の頭に過(よぎ)るのは《 吊り橋効果 》という言葉。 まさか、艦娘にも通用するのかと考えるが、現状を見れば通じるらしいと自己完結するしかない。

 

いやいや俺は何を考えていると、慌てて神通を押し止めようとする一刀だが、体勢も力も向こうの方が上。 一刀の必死な抵抗も虚しく、目を閉じ接近する神通の顔が間近に迫る。

 

 

『提督……ごめんなさい。 もう……我慢が出来なくてぇ……』

 

『じ、神通! 頼むから、正気に返ってくれ!!』

 

 

このまま一輪の花が舞い散るかと思われた時、文字通り助け舟が突撃してきた。 

 

 

『Hey、提督ぅー! 人の心配を余所に何をしていやがるんデースカァ!?』

 

『『─────はわぁ、はわわわわわッ!?!?』』

 

 

片手を真っ直ぐに伸ばしながら金剛が飛び込み、二人を強引に引き離しお陰で、一刀の貞操は死守された。 ちなみに、はわはわ言っているのは、当事者の二人である。 

 

だが、一刀には更なる受難が続く。

 

 

『いいですカァ! お触りも愛し合うのも許可したヨ! だけど、Cheating(浮気)まで許した覚えはアリマセーン!!』

 

『だ、だから、本当に目が覚めたら……こうなってて……』

 

『提督からのLoveが足りないから、付け入られる隙が生まれるのネ! 提督が恥ずかしがらずに、もっと私とlovey-dovey(イチャイチャ)しないから悪いのデェース!!』

 

 

金剛から怒涛の説教を受ける事になったが、これまでの皆の奮戦を思えば仕方ない話。 それだけ愛されていると思って、存分に叱られまくって貰いたいものである。

 

まあ、そのお陰で逆に冷静になれたらしく、ようやく周辺を眺める余裕が一刀にはできた。

 

 

『ところで……………ここは、何処かだ?』

 

『あふぅ………どうしてかよく分かんないけど……元の場所より二海里(約四キロ)ぐらい……離れた場所みたい』 

 

『────!』

 

 

また、神通や金剛とも違う眠たそうな声が横から聞こえ、思わず身構えたが、声を掛けた者は報告を終わらすと、口を大きく開いて欠伸し、興味無さげに佇んでいた。

 

あの南方棲戦姫からの攻撃を受け、損害が何も無かったと神通より話を聞いていたが、実際に自分の目で確認しなければ、非常に信じがたいことである。

 

無事を喜ぼうと思ったが、確か川内は徹夜で働き詰めであった事を思い出し、簡単な事情を聞き出し川内との話を切ろうと決め、なるべく静かに声を掛けた。

 

 

『そうか、教えてくれてありがとう。 ところで──』

 

『ふあぁぁぁ……朝だと眠くてぇ……あっ、忘れてた。 提督、お早う………』 

 

『お、おはよう………?』

 

『あっ、提督おはようございまーす! ライブの宣伝活動も兼ねて偵察したら、何と艦隊の皆も見つけちゃった! これも那珂ちゃんの日頃の行いが良いからかな? きゃはっ♪』 

 

そんな一刀の疑問に答えるように眠そうな川内、そして途中で参加した元気な那珂が発言。 彼女達の答えは正鵠を得ていたが、その何気ない言葉で分かった新事実もある。

 

 

『ちょっと、待て! あの時は昼近くだったのに、今の太陽の位置は低いじゃないか! もしかして、俺は───』

 

『はい、提督が目を覚まされたのは……あれから一日経過した後。 私も……つい先ほど覚醒して……ようやく辺りの事情を知ったものですから………』

 

『What are you talking about! (何を言ってるのデスカ!) 私達と到着した時は、しっかり起きていたネ! しかも、神通は提督の命令だからと、ずっと側に居座っていたヨ!!』

 

 

新たに起こる口喧嘩を宥めつつ、一刀は皆を引き連れ、離れた艦隊へ向かうことになった。

 

 

 

『あ、あの………提督。 一つ、お伺いしたいのですが……』

 

『……ん? 俺に答えられることなら………』

 

 

 

『では………寝言で言っていた《あいしゃ》や《しあ》と言う女性の名前に……心当たりは……ありませんか?』

 

『Oh、これは加賀達にも報告しないといけない、重要案件ダヨ! 早くFess up!(白状するネ!)』

 

 

 

『あっ、逃げたデース! 待てぇー!!』

 

『……うふふ、そうですか。 提督、逃げても無駄ですよ。 次発、装填済みです……』

 

