マリエシティにてグズマと遭遇しポケモンバトルをしたヨウカは、ククイ博士にマーレインから預かったマスクを返した後でポケモンセンターに向かった。
そのとき渡したマスクは、ククイ博士がロイヤルマスクに渡しておくと言っていたので2人は知り合いなのかなとヨウカは思ったのだった。
「そんなことがあったロトかぁ・・・」
「ヒィニャ」
ポケモンセンターでロトムとニャーくんと合流したヨウカは、2匹に先ほど起きたことをそのまま話した。
「でもヨウカがブジでよかったロト!」
「うん、カリちゃんのおかげだよ」
「らぁら」
そう言ってヨウカはラランテスに進化したカリちゃんをみて笑うと、カリちゃんも笑顔になる。
他のポケモン達も、カリちゃんの進化を喜んでいる。
「うぅーん・・・」
「ヨウカッ!?」
さっきまで笑っていたヨウカだったが、唸りながら背後に倒れ込んだのでポケモン達は慌てる。
そんなポケモン達にたいし大丈夫だよとヨウカは笑い返す。
「今日は試練とかスカル団とか、たっくさんのことがありすぎて疲れちゃっただけだよ」
「なーんだ、そうだったロトかぁ」
「えへへ、心配かけちゃってゴメン」
そう笑っていると、今度はヨウカのお腹からぐぅぅという音が鳴る。
その音が響いた瞬間、ヨウカは自分の瞳と同じくらいに頬を赤く染めてお腹を押さえる。
「ニャ?」
「うん、そうだね。
疲れたからお腹すいたし汗びっしょりだし、眠いよ」
「そりゃそうなるロト。
さっきもはなしたとおり、キョウはイベントづくしだったロトね」
上着を軽く脱いでにおいをかいでみると、ちょっとだけ汗のにおいがする。
このまま寝たくないし、軽く洗いたい気持ちもある。
それをなんとかするためには、スムーズに順番にことをすましていくしかない。
そのために、行動を起こす。
「さぁ、早く寝るためにご飯食べてお風呂入っちゃお!」
「りょうかいロト!」
「みんなで一緒に寝ようね!」
「ヒィニャ!」
「らぁら!」
その後ヨウカは自分で言ったとおりに夕食の後風呂に入り身体の汗を流し、パジャマに着替えてからベッドに潜り深く眠ったのだった。
そのベッドの周りにはもちろんといわんばかりに、ポケモン達がいて寝息をたてていた。
その翌日。
疲れは一晩で吹っ飛び、ヨウカも元気を取り戻していた。
その元気のままに次の試練が行われる場所を目指すため、マリエシティを再び旅立った。
「あー、ヨウカだー!」
「あれっ、ハウくん!」
その先で遭遇したのは、試練のためにアーカラ島に戻っていたハウだった。
ヨウカはハウとの再会を喜びつつ、彼の近況を確認する。
「そういえば、ハウくんがここにいるってことはアーカラ島の大試練を
突破したってことなんだよね?」
「うんー、おれ頑張ったよー!
ライチさんもーしまクイーンっていうだけあってー、じーちゃんに負けず劣らずの強さだったよー!」
「だよね、ライチさんすっごく強いよね!
でもそんな人に勝っちゃうなんてハウくんやるぅ!」
「えっへへー」
自分も戦ったからライチの強さがどれほどのものなのかはわかる。
なんとか勝利できたものの、あの実力は記憶に鮮明に残るほどだった。
そんな彼女に勝てたのだから、ハウも自分が思っているよりも強くなっているのがわかる。
「そうだヨウカー」
「どうしたの?」
そこで突然、ハウはあることを思い出してそちらに話題を切り替えてきた。
「おれ最近ねー、またグラジオに会ったよー」
「えっ!?」
最近グラジオと遭遇しポケモンバトルをしたこともあるヨウカは、ハウのその言葉に驚いた。
グラジオはハウを一度打ち負かしたことがあるほどの実力者であり、その腕を買われてスカル団の用心棒をしている。
そして、ハウにたいし厳しい言葉を放っていたのだ。
またグラジオに厳しい言葉を突きつけられたのではないか、とヨウカはハウを心配する。
「またなにか言われたの?」
「うん、そこでねー・・・実はコスモッグというポケモンのことを聞かれたんだぁ」
「コスモッグ・・・って、ほしぐもちゃんのこと・・・!?」
そこからでてきた名前に、ヨウカは目を丸くして戸惑いを露わにする。
コスモッグはリーリエがほしぐもちゃんと呼んでいる、謎の多いポケモンでありそれを知っているのはごくわずかな者達だけだ。
彼女もそのコスモッグは普段はバッグに隠していて、重要な人間にしかその存在を語らないようにしている。
ハウも、しまキングである祖父のハラと共にいたためにコスモッグのことを知っている数少ない人間の一人だ。
「・・・ハウくん、そのときなんて言ったの?」
「知らないって言ったよー。
そのあとねー、コスモッグは弱いけど持ってる力はおそろしーとか言ってたよー。
だからー、スカル団からコスモッグは絶対に守れってー。
それでねー、そのことをヨウカに伝えてくれだってー」
「あたしにも?」
自分にもその話を向けてくるとは思わなかったようかは首を傾げる。
「でもー、どうしてグラジオがそんなことを言うのかなぁー?
