No.104883

真・恋姫無双  江東戦記 第2記・黄巾の乱-1

赤銅さん

第2期、黄巾の乱のはじまりです。

2009-11-03 07:57:17 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10461   閲覧ユーザー数:7623

一刀が雪蓮に保護され2週間がたった。

 

 

一刀がこの2週間でした事は今の呉の実情の説明から入りその後。

 

喋れるが字が読めない事がわかったので助けてもらったお礼にと大喬から漢文を教えてもらい。

(何故か雪蓮も「私も教える~♪」とやってき、冥琳に「政務を放り出して何をしている!!」と一刀も巻き込まれて怒られた)

 

 

連れて帰られた孫策の館で黄蓋と陸遜に挨拶と同時に真名を預かり。

 

祭に「歓迎の盃じゃ!」と言われて真昼間から酒を飲まされ。

(「調練はいかがなさいました祭殿?」と突如現れた冥琳に二人仲良くお説教された)

 

穏に「お勉強なら書庫にいい本がそろってますよ~。」と言われ。

(書庫への途中で冥琳と出会って「穏、お前は書庫に出入り禁止と言っておいただろ!」とダシにされた一刀共々叱れた)

 

 

そんな感じで2週間は矢の様にすぎて行った。

 

「黄巾党?」

 

「そ、荊州の北と南で暴れてるから北の本隊を討てってさ。」

 

その日雪蓮が袁術から呼び出されたと言って帰ってき、どうみても不満一杯な顔で喋りだした。

ちなみに今ここに居るのは俺(一刀)と雪蓮・冥琳・祭さん・穏の五人。

 

「は~、全くあのおチビちゃんったらいやになっちゃう。」

 

「言ったところで命令されてる以上しかたないでしょ。」

 

「それはそうだけど~。

 この間も私が出撃したじゃない!」

 

そう、このところ雪蓮は2,3日に一度は出撃している。

しかも相手の数がそれなりに多いのでなお厄介。

以前に俺が雪蓮に「袁術ちゃんの兵も一緒に戦ってくれたら袁家の勇敢さが世間に広まるわよ。」と袁術に言ってもらって資金と兵を出させたがそれでも日に追いつかないのが実情だ。

なので雪蓮はとてもご機嫌斜めだ。

 

「あの、お茶が入りました。」

 

「あら、ありがと。

 まあそんなわけで今回は私と祭それに一刀を連れて行くから。」

 

「ブッーー!!」

 

「ちょ!! 汚いじゃない一刀!」

 

大喬の持ってきてくれたお茶を吹いてしまう。

 

「雪蓮まだ北郷は早いんじゃ…。」

 

「む~、ワシは構わんと思うが……。」

 

「あらあら~、大変ですね一刀さん~~。」

 

「そうかな~? けど…、」

 

一瞬で明るい感じの雪蓮の言葉に陰が入った。

 

「そろそろ、この世界の現実を見てもらわなくっちゃ…。」

 

「…なるほど。」「たしかに…。」「そうですね~~。」

 

そう、この時俺はまだわかってなかった………、この世界の現実ってやつを。

 

軍議が終わって一刻が発ち、俺たちは北に向かって馬に乗っている。

こちらの数は2500、黄巾党はおよそ1800と先行している部隊より連絡があった。

 

「………。」

 

「ねえ一刀、…大丈夫?」

 

「……………。」

 

今の俺にお喋りの余裕は無かった。

理由は馬だ、元々馬なんか乗った事ないし乗り出して歩くスピードならなんとも無いがそれでも何時間も座ってるといい加減尻が痛い。

なので俺は神に祈っていた、「(けっしていきなり行軍の速度が上がるようなイレギュラーが起きませんように)」と。

などと情けないことを祈っていると前方の部隊よりの連絡が入った。

 

「報告します!

 前方の黄巾党のさらに向こうより南下してくる黄巾の一団を発見。

 さらにその後方より黄巾党を追って来る旗を確認、旗印は〝夏候〟〝許〟。」

 

「何ですって?