 

 

◆◇◆

 

【 尋問 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊? にて 〗

 

 

『ハァ……ハァ………何トカ……逃ゲノビタ……』

 

 

南方棲戦姫は我武者羅に暫く進み、後ろを恐る恐る振り返ると、見えるのは何処までも続く、大海原と青い空。 

 

それ以外には、魚の影も形すらも全く何も見えない。

 

何度も確認をしてから漸く南方棲戦姫の心中には、逃走が成功した安堵感が生じる。 逃走に成功するかどうかなど、正に賭けであったが、どうやら成功したようだ。

 

そして、安全が確立されれば、今まで追われていた恐怖と入れ替えにして、自分を辱しめた艦娘や三国の将兵達に対する憎しみの感情が徐々に広がるのを感じた。

 

だから、《 安堵の言葉 》の次に出るのは、《 艦娘達を呪詛する言葉 》を吐きたくなるも当然の心情である。

 

 

『………此処マデ……来レバ………安心。 ダガ……今度コソハ……全員纏メテ───』

 

 

『いらっしゃい……漢女の世界へ………』

 

 

『──────ッ!?』

 

 

だが、そんな南方棲戦姫が吐く呪詛の言葉は、最後まで言い切ることなく、途中から割り込む何者かの声に阻まれた。

 

口調は正に女性が語るような柔らかい言い方だが、声質は逆に重厚な低音ボイス。 そんな声が彼女が散々見渡し、追手の確認した空間より、彼女の耳へ聞こえたのだ。 

 

 

『何処……ダ!? 何処……ニ居ル!?』

 

 

安堵していた南方棲戦姫は、今しがた聞こえた声の主を探す為に、再度辺りを急ぎ見渡し始めた。 

 

空耳だと信じたかったものの、あの忘れられない野太いオネェ言葉を聞き間違う筈がない。 完全に巻いたと思っていたが、未だに怪物達の掌だったという事に戦慄を覚える。

 

繰り返し探っていると、何処かで指を鳴らす音が響く。

 

思わず音をした方向を凝視すれば、いつの間にやら現れた管理者が、海面上へ無造作に佇んでいる。

 

 

『《 相手が勝ち逃げを誇ったとき、その者はすでに捕縛されている 》……これが世界の管理者たる、この于吉のやり方ですよ。 ふっ、今回もまずまずの成果というところですね』

 

『…………この俺でさえ逃走は不可能だ。 こればかりは同情する。 悪いことは言わんから早く諦めて楽になれ………』

 

 

現れたのは、満面笑みを浮かべた于吉、そして何か暗き過去を思い出したのか疲れ切った表情を見せる左慈。

 

その言葉に驚愕した南方棲戦姫が、慌てて辺りを見渡す。

 

先程まで見えた筈の青空や大海が全て消え去り、代わりに見えるのは四方八方を全部白く塗り潰された白面世界。

 

そして、目の前に居たのは───

 

 

『バ……バケモノ……メ!』

 

『まあぁ! 失礼しちゃう!! 折角、歓迎して上げようと、この美の黄金比が取れた私の身体を見せ付けたのに、そんな酷い暴言を吐くなんてぇ、あんまりだわぁぁぁ!!』

 

 

少し前に対峙した赤い艦娘……だった者が、バチンとウインクをしながら悩殺ポーズを見て、思わず南方棲戦姫は両腕の砲塔を向けながら、素早く距離を取る。

 

………まあ、誰だって距離を取りたくなるのは、否定しない。

 

 

『ド……コガ……ダッ!!』

 

『もぉう、私の艶やかな姿を忘れちゃったのぉ? あんなにぃ私を求めてぇ熱く迫ってきたくせにぃ~!』

 

『─────ッッ!!?』

 

 

頬を染め身体をクネクネとさせる貂蝉に、南方棲戦姫の保っていた理性の糸が物の見事に焼き切れ、本能に添い自分の全艤装を展開し、最大火力で葬ろうと狙いを定めた。

 

 

『喝ああああぁぁぁぁッッ!!!』

 

『!?!?!?』

 

 

そんな混乱する彼女に、別の場所より現れた管理者からの強烈な気合いを浴びせられ、南方棲戦姫の頭が真っ白になり、思わず力が抜け、膝を地面?について大人しくなった。

 

 

『何をしておるかぁ! 自ら膝をつくなど、生を捨てた者のすることぞ! 立て、立ってみせぃ!』

 

『………オ……オノレ……!!』

 

 

