No.984152

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第025話

どうも皆さんこんにち"は"。
黄巾回に突入して、執筆がとりあえず良く進みます。この回までは恋姫新キャラはあまり登場させずに、物語を進めれそうです。

果たして天和・地和・人和は何処の陣に入ることになるのか?呂北軍が全員攫うのか。曹操軍が持っていくのか。それとも他の軍が、死亡か‼?
っと乞うご期待で。

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2019-02-16 00:30:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1813   閲覧ユーザー数:1688

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第025話「邂逅」

 「はぁ。全くあの無能将軍の直接指揮下でこの戦に参加することになるとはね」

盗伐軍本陣を、従者を連れて闊歩する少女が呟く。彼女は曹孟徳。名を操。陳留にて太守にて陳留・許昌を治める者である。膝上までくる白い靴下に、青を基調とし、(くるぶし)に紫のラインの入ったレディースブーツ。肩と胸元の開いた青い膝上までのワンピース。内面の裾には白いフリルが付いている。腹部に細い腰がより細身に見えるかの様な首から留める胸元が空いた紫の革コルセット。燕尾服のテイルの様な腰当を身に着け、長い金髪をまとめる為に、耳の上あたりでその髪を髑髏(どくろ)の髪留めで留めて、まとめた髪は螺旋状にロールして纏まりを保たせている。少し小柄で空いた胸元の女性としての主張は未だに控えめではあるが、道歩くものが振り返る程の美貌に加え、他の者を圧倒せしめる程の王者の風格を放ち、とある占い師にて「乱世の奸雄」とまで畏怖された。

彼女は憂鬱であった。今回の召集は、腐った漢朝の役員の後始末みたいなもの。その為に貴重な自らの時間が裂けられることが我慢ならなかった。しかし好機であろうとも考えていた。この瞬間を利用し、自らの名を高め、大陸に覇を唱える野望を秘めていた。それでも憂鬱は拭い去れなかった。彼女が覇を唱えるのは、自らの大志の為、民の安息の為である。名を挙げる為に参加することは、他の諸将と変わりはないであろうが、我慢出来ないのは欲深き俗物達と共に行動を共にすることであり、その筆頭である無能な大将軍の下で軍を動かすことである。

「華琳様、何処に耳が付いているかわからないから、小声でもそんなこと言っちゃダメ」

そんな彼女に付いてくる二人の女性。今曹操に注意を促した少女は徐公明。名を晃。曹操より一段と小さな少女で、縞のビキニに、青いミニスカート。両手に滑り止め様であろうか、黒いグラブを付けている。黒い網目状の足を包む靴型サンダルに布の青い肩当て。左腕全体を包むかの様に付いている布は、裾の大きさも相まって、何か暗具でも隠せるのではないかと、疑い深い者なら思うのではないだろうか。前髪は曹操と同じような髑髏の髪留めで、左で留めていた。この少女が曹操に付いてきている理由とは、眠そうな半目をして、虫も殺さなさそうな実は以前、大陸の第二の都と唄われる長安にて、騎都尉(きとい)の役職に携わっていた。その時は近隣に蔓延る賊徒を壊滅させたり、街を警備ていたりと色々行なっており、隣国である洛陽の情報もそれなりに持っているおり、腕も利くので今回護衛の一人となった。

もう一人の女性は夏侯妙才。名を淵。胸元が開き、腰元までスリットが伸びたロングスカート型の青いチャイナ服を着込み、何故か右胸の部分が空いた首と腰で留める形の黄色い閃光の様な刺繍が入った紫の革の胸当てを付けている。青い前髪で右目が隠れており、左側はオールバックでショートヘアー。体つきは曹操や徐晃と違い女性らしく豊満な乳房に細い腰。将として気品に満ちた佇まいはどの時代でも美女と唄われる者であろう。