 …いいわ、その部隊が州境を越える前に一気に殲滅するわよ。」

 

「はっ!」

 

敬礼し去っていく兵士を余所に俺は考えた。

 

「(北から来る黄巾党の奴らが逃げてくるほど強い軍、それに〝夏候〟に〝許〟……。

  !! そうか!!) 雪蓮!!」

 

「どうしたの? 悪いけど速度はこれ以上落とせないわよ。」

 

「いや、確認するけど無断で余所の州に入るのはダメなんだろ?」

 

「何を確認するかと思えば、そんなものダメにきまっとるじゃろ。」

 

「だったら南下してくる一団がこっちの州に入るまで手出ししちゃダメだ。

 こっちに入ってもらおう。」

 

「…どうして?」

 

「おそらく〝夏候〟は夏候姉妹(おそらく女性だろう)、それに〝許〟は許緒!

 共に曹操の部下だと思う。」

 

「曹操……、たしか陳留の刺史…、だったかしら。」

 

「そうだ、そして奴らは俺たちと同じくこの乱世で必ず大きくなっていく。

 今、奴らが州越えをしたらそれを黙っててやる事で借りを作っておける。」

 

「いいわ、一刀の案に乗りましょ。

 幸い今回は袁術の軍は入ってないし。

 全軍、前方の黄巾党を見落とさぬよう速度を下げる!!

 …これでいいかしら?」

 

「ああ、ありがと。」

 

行軍もさらに進み再び先方隊よりの連絡がきた。

 

「申しあげます!」

 

「どうした?」

 

「北上していた黄巾隊と南下していた黄巾隊が州境手前で合流し、西にそれました。」

 

「そう…、連中を逃さず追跡!!」

 

「はっ!」

 

「さて一刀、早速出迎えに行きましょ。

 そのいずれ私達の大きな敵になる子達を…。」

 

おもちゃを見つけた子供の様な顔をしている雪蓮。

しかしこちらの今の目標である〝夏候〟の旗が見えてくると顔つきがスッっと鋭くなった。

 

 

 

そして遂に曹操の軍と遂にあたった。

 

「そこの軍待てい!!

 ここを荊州と知っての行軍か!!」

 

雪蓮の言葉に促され、一団の中からロングの黒髪の女性とピンク色の髪を二つに縛った女の子が出てきた。

 

「我が名は夏候惇! 曹孟徳配下の将でこっちは副官の許緒だ!

 そちらの州を越えてしまったのは黄巾党を追っていての事で決して侵略の類では無い!!」

 

「証明するものは?」 

 

「逃げた黄巾の一隊を追っている途中だったのだが………。

 その…、み…見失ってしまったのだ。」

 

「ふ~ん。」

 

「いや、しかしだな! けっして我等は―――。」

 

「策殿ーー!!」

 

夏候惇のしどろもどろな説明を遮って祭さんが前に出てきた。

 

「奴等の逃げた方向がわかったぞ!」

 

「何っ!?」

 

「そうそう、言い忘れたわ。

 私の名は孫策、袁術の客将よ。

 こっちは副官の黄蓋と北郷。」

 

雪蓮は簡単な自己紹介をし、俺は一応軽く頭を下げておいた。

 

「ねえ、あなた達。

 ここは正式には私の領土じゃないの。

 だから今から私達と協力してくれるんなら今回は見逃してあげる。」

 

「ほ、ほんとか!?」

 

「ええ、もっとも私の領土に入ってきたら容赦しないけど…。」

 

「わ、わかった。」

 

「それじゃ行きましょ。

 ここら辺は沼が多いから逃げ方はわかるわ。

 早速生きましょ。」

 

こうして魏軍2000を含め4500になった俺達は南下してきた軍と合わせたおよそ3500の黄巾党を追って西へ向かうのだった。

 

「アニキ、どうやら夏候の軍が孫策とぶつかったみたいですぜ。」

 

呉,魏軍の行軍停止場所より西に数里の地点にある少し小高い丘。

 

「ふっ、孫策め今度こそお前の最後だ!」

 

「さ、さすがなんだな。

 ア、アニキは。」

 

「ケケケ! まったく凄いぜアニキは。

 俺達じゃ勝てないからってまさか夏候惇を嵌めて孫策をつぶすなんて。」

 

丘の上でありもしないカッコよさをムダにアピールするどこかで見たような三人。

主に1日に二度も一刀と雪蓮にカッコ悪くぶっ飛ばされた感じのする・・・。

 

 

「よ~し、これで手前も終わりだ孫策!!

