No.972420

英雄伝説~灰と菫の軌跡~ 試作版その1

soranoさん

閃4もクリアしていない上、他の小説の続きも書かずに何書いているんだろうと自分でも思います………ただ、書いてしまった以上PCに何かあった時用として今回このサイトに挙げました。灰の軌跡の閃Ⅲ篇のネタバレも含まれていますので、ネタバレが嫌な人達は回避推奨します。

2018-11-02 00:27:31 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4671   閲覧ユーザー数:4061

~エリンの里・ロゼのアトリエ~

 

「へ、並行世界!?」

ユウナ達から、”黒キ星杯”でヴァリマールによる”精霊の道”によってその場から消えて消息不明になった後の話を聞かされたエリオットは信じられない表情で声を上げた。

「フム………話に聞くところ、リィンが咄嗟に放った”精霊の道”が並行世界へと移動した一番の要因とは思うが………」

「幾ら”精霊の道”といえど、世界の”壁”を超える力はないのですが………」

「―――じゃが実際にその者達は並行世界へと移動し、並行世界の自分たちやその仲間達と共にこの世界へと帰還した。それが何よりの証拠じゃ。」

「しかもよく見たらあたし達の世界には存在しない第Ⅱの生徒や教官もいるわね………」

「つーか、さっきから気になっていたが何で結社の”鉄機隊”の”神速”まで第Ⅱの教官をやっているんだ?」

ラウラが考え込んでいる中エマは困惑の表情で答え、ローゼリアは静かな表情で呟いて並行世界の新Ⅶ組やその仲間達に視線を向け、サラは真剣な表情でセレーネやゲルドを見つめ、ランディは疲れた表情でデュバリィに問いかけた。

「う、うるさいですわね!これには色々と深い事情があるのですわ!」

「ア、アハハ………お初にお目にかかります。メンフィル帝国”アルフヘイム子爵家”が当主にしてリィン・シュバルツァーの婚約者の一人、セレーネ・L・アルフヘイムと申します。現在は事情があってお兄様―――――リィン・シュバルツァーと共にトールズ第Ⅱ分校の教官―――――Ⅶ組”特務科”の副担任を務めさせて頂いておりますわ。ちなみにデュバリィさんもわたくしと同じ”特務科”の副担任ですわ。」

「――――メンフィル帝国”パリエ伯爵家”の養女、ゲルド・フレデリック・リヒター・パリエ。トールズ第Ⅱ分校の生徒として所属しているわ。ちなみにクラスは”特務科Ⅶ組”よ。」

「なっ!?それじゃあ君達は並行世界の”新Ⅶ組”に所属している人達なのか!?」

「それに”神速”まで”新Ⅶ組”に所属しているとは………」

「し、しかもセレーネさんって人はリィンの婚約者って………!」

「その件も気になるが”メンフィル帝国”だと………?そのような国に聞き覚えはないが………」

「彼らは”並行世界”から来ているのだから、恐らく俺達の世界には存在しなく、並行世界に存在している国だと思うのだが………」

「つーか、”婚約者の一人”って事は並行世界のリィンにはこっちのリィン同様複数の恋人か婚約者がいるって事だよな?ったく、こんなセシルさんを思い浮かばせてくれるようなスタイル抜群の清楚美人を捕まえておきながら、他にも女がいるとかロイドと同じリア充野郎な事に関してはこっちのリィンと同じじゃねぇか………」

デュバリィが反論した後に答えたセレーネとゲルドの自己紹介を聞いて仲間達と共に驚いたマキアスとラウラ、アリサは信じられない表情でセレーネ達を見つめ、考え込んでユーシスの疑問にガイウスは静かな表情で推測を口にし、ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「アハハ………あたし達のリィン教官には婚約者が複数いる所か、既に奥さんもいますよ、ランディ先輩。」

「………ちなみに婚約者の数は12人です。」

「ハアッ!?」

「へ、並行世界のリィンさんは婚約者が12人もいる上、既に結婚までしているのですか………」

「ひ、非常識な………」

「クックックッ………まさに”英雄色を好む”、じゃな。」

苦笑しながら答えたサフィーとジト目のルディの話を聞いて再び仲間達と共に驚いたサラは思わず声を上げ、エマは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で呟き、ローゼリアは笑いを噛み殺していた。

「フフ、ちなみにその”12人の婚約者”の中には私も含まれていますし、当然アリサさんもその一人ですから、アリサさんはご安心ください♪」

「いや、今の話を聞いて何で私が安心するのよ………というか教え子にまで手を出すとか、幾ら何でも見境がなさすぎよ、そっちの世界のリィンは………」

「………教官を弁護する訳ではありませんが、ミュゼ―――じゃなくてミューズに関しては政略的な意味合いを含めて色々と複雑な事情も含まれていますので。」

ミューズの話を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中ジト目で指摘したアリサの言葉を聞いたザムザは困った表情で答えた。

