静かな森に響き渡るはそこに似つかない激しい剣戟の音。
<キイン!!>
「ちっ! 結構やるじゃない。
ハアーーー!!」
「ちょ、少しはこっちの話を!!」
「聞く気はないわ。」
先ほどから剣を交えつつも必死で誤解を解こうとするが相手の女性は話は聞かないと剣を振るう。
一刀は誤解を受けていた、それがどんな誤解かと言うと。
服の引き裂かれた女の子+変質者と叫んだ女の子の声+その女の子二人の傍にいる武器を持った男
以上を素材に錬金すると………、
なんと 強姦魔・一刀くんが1つ(人)できた。
「誰が強姦魔だーーー!!!」
「なにをいきなり叫んでるの?
ひょっとして………、変質狂人者?」
「違う!!」
明らかに剣を振るう女性からの印象が右肩下がりに落ちていく。
そしてそれは当然剣に込められる殺気なども増すことになる。
「(さっきより速い!)」
既に戦闘開始より半刻程が経ち、既に何合も剣が交じり合っていた。
「テヤーーー!!」
「ハッ!!」
一刀は鋭い横薙ぎの攻撃を後ろに飛んで避け、着地と同時に大地を蹴って前進しつつ切りかかる。
<キィッン!!>
それを剣をぶつけられて軌道をずらされこれもヒットせず。
こういった戦いが先ほどから続いており、お互いが未だ切り傷を負わず。
しかして体力だけが消耗していく戦いとなっていった。
「へえ、やる…じゃ……ない。
名前ぐらいはき、聞こうかしら。」
「俺の名は北郷一刀、ゼェゼェ…。
そ、そっちは?」
「ん? ああ、私の名は孫伯符よ。
違う出会い方をしてたら真名も教えても良かったんだけどね。」
「え? 真名??
いや、それよりその名前って。
(孫伯符って確か三国志に出てくる孫策の名、それにさっきの女の子は大喬と小喬って…。
ひょっとしてこれが現実なら俺はタイムスリップ?
いや、ならなんで孫策が女性にひょっとしてただのタイムスリップじゃ―――)」
「そこまでだ!!」
一刀の思考を遮って野太い男の声が森に響き渡った。
一刀と孫策は剣を止め声のあがった方を向いた。
そこに居たのは先ほど追い払った三人の男達が。
さらにその後ろには同じ様な黄色が目立つ服装の目元の見えずらい男達が数十人立っていた。
「なによあなた達?
今楽しい所なんだから邪魔せずに消えなさい。」
↑(すでに目的が二喬を守る事から戦いを楽しむ事にすり替わってる)
「誰だお前ら!? とっとと消えろ!!」
↑(声の方は見たがほとんど見ずに孫策の方を見直してさっきの男達と気付いてない)
「め、冥琳様!」「あれがさっき私達を襲った真犯人です!」
「なるほど…、あいつ等か……。」
↑(一刀と孫策が戦ってる間に二喬から事情を聞いていた。
けど孫策が話しを色々な理由で聞きそうになかったからどちらかが大怪我する前には止めようとしてた)
「へへ、どうだ今日は引いてやると言った後に再び攻めるこの戦術は。」
「「よっ! さすがアニキ!!」」
↑(ぶっちゃけ戦術以前に『ただの卑怯者だろ』and『あの人嘘吐きです』と言われても仕方ない事を言うアニキ。
それに乗ってるチビとデクの合計三馬鹿)
「まあいい。それじゃー野郎共!!
あの男は袋叩きで女共は俺達が楽しんだ後売り飛ばして一儲けだ!!
かかれーーー!!」
「「「「「うおーーーーーー!!!」」」」」
アニキの号令と共に一刀と孫策に飛び掛る野盗共、しかし。
「ハアーーー!!」
「テヤーーー!!」
飛び掛られた二人は目にも入っておず、そればかりか…。
<ブン!>
「ぐは!!」
<シュン!>
「ギャア!!」
二人の鍔迫り合いから避けて流す戦いに巻き込まれ、勝手に切られていった。
そして二人はまったく気にしてない。
「な!? えーい、こうなったらそっちの女共を狙え!!」
アニキは旗色悪しと見て目標を二喬に変えるが……、
「ハッ!」
<ビシッ!!>
それをかばう様に立つ黒髪の女性の鞭に撃沈される。
<ピシッ!>
「あう!!」
<バシッ!!>
「あ、あーーー!!」
<ビシーーッ!!!>
「じょ、女王様もっと~!!」
………一部妙な扉を開けかけている者もいたが。
そして幾分すぎると遂に残ったのはアニキ・チビ・デクの三人だけだった。
「ち、ちくしょーーー!!
お、覚えてろーーーーー!!」
<ザシュ!! x3>
「「「ギャーーー!!!」」」
相変わらずな雑魚丸出しな捨てゼリフを残して身を翻そうとしたが仔虎の白夜に顔面を引っかかれその場で三人共倒れてしまった。
そして顔を上げて映るのは凄まじいオーラを出してる一刀と孫策の姿が。
「邪魔…するなって言ったのに。」
「失せろ、って言っといたよな。」
「「「あわわわわ………。」」」
「「消えろーーー!!」」
<バキッ!!!>
「「「ギャーーーーー!!!」」」
こうして三馬鹿は一刀と孫策、二人の一撃を受けて空の向こうへと飛んでいったのであった。
「ふぅ~~。
さてそれじゃ続きを、って痛い痛い~~!!」
邪魔者が消えて再び一刀に剣を向けようとしたその瞬間、黒髪の女性に耳引っ張られていた。
「痛い、痛い~~!!