その管理者……巫女姿というには、余りにも無理すぎる卑弥呼からの理不尽な物言いに対し、苛立ちのあまりか物理的、精神的に己を立ち上げらせる南方棲戦姫。 

 

だが、無理やり立ち上がったのはいいが、掛かった負担は大きいらしく、身体は小刻みに震え、何度も辺りを見渡す警戒心は隠しきれていない。

 

 

『ふむ……儂の気当たり程度で膝を突くとは。 于吉よ、この程度の泥棒猫が本当に………か?』

 

『ダ、誰ガ……泥棒猫………』

 

『確かに猫ほど可愛くもありませんが、他者の命を盗ろうとするのですから、泥棒呼ばわりは間違いありませんね。 まあ、そんな話は捨て置き、私の手腕をお疑いですか?』

 

 

于吉と卑弥呼の間に火花が散るが、そんな重苦しい空間の中、空気を変えるように大きな拍手が二回ほど響く。

 

その音に思わず視線が集中すると、精神的に立ち直った貂蝉はニッコリと笑い、穏やかな声で呼び掛けた。

 

 

『ほらほら、まずは自己紹介しないとぉ!』

 

『馬鹿か! 直ぐ叩き潰す敵相手に、何で再度名前を名乗らなる必要がある! 教えてやるだけ無駄だッ!!』

 

 

左慈の言葉は当然であり、正論でもある。

 

だが、どこかの主人公が語る《 無理だとか、無駄だとかいった言葉は聞きあきたし、おれたちには関係ねえ 》と言わんやばかりに、貂蝉は反論し出した。

 

 

『でもでもぉ、南方棲戦姫ちゃんを知る私達は良いけどぉ、彼女自身は私達の名前なんて覚えてないと思うのぉよ。 彼女から問われても、名前が分からないと不自由じゃない?』

 

『なるほど、この外史に私達の認識を深く刻ませるつもりですか。 この世界の者に少しでも知覚されれば、私達が此方に移動するのも楽になり、更に私の野望も───』

 

『馬鹿のせいで、ろくでもない名前で呼ばれるのも癪に障る……俺の名前は左慈だ! ただし、この馬鹿野郎の于吉とは、一切合切関係無い、普通の外史の管理者に過ぎん!』

 

『ふん、儂は華麗にして美麗な謎の巫女! その名も──』

 

『この世界で一番の美貌を誇る私が貂蝉! 二番が隣に居る和風の漢女が卑弥呼よぉん!!』

 

『どさくさに紛れ何を教えるかぁ!? 一番は儂である卑弥呼、二番が貂蝉だ! 異論など一ミリ足りとも認めん!!』

 

『私が左慈の相方兼……将来の嫁候補確定済みの于吉で──』

 

『黙れぇ! ぶっ殺すぞぉ!!』

 

 

正論は見事に覆され……あまりにも酷いニ度目の自己紹介ののち、代表として貂蝉が尋ねた。 というか、貂蝉ぐらいにしか、南方棲戦姫は意志疎通をしなかったからである。 

 

 

『お名前は……南方棲戦姫ちゃんで良かったかしらぁん?』 

 

『…………………』コクコク

 

 

対面は貂蝉を前にして、後方に卑弥呼、于吉が並ぶ。 

 

左慈は更に後ろで腕組みをしながら、興味無さげに余所見をしている状態。 于吉は一線を引こうとしているのが、ありありと如実に現れている。 

 

勿論、この三人の対面先は、南方棲戦姫である。

 

 

『じゃあ、聞きたいことがあるのよぉ。 オネェーサンに、お・し・え・てぇ~?』

 

「────!?」

 

『くっ、な、何という妖艶な色香よぉ! 師である儂さえも迷わせる気かッ!? 貂蝉と同性でなければ、今頃は……』

 

『ふぅ~、これ以上の拷問もありませんね。 敵とはいえ、些か不憫になってしまいますよ』

 

 

薄く化粧された強面の放つ重圧な空気が、南方棲戦姫の周りを取り囲み、深海棲艦の彼女さえも何故か息苦しくなり、白い顔色が更に血の気を失う。

 

そんな南方棲戦姫を貂蝉が直視しながら、無慈悲な質問を飛ばす。 その質問の内容は、意識が失いそうになる南方棲戦姫は辛うじて聞き取れ、少しして理解した。

 

 

『私達が聞きたいのはぁ───貴女達の中で、異質の個体が居なかったかどうかなのぉ』

 

 

自分達、深海棲艦に……新たな上位者が存在するのかと、聞き出したいのだと思ったのだ。

 

 


 
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