 

「”政略的な意味合い”って………」

「………それはそなたの”立場”が関係しているのか?」

「フフ、そんな所ですわ。あ、勿論教官を慕うレディの一人として、エリゼさんやアリサさん達のように教官の事を慕っていますわよ♪」

「それよりも今の話を聞いて気になっていたけどそっちのリィンの奥さんって誰?もしかしてエリゼ?」

ザムザの話を聞いたエリオットが目を丸くしている中ある程度察しがついていたラウラの問いかけにミューズは静かな笑みを浮かべて答えた後笑顔を浮かべてウインクをしてその場にいる全員を脱力させ、ある事が気になっていたフィーはエリゼに視線を向けた。

「いえ、私は”まだ”婚約者の一人です。既に兄様の伴侶となった女性は私の右隣にいる”彼女”です。」

「エリゼの右隣の女性という事はまさか………」

そしてエリゼの話を聞いたガイウスがエリゼの右隣にいる女性――――アルフィンに視線を向けたその時

「フフ、改めまして自己紹介を致しますわ。わたくしの名は”アルフィン・シュバルツァー”。様々な事情によって1年半前の内戦終結後旦那様――――リィン・シュバルツァーさんの”7番目の妻”の一人として嫁いだこちらの世界の皆さんもご存じの”元エレボニア皇女”だったアルフィン・ライゼ・アルノールですわ♪」

「えええええええええええええええっ!?」

「ア、アアアアア、アルフィン皇女殿下がリィンの………!?」

「しかも1年半前の内戦終結後にリィンの正妻ではなく、”7番目の妻”として嫁いだと仰いましたが、一体何があってそのような事に………」

「そもそも何故そなた程の人物が政略的な意味合いでリィン――――シュバルツァー家と婚約を結んだのだ?立場や身分を考えると皇女殿下もそうだが、そなたとリィンが結ばれるには相当な茨の道だと思うのだが………」

アルフィンは立ち上がって上品な仕草で自己紹介をした後ウインクをし、アルフィンの自己紹介を聞いたアリサ達がそれぞれ驚きの表情を浮かべている中エリオットとマキアスは思わず声を上げ、ユーシスとラウラは困惑の表情を浮かべた。

「並行世界のリィンの伴侶の件が非常に気になるそなた達の気持ちも理解しているが、そう言った雑談は”本題”が終わってから聞くがよい。――――それで?並行世界に迷い込んだそなた達はどのような方法でこちらに帰還し、しかも並行世界の新Ⅶ組やその協力者達まで連れてきたのじゃ?」

するとその時ローゼリアが手を叩いて話を中断させて、セレーネ達に説明を促した。そしてセレーネ達は自分たちにとっての並行世界の新Ⅶ組のお陰で前もって”巨イナル黄昏”を知る事ができた事によってその対抗策を取り、”黒キ星杯”では並行世界の新Ⅶ組と共闘して巨イナル黄昏が起こる事を未然に防いだ事、並行世界の新Ⅶ組を元の世界に帰す方法が時を操り、更には時空間を駆けて、過去、未来へと移動ができる”刻”を司る”真竜”ミントの力によって”想念”の力で様々な”奇蹟”が再現できた”影の国”に移動した後、過去のミント達が”影の国”の決戦を終えてそれぞれの世界に帰還する際に使った”天上門”を使って、並行世界の新Ⅶ組を元の世界へと帰還させると同時に自分達の世界の巨イナル黄昏を未然に防ぐことができた”恩を返すため”と、そして並行世界の新Ⅶ組の頼みによって並行世界の新Ⅶ組と共に自分たちにとっての並行世界であるゼムリア大陸にやってきたことを説明した。

 

「なるほどな………しっかし、話を聞いて感じたが、幾ら”巨イナル黄昏”とやらを前もって知る事ができたとはいえ、俺達と違ってとんでもないメンバーが”星杯”に乗り込んだんだな?」

「新旧Ⅶ組に加えて”特務支援課”にエステル達どころか、そこのミント?だったかしら。彼女が過去から連れてきた”空の女神”まで乗り込むとか、とんでもないメンツじゃない………」

「というかそもそも”空の女神”の件もそうだが、時空を駆ける事ができる上”時間”を操る事まできるミントさんの存在も非常識過ぎだろ………」

「ア、アハハ………ミントはエイドスさんにはあくまで助言してもらうつもりで過去に飛んで、ミント達の時代にまで連れてくるつもりはなかったんだけど、エイドスさんが自分も連れて行ってミント達の協力をしたいって強く頼むから連れてきて手伝ってもらったんだ。」

