No.977229

英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

soranoさん

第73話

2018-12-19 20:14:12 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1447   閲覧ユーザー数:1271

6月12日――――早朝

 

翌朝リィン達はリーゼアリアとセリーヌの見送りをしていた。

 

~リーヴス駅前~

 

「…………この度は図々しくご厄介になってしまい、申し訳ありませんでした。それと、ありがとうございます。一緒に過ごせてとても楽しかったです。」

 

「ふふっ………それはこっちの台詞だよ。」

 

「わたくしにとってもお兄様とお姉様の従妹であるリーゼアリアさんとはゆっくり話す機会を作りたかったですから、良い機会でしたわ。」

 

「時間ができたらまたいつでも気軽に来なさい。」

リーゼアリアの謙遜した様子の言葉にトワは苦笑しながら、セレーネとエリゼは優し気な微笑みを浮かべて答えた。

「リーゼアリアさん、また一緒にガールズトークしようね!」

 

「有意義な時間でした。」

 

「あはは…………とっても楽しかったです。」

 

「私もあんなにもたくさんの同性の人達とおしゃべりしたのは初めてで楽しかったわ。」

 

「ふふっ、帝都は近いですからすぐにお会いできそうですけど。」

 

「何だったら次はリーゼロッテと一緒に来てもいいわよ。」

生徒達女性陣とアルフィンはそれぞれ明るい表情でリーゼアリアに声をかけ

「そうですね…………リーゼロッテ皇女殿下にもよろしくお伝えください。」

 

「ふふ、承りました。」

クルトの言葉にリーゼアリアは微笑みながら答えた。

 

 

「でもまさか、セリーヌさんまで一緒に帰っちゃうなんて…………」

 

「ずいぶん急な話ですね。」

 

「もしかしてエマさんが何か見つけたの?」

 

「ええ、エマの方でも色々と手掛かりを見つけたみたいでね。アンタたちの教官にも教えたい事は全て教えたし、短い間だけどお暇させてもらうわ。」

 

「そっか…………エマちゃんにもよろしくね。」

 

「ふふっ、最後にもう一度ブラッシングしたかったんですけど。」

 

「ア、アンタのは危険だから遠慮しとくわ…………!」

微笑みながら答えたミュゼの希望にセリーヌは表情を引き攣らせて指摘した。

 

「ま、アンタたちもせいぜい頑張りなさい。エマ達だって2年前はアンタたち以上に迷ったり足掻いたりしてたんだから。それを考えると上出来なんじゃない?」

 

「あ…………」

 

「アハハ、セリーヌちゃんったら。」

 

「――――それじゃあ、リーゼアリア。セリーヌも元気でな。」

 

「ま、そっちも頑張りなさい。」

 

「――――聞けば今週末にもまた演習に行かれるとのこと。お兄様、お姉様、皆さんもくれぐれもお気をつけください。」

 

「うん、ありがとう…………!」

 

「必ず無事に戻って来る。安心していてくれ。」

そしてリーゼアリアとセリーヌはリィン達に見送られながら駅の中へと入って行った。

「…………ハッ。ヌルい休暇も終わりか。機甲兵教練に演習地発表…………楽しみにさせてもらうぜ?」

リィン達の様子を遠くから見守っていたアッシュは不敵な笑みを浮かべた後その場から去って行った。

 

数時間後―――機甲兵教練

 

~第Ⅱ分校・グラウンド~

 

数時間後新型の機甲兵が支給された第Ⅱ分校は機甲兵教練を行っていた。

「アッシュ、無茶はするな!ミュゼも動きが遅すぎるぞ!」

 

「チッ、なんだこの機体は…………!踏ん張りが効かなさすぎだろ!」

 

「うーん、さすがに重すぎて狙撃すらしにくそうですね………」

ケストレルを操縦しているアッシュとヘクトルを操縦しているミュゼはそれぞれ操縦に苦戦していた。

 

「ほう…………二人とも悪くねえな?」

 

「ええ、こちらの機体の方が剣の型が再現しやすいみたいです。」

 