というよりー、どうしてグラジオがコスモッグを知ってるのかなー?
そればっかり気になっちゃったよー」
「そりゃあ、気になっちゃうね」
スカル団からコスモッグを守れとわざわざ言ってくるということは、スカル団がコスモッグをねらっているということだ。
そして、グラジオはコスモッグが持つ力について、そしてその正体についても何かを知っている。
その警告といい、この前傷の手当てをしてくれたことといい、グラジオは敵なのか味方なのか、分からなくなった。
「ついでにね」
「?」
「グラジオってばまたおれのことー、お気楽って言ったよー」
「うわぁ・・・」
不機嫌そうな顔から出たハウに対するグラジオの厳しさを聞き、ヨウカは苦笑した。
やっぱり厳しいところは厳しいんだな、と。
「・・・ねぇ・・・ヨウカー」
「どうしたの?」
「ヨウカはおれをどんなひとだと思ってるー?」
「ほえ?」
突然のハウの問いかけに対し、ヨウカは口を開けてポカンとしてしまった。
「どんな人って・・・どう言えばいいのん?」
「なんでもいいよー」
「せやなぁ・・・。
あたしは普通にハウくんのことは、友達だと思うとるよ。
一緒にいて楽しいし面白いし、あたしとすぐに仲良くなってくれてありがとーとおもっとる」
「・・・そっかー」
素直はヨウカの返事にハウは納得したような表情を浮かべた。
だが、ハウがなんで急にその話を振ってきたのかがわからないヨウカは首を傾げつつ逆にハウに質問を投げかける。
「だけど急にどうしたん?」
「んー・・・おれねー・・・あのときにグラジオから言われたことをずっとー気にしてたんだよー」
「・・・」
グラジオの言葉。
それは、ハウがポケモンバトルを楽しんでいるのはしまキングである祖父に勝てないからそう言っていいわけしているだけだというもの。
あの言葉を突きつけられたあともハウはニコニコしていたのだが、すぐに様子をおかしくしたのだ。
そのことをまたふってきたのは、やっぱり何かあったのかと思う。
「・・・おれねー、ホントにポケモンバトルは楽しみたいんだー。
勝つとか負けるとかよりも、精一杯楽しみたいって・・・。
だけど、それじゃダメなのかなーって・・・ずっと気にしてたんだよ」
「・・・」
「おれ、一度もじーちゃんと本気で戦ったことなかったんだ。
とーちゃんも、今は遠くで仕事しているけど・・・昔はしまキングの息子って言われ続けて苦労したみたいだって話を聞いてから、いろいろ考えちゃって・・・」
ハウはふぅ、とため息をついた。
「それでここのところはまともにバトル、できなくなっちゃったよー」
「え・・・それっていわゆる・・・」
「スランプロト!?」
驚くヨウカとロトムにたいし、ハウはうんと頷き返した。
「で、でもさっきライチさんに勝ったって・・・」
「そうだよー、でもその後でスランプになっちゃったー。
グラジオとまた会ってー、そのあとでじーちゃんのことを思い出しちゃってー・・・そしたら試練に挑む気力が湧かなくなっちゃったよー」
「原因はグラジオくんっ!?」
「あははー、そこはたぶん関係ないー」
ヨウカにツッコミを入れつつ、ハウは自分の悩みをそのまま語り始めた。
「これからどうやってポケモンバトルを楽しめばいいのかなー。
それどころか、今までどうやって楽しんでいたのかなーって・・・気にしちゃってー・・・」
「・・・」
「でもー・・・島巡りは果たさなくちゃいけないなーって思うんだぁ。
一応メレメレ島とーアーカラ島は大試練を突破したけどー中途半端に投げ出すみたいになってイヤだなぁってー思っちゃってー。
このままじゃー・・・カプにも認めてもらえないよー・・・」
「ハウくん・・・」
最後の言葉を漏らすときの声は、悲しげだった。
いつも明るく笑っているイメージのあるハウとは違うその一面をみて、ヨウカはハウのことがさらに心配になる。
そんなハウにどういう言葉をかければいいのか迷っていたそのとき。
「やめてください!」
「えっ!」
「今の声・・・?」
突然少女の声が聞こえて二人はハッとなり、その声がした方向へ向かう。
その視線の先には、黒い服を身につけたガラの悪い男と、白い帽子とワンピースの少女。
「あれって・・・リーリエッ!?」
「・・・に、スカル団・・・!」
どうやら、リーリエはスカル団に絡まれてしまっているようだ。
スカル団の男はリーリエにバッグを寄越すように言っているのが聞こえる。
「な、なにも持っていませんから、私に構わないでください!」
「なにも持ってないとか、そんなもんウソっスカら!