事情を聞き終えたランディは苦笑し、サラとマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、マキアスの指摘を聞いたミントは苦笑しながら説明した。

「め、女神様が自分から強く頼んだって………どうして女神様は”巨イナル黄昏”を阻止する為に自分から協力を申し出てくれたんだろう………?」

「お前達も知っているように”巨イナル黄昏”のトリガーとなる”呪い”をその身に封じ込めたのは”空の女神”の”眷属”の1柱だ。”空の女神”はかつての”主”としてその”眷属”に安らかな眠りをつかせる為に協力を申し出たとの事だ。」

(まあ、夫と新婚旅行をする目的の方が主な目的だったと思うけどね。)

(エ、エヴリーヌお姉様………お願いしますからその件はこちらの世界の皆さんに話さないでくださいね?)

(もし知ったら間違いなく”空の女神”に対するイメージが粉々に破壊されますものね………)

エリオットの疑問にレーヴェが答えると、ある事実を知っていたエヴリーヌは小声で呟き、エヴリーヌの小声が聞こえてきたプリネとツーヤは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

 

「あの”黒き聖獣”に安らかな眠りをつかせるために”空の女神”が自ら………」

「……………………ちなみにそちらの世界では”巨イナル黄昏”を未然に防いだと言ったが、一体どのような方法で”巨イナル黄昏”が起こる事を防いだのじゃ?」

一方事情を知ったガイウスは静かな表情で呟き、ローゼリアは複雑そうな表情で黙り込んでいたがすぐに気を取り直してセレーネ達に訊ねた。

「ハハ、”方法”と言うかぶっちゃけ、単純明快なやり方で防いだようなもんやけどな。」

「”単純明快なやり方”で”巨イナル黄昏”を未然に防いだと仰いましたが、どのような手段を取ったのでしょうか?」

苦笑しながら答えたケビンの説明が気になったエマは真剣な表情で訊ね

「”巨イナル黄昏”よりも強力な”力”を持つそちらの男性―――――セリカさんが”巨イナル黄昏をその身に封じ込めた黒き聖獣ごと浄化した”――――ただ、それだけです。」

「”巨イナル黄昏”よりも強力な”力”を持つ存在じゃと?セリカと言ったか。そなたは一体何者なのじゃ?」

リースの答えを聞いたローゼリアは眉を顰めてリースが視線を向けた人物――――セリカに訊ねた。

「…………――――――俺の名はセリカ・シルフィル。お前達にとっては異世界になる”ディル=リフィーナ”の国の一つ―――――”レウィニア神権国”の客将の”神殺し”だ。」

「か、”神殺し”!?」

「なんなんだ、その物騒過ぎる異名は………」

「しかも”異世界”、ですか………その、”ディル=リフィーナ”という世界やそちらのセリカさんの事について説明して欲しいのですが………」

セリカの名乗りを聞いたアリサ達がそれぞれ驚いている中エリオットは驚きのあまり声を上げ、マキアスは表情を引き攣らせて呟き、エマは真剣な表情でセレーネ達に訊ねた。そしてセレーネ達は”ディル=リフィーナ”やセリカの事について軽く説明した。

 

「並行世界のゼムリア大陸は”空の女神”以外の神々に加えて天使や悪魔と言った空想上の存在が現存しているその”ディル=リフィーナ”と繋がっていて、そしてその”メンフィル帝国”とやらがその”ディル=リフィーナ”という世界の国の一つなのか………」

「しかも”百日戦役”でリベールに侵攻していたエレボニア帝国軍の一部を殲滅したどころか、エレボニア帝国に侵攻してエレボニア帝国の領土の一部を奪い取っているなんて相当な強国だね。」

「そしてその戦争によってユミルまでメンフィル帝国に占領され、終戦後占領されたユミルがメンフィル帝国領と化した事でリィン達―――――”シュバルツァー家”がそのメンフィル帝国に帰属したという訳か………」

「えっと………もしかしてそっちのリィンもだけど、エリゼさんも私達の世界のリィンやエリゼさんみたいにトールズやアストライアに通っていなかったの?」

事情を聴き終えたラウラとフィーは真剣な表情で考え込み、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、ある事に気づいたアリサはエリゼに訊ねた。

「はい。私はメンフィル帝国の現皇帝の一人娘にしてメンフィルの次代の女帝になる事が内定しているリフィア皇女殿下の専属侍女長で、兄様は既に除隊はしましたがメンフィル帝国軍に所属していました。なお、除隊前の軍位は”特務准将”です。」