「うーん、あたりはこっちかな。取り回しが利きやすいっていうか。」

一方アッシュ達同様新たに支給された機甲兵―――シュピーゲルをクルトは慣れた様子で使いこなし、ユウナは最初からある機甲兵であるドラッケンをクルト同様使いこなしていた。

 

「…………タイプ別の適性が結構現れているみたいですね。」

 

「ま、そのあたりは人それぞれだろう。」

 

「ただ、アッシュ君とミュゼさんは間違いなく逆の機体でしょうね。」

 

「うん。そこの所は多分機体の性能と二人の戦闘スタイルも関係していると思うけど…………」

教練の様子を見守っていたアルティナとレオノーラ、マヤとゲルドはそれぞれの感想を口にしていた。

「――――よし、次はアルティナにゲルド!ヘクトルとケストレルに搭乗してくれ!」

 

「レオノーラにグスタフ!シュピーゲルとドラッケンに搭乗しろ!」

その後も教練は続き、Ⅷ組が教練を受けている間にユウナ達Ⅶ組は集まってそれぞれ感想を口にしていた。

 

 

「ふう………一通り乗ってみたけど。やっぱりあたしはドラッケンが一番素直で好きかな?」

 

「僕はシュピーゲルだな。やはり剣技が乗せやすい気がする。」

 

「うーん、私はケストレルですね。魔導ライフルとの相性もいいですし。」

 

「ハッ、ヘクトル一択だな。他の機体じゃパワーが物足りねぇ。」

 

「…………」

 

「みんな、もうそれぞれの適正の機体を見つけることができて凄いわね……」

ユウナ達がそれぞれ適正の機体を答えている中、適性の機体を見つけていないアルティナは考え込み、ゲルドは羨ましそうな表情でユウナ達を見回して呟いた。

 

「アル、ゲルド、気にする必要ないって!」

 

「どの機体も平均以上か平均並みには乗りこなせていたんだろう?」

 

「ええ、特性がわかりさえすれば後はマニュアル通りですから。……どの機体が好みかと言われるとちょっと判断に困りますが。」

 

「私の場合戦技(クラフト)をメインに使っているみんなと違って、魔術やアーツがメインだからアル以上に判断に困っていると思うわ。」

 

「ハッ、ならチビ兎はヘクトルで良いだろ。黒いデカイのを使ってんだしなぁ。」

 

「いえいえ、クラウ=ソラスさんは飛べますし、魔導ライフルとの相性の良さも考えると魔法をメインに扱うゲルドさんにとってもケストレルの方が……」

 

「そういう問題ないと思うんだけど………でも、普段の武装との相性は何気に重要かもしれないわね。」

それぞれアルティナとゲルドに適性の機甲兵を進めるアッシュとミュゼの指摘に呆れたユウナは気を取り直して答えた。

 

「ああ、間違いないだろう。ゲルドもそうだが、アルティナもクラウ=ソラス同様、いずれしっくり来る機体も見えてくるんじゃないか?」

 

「…………そうですね。もう少し見極めてみます。」

 

「私ももう少し色々と試してみるわ。」

その後Ⅶ組、Ⅷ組はそれぞれ一通りの機甲兵の操縦をし終えるとリィン達教官陣は集合させた。

 

「よし―――タイプ別の慣らしはここまでだ。ここからはお待ちかねのチームに分かれた”集団模擬戦”だ。」

 

「制限時間は5分。短いかもしれないけど頑張ってね♪」

 

「ええっ!?」

 

「マ、マジかよ……」

ランドロスとレンの話に生徒達がそれぞれ驚いている中ウェインは驚きの声を上げ、シドニーは表情を引き攣らせていた。

「機体に限りがあるから適正に応じた組み合わせとする。シュピーゲルとケストレルは1機ずつしかないから使いたい者は申し出てくれ。」

こうしてタイプ別の機甲兵に乗った生徒達は、幾つかのチームに分かれて簡単な模擬戦を繰り返し―――個人差はあったが、あっという間に新たな機体にも慣れて行くのだった。

 

 

「ハハ、結構盛り上がってるな。よし……そろそろ仕上げといくか?」

 

「ああ―――」

生徒達がそれぞれ機体について話し合っている所を見守っていたランディに視線を向けられたリィンは頷いた後生徒達に声をかけた。

 

