ロックマンゼロの二次創作小説です。
四天王の一人レヴィアタンをメインとしたストーリーとなります。
・とあるミッションを依頼された彼女は、氷の扱いに特化したレプリロイド銘柄“アイスガーディアン”達と接触する。彼らには人間に虐げられた過去があった。
復習とエネルギー資源確保のため彼らは人間を捕らえて生け贄にしていく。残虐な敵組織“アイスガーディアン”に、ネオアルカディア四天の一人、妖将が挑む。
では、次ページからが本編です。
ここはネオアルカディアから少し離れた所にある、とある海。
さざ波の音が至る所で響き、綺麗な水が光を放っている。
青い水面に眩しいほど輝く太陽の陽光が降り注ぎ、海上はキラキラと輝いていた。
水質は相当綺麗なようで、上から見て水の底まで透けて見渡すことが出来る。
そんな澄んだ煌めく海の中を、一人の少女が泳いでいた。
細い腕で水面を巧みにかきわけて水中を美しく舞っている。
少女の頭部にはヒレのようなパーツが2つ付いており、まるで水中の生物を模しているかのようだった。
水の中をかろやかに舞うその姿は人魚を彷彿とさせる。
「フフ、やっぱり水の中を泳ぐのは気持ちいいわね」
遊泳していた少女の口から嬉しそうな声が漏れる。
水中を泳ぐ行為を好む彼女は、今こうして自由気ままに泳いでいる時間が幸せなのだ。
彼女の名は、レヴィアタン。
ネオアルカディアの四天王の一人で氷を操る少女だ。
その美しい外見と振る舞いから、彼女は妖将と称されていた。
「さぁて、もうひと泳ぎしてこようかしら」
彼女は身をかがめて泳ぐ体勢を作り、再び腕で水をかき始める。
今、彼女はフリーの時間を使って海中遊泳を楽しんでいた。
水と触れ合うのが好きなレヴィアタンはフリーな時間によくこうしてここに泳ぎに来ているのだ。
透き通る綺麗な海で彼女は優雅に泳ぎ回る。
「ひゃっはぁ!」
楽しそうな笑い声と共にレヴィアタンが水を切り裂き海中を高速移動する。
その様子は、澄んだ水のおかげで上から明瞭に見渡すことが出来た。
まあ実際にその姿を見ることが出来る者は空を滑空している鳥達ぐらいだが。
「ウフフ、たまらないわね」
レヴィアタンは満足そうな笑みを浮かべて楽しそうに水を感じながら泳いでいる。
澄むほどに綺麗な水は彼女をとても気持ちよく、気分良くさせた。
「あーもう、楽しくてたまらないわ」
レヴィアタンは海をまるで自分のテリトリーかのように自在に泳ぎ回る。
彼女はこの広大な自然の産物である海をも、自在に自分の遊び場にしてしまえるのだ。
「きゃははぁ!」
彼女の笑い声と共にウェーブが起き、派手な水しぶきを上げる。
彼女にとってここは子供の遊ぶ砂場のようなものなのだ。
「フフフ、きっもちイイ!」
レヴィアタンは爽快な笑顔で水底へと潜っていく。
水かきが上手な彼女は瞬く間に海の底まで到達した。
海底では美しい珊瑚礁や魚たちが彼女を迎えてくれる。
レヴィアタンは頬を緩ませて優しく魚にタッチした。
「あはっ、可愛い子ね」
レヴィアタンは海の生き物なら小さい魚から大きなシャチなどに至るまで愛しく可愛いと思える優しい子だ。
任務中は時には残酷になることもある彼女だがいつもの暮らしでは海の生き物たちに深い愛情を持っている。
「あら、何かしら?」
レヴィアタンは、ふと底の方にぽっかりと開いた穴を見つけた。
ただの穴ではなくそこだけ大きめな穴が開いている。
「何かしらこれ……、こんな大きな穴、今まで見たことないわ」
彼女は今までに何度もこの海で泳いでいるが、こんな大穴は目にした事がなかった。
穴の中はかなり薄暗いが、外から見る限りでは奥深く続いているように見える。
「なんだろ………入ってみようかしら」
