No.95837

真・恋姫無双紅竜王伝⑦~目覚ましはちんきゅーきっくで~

今回は拠点風に始まる第7弾です。魏・呉・蜀のどのルートで行こうか迷っている今日この頃です・・・
それとは関係なくそろそろ呉の人々と絡ませなければなりませんね。まったく出てきてないし。

2009-09-17 10:46:55 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7863   閲覧ユーザー数:6497

大将軍に就任したとはいえ、舞人の日常は変わらない。朝遅く起きだしてきて、昼食をとる兵と一緒に朝食を食べる。そして暇さえあれば眠るか、街におりて民と戯れる―――

しかしこの日は違った。

「ちんきゅーきーっくっ!」

「ぐおっ!?」

睡眠中の舞人を叩き起こしたのは一発の飛び蹴りだった。跳ね起きた舞人は、犯人に向かって怒鳴りつける。

「てめぇチビ助!いきなり何しやがる!」

「いつまでも寝てるんじゃないですよ、この放狼将軍!恋殿がお呼びなのです!」

両手を上げ、小さな体を思いっきり大きく見せて怒りを表現して見せているのは陳宮という少女だった。

「恋が呼んでいるだと・・・?」

舞人は眠い目を擦りながら寝台から起き上がる。椅子に掛けてあった外套を寝巻の上から羽織って部屋から出て行こうとし―――陳宮、真名を音々音の前でピタリと止まり、素敵な目覚めを提供してくれた彼女の頭にお礼の拳骨を提供するのを忘れなかった。

でっかいたんこぶを頭にこさえたねねに案内されたのは将軍たちが使う食堂だった。朝も早い為その場には誰もいない―――普段なら。

「恋殿~!舞人を連れてきましたぞ~!」

今朝は違った。長机の椅子に腰かけている一人の少女の姿があった。

「・・・おはよ、舞人」

まだ少し眠いのか、恋と呼ばれた少女はぼんやりと舞人に挨拶をする。

(まさかこの娘があの『飛将軍』呂布だなんて誰もおもわねぇだろうな・・・)

この少女の名は呂布、字は奉先。世に飛将軍と呼ばれ、畏怖されている存在である。

ぱくぱくぱくぱく・・・

すごい勢いで山のように積まれた料理を片付けて行く恋。その隣で彼女をかいがいしく世話するねね。彼女らの正面に座った舞人はそれを呆れたように肘をついて見ていた。

「恋、俺が作ったメシそんなに美味いか?テキトーに炒めたりしただけなんだが」

「(コクコク)舞人のご飯、とっても美味しい」

「あっそ・・・ま、作った側としては、お前みたいに気持ちよく食ってくれると嬉しいけどな」

舞人は仕官していない時は、一人旅をすることが多いので自炊する機会も自然と増える。その為普通に食べさせるくらいの料理の腕はあるのだ。

「・・・ごちそうさま。ありがと、舞人」

「恋殿!このねねと後で街に出かけましょう!」

騒ぎながら去っていく恋とねね。2人の背を見送った舞人は自分で朝食を作って食べ、食器の片付けを女官にお願いすると、食堂を出た。

「なんか久しぶりに働きてぇな・・・」

珍しく勤労意欲を発揮した舞人はその足で大将軍の執務室へ向かった。

「あ、閣下!」

執務室には朝も早いというのにすでに人がいた。机仕事をしない舞人の補佐を務める気の毒な副官である。何度か名乗られたが舞人は彼の名前を覚える事がなぜか出来なかった。特に気はしなかったが。

「朝から精が出るな」

「いえ、これが私の仕事ですので」

笑顔で言ってのけるこの副官、なかなか出来た人物である・・・

「なんか今日は働きたい気分だから、お前今日一日休みでいいぞ」

「え?」

上司の思わぬ報告にキョトンとする副官氏。舞人はスタスタと机に近寄って彼から筆を奪い取った。

「今日はお前休め・・・いつもありがとな」

「は、はぁ・・・ではお休みさせていただきます」

上司の思わぬ気づかいに困惑しながらも副官氏は出て行った。舞人は椅子に座って机に向かいあった。

「さて、やるか」

彼の目の前には山のような書簡が。舞人はまるで喧嘩を挑むかのように拳を鳴らした。

そして太陽が真上に上る頃には―――

「よっしゃ終わったー!」

山のように積まれていた書簡はすべて処理され、背もたれにぐったりともたれた。各方面で黄巾党討伐の指揮を執る将軍たちの報告書に目を通し、物資を援助する必要のあるところには物資を派遣するよう手配し、援軍を送る必要のあるところには援軍の指揮を執る将軍を選出し、その者に付ける兵の数を指示するなどの采配を昼まで振るった。

「ふーむ」

仕事を終えた舞人は暇になった。昼寝をするのもいいかもしれないが、なんとなくそんな気分にはならなかった。

「飯でも食いに行くか」

時刻はちょうど昼。舞人は街におりて昼食をとる事に決め、執務室を後にした。

「おーい、舞人~!」

街に出ようとした舞人の足を止めたのは元気な女性の声。振り返ってみるとそこには顔見知りの2人の女性の姿があった。

「霞に華雄か、どうしたんだ?」

「一緒にメシでもどうかと思ってな」

霞は華雄の腕をとってニコニコとしているが、華雄はどこか不満そうだった。

(鍛錬していた霞と華雄が昼食か続けて鍛錬かで賭けて霞が勝った、ってところだろうな)

それを口に出すとおのれの武に絶対の自信を持つ華雄の怒りを買うだけなので口には出さないでおいた。

「そうだな、俺も昼飯まだだし行っても『申し上げます!』なんだ、緊急事態でも起きたか?」

3人の会話を遮ったのは近衛兵だった。彼は膝をついて目の前の将軍達に報告を行った。

「大梁義勇軍?」

「はっ。その軍と曹操軍の将・夏候淵殿から援軍要請がきております」

彼の報告によると、義勇軍が駐在する陳留近くの街に黄巾党が大挙襲来。陳留の刺史曹操は部下で神速を誇る夏候淵と典韋を大将に少数の援軍を派遣したものの、苦戦中で曹操自らが援軍を要請したという事だった。

「織田!出陣となれば私も連れて行ってくれるのだろうな!」

「火急の援軍やろ!この『神速の張遼』も連れてってくれんやろな!?」

霞に抱えられていた腕をふりほどいて元気になったのは華雄。霞も身を乗り出して期待に満ちた眼差しをこちらに向けて来る。

「あー、分かったわかった。お前らも連れてってやるから準備しとけよ・・・ってもういねぇし」

舞人が言いきる頃には2人とも砂塵を巻き上げて兵舎のほうに走って行ったあとだった。自分の隊の兵を召集しに行ったのだろう。

「俺も準備するか・・・」

舞人も頭を掻きながら自室に向かって歩いて行った。


 
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