「よし―――そこまで!最後に仕上げとして俺とランディ、レン教官が相手をする!」

 

「えっ……!?」

 

「…………そう来たか。」

 

「俺とリィン、パテル=マテルの3機相手に5機がかりで挑んでもらおう。全力で行くつもりだからまあ、負けるつもりはねえがな。」

 

「うふふ、勿論レンも”実戦”並みの操作でお相手してあげるわ♪」

 

「オレ様は審判だ。せいぜい、自分達の糧にするように頑張りな、ガキ共!」

 

「…………っ……!」

 

「クク、面白ぇ……!」

 

「ハハハ……!腕が鳴るというものだ!」

 

「――――折角ですから私も混ぜて頂きましょう。」

教官陣と機甲兵模擬戦をすることに生徒達が盛り上がっている所に聞き覚えのある女性の声が聞こえ、声が聞こえてきた方向に視線を向けるとリアンヌ分校長がグラウンドを歩いてリィン達に近づいてきた。

 

 

「へ…………」

 

「ぶ、分校長……?混ざると仰っても、分校長まで加勢するとなると、機甲兵の数が足りないのですが……」

リアンヌ分校長の登場にユウナが呆け、リィンは戸惑いの表情で指摘した。

「――――いえ、私は”自前の機体”がありますので、機甲兵は必要ありません。―――――来なさい、アルグレオン。」

 

「応!」

リィンの問いかけに答えたリアンヌ分校長が静かな表情で呟くとどこからともなく機械の声が聞こえ、声を聞いたリィン達が驚いて周囲を見回すとリアンヌ分校長の背後に銀色の巨大人形が突如現れた!

「な―――――」

 

「銀色の機甲兵……?ううん、多分さっきの声はあの機体だと思うからあの機体はもしかしてヴァリマールと同じ……」

 

「まさか……その機体は”騎神”なのですか!?」

銀色の巨大人形の登場にその場にいる多くの者達が驚いている中リィンは絶句し、ゲルドは首を傾げ、クルトは信じられない表情でリアンヌ分校長に訊ねた。

 

「はい。―――――”銀の騎神アルグレオン”。それがシュバルツァー教官と同じ起動者(ライザー)たる私が駆る機体の名前です。」

 

「……………………」

 

「おいおいおい……!ただでさせ化物じみた強さなのに、そんな”切り札”まであったのかよ!?」

 

「クスクス、これで”騎神”は5体存在していることが確認されたけど、後何体あるのかしらね♪」

 

「オレ様個人としてはオレ様のトレードマークである”紅”の騎神を操縦してぇもんだな。」

リアンヌ分校長の説明にリィンは驚きのあまり口をパクパクさせ、ランディは疲れた表情で声を上げ、レンとランドロスは興味ありげな表情で答えた。

 

「いや、”紅の騎神”――――テスタロッサはアルノール家の方々しか動かせませんし、そもそもランドロス教官は起動者(ライザー)ではありませんから……って、それよりもまさか分校長が起動者(ライザー)の一人だなんて……何故今まで教えてくれなかったのですか?」

ランドロスの言葉に苦笑しながら指摘したリィンは疲れた表情を浮かべてリアンヌ分校長に訊ねた。

「特に聞かれる事もありませんでしたので。」

 

「いやいやいや!?普通に考えてアンタまで騎神を持っているなんて、誰も想像できないっつーの!」

 

「ったく、どこまで化物じみてやがるんだよ、ウチの分校長は。」

リアンヌ分校長の答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ランディは疲れた表情で指摘し、アッシュは呆れた表情で呟いた。

 

「新型の機甲兵も支給された事に加えて今までの経験で機甲兵戦の戦術も広まった事でしょう。本日の仕上げは私が引き受ける事にします。異存はありませんか?オルランド教官、シュバルツァー教官、マーシルン教官、ランドロス教官?」

 

「い、いやいやいやいや!」

 

「……流石に分校長相手で、しかも騎神相手では勝負にはならないでしょう。」

 

「まあ、さすがにオレ様も大人げないと思うぜ?」

 

