焼け落ちた亡霊なんぞ追いかけず今ここに居るこの俺を見ろ
お前のその八重の仮面の下にある痛みをすべて抱きしめる今
言の葉の地金まで沁み渡るとき生まれしものを心とぞいふ
安らなる旅も道連れ隣り合い歩みてしがな紅く燃ゆ山
落葉の積み重なりて涙雨ふるる心をこそゆかしけれ
あかねさす君が残せし風車巡り会えると松風の吹く
来ぬひとを待宵草の咲く季節巡り巡りてまた会う日まで
解くならばお前の髪紐、細腰の君の帯紐、秋の夜長し
いくさ場で果てるなら是本望と背中合わせの恋するふたり
キシキシとあいつがつけた足あとをたどって歩く雪が冷たい
今日は俺が誉を取ってきたのだからお前が先に布団に入れ
南天の実は魔除けになると聞くお前と思って眺めている
遠い遠い「いつか」をふたり隔たれた世界で待つことだけを許して
赤、黄色、淡い藤色、ひとつまみ。金平糖を舌に転がす。
ほろほろと溶けて崩れる砂糖菓子優しい甘さだけを残して
慰みにくゆる煙の向こう側君の姿は小さく揺れる
(祥子先生『【余話】一幕 いとしと書いて藤の花 四場・五場』を読んで)
俳句
冬籠り耳をくすぐる声いとし
〈了〉
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にか薬増えてくれ頼む
2016年1月12日 21:17