好奇心旺盛な彼女は穴の中がどうなっているのか気になった。
普通の少女なら気味悪がってこんな所にはまず入らないだろうが、彼女は恐れることなく穴の中に入っていく。
穴の向こう側は道が続いており、かなり奥の方まで伸びていた。
レヴィアタンはとりあえず穴の奥深くまで泳いでいくことにする。
するとしばらくして彼女は穴の出口までたどり着いた。
「出口だわ、あ………こちらにも海が続いてるのね」
穴を抜けた先には海が続いていた。しかしこちら側の海は海と海上の境目が無く、光がほとんど入っていない。
「天井が岩になってるのね……っていうことはここは海底洞窟かなにかかしら」
レヴィアタンは辺りを見渡す。
どうやら道はまだ奥へと続いているようだ[newpage]道はさらに奥へと続いている。
レヴィアタンは先へと進むことにした。
こちらの海には光が岩肌の僅かな穴から微量にしか入らないため魚の数は少ない。
光量が著しく少ないため、普通の魚では生きられないのだ。
そのため、ここではこれまでに見たこともないような不気味な異形をした魚が彼女を出迎える。
「フフ、いい子ね」
しかしそんなことはなりふり構わず彼女は優しく魚にタッチする。
彼女は海の生き物たちに本当に優しい子なのだ。
洞窟の中は光がほとんど無く薄暗いが、かろうじて辺りの景色を見渡すことが出来る。
彼女の回りの壁は岩肌がのぞき、所々入りくんでいる。
レヴィアタンは入りくむ地形もお構いなしに華麗に泳いでいく。
「あ……何か見えてきたわ」
彼女の前に一つの大きな穴が姿を表した。
先ほどの物よりも大きな穴だ。
「洞窟……かしら?さっきよりも大きな穴ね」
レヴィアタンは少し考えてからその穴へと入っていった。
「中はどうなっているのかしら?」
やはり興味津々な彼女は中が気になるらしい。
彼女が中に入ってしばらく泳いで行くと、前方の上方に僅かな明かりが見えた。
どうやらあそこから陸に上がれるらしい。
レヴィアタンはその淡い光の元へ向かう。
バシャっ、と水音を立てて、彼女は水面から顔を出した。
「ふぅ、結構奥まで来たわね。ここは……」
辺りを見渡すと、岩肌に包まれた入洞だった。
天井から岩が伸びた入洞道が先へと続いており、奥へと伸びている。
「入洞…?こんな所に入洞なんてあったんだ」
彼女はたまにこの辺りの海に来るが、このような入洞を見たのは初めてだった。
不思議に思うレヴィアタンだが、同時に興味が沸く。
「面白そう。先まで進んで見ましょう」
やはり興味から先が気になる彼女は、奥へと進んでいった。
『torurururu……』
「!」
その時、不意に彼女の持つ携帯端末が鳴った。
彼女は懐から端末を取り出して確認する。
着信情報を見ると、ネオアルカディア本部からだ。
同じ四天王のハルピュイアからかかってきている。
「はい、私よ。何かご用かしら」
『レヴィアタン、休暇中の所悪いな』
通信の向こうからハルピュイアが軽く断って話した。
「なに?もしかして緊急事態でも発生した?」
『いや、そんな急を要する問題じゃない』
「じゃあ何で今連絡するわけ?」
今彼女は余暇を楽しんでいる最中だ。
わざわざその折に連絡を入れてきたのだから、何か訳があるのだろう。
『今お前は調度W地区に行っているだろう?その付近に不審なエネルギー反応があってな』
「不審なエネルギー反応?」
『つい先程本部にW地区の警備班から報告が届いたんだ。深海を警備捜査していた所に、アーランド海域の深層から稀有なエネルギー熱量データが観測されたとな』
今彼女がいるのはそのW地区のアーランド海域である。
ちなみにハルピュイアがそれを把握しているのは、彼女が本部に提出した休暇届に余暇先を記入しているためだ。