「勝負というか、ただの”弱いものいじめ”になるんじゃないかしら♪」

リアンヌ分校長の問いかけにランディは疲れた表情で否定し、リィンは困った表情で、ランドロスは苦笑しながらそれぞれ指摘し、レンは小悪魔な笑みを浮かべてユウナ達がどうなるかを推測した。

 

 

「手加減はします。それに武の極みの一端を垣間見るのも修行の内です。――――最も、怖気づくのでしたら話は無かったことにしますが?」

 

「言ってくれるじゃない……!」

 

「クハハ、上等じゃねえか!」

 

「うーん、全員でかかっても勝ち目は無さそうですが……」

 

「それでも武人ならば手合わせを願いたい相手だ……!」

銀色の機体――――”銀の騎神”アルグレオンの中に入ったリアンヌ分校長の挑発に乗ったⅦ組の面々はそれぞれ機甲兵に乗り始め

「皆さん……」

 

「頑張って、みんな……!」

「………はあ。これは止められねぇか。」

 

「うふふ、でも新たな騎神の実力を見るいい機会じゃない♪」

 

「クク………たっぷりと見せてもらおうぜぇ?騎神に乗った断罪の聖騎士サマの実力をよぉ?」

それぞれ闘志を燃やし始めたユウナ達の様子をアルティナとゲルドは静かに見守り、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、レンとランドロスは興味ありげな表情を浮かべた。」

「――――わかりました!ハンデも考えて1対4とします!まずはユウナ、クルト、ミュゼ、アッシュ、それぞれの機体に搭乗してくれ!」

そしてリィンの指示通り、ユウナ達はそれぞれの機甲兵に乗り込んでアルグレオンと対峙した。

 

「――――制限時間は無し!分校長機を小破させれば合格とする!いいッスよね、分校長!?」

 

「ええ、それで構いません。―――新生Ⅶ組。全身全霊を持って掛かってきなさい。」

 

「おおっ!」

その後ユウナ達はリアンヌ分校長操る騎神という今までにない強敵相手にかつてない程の苦戦をしつつ、何とか小破まではできたが、最後はSクラフトを喰らって全員一度に戦闘不能にさせられた。

 

 

「っ……そこまで!」

 

「………はあはあ………分校長が無茶苦茶強いのはわかってはいたけど………」

 

「これが………”至高の武”と称えられた”槍の聖女”の力の一端………」

 

「………槍の聖女にしてメンフィルの守護神、ですか。」

 

「クハハ………マジモンの化物かよ……!」

ランディが戦闘終了の合図を出した後ユウナ達はリアンヌ分校長の強さを改めて身をもって思い知った事に驚いたり苦笑したりしていた。

 

「フン…………」

 

「ええ~っ…………!?なんであんな風に動けるの!?」

 

「リィン教官以上に普通に考えたら無理な筈の動きをしていますよね…………」

 

「というかそれ以前にリアンヌ分校長が騎神の起動者(ライザー)の一人である事も驚きの事実なのですが…………」

一方騒ぎに気づいて外に出て模擬戦を見守っていたシュミット博士は興味ありげな表情でアルグレオンに視線を向け、信じられない表情で声を上げたミントの言葉にティータは苦笑しながら答え、ティータ達の手伝いをしていたセレーネは表情を引き攣らせながらアルグレオンを見つめていた。

 

「フフ、良い肩慣らしになりました。このまま続けて稽古をつけても構いませんが―――」

 

「ひっ…………」

 

「………………っ…………」

リアンヌ分校長の言葉を聞いて次は自分達の番であることを理解したシドニーは思わず悲鳴を上げ、ゼシカは息を呑んで真剣な表情でアルグレオンを見つめていた。

 

「一度、全力を出し切る形で闘気を鎮めておきましょう。――――オルランド教官、シュバルツァー教官、マーシルン教官。相手をしてください。」

 

「なっ…………!?」

 

「はあっ!?」

 

「あら。」

リアンヌ分校長に名指しされた3人はそれぞれ驚きの表情を浮かべた。

「貴方達3人ならば不足はありません。最もシュバルツァー教官は己の機体を使うべきでしょうが。―――この立会いで少しでも”何か”を得たいのであれば。」

 