 ハ~ハハハ!!」

 

「あ、あれアニキ?」

 

「ん? どうしたデク?」

 

「な、なんかケンカしないで一緒にこっちに来るんだな。」

 

「「なにーーー!!」」

 

 

「見つけたぞーーー!!

 黄蓋隊! ありったけの矢をくれてやれー!!!」

 

「孫策隊! 黄蓋隊の攻撃で浮き足だった敵を一気に叩く!!

 突撃ーーー!!!」

 

 

 

 

…この時俺は初めて知った、

 

 

 

目の前で死んで逝く人達を…。

 

 

 

「ねえ、一刀…。

 

 よく見て、これがこの世界の現実よ……。」

 

 

 

「………。」

 

 

 

「あなたの剣、あれはまだ一度も血を…。

 

 

 ううん、あなたが持ってまだ一度も血を吸った事の無い剣だったわ……。

 

 

 天の国ではそれで良かったかもしれない。

 

 

 けど、覚えていて。

 

 

 この世界であなたに大切な人、守りたい人が出来た時。

 

 

 決して綺麗な刃のままではいられないから………―――――。」

 

 

 

 

 

ここから俺はほとんど記憶に無い………。

 

 

 

ただあったのは、俺が初めて人を殺したという感触だけだ……………。

 

 

 

 

 

 

夜 孫策の館・雪蓮の寝室

 

 

「そうか…、北郷が……。」

 

「ええ、帰りの途中で馬に乗れなくなってたから私の後ろに乗せてきたわ。」

 

蝋燭の灯りの下でお酒を飲む雪蓮と冥琳。

二喬はすでに布団に包まって眠っている。

 

「あの子、…大丈夫かな?」

 

「大丈夫だろ、…慣れさえすれば。

 それに前回の袁術から兵を出させた案といい今回の曹操に貸しを作っておいた事といい、鍛えればいい軍師になりそうだ。」

 

「ふ~ん、冥琳がそんなに人を褒めるのはじめて見た。

 私には怒ってばっかなのに~。」

 

「それは普段のお前が悪い。」

 

「ぶ~~~!」

 

 

 

 

同時刻 曹操の城・玉座の間

 

 

本日の報告に夏候惇、そして許緒が魏王・曹操の前に居た。

 

「で! 結局借りを作ったまま帰って来たの?」

 

「いえ、結局協力して退治しましたのでそれで―――。」

 

「帳消しになってないわよ!!

 もういいわ、この借りは春蘭あなたが返しなさい。」

 

「は、はぁ…。」

 

「それで、その孫策…。

 江東の虎の娘はどんな感じだったかしら?」

 

「はっ! 一言で申しますと檻に閉じ込められた虎という感じでした。」

 

「そう、ならばその情報に免じて今回の罰はなしにしましょう。

 他に気になる人物は居た?」

 

「ん~~~。」

 

「あのぅ~、華琳様~~。」

 

この時初めて許緒が手を挙げ、発言した。

 

「どうしたの季衣?」

 

「はい、戦ってるのを見てたわけじゃないんですが気になる人が…。」

 

「あら、どんな娘? 可愛かった?」

 

「いえ、男の人なんですがお日様の光を跳ね返す様な白い服に春蘭様以上の大剣を持ってて。

 たしか…、ほん…ご…う。 って人がいたんです。」

 

「そう。(残念可愛い娘じゃなかったか…。それにしても日を反射する白い衣……、まさかね………。)」

 

 

 


 
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