「ええっ!?じゅ、”准将”!?」

「”准将”って事は将軍クラスの人物じゃないか!?」

「し、しかもエリゼさんはそのメンフィル帝国って言う国の皇帝の跡継ぎである皇女の専属侍女長って………!」

「”特務”がついているから多分実際は佐官クラスだとは思うけど、例え戦場でどれ程の功績を挙げても幾ら何でも10代で”准将”の位につけるなんて通常では考えられないわね。………まさかとは思うけどヴァリマール―――――リィンが”騎神”の”起動者(ライザー)”であることが関係しているのかしら?」

エリゼの話を聞いたアリサ達が驚いている中エリオットとマキアス、アリサは信じられない表情で声を上げ、真剣な表情で考え込んでいたサラはセレーネ達に訊ねた。

「いえ、お兄様が”特務准将”に昇進した時はお兄様はまだヴァリマールさんを手に入れていませんでしたわ。」

「フム………話を”巨イナル黄昏”の件に戻すが、そちらの世界では”巨イナル黄昏”を異世界の”神殺し”が浄化したと言ったが、まさかお主が殺した”神”の力を利用して”巨イナル黄昏”を浄化したのか?」

「ああ。――――”聖なる裁きの炎”。俺が殺した女神――――――”正義の大女神アストライア”のみが扱える神術だ。」

「セリカ様………」

ローゼリアの疑問に静かな表情で答えるセリカの様子をシュリは心配そうな表情で見つめ

「ええっ!?という事はセリカさんはあの”オリンポス”の星女神の一柱にして”正義”を司る”女神”の力を持っているのですか!?」

「エマはその”アストライア”という女神を知っているのか?」

セリカの事を知って驚いている様子のエマにガイウスは訊ねた。

 

「は、はい………”オリンポス”の神々とは夜空に輝く”星座”の元となった伝承上の神々の事で、”正義の女神アストライア”とはその”星座”の一つ――――”天秤座”や”乙女座”が関係している”女神”なのです。」

「当然だがオリンポスの神々の”神格”は様々な伝承で出てくる神々の中でも相当高位の神々じゃ。なんせオリンポスの神々は夜空に無数に輝く星々の神々じゃからな。ただの”星”一つの女神である”空の女神”と比べても”神格”は圧倒的にオリンポスの神々が上じゃろう。」

「”空の女神”よりも圧倒的に上の存在である”女神”を殺した”人を超えた存在”か………そういえば先ほどセリカ殿は”巨イナル黄昏”をそのアストライアという女神が扱える”聖なる裁きの炎”とやらで浄化したと仰っていたがその”聖なる裁きの炎”とやらは一体どのような術なのですか?」

エマとローゼリアの話を聞いて重々しい様子を纏って呟いたラウラはセリカ達に訊ねた。

「”聖なる裁きの炎”とは”全ての呪いや罪を浄化する炎”です。セリカ様の話によるとその炎はかつて”邪神”すらも浄化した事があるとの事です。」

「”全ての呪いや罪を浄化する炎”にして邪神すらも浄化できる程の炎………なるほどの。確かにそのような効果がある神術ならば、言葉通り力業で”巨イナル黄昏”を浄化したという話も納得できるな。」

エクリアの説明を聞いたローゼリアは静かな表情で呟き

「”巨イナル黄昏”を何とかしたって事は貴方達の世界のリィンは私達の世界のリィンみたいな事はならなかったのね………」

「それにそちらの世界のミリアムも命を落としていないのだろうな………」

「あ…………」

「そうか…………”巨イナル黄昏”を未然に防いだって事はそういう事にもなるよな…………」

「アリサさん………」

「……………………」

それぞれ辛そうな表情で呟いたアリサとユーシスの言葉を聞いたエリオットは呆けた声を出し、マキアスは複雑そうな表情をし、ユウナは心配そうな表情でアリサを見つめ、アルティナは辛そうな表情で黙り込んでいた。

 

「”巨イナル黄昏”の件で気になっていたが、”巨イナル黄昏”を阻止した後”鉄血宰相”と”黒”はどうなったのじゃ?」

「二人は”巨イナル黄昏”の阻止後、その場にてそれぞれ滅されましたわ。」

「め、”滅された”って………い、一体誰にあの二人が………」

ローゼリアの疑問にフェミリンスが答えるとアリサ達は血相を変え、エリオットは信じられない表情で呟き

「………”黒のアルベリヒ”はミントがあの人の”時”を崩壊させた事であの人を滅したよ。」

「ミントちゃん………」

「ぇ………」

静かな表情で呟いたミントの様子をツーヤが心配そうな表情で見つめている中アリサは呆けた声を出した。

「”時を崩壊させた”………そういえばミントさんは時空を移動できることに加えて”時”を操る秘術が扱える竜族との事ですが、まさか………!」

「”黒”の”時”を崩壊させ、奴自身の存在をこの世から消し飛ばしたのか?」

「うん。ローゼリアさんの話だと”黒のアルベリヒ”は何らかの方法で、様々な人物として生き続けてきたんだよね?だから、”黒のアルベリヒ”を真の意味で滅する為にはミント自らが手を下す必要があったんだ………」

