――いただきます。
草薙悠弥の目の前には豆腐があった。
普通の豆腐だ。
一丁60円ほどで買える。
安い。
――だが上手い。
(上手いんだなこれが)
豆腐は日本食だ。
精進料理にも使われている。
だが上手い。
そして発育にもいい。
草薙の神社でも推奨されている食べ物である。
家計の味方。
健康の味方。
そして、特に調理しなくても食べられる。
これが嬉しい。
手軽で安い、これが良いのだ。
草薙は改めて豆腐をみた。
きれいだ、と思う。
豆腐の清澄な見た目は好きだ。
澄んだ水の中にいる様な、そんな感じ。
草薙は一口豆腐に箸を入れた。
瑞々しい豆腐がプルんと揺れる。
そして食す。
味はあまりしない。
(水のような味だな)
草薙は思う。
世の中で水に近い食べ物を述べよ、といわれたら
一つは豆腐と答えてしまうかもしれない。
少しだけ豆腐をみたあと、草薙は醤油を手に取った。
豆腐に醤油をたらす。
白い豆腐に黒い醤油が垂れ落ちる。
白い豆腐が部分的に黒くなる。
(うまそうだ)
そう思う。
そして食す。
(……うまい)
醤油をかけた豆腐。
日本の料理という感じがする。
(豆腐、日本の伝統食)
良い。
草薙が食べているのは税込60円の普通の豆腐。
――それもまた良し。
普通だから良いのだ。誰でも簡単に食べれるから良いのだ。
やはり豆腐を伝統食にした日本は素晴らしい。
改めて草薙は思った。
(爽やかだな)
食後感がいい。
食後に心地よくなる感じがするのだ。
それも豆腐のいい所だと感じた。
豆腐食う
古来の民に
感謝する
食の歴史が
今を支えて
手軽である。
適当である。
豆腐は手軽だからいいのだ。
安値で買えるのだ。
豆腐は適当でもいいのだ。
醤油をぶっかけるだけでおいしいのだ。
そして健康である。
草薙は多くの日本人の食生活を支えてきた豆腐を
改めて素晴らしいと思った。
(感謝)
草薙は手と手をあわせる。
――ごちそうさまでした。
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普通の日本人、豆腐を食べる