オレみちゃったスカら!
そのバッグが動くところ・・・さぁ・・・なにを隠しているのかをみせてもらおうかぁ!」
ガシィ、とスカル団はスポーツバッグのヒモを掴んだ。
「きゃ!?」
「このままいただいちゃうっスカ!」
「やめっ・・・」
バッグを引っ張ってくるスカル団にたいしリーリエは抵抗を試みるが、少女の非力さによりこのままではバッグが奪われてしまうだろう。
そう思われた、そのときだった。
「ニャーくん、ひのこ!」
「あっぢぃぃぃぃ!!」
ひのこが飛んできて、スカル団の尻に火をつける。
それによりスカル団の手からバッグが離れてリーリエは解放され、ハウはリーリエに駆け寄りヨウカはスカル団と向かい合う。
「ヨウカさん、ハウさん・・・!」
「てめぇは、いつかのガキッ!」
「スカル団、リーリエちゃんに手を出すのは許さないんだからね!」
「このシチュエーションは・・・か弱き乙女を守る騎士の図のつもりッスカ!?
気にいらねぇから全員フルボッコにしてやるッスカ!」
いけ、ラッタァ!!」
スカル団はラッタを繰り出して彼らに攻撃を仕掛けてくる。
ハウも、ボールからライチュウのライライをだす。
「ラッタ、ひっさつまえば!」
「ライライ、でんじは!」
でんじはで襲いかかってきたラッタを麻痺させるライライ。
まひにより動けなくなっているスキに、ニャーくんはラッタにほのおのキバ攻撃を繰り出した。
「ハウくん、リーリエちゃんを守ってて!
スカル団、あたしが相手だ!」
「あのときのガキが相手ッスカ!
いいだろう、まずはお前からボコボコにしちゃうッスカァ!」
「かかってこーいっ!」
「覚えてるッスカァァ!」
「二度とくるなーっ!」
ヨウカはスカル団とのバトルに圧勝し、スカル団を追い払った。
彼の姿が見えなくなったとき、ハウは安堵のためいきをつきながらリーリエの無事を確かめる。
「だいじょーぶ、リーリエー?」
「は、はい・・・お二人のおかげです・・・ありがとうございました」
「がんばってたのはおれよりもーおれのポケモンだよー。
なによりもヨウカが強いんだよー」
元気なくそう言うハウをみて、ヨウカは顎に手を当ててうーんと考え込み始めた。
先程のスカル団との勝負も、ライライは一方的に相手に攻撃しているだけで戦略がなかった。
ハウはこれでも戦い方はちゃんと考えられるはずなのに、それができてない。
「ハウくんのポケモンバトルのスランプかぁ・・・。
さっきスカル団けちらせたのも、あいつらがザコだったからだよね」
「え、ハウさん・・・スランプになっちゃったんですか?」
「どうもそうみたいー」
リーリエには笑って見せたが、その笑顔はどこか無理しているものだとヨウカとリーリエは気付いた。
ライライもそれに気付いているらしく、ハウに自分から抱っこされにいき、そんなライライの気持ちに気付いたハウはライライを抱き上げた。
「あの・・・」
「どうしたの、リーリエちゃん?」
そのとき、リーリエがある提案をしてきた。
「この近くにこのウラウラ島の守り神様がいらっしゃる遺跡があるので・・・私そこに向かおうと思ってたんです・・・。
その途中でスカル団の人に遭遇してしまって・・・これからまた、絡まれるんじゃないかって思うと・・・その、不安なんです。
だから、お2人にも一緒にきてほしいんですけど・・・いいですか・・・?」
「遺跡?」
「実りの遺跡という場所なんです・・・守り神様に会えば、ハウさんがスランプを脱出する方法も分かるかもしれませんし、ほしぐもちゃんのことも分かるかもしれません。
ヨウカさんも、私にとってもハウさんにとっても・・・一緒にきてくれると安心できるんです」
守り神のいる遺跡、そこにいけばなにかが変わるかもしれない。
ハウのことも、コスモッグのことも。
友達の思いを断れないし放っておけないヨウカは、リーリエの話をそのまま呑むことを決めて迷わず頷いた。
「・・・うんいいよ、あたしも一緒にいく!
ハウくんも、いこ!」
「いきましょう!」
「ヨウカ・・・リーリエ・・・うん!」
彼女達の言葉にたいし、ハウも頷く。
「じゃ、3人で遺跡を目指して、レッツゴー!」
「おー!」
「はいっ!」
こうして3人は実りの遺跡を目指して、ともに行動することとなったのだった。
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ちょっとここで、ハウに島めぐりとはまた別の試練がふりかかります。