ミントの話を聞いてある事を察したエマは驚きの表情を浮かべ、ローゼリアの問いかけにミントは静かな表情で答え

「なるほどの………確かに奴はどのような方法か知らぬが様々な人物に化けて生き続けてきた。奴を真の意味で滅する為には”黒のアルベリヒという存在自身を滅さなければならない”から、”黒のアルベリヒという存在自身の時を崩壊させる事によって、現代の黒のアルベリヒであるフランツ・ルーグマンの肉体ごと黒のアルベリヒという存在を消した”という訳か…………」

「……………………ミントさん、だったかしら。どうして”あの人”とは何の関りもなかったミントさんが自ら”あの人”の命を奪ったの…………?」

「アリサさん…………」

ミントの答えを聞いたローゼリアが重々しい様子を纏って納得している中、辛そうな表情でミントに問いかけるアリサの様子をエマは心配そうな表情で見つめていた。

「ミント達―――――”刻”を司る”真竜”には二つの役割があるの。一つ目は時間や時空といった”時”が関わる事件や事故の対処をする事。そしてもう一つは………――――――世界を滅ぼす可能性がある邪悪なる存在を”時空魔術”でこの世から永遠に抹消し、世界を守る事。それがミント達”刻”を司る”真竜”に課せられた役割だから、”黒のアルベリヒ”を滅したんだ。」

「っ!……………………」

「”世界を守るために世界を滅ぼす可能性がある邪悪なる存在を抹消する為”か…………」

「た、確かに”巨イナル黄昏”を発動させて世界を”終焉”へと導こうとした彼にはそれが当てはまるが………」

ミントの説明を聞いたアリサが息を呑んだ後辛そうな表情で黙り込んでいる中ガイウスは複雑そうな表情で呟き、マキアスは気まずそうな表情でアリサを気にしながらミントを見つめていた。

 

「くふっ♪それにしても”黒のアルベリヒ”だっけ?ミントに滅される時、”巨イナル黄昏”がセリカに浄化されたことやミントに消される事に怒りや悔しさが混じった表情で喚きながら消し飛んだのは傑作だったよね♪」

「うむ!まさに世界を”終焉”へと導こうとした愚か者には相応しい末路だったな!」

「……………………」

「エヴリーヌお姉様!例えこの世界の方々にとっては関係のない話とはいえど、”黒のアルベリヒ”と関係がある方々の目の前でそんな事を言わないでください!」

「レシェンテ、あんたもよ。下手したらあたし達と並行世界の彼らとの間に”溝”ができるでしょうが………」

口元に笑みを浮かべたエヴリーヌとエヴリーヌの言葉に同意したレシェンテの答えを聞いたアリサが複雑そうな表情をしている中、プリネとマリーニャはそれぞれ二人に注意をした。

「…………それで?そっちの世界のオズボーン宰相は一体誰が殺ったのかしら?」

「オズボーン宰相は我等メンフィルの前皇帝陛下であられるリウイ・マーシルン皇帝陛下を含めた4人の”英雄”達との戦闘の末、討ち取られました。」

「なお、オズボーン宰相に直接止めを刺した人物は我々の世界のリィンです。」

「な―――――――」

「ええっ!?リ、リィンがオズボーン宰相を………!?」

「そんな…………っ!そっちの世界のリィンはどうしてそんな事をしたの…………!?あんなにも人の命が奪われる事を心から悲しみ、オズボーン宰相との関係を知ってからは、何とかオズボーン宰相を止めようとしていたリィンが………!」

サラの疑問に答えたセシリアとサフィナの答えを聞き、仲間達と共に驚いたラウラは驚きのあまり絶句し、エリオットは信じられない表情で声を上げ、アリサは悲痛そうな表情で声を上げた。

 

「あー…………そっちの世界のリィンがどういう奴かはお前達の世界の新Ⅶ組のメンツにある程度聞いたが、俺達の世界のリィンは元々”軍人”で戦争にも参加して多くの敵兵の命を奪った事もあるから、自分達にとっての”敵”の人の命を奪う事に関してそんなに忌避感とかはないぜ?」

「それとオズボーン宰相との関係の件もそうですね。私達の世界のリィンさんはシュバルツァー男爵夫妻が自分にとっての本当の両親として見ていて、オズボーン宰相の事はあくまで”他人”としてしか見ていませんでしたから。」