「己の機体…………まさか。」

 

「ヴァリマールの事でしょうね。」

 

「…………了解しました。聞いていたか?来てくれ、ヴァリマール!」

 

「応…………!」

そしてリィンに呼ばれたヴァリマールは転移で現れた後リィンを操縦席の中へと入れた。

 

「ったく、まさかこんな事になるなんてな…………ちなみにリィン、お前の予想だと勝率はどのくらいだ?」

 

「多分、騎神を使って3機がかりでも勝率は五分と五分…………いや―――二割以下かもしれない。」

 

「そこまでの化物かよ!?――――って、そうだよな、なんせ相手はあの”鋼の聖女”で、しかも2年前と違って”騎神”なんていう反則技付きだものな…………」

 

「うふふ、カーリアンお姉さんと”神格者”のロカお姉さんの助力があってようやくランディお兄さん達が互角に戦えた正真正銘の”化物”だものねぇ。――――ま、覚悟を決めた方がよさそうね。」

リィンとの通信でリィンが予想した勝率を知ったランディは驚いた後疲れた表情で溜息を吐き、レンは苦笑していた。その後ヴァリマール達はアルグレオンと対峙した。

 

「フフ、それでは始めるとしましょう。”英雄王と聖皇妃の守護神”リアンヌ・ルーハンス・サンドロッドが相手をします。いざ尋常に勝負―――”灰色の騎士”、”赤い死神”、”殲滅天使”よ!」

 

「「「おおっ!!」」」

そしてヴァリマール達はアルグレオンとの戦闘を開始した!

 

 

「まずは様子見よ、パテル=マテル!ファイアー!!」

 

「――――」

レンの操縦によってパテル=マテルは異空間から巨大な銃を2丁取り出してアルグレオンへと掃射し

「させません!」

掃射された銃撃をアルグレオンは防御態勢に入って防いだ。

「そこだっ!」

 

「甘い――――ハアッ!」

 

「な―――グッ!?」

アルグレオンが防御態勢に入っている間にランディが操縦するヘクトルは跳躍して力を込めた渾身の一撃を放つクラフト―――パワースマッシュで襲い掛かったが、アルグレオンは機体を僅かに逸らして回避した後反撃を叩き込んだ。

「そこだっ!」

 

「く…………っ!?」

 

「今だ――――ハアッ!」

ヘクトルへの攻撃の間にアルグレオンの側面に回ったヴァリマールはクラフト―――孤月一閃を叩き込んで態勢を崩した後追撃を叩き込み

「パテル=マテル、バスターキャノン発射!」

 

「――――」

 

「ハァァァァァァ…………喰らいやがれっ!」

 

「くっ!?」

パテル=マテルとヘクトルも続くように遠距離から集束導力エネルギー砲とクラフトによる炎の竜をアルグレオンに叩き込んで更なるダメージを与えた。

 

 

「行きますよ―――――貫け!」

 

「――――!?」

 

「勝機――――ハアッ!」

アルグレオンは反撃に強烈な突きで敵を貫くクラフト――――シュトルムランツァーでパテル=マテルにダメージを与えると共に態勢を崩して追撃を叩き込み

 

「そこだ!」

 

「フン!」

 

「喰らうがいい――――滅!!」

 

「ぐっ!?」

 

「うおっ!?」

左右から同時に襲い掛かったヴァリマールとヘクトルには槍による薙ぎ払い攻撃――――アルティウムセイバーを叩き込んで逆にダメージを与えた。

 

 

「パテル=マテル、リバイバルレインで一端立て直しなさい!」

 

「――――!」

 

「ありがとう!」

 

「サンクス!」

レンの指示によってパテル=マテルは回復エネルギーの雨を降り注がせて自分を含めた味方を回復させるクラフトで自分とヴァリマール達のダメージを回復し

「ハァァァァァァ…………!」

一方それを見たアルグレオンは一度にヴァリマール達にダメージを与える為に槍を正面にたてて構えて霊力を溜め始めた。

 

「させるかよ!」

 