なにするのよ冥琳のバカ!!」
「いい加減に落ち着きなさい雪蓮。
あの子達を襲ったのは彼じゃないわ。」
「え?」
「我が王がすまなかったな少年。
私は周公謹と言う、話はあの子達に聞いた。
私と雪蓮の妻を助けてくれて感謝する。」
「!!(やっぱりここでも三国志の登場人物の名を…、それに大喬と小喬を自分達の妻と言う事は―――)」
「ん? どうかしたか?」
「あ! い、いやなんでも無いです。
それより孫策さんは大丈夫ですか?」
「!? ねえちょっと、…っていい加減放してよ冥琳!!」
「ああ、悪い悪い。」
「ふう、それでなんであなたは私の名を知ってるのかしら?
さっきは姓と字でしか紹介してないわよね?」
「ああ、それは…―――――。」
「―――――――――――と、俺は考えてる。」
一刀は自分が未来の、そして似ているが違う世界から来たと伝えた。
「う~む、にわかには信じがたい。
しかし雪蓮の妹達や私の名まで言われ、さらにこのような地図など見せられては信じる他あるまい。」
「この〝どろっぷ〟てのも美味しいしね♪」
おそらく性別が皆女の子に変わっているだろうとの前提で孫家にゆかりのある名をだし。
鞄に入ってた世界地図や残り少ない飴を渡して未来人である事をなっとくしてもらった。
「と言う事は、やっぱり北郷さんが〝天の御遣い様〟なんでしょうか?」
「〝天の御遣い〟?」
大喬がお口の中の飴を幸せそうな顔で味わい、貸してもらっているフランチェスカの制服を触りながら喋りだした。
「はい、今噂になっている占いで
〝この世乱れし時、白き流星に乗って天よりの遣いが
まばゆき衣を纏いて白き獣と共に乱世を鎮める。〟
今借りてますこの服も日の光をはね返してますし。」
「そして白い虎も一緒…か。」
そして皆の視線は一刀の頭に陣取った白夜に向けられる。
視線に気を悪くしたのか白夜はピョンと地面に降り軽く離れてしまった。
そして二喬がそれを追いかけて行き、孫策が口を開いた。
「ねえ、御遣い君。」
「何でしょう?」
「これからどうする?」
一刀は少し考え。
「ん~、さっきも言った通り『寝てたらここに居ました』だから帰る方法も分からないし。」
「行く所は?」
「あるはずもなく。」
「だったらうちに来ない?」
「え!?」
「雪蓮!!?」
この発言には発した本人以外の全員が驚いた。
「いったい何を考えてるの?」
「ん~とね、この子が天の御遣いなら私達の夢の力になるかな~って。」
「…たしかに。」
「それに孫呉千年の繁栄のために胤を出してもらおうかな~って。」
「なるほ……ど?」
「え?」
「あら分からない?
要するに私の妹やあの子に近い歳の子とまぐわちゃって♪」
そのセリフで周囲の時が止まったかに感じた。
「つまりうちの武将達に天の子を授けて欲しいの。」
「あ~、つまり天という畏怖から来る恩恵が欲しいと。」
「そ♪ だ~い丈夫、私の妹含めて呉は可愛い子が多いから。」
「………力尽くとかは嫌なんだけど。」
「それは勿論ちゃんと同意の上での話よ、ちなみにこれが第一の条件。
二つめの条件は貴方の力と知恵をかしてくれる事。」
「……………二つ目だけじゃダメか?」
「ダメ! っていうか男なら嬉しいでしょ?」
「…種馬のなにが嬉しいんだよ。
……はあ、分かったよ、一つ目に関しては努力する。
としか言えないけど。」
もう色々と諦めた感じで条件を飲んだ一刀であった。
「それじゃあ仲間になったんだし私の真名を預けるわ。
私の真名は〝雪蓮〟、よろしくね♪」
「ふむ、真名を許すか。」
「ええ、さっきの手合わせでこの子の力は認めてるし。」
「そうか、ならば私も名乗らねばな天の御遣いよ我が真名は〝冥琳〟だ以後は好きに呼べ。」
「あの、真名って何?」
「ん? 天には真名の風習がないのか?
そうだな、真名とは我らにとって神聖な名。
家族や自分の認めた相手以外は教えないしもし本人の許可なくその名を呼べば何をされても仕方ない。
そういう名だ。」
「なるほど、それじゃ絶対に裏切れないね。」
「ほう、そう思うか?」
「え!? だってその名を預けてくれるって事は信頼を預ける事だろ。
だったら死んでも裏切れないし。」
「そこまで分かってるなら名を預ける価値もあると言うものだ御遣い殿。」
「あのさ~、俺を仲間と思ってくれるなら俺の事も名前で呼んでくれ。」
「わかった、よろしくな北郷。」
「よろしくね、か~ずと❤」
こうして異世界から来た少年、北郷一刀は呉の客将兼種馬となった。
どちらが重点的かは考えたくないが………。
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完全な誤解で戦闘を始まってしまった一刀。
果たして命運やいかに?
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