「まさかそちらの世界のリィンは戦争にも参加した事がある上、”鉄血宰相”に対しての思いもそこまで割り切っていたとはな………」

「”並行世界”だからこその”違い”、か…………」

フォルデとステラの話を聞いたユーシスとラウラはそれぞれ重々しい様子を纏って呟き

「へ………リィン教官とオズボーン宰相との関係って………」

「そういえば前から気になっていたけど………どうして宰相はあの時、教官を呼び捨てにしてたのかな?前に帝都で話してた時はもっとよそよそしかったような。」

「「………」」

「そういえば………」

「確かに僕達の世界のオズボーン宰相も帝都で話したときは教官の事をよそよそしい呼び方をしていたが、”星杯”が消えた後のカレル離宮でのリウイ陛下達との戦闘によって満身創痍になった状態で教官に止めを刺される際も呼び捨てで呼んでいたな………」

二人のユウナの疑問を聞いた二人のアルティナが複雑そうな表情で黙り込んでいる中二人のクルトもそれぞれかつての出来事を思い出し

「へえ……そんな事があったのか……って。」

「アル?」

「……何か知っているのか?」

「クク、シュバルツァーの”女”の一人になったお前も知ってんじゃねぇのか?」

「フフ、どうでしょう?それよりもルディさんは当然として、リウイ陛下のご息女の一人であられるゲルドさんもご存じなのでは?」

「……………………」

アルティナの様子に気づいたランディ、クルトとユウナがアルティナに視線を向けている中不敵な笑みを浮かべたヨハンに視線を向けられたミューズは静かな笑みを浮かべて答えを誤魔化してゲルドに話を振り、話を振られたゲルドは何も答えず静かな表情で黙り込んでいた。

 

「あ…………」

「……………………」

一方その様子を見守っていたエリオットは呆けた声を出し、アリサは辛そうな表情で黙り込んでいた。

「それは……………………」

「……………………」

「ふむ…………」

「アルきちは情報局だったか。色々と知ってそうだな?」

それぞれ黙り込んでいる二人のアルティナの様子をローゼリアは考え込みながら見守り、ランディは静かな表情で確認した。

「……………………前々からおかしいとは思っていた。教官と宰相のやり取り…………旧Ⅶ組の皆さんの態度も。」

「ああ…………そして共感がシュバルツァー家の養子であるという事実………」

「「…………っ…………」」

「へ………?」

「た、確かにエリゼさんとは血は繋がっていない兄妹だからこそ、妹のエリゼさんとも婚約できた話は知っているけど…………」

「……………………」

「エリゼ…………」

二人のクルトの疑問を聞いた二人のアルティナがそれぞれ辛そうな表情で唇を噛みしめている中二人のユウナはそれぞれ首を傾げてエリゼに視線を向け、視線を向けられて静かな表情で黙り込んでいるエリゼの様子をアルフィンは心配そうな表情で見つめていた。

 

「ほう…………」

「おいおい、まさか――――」

クルト達の話を聞いて話の流れを察したローゼリアが興味ありげな表情をしている中ランディは信じられない表情をし

「……………ヴァンダール家の人間だから裏の事情もそれなりに聞いていてね。14年前の百日戦役の直前――――当時軍にいたオズボーン准将の邸宅が何者かに襲撃された事があったらしい。下手人は聞いていないが………その時、彼は家族を失ったそうだ。亡骸が発見されたという奥方と………結局発見されなかった子息の二人を。」

「……………ぁ…………」

「ええっ!?そ、それじゃあ教官はその事を知っていてもなお、あの時リウイ陛下達と一緒に戦ったの………!?」

「”知っていたからこそ”、参戦を申し出たのかもしれなかったな…………」

「鉄血宰相の実の息子だからこそ、責任を取ってあの男の野望を未然に防ぎ、そして引導を渡すためですか………」

「ハッ、らしくない事をしやがって…………」

「私達の世界のリィン教官は自らの手で父親を討った事について、本当はどう思っているのかしらね………?」

クルトの話を聞いたユウナが呆けている中、もう一人のユウナであるサフィーは驚きの声を上げ、ザムザの言葉に続くようにデュバリィは重々しい様子を纏って呟き、ヨハンは鼻を鳴らし、ゲルドは心配そうな表情で呟いた。

 

「そ、そう繋がんのかよ………ってクルト、鋭すぎやしねえか?」

「教官に教わった”観の眼”です。一切の先入観を廃しそのものを見る。………間違いないみたいだね?」

「……………………はい………2年前の”煌魔城”の時にその事実は明らかとなりました。わたしはカイエン公拘束の任務で偶然居合わせて知っただけですが………リィン教官も、旧Ⅶの方々も相当衝撃を受けていたみたいでした。」