「ああっ!?」

しかしそこにヘクトルがクラフト――――パワースマッシュで襲い掛かってアルグレオンの溜め技を解除し

「唸れ――――うおおおぉぉっ!螺旋撃!」

 

「ロケットパンチよ、パテル=マテル♪」

 

「――――!」

 

「く…………っ!?」

 

「そこだ―――ハアッ!」

 

「今よ、パテル=マテル!」

 

「――――!」

更に右から襲い掛かったヴァリマールが炎の連続斬撃を、パテル=マテルは左から左右の腕による同時ロケットパンチを叩き込んでアルグレオンの態勢を崩してそれぞれ追撃した。

 

 

「フフ、さすがですね。ならばこれはどうですか?さあ―――――耐えてみなさい!ハァァァァァァ…………ッ!」

アルグレオンは大技を放つ為に全身に膨大な霊力を纏った後槍を掲げて巨大な竜巻を発生させてヴァリマール達へと解き放ち

「来るぞ!全機防御態勢!」

 

「アイサー!」

 

「パテル=マテル、パトリオットフィールドの集束に使うエネルギーをドーム型に散開させてヴァリマールとヘクトルも守りつつ防御態勢に入りなさい!」

 

「――――!」

アルグレオンの大技を見たヴァリマールとヘクトルはそれぞれ防御態勢に入り、パテル=マテルは霊子エネルギーによる障壁をドーム型に展開しつつ自身も防御態勢に入った。

「我は断罪―――全てを断ち切る者。これで――――終わりです!」

霊力による竜巻を解き放ってヴァリマール達にぶつけた後アルグレオンは突撃してヴァリマール達に十字架を刻み込んだ!

 

「聖技――――グランドクロス!!」

そして十字架を刻み込まれたヴァリマール達はそれぞれ光の十字架が炸裂し、大ダメージを受けた!

 

 

「ぐっ…………何とか耐えられたか……!ランディ、レン教官!」

 

「こっちも何とかいけるぜ……!」

 

「まあ、こっちも大丈夫だけど正直言って早めに勝負を決めないとヴァリマールはともかくパテル=マテルもそうだけどヘクトルも戦闘の続行は不可能だと思うわよ?」

アルグレオンのSクラフトが終わったリィンはSクラフトによる大ダメージにうめいた後ランディとレンにそれぞれ無事を確認し、リィンの確認に二人はそれぞれ答えた。

「わかっています!パテル=マテルは牽制射撃をお願いします!」

 

「了解!パテル=マテル!」

 

「――――!」

 

「甘い!」

リィンの指示に頷いたレンはパテル=マテルに指示をし、指示をされたパテル=マテルは再び異空間から巨大な銃を2丁取り出してアルグレオンへと掃射し、襲い掛かる銃撃を機体を側面に逸らして回避したアルグレオンはパテル=マテルに反撃する為にパテル=マテル目がけて突撃したが

「ランディ、遠距離攻撃でパテル=マテルの援護を!」

 

「任せとけ!ハァァァァァァ…………喰らいやがれっ!」

 

「!!」

ヘクトルが放った炎の竜が襲い掛かってきた為、咄嗟に防御態勢に入ってヘクトルのクラフト――――サラマンダーを防いだ。

 

「燃え盛れ――――滅!!」

 

「ぐっ!?」

そこにヴァリマールが側面から竜を形どった炎を宿した太刀をアルグレオンに叩き付け、ヴァリマールの攻撃によってアルグレオンは怯むと同時に態勢を崩した。

「今だ!――――行くぞ、ランディ!!」

 

「おっしゃあ!任せとけ!」

そしてヴァリマールとヘクトルはアルグレオンを挟み撃ちにした後ヘクトルはスタンハルバードを振るって竜の姿をした炎の衝撃波を、ヴァリマールは太刀を鞘に収めた後抜刀による鳳凰の姿をした炎の闘気エネルギーを放った後ヘクトルはスタンハルバードに炎の竜を纏わせ、ヴァリマールは抜刀した太刀にそのまま”鳳凰”のオーラを纏って二人同時に斜め十字(クロス)に突撃して自分達が放った斬撃波や闘気エネルギーがアルグレオンに命中した瞬間間髪入れずにアルグレオンの背後を駆け抜けた。