「まぁそういうな春風(シャンフー)。華琳様のお気持ちもわからないでもない。もし仮に緊急事態が起こっても、我々でお助けすればよい」

「ありがとう秋蘭(しゅんらん)。でも春風の言う通りね。私がしっかりしなくてはね。ごめんなさい」

「.........別に......いい。シャンも偉そうなこと言った。......ごめんなさい――」

曹操は小さく微笑し謝罪を受け入れる。それぞれ呼び合っている呼称に関してはそれぞれの真名である。

「でも、楽しみなこともあるのよ」

「.........扶風の太守でしょうか?」

陳留の太守を務める曹操。その卓越した政治力にて国を治め、悪漢を取り締まり、街道を整備し、適度な税を納めさせては民に暮らしやすい環境を整えている。その優秀さゆえに、他の領主とは違う独特な発想を持ちながらも、常に時代の先を見据えた方針を打ち出す。しかし彼女は優秀な統治者であるが独裁者ではない。目下の者話を聞き、先人から学び、周辺の情報を調べ、良き政策があれば盗む。時に失策があれば誰であろうと涙を飲んでは皆平等に裁く。それが出来るゆえに、彼女は統治者として優秀であり、個ではなく”時代に”欲せられる人物なのだ。

「ふふふ、初めてよ。この私が特定の”男”に会ってみたいと思ったことは――」

そう言って曹操は顔の頬を吊り上げほくそ笑む。人として彼女個人としては完璧と言ってよかった。武芸を嗜み、文芸を好み、歌人としての才もあり、私生活や仕事においても自身に妥協は一切許さず。出来ないことは出来るようになるまでやることが考えの根幹の様な人物であった。しかしそんな彼女にも一つ一般的に違うことがあるのは、女性であるのに女性を愛でること、所謂同性愛者なのだ。無論男の全てを嫌悪しているわけではない。才ある者であれば、どんな地位にも取り立てる度量も持っている。ただ単純に男に興味が持てないだけである。だがそんな彼女が初めて話だけで興味を持った男がいた。それが扶風太守呂北。前扶風太守であり、現在は都に上がっている丁原の養子。呂の姓は丁原の亡き妻の姓である。個人的に朝廷に根強い管を持ち、宦官との癒着に携わっているという噂があると思いきや、それにより圧政を敷いているわけでもなく、流民の間では「扶風にいけば職がある。腹を満たせる」と唄われる程善政を敷いている為、統治者としての隙は無い。

自ら育て上げた優秀な家臣団に囲まれており、人の能力を見抜く才に秀でているらしい。しかしわかっていることはこれだけである。呂北個人で調べられたことは、女好きであるが愛妻家であるらしく、妻である王異を常に隣に付けていることである。その他には、王異自身も彼の参謀であることぐらいで、他に分かったことは無く、後は全て謎のままである。曹操自身、間諜の育成に手を抜いているわけではない。『情報を制する者は戦いを制す』という孫子の言葉があるように、情報入手を軽視する様な真似はしていない。それほど呂北自身の情報が無いのだ。しかし新たに分かったことがあった。長安にいたことのある徐晃が、国が都と近く、情報が入ってきやすいこともあり、呂北に関する色々新しい情報も入った。

まず呂北が宮中の者や宦官に多額の賄賂を掴ませていることは事実であり、彼らが呂北の力を頼っていると同時に、恐れてもいる。ある時、宮中の者が呂北に自らの不正をもみ消す様に頼むと、彼は心地良く了承し、直ぐに不正の後は消えた。やがて噂が噂を呼んで、皆呂北の下に行っては頼み、自らの不正をもみ消していった。無論、自らの汚点をなかったことにしてくれる存在である呂北は頼りになったであろうが、だが言い換えれば”他の誰も知らないことを、呂北は知っている”ことに他ならない。それこそ他の誰にも話せない情報を呂北は握っている。暗殺しようにも、個人で出来ることは限られている。誰か同士を集おうにも、それは決して口外できない情報(じゃくてん)を、他の者に与えることになる。そういった事が積み重なり、彼は王朝内でも影の実力者として君臨している。しかも知人も多い。宦官の中心であり、十常侍の一人でもある趙忠から霊帝の妻で皇后である何太后と数多い。また、洛陽にも多くの土地を所有している。表向きは正規の方法を用いて貴族達より買い取り、裏では借金の糧や、横領などの情報で揺さぶり安く買い取っている。

洛陽の私塾で学んでいた時は、自ら商売を起こし、繁盛させて財を成したとか。徐晃が知り得た情報はこれぐらいであった。その話を聞いて、曹操はさらに会いたい気持ちを高めていった。

官位などが金で買えるこの時代なのだ。奇麗ごとでやっていけるほどこの世の中は甘くないことは、曹操自身よくわかっていた。だからこそ、彼女自身の目で呂北を確かめたいと気が済まなかった。彼が一体、何を考え、何を信じているかを。

