「俺、好きなひとがいたんだ。
いや、今も好きなんだ。」
「そのひとも、俺を好きだって言ってくれてた。
嬉しかった。
有頂天だった。
すごく、幸せだった。
毎日、そのひとと話すのが楽しかったんだ。」
「でも、なんだかだんだんそっけなくなって、
そのひとからは、話しかけてもくれなくなった。」
「俺から話しかけても、返事が遅いんだよ。
ずっと、ずっと待たされて。
やっときたと思ったら、たった一言だけ、『うん』とか『へぇ』とかなんだ。
それはないと思うだろう?」
「しびれをきらして、どういうことか訊いたんだ。
そうしたら、
貴方のことが好きじゃなくなったから、もう話しかけないで、と。
そのときだけ、やたら返事が早いんだよ。
笑っちゃうよな。」
「なんでだかわからなかった。
あんなに俺のことが好きだって言ってくれてたのに。
なのに、
なんでそこまで俺を拒否するのか。
見当もつかなかった。」
「でも、やっとわかったんだ。
あいつが・・
あいつが、割り込んできたんだよ。
最初は2人だけで話してたんだけど、あいつが割り込んできて、
3人で話すようになって、
あのひとは、あいつのことが好きになったんだ。」
「俺は、気の利いたことも言えないし、
あいつみたいに、上手く立ち回れない。
だから、あのひとはあいつの方が好きになったんだ。」
「今も、あのひとが好きだ。
だから、あいつのIDが点灯していると、
ああ、また2人で話してる。
2人して、俺のことを笑ってる。
いつまでもあのひとのことを忘れられない俺を、
2人して『きもい』と言ってる。
そして、2人で楽しそうに恋人同士のように、
『愛してる』とか『好きだ』とか言ってるんだ。
俺に言ったように。」
「そんな風に考えると、嫉妬で体中がいっぱいになる。
怒りが沸いてくる。
殺意さえ感じることもある。
自分を抑えるのがやっとだ。」
「でも、だいぶ、それもおさまってきたよ。
今は哀しみと空虚を感じるだけだ。」
「・・・炎華。」
「お前、
それを聞いても更に、俺を『好きな子がいるんだけど。』なんて言えるのか?
拒否されて、あのひとが俺を嫌いだって言ってると聞いて、
心の中の『誰かを好きになる』という部分がすっぽり抜け落ちた俺に?」
「誰かを好きになるのが、すごく怖くなったんだ。
怖いんだよ。
好きだって言われて、そのひとを好きになったとしても、
また、嫌いだって言われて去っていかれるかもと思うと。」
「またこんな思いをするくらいなら、誰も愛さなくていいし、
誰にも愛されなくていい。」
「・・それはそうだろう。
その子とあのひとは違うだろう。
でも、その子が俺を一生好きでいてくれる保証はどこにあるんだ?
またその子が離れていったら、お前どうしてくれる気だ?
責任とってくれるのか?」
「ほら、みろ。
困るだろう?
だから、そういうことに関してはもう放っておいてくれ。
そして、二度と口に出さないでくれ。」
「それより・・
まだあいつ、起きてるのか。
何をやってるんだろう?
・・・また2人だけであのひとと話してるんだろうか。」
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物語風にしてみました。