 

「「龍凰――――絶炎衝!!」」

 

「ああっ!?やりますね…………ですが、後一押し足りませんでしたね…………!」

ヴァリマールとヘクトルによるコンビクラフトで大ダメージを受けたアルグレオンだったが、戦闘不能には陥らずヴァリマール達への反撃をしようとしたが

「うふふ、だったらその”一押し”をレンがしてあげるわ♪パテル=マテル、残存エネルギーを全て砲撃エネルギーに回しなさい!」

 

「――――!」

 

「!しま――――」

両肩に装着している巨大な砲台にエネルギーを集束しているパテル=マテルに気づくと防御態勢に入ろうとしたが

 

「全力全開!ダブルオメガバスターキャノン!!」

 

「――――!」

 

「あああぁぁぁぁっ!?フフ……見事です…………」

パテル=マテルが両肩から放った膨大なエネルギー砲がアルグレオンが完全に防御態勢に入る前に命中した為、パテル=マテルによるSクラフトで追撃されたアルグレオンは戦闘不能になり、地面に膝をついた!

 

「――――そこまで!勝者、ヴァリマール以下3機!」

 

「あ…………」

 

「教官達が、勝った…………?」

 

「ああ…………なんて勝負だ。」

ランドロスが模擬戦の終了の号令をかけるとユウナとアルティナは呆け、クルトは驚きの表情で呟いた。すると周囲の生徒達はそれぞれ歓声や驚きの声を上げた。

 

「な、何を騒いでいるかと思えば分校長が出ていたとは…………しかも今まで出さなかった分校長専用の機体をここで出すとは…………それもよりにもよって”騎神”とは…………それならそれで、せめて予め報告しておいてもらいたかったのだが…………」

 

「で、でも凄い戦いでしたね…………!」

一方騒ぎに気づいてⅨ組のようにグラウンドに出てきたミハイル少佐は疲れた表情で溜息を吐き、トワは苦笑しながら話を変えるためにヴァリマール達の戦闘についての感想を口にし

「フン…………見事だ。」

シュミット博士は満足げな笑みを浮かべてヴァリマール達に称賛の言葉を贈った。

 

 

「ぜえぜえ…………ただでさせ生身でも化物なのに、騎神を使ったらよりとんでもない化物じゃねぇか…………騎神ありの分校長ならマジで”英雄王”やセリカともタメを張れるんじゃねぇか?」

 

「うふふ、ファーミシルスお姉さんやカーリアンお姉さんには勝てるかもしれないけど、パパやセリカお兄さんは”別次元の強さ”だから騎神を使った分校長でも正直勝率は非常に低いと思うわよ?」

 

「ハハ、それでも陛下達相手に”勝率が存在している時点”で凄いと思いますけど。(3対1での辛勝…………さすがは伝説の最高の武人にしてメンフィルの守護神か。)」

リィンに通信をしてきたランディの感想にランディに続くように通信してきたレンが自身の推測を答え、レンの推測にリィンは苦笑した後リアンヌ分校長の強さに感心していた。するとその時リアンヌ分校長が通信に入ってきた。

「フフ、見事です。その若さにしてその武、3人とも先が愉しみです。」

 

「はは…………そりゃどーも。」

 

「…………こちらこそいい勉強になりました。」

 

「うふふ、レンとパテル=マテルにとっても貴重な経験になったわ♪」

リアンヌ分校長の称賛にリィン達はそれぞれ苦笑しながら受け取った。そしてアルグレオンは立ち上がって生徒達に視線を向けた。

 

「――――良き具合に闘気も発散できました。それではⅧ組の面々にも改めて稽古を付けるとしましょうか?」

―――こうしてリアンヌはⅧ組メンバーにも(優しく)稽古を付け…………全員、疲労困憊になったもののかつてない充実した教練となったのだった。

 

そして、昼休みが終わっても生徒達の興奮が冷めやらぬ中―――本校舎の戦略会議室において今週末の演習予定地が発表された。

 

 

~第Ⅱ分校・軍略会議室~

 

「フォートガード州かぁ…………海産物とかで有名だよね。」

 