その様なことを考えていると、やがて盗伐軍本陣天幕に辿り着いた。中に入ると、奥には人だかりが出来ているが、その前に立ち止まっている者達のせいで前に進めない。

「ちょっと、先に行かないのだったらそこどいてくれないかしら」

曹操がそういうと、三人は申し訳なさそうにしながら道を開ける。その三人とのすれ違い様に、二人からは強い気を感じた。相当な手練れであり、特に青い目の異国の者と思われる人物からは、何処か威厳すら感じていた。その二人の品定めは後ほど行なうと心に決めて。進んだ先には各地より集結した豪族・貴族の人だかりが出来ている。どの顔も私腹に肥やし、覚悟も信念もなさそうな者達ばかり。その中心には、一際身長が飛びぬけた容姿の整った男がおり、周りから「呂北殿、呂北殿」と口々にもてはやされていた。周りの者達は下卑た顔を浮かべて、呂北と呼ばれた者に取り入ろうとひたすらおべっかを使い。呂北自身もそれに対し、微笑を浮かべながらも一人一人丁寧に対応している。巷では『赤眼(せきがん)の死神』や『紅の武者』などと持て囃されていたので、どの様な男かと期待したが、遠目から見ても特に変わったところのない、普通の優男だと思ったのが、曹操の第一印象であった。

やがて曹操達が入ってきたことに気付いた数人が、彼女達に視線を向ける。この下劣な者たちの品定めをするかの視線に、曹操は嫌悪感を露わにすること必死に堪える。目の前の呂北ですら、彼らの対応を華麗に行なっているにも関わらず、自分が出来ないのは大変腹立たしい行為だと思った。

私塾時代の仲間でもある、河北で領主を勤める友人?の口癖で、よく「華麗に○○」という台詞があるが、まさしく呂北は目の前の俗物達を”華麗にいなしていた”為、その言葉は彼に相応しいのではないだろうかと思った。そんな呂北に視線を向けると、先程微笑を浮かべていた表情とは裏腹に、明らかに曹操の顔を見た瞬間に、彼の瞼は最大限に開かれ、声に出さないまでも、その表情は素人目に見てもわかるぐらい驚愕という思いに満ちていると認識できた。

 

 一刀は曹操の顔を見た瞬間に、瞬時に周りの時間が凍結したかの様な錯覚に陥った。姿と髪の色は違えど、その顔は明らかに見知ったある人物の顔であり、そんな一刀の表情を見た夢音も驚いている。それは普段冷静沈着な上司のその表情を久しぶりに見たという驚愕であり、その様な状況を作り出した、先程横切った女性の姿にも興味が出てきてしまった。

言葉を返していた一刀の反応が突然止まり、話の流れが止まって周りが静寂に包まれると、皆この状況を作り出した曹操に視線を向ける。

「え?何?一体、私の顔に何か付いているかしら?」

曹操自身、胆が据わっている性格であるので、ある程度の注目に関しては動じないが、いきなり空気が変わり、賑やかな雰囲気が静寂となり、知らずのうちにそれを作り出した中心が自分と分かれば、彼女は少し戸惑いを隠せなかった。そんな曹操の言葉に一刀は我に返り、紳士的にお辞儀をして頭を下げた。

「......いや、大変失礼しました。貴女様の美しさに魅入られてしまい、つい思考を止めてしまったのです。私は呂北、字を戯郷と申します。もしよろしければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「.........曹孟徳よ」

突然の変わり身に曹操は内心戸惑いながらも、呂北の真意を探るために敢えて素直に答える。

「曹孟徳?もしかすると、陳留の曹操殿であらされるか?いやぁこれは驚きだ。若くして陳留・許昌の二国を治められるその手腕。聞き及んでおります」

「あら、貴方こそ丁原殿の養子となって、扶風を見事に収めてなお、宮中にも顔が効くと聞いているわよ。聞けば最近扶風国主代理ではなく、完全に国主になって、朝廷から破虜(はりょ)将軍の任を賜ったとか」