「そうか…………」

「そりゃそうだろ………そんな事を聞かされたりしたら。………そうか。だからこそ仲間と力を合わせて鉄血を止めようとしてたのか。」

「っ………」

アルティナの説明を聞き、真実を知ったクルトとランディが重々しい様子を纏っている中ユウナは目を閉じて全身に怒気を纏って体を震わせ始めた。

「ユウナさん…………?」

「ユウナ………怒っているのか?実の親が誰であろうとリィン教官はリィン教官の――――」

「―――――怒ってるわよ!当たり前じゃないの!?ああもう………!本当にあの人は………!それに先輩達も!いいかげんアタマに来たわ!」

「ええっ!?」

「ぼ、僕達にまで………!?」

ユウナの怒りが自分達にも向けられた事にエリオットとマキアスは驚きの声を上げた。

 

「………そなた達に黙っていたことは本当にすまなかった。だがユウナ………どうかリィンを悪く思わないで欲しい。」

「彼はずっと苦しんでいたわ………宰相のやり方と、理不尽な要請に。」

「ああ、兄に対する俺の葛藤よりも遥かに大きなものだっただろう。」

「なのに決して折れず、自らの為すべきことを果たし続けた………」

「ええ………北方戦役の時といい、不器用なくらいにね。」

「わかっています。………その、皆さんほどじゃないですけど。でも、これはあたし達、新Ⅶ組の方がわかると思うんです。あの人が………リィン教官が今この瞬間も苦しみ続けているって。」

旧Ⅶ組の面々の話に同意したユウナだったがすぐに決意の表情になって自分たちの世界のリィンの心境を口にし、それを聞いたアリサ達はそれぞれ血相を変えた。

 

「あ…………」

「………それは…………」

「………あの時、あたし達はこの目でずっと見届けていました。教官が真実、宰相たちを止めようと死力を絞り続けていたことを。でも力及ばず………あたし達を助けようと身を挺して庇ったのを。」

「……………………」

「………そうだったな………」

ユウナの話を聞いたアルティナとクルトはそれぞれかつての出来事を思い返していた。

「そんなあの人を守ろうとアルが立ち塞がって………ミリアムさんが更に守ろうとして、犠牲になって、”剣”になって………教官は怒りと哀しみに呑み込まれるように世界の終わりの引き金を引いた………そして、実のお父さんは教官に更なる”何か”をさせようとしている。………間違いなく、今この瞬間もあの人はずっと自分を責めている!ミリアムさんを守れなかったって!取り返しのつかない事をしちゃったって!だったら――――そんな教官の胸倉を掴んででも………!違うだろう、そうじゃないよって何としてもわからせてやる………!それが皆さんにしかできない”役目”なんじゃないんですか!?」

「ユウ坊………」

「………フフ………」

(………なるほど。彼女が”Ⅶ組”の”光”なのでしょうね………)

ユウナの旧Ⅶ組への指摘をランディとローゼリア、フェミリンスは静かに見守っていた。するとその時クルトとアルティナはそれぞれ視線を交わして頷いた後それぞれ意見を口にした。

 

「………あなた達がやらないのなら教え子の自分達が動くだけです。あの人には恩も借りもある――――必ずや見つけて喝を入れてみせます。ヴァンダールとしてではなく、トールズ第Ⅱ・新Ⅶ組として。」

「………教官はわたしのことを根気よく導いてくれました………自分で考えて、自分で決めろって。それがわたしとして”在る”事だって。だから、わたしは今ここで決めます。――――みんなを守ってみせると言ったミリアムさんの意志を継ぐことを。絶対に教官を取り戻して今までのお礼を伝えることを………!」

クルトとアルティナもユウナに続くようにそれぞれの決意を口にすると旧Ⅶ組の面々はそれぞれ呆けたが

「………フフ………」

「やれやれ………参ったわね。」

「ん………いつの間にか追い抜かれてた気分かも。」

「いや………実際にそうなんだろう。彼女達が戻ってくるまで何かしようと足掻くわけでもなく………」

「やるべき事から目を逸らして哀しみと虚無感に囚われていた………」

「ああもう、恥ずかしいなぁ!自分をどやしつけてやりたいよ!」

ユウナ達の言葉を切っ掛けに旧Ⅶ組の面々はそれぞれ様々な出来事によって失った活力を取り戻し始めた。

 

「………ぁ…………」

「………皆さん………」

「そうだな……そうだった。みんなを守ってみせるか………確かにミリアムはそう言っていた。」

「ならば我らもまたその魂を体現するだけのことだ。いつも誰かのために足掻き続けた不器用で大切な仲間(リィン)のためにも。」

「………そしてあの日、彼やミリアムとやり遂げると誓った”大方針”―――”表”においては戦争を食い止め、”裏”においては真実を見極める………その誓いを果すためにも――――!」