「西部沿海州の盟主、新海都フォートガードもあるのか。」

 

「おおっ、カジノで有名なラクウェルもあるじゃん!」

 

「…………夏至祭の時期…………領邦会議もあるんですよね…………」

 

「例の”結社”の動きもさすがに気になるね……」

 

「そ、それに……フォートガードはクロスベル帝国領と化して、”総督”も兼ねているユーディット皇妃陛下の本拠地にしてラマールの盟主でもあるオルディスと隣り合っているけどクロスベル関連で何も問題が起こらないといいんだけど……」

 

「まあ、ユーディット皇妃陛下は父君であった前カイエン公と違い、理知的な方との事ですから例え諜報活動を行っていたエレボニア帝国軍関係者の件があったとしても、その件を根に持つような方ではないから大丈夫だと思いますが……」

 

「演習範囲や日程など、これまで以上に厳しくなることも予想される。各自、準備を怠らず、英気を養いつつ週末に備えて欲しい!」

 

「イエス・サー!」

次なる演習地に生徒達が期待や不安を感じている中ミハイル少佐は生徒達に忠告と激励の言葉を贈った。

 

 

「フォートガード州か……エレボニアの西側だったよね?」

 

「ええ、海都オルディスを含めたラマール州の凡そ7割がクロスベル領と化した事で貴族派最大の本拠地となった州でもあります。確かその関係でミュゼさんの実家もフォートガードに引っ越したとか。」

教官陣がそれぞれ話し合ったり、生徒達を集めて今後の方針を伝えている中Ⅶ組同士集まっていたユウナの疑問にアルティナが答え

「フフ、オルディスに負けず劣らず良いところですよ。風光明媚で海も綺麗ですし。」

 

「海かぁ…………私にとってはこちらの世界の”海”を見るのは今度の特別演習が初めてになるから楽しみだわ。」

ミュゼの話を聞いたゲルドはまだ見ぬ演習地を楽しみにしていた。

「たしか君もそちらの出身だったよな?」

 

「クク、海なんざ見えねぇ峡谷の歓楽都市だけどな。――――それよりもいい事を思いついたぜ。その白髪魔女をラクウェルのカジノに連れていけば、俺達が億万長者になれる大チャンスじゃねぇか?」

クルトの質問に答えたアッシュは口元に笑みを浮かべてゲルドに視線を向け

「えっと、もしかして私の”予知能力”で賭け事に勝とうと考えているの……?」

 

「……まあ、スロットはともかくブラックジャックやポーカーもそうですが、ルーレットもゲルドさんの予知能力によるサポートがあれば勝率は非常に高くなるでしょうね。」

 

「フフ、ちなみにもしチャレンジをするのでしたら配当率が高いルーレットの一点賭けが効率良くコインを溜められる上”怪しまれないように意図的に負ける事”も簡単ですからお勧めですわ♪」

 

「いや、何であんたはカジノのゲームの配当率やカジノの人達に怪しまれないようにする方法を知っているのよ……まあ、それはともかくゲルドの”予知能力”を賭け事のイカサマの為に悪用するとか、あたし達もそうだけど教官達が許すわけないでしょう?」

 

「そもそもそれ以前に教官達が僕達生徒がカジノに入る事自体を許可しないと思うがな。」

アッシュの言葉を聞いてある事を予想できていたゲルドは困った表情をし、アルティナは静かな表情で推測を口にし、ミュゼは微笑みながら答え、ユウナとクルトは呆れた表情でアッシュに指摘した。

「チッ、そういやあの二人がいたか。。(………今更未練はねえが……”あの事”がわかった今、見えてくる事も新たにあるかもしれねぇな……)」

クルトの指摘を聞いて舌打ちをしてミハイル少佐達と話し合っているリィンとセレーネに視線を向けたアッシュは気を取り直して不敵な笑みを浮かべていた。

 

そして数日後”特別カリキュラム”の演習地に出発する日の夜が訪れた―――――

 

 

 

 

 

今回のアルグレオン戦のBGMは閃Ⅳの”七の相克 -EXCELLION KRIEG-”だと思ってください♪


 
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