「いえいえ、私なんぞ親の脛齧りもいいところです。養父上殿が陛下に懸命にご奉仕しているおかげで、その見返りのお零れとして賜っただけにございます」

「......そういうことにしておきましょうか。今日は協力して敵を殲滅するのだもの。その時にでもそれぞれの実力もわかることでしょう」

「そうですね。未熟者ながら、本日は精一杯勤めを果たさせていただきます」

「それはこちらも同じことだわ。お互いに頑張りましょう」

曹操は一つ頬を吊り上げて笑って見せると、二人は互いにお辞儀をしてそれぞれ席に着いた。二人が席に着くと他の諸将達もそれぞれ席に付き、夢音達三人も、一刀の後方に待機する形で直立していた。

おまけ 歩闇暗編

~充実~

私が一刀に仕え始めてしばらく経った頃の話。

ここは大陸の首都、洛陽。私はあの夜以来主・一刀に侍女として仕えている。

侍女と言っても、やることは身の回りの世話をするだけだ。部屋を片付けたり、朝起こしたり、着る服を準備したりということだけだ。何故大陸の貴族などと言われる連中は、この程度の事が出来ないのか。

生まれてこのかた、私は生まれて一度も頼ることが無かったので、誰かに頼るという行為に慣れてはいなかった。そんなことを一刀に聞くと......。

「確かにそうだな。炊事、洗濯、料理。誰かに頼られることなく、自分で出来た方がいいな。だが刃照碑、お前は俺がお粥を持ってきた時、それを邪魔に思ったか?看病していた時、それを煩わしいと思ったか?少なくとも現在、俺は身の回りの世話をしてくれているお前に対し、助かると思っている。誰かの世話を焼きたいと思うのに、理由なんかは要らないんだよ。それとも俺はお前に、家臣として働くことを了承したが、義務的に給金を与えたことはないし、未だ任務もないから、何かをして欲しいと頼んだこともないが」

確かに一刀は私に対し、現在何か命を下したこともない。本当に大きな問題なども無い。日々の世話も、私自身が買って出たことだ。体の傷が完全に言える前、床の上で自分に何が出来るか考えに考え抜いた末、まずは身の回りの世話だと考えた。幸い、任務で貴族達の侍女達の動きは知っていたから、仕事を真似ることに苦は無かった。寧ろ、自らの方が効率よく出来るとも思った。

だが、一刀の身の回りの世話をして何になるかとも思った。彼は基本的に自分のことは自分で行う、今まで見てきた貴族・豪族にしては珍しい人物だ。大抵の者は下の者に身の回りの世話を任せ、動きや自らの機嫌が悪いと怒鳴り散らし。容姿の良い女性であれば、気が向けば性処理の相手をさせるといった感じだ。私は少しでも一刀の日常の助けになればと思い、自ら進んで彼の世話を行なっている。だがこれは自らの自己奉仕の為の欲求行為の解消の為に行なっているに過ぎない。

そして特に命が命じられるわけでもなく40日が過ぎた時に、一刀が私に30日分の給金をくれた。本当は他の庭師や料理人。呂北別邸の管理をしている侍女達と共に渡すはずだったのだが、私が近くに居すぎることが当たり前になっていた為に、渡しそびれたそうだ。

何故私に給金を渡す?何故なんの命も実行していないこの私に?別に私は自己欲求を満たしているだけに過ぎない。一刀の身の回りの世話をしているのはそれだけだ。そう彼に伝えると、それでも一刀は私に給金を渡す。普通の貴族に仕える侍女より遥かに多い額だ。そして一刀は私に聞いた。

「俺はお前の主として、お前の行為が助かったと思ったから、こうして給金を渡すだけだ。だったら歩闇暗、お前は以前と今、どっちの生活が充実......と言ってもわからないか。どちらがいい?誰かに命じられて任務を全うし、決められた物を貰う以前。自ら考えて動き・働き、仕事をこなして、自らが考え欲する物を手にする為に使用する現金を貰う今。どちらを貰う生活の方がいい?」

そう聞かれれば今の生活の方がいい。以前の生活はまるで生きていても死んでいるような感じがした。ただ自動絡繰りのように、作られた行為を繰り返すだけ。ただ生きる為の行為であった。しかし今は全てのことを自分で考えることが出来る。自らが考え自らが実行し、そしてそれらの行為で胸の中が心地良いとも感じていた。

.........あぁ、そうか。これが一刀の言う”充実”というものか。

私は一刀の助けになろうと動いている。この欲求を満たす行為、これが充実というものか。ということは、一刀も私の世話をしていた時、充実していたということであろうか?

 

まだまだわからないことは多くあるが、一刀の下でなら新しい体験が多く出来そうだ。

 


 
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