「クロウのこともあるね。記憶を取り戻してたっぽいし。」

「ああ、それこそ殴りつけてでもこちら側に引き戻すべきだろう。」

「フフ、そうだな。」

「それに”真の意味”でⅦ組全員が揃う為にも、もう一度レンちゃんと”本気”で向き合う必要もありますね。」

「うむ、それにこのような状況になった今、レンは恐らく”暁の翼”の団長にして、レン自身にとって最強にして最高の”勇者”であるリーゼロッテ皇女殿下と行動をしているだろう。亡きオリヴァルト殿下の為………そしてオリヴァルト殿下同様和解を望んでおられるプリシラ皇妃殿下とアルフィン皇女殿下の為にも、リーゼロッテ皇女殿下にも会って説得する必要があるな。」

「やるべき事は幾らでもあるね。例の新法も施工されたみたいだし。」

「ええ、儀式以降咲き始めたという黒いプレロマ草も調べましょう。

「やれやれ………ほんとアンタたちと来たら。」

「皆さん………」

活力を取り戻して今後の方針について話し始めた旧Ⅶ組の様子をサラは苦笑しながら、アルフィンは嬉しそうな様子で見守り

「………グス………」

「よかった、これで………」

アルティナは嬉しさや安心によって涙を流し、クルトは安堵の表情を浮かべた。

 

「うん………でもこれからだよ。あたし達は教官に加えてミュゼとアッシュにも会わなくちゃ。もちろん第Ⅱのみんなとも………!」

「ああ、そうだな………!」

「取り戻してみせます………全てを。」

「それについては是非、私達も協力させてちょうだい。」

「――――礼を言う、お前達。この上ない喝を入れてもらった。」

「サンクス。」

「この逆境においてこそ我等”Ⅶ組”の真価が問われよう。」

「今こそ新旧の区別は無しだよ!」

「ああ、同じ目的を共有する対等なる同士・同輩として………」

「互いの力を最大限に活かしながら一緒に乗り越えて行こう!」

ユウナの言葉にクルトとアルティナがそれぞれ決意の表情で頷くと、アリサ達もそれぞれ決意の表情で申し出た。

「「「はい!」」」

アリサ達の心強い申し出にユウナ達はそれぞれ力強く頷いた。

 

「当然僕達も全身全霊をもって、君達の目的を果たせるように最大限に協力する。」

「はい。あなた達から受けた恩を返すためにもわたし達は世界を超えてこの場にいるのですから。」

「世界は違えど、私達も”Ⅶ組”の一員。私達も”Ⅶ組”の一員として、貴女達と共に乗り越えて見せるわ。」

「クク、俺達の世界ではつけられなかった俺の”落とし前”をつけるためにも大暴れと行こうじゃねぇか!」

「フフ、並行世界の私達や異世界の英雄の援軍という敵・味方双方にとっての”想定外(イレギュラー)”の力どうか遠慮なくお使いください。ですがその前に、そろそろこちらの世界の旧Ⅶ組の皆さんをもう一度驚かせるためにもまだ、この場に姿を現していない”援軍”を紹介する必要がありますわね♪」

「ミューズ、あんたねぇ………まさかとは思うけど、その為だけにわざと教官達だけ、外に待たせたんじゃないでしょうね?」

するとその時並行世界の新Ⅶ組のメンバーもそれぞれ協力を申し出、小悪魔な笑みを浮かべたミューズの言葉を聞いたサフィーはジト目でミューズを見つめて問いかけた。

「へ………も、もしかして並行世界から僕達に協力するために来た人達がまだいるの?」

「しかも”教官達”という事はまさかその中の一人は………」

「ハハ………多分その一人はガイウス達の予想通りの人物やと思うで?――――という訳で、待たせて悪かったな。入ってきてええで、”リィン君”達。」

「――――失礼します。」

ミューズとサフィーの会話を聞いたエリオットは呆けた声を出した後訊ね、ある事に気づいたガイウスの推測にケビンは苦笑しながら答えた後扉に視線を向けて声をかけると、扉が開き、並行世界のリィン、レン、そしてエマとセリーヌが部屋に入ってきた――――!

 

 

 

 

閃4をやっている最中に思いついたのでつい、衝動で書いてしまった………なお、話には書いていませんが黒の騎神も”聖なる裁きの炎”で消し飛ばされていることになっています(ぇ)現在閃4は終章でクオーツ&Uマテ集めです。まさかUマテがこんなにいる日が来るとは思いませんでした(泣)幾らアマルカルプを釣っても全然足りません………なので今月中には閃Ⅲの更新を再開できると思います………が、問題は今月末にエウシュリーの新作が………(オイッ!)


 
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