『エネルギー熱量の基準値を大幅に上回っていたそうだ』
「……ふぅん。何かやばい物でもあるのかしら」
『まあそれが危険性のある物かは現時点ではわからないが。そのままにしておくわけにもいくまい』
判断を保留してハルピュイアは続ける。
『まあ悪い可能性ばかりでもないだろう。エネルギーを多大に含んだ資源が埋まっているという事も有り得る』
「確かにその可能性もあるかも。もしそうなら、喜ばしい発見になるわ」
エネルギー資源はネオアルカディアにとって需要度の高い渇望品だ。
現在のネオアルカディアでは、エネルギー不足問題が深刻化している。
もし、今回観測されたエネルギー反応がレアなエネルギー資源なら、自分たちにとって有益な発見になるだろう。
『ところで、お前は今そのアーランド海域に行っているそうだな』
「あー、なるほど。そういうわけね」
彼の意図を察して彼女は軽くため息をつく。
「それで私にその反応先を調べてこいと?」
『休暇中な所悪いと思うがな。だが、お前はちょうどそのポイントに行っているところだし、お前に任せるのがいいと俺が判断した』
高エネルギー反応ポイントの探索は緊急案件ではないが、重要度の高い任務でもある。
仮にそれがレア資源だった場合、ネオアルカディア以外の勢力に先に奪われれば大きな損失だ。
そのためその辺りのパンテオン兵や戦闘力の低い下級のレプリロイドを向かわせるわけにはいかない。
あいにくとアーランド海域周辺は辺境な事もあって、ネオアルカディアの管理体制が手薄だった。
海を守護するのは冥界軍団の担当だが、現在この海域にボス級レプリロイドは配置されていないのだ。
「ま、確かにここは私達の管理が行き届いていない地域だし、今ピンポイントでここにいる四天王の私が行くのが――適任だと私も思うわ」
せっかくの余暇中なのに癪だけど、とは口にしなかったが胸中では愚痴をこぼすレヴィアタン。
『頼んだぞ。だが、さっきも言ったがこれは切迫した緊急性のある案件じゃない。まあレア資源だった場合は他の勢力に取られると困るがな。だから、お前も肩肘を張って任務に臨む事はない。余暇の合間に周辺を調べて、反応の元が何かを調べる程度でいいだろう。もしそれがレア資源なら、回収すればいい』
「ええ、そうね。そこまで即急なミッションじゃないし、私も休暇を楽しみながら探索させてもらうとするわ」
楽しい休日を任務に侵食されるのは正直好ましくない。
だがネオアルカディア四天王として、都市に利益のある事なら率先して彼女は案件をこなす。
その辺りの意識は、若干14歳程度の年齢とはいえさすがに妖将といえるものだった。
まあ、先程の海中探索に夢中になってその興じを探索ミッション中も現在進行形でやろうとしているところは歳相応だが。
『では、頼んだぞレヴィアタン』
ハルピュイアもわかっているのか、そんな彼女を咎めることなく通話を終了した。
陰でキザ坊やと言われる彼も、逆に彼女のそういう所は同様に把握しているのだ。
「ふぅ、仕事が増えちゃったわね。ま、今調度探索中だし、楽しませてもらうわ」
レヴィアタンは重要なエネルギー反応探索を、海中遊泳探索と並行して進める事にした。
今興じている未知の探索と根底の妙味は同じだからだ。
彼女は中断していた入洞進出を再開し、道の奥へと歩を進めた。
「あら、あれは………」
しばらく入洞を歩くと、前方は壁になって行き止まりになっていた。
しかし、そこへ近付いていくと、そこは行き止まりではなくちゃんと扉があった。
「こんな所に扉が……いったい誰が作ったのかしら?」
この扉は明らかに人工物だ。
どう見ても自然に出来たものではない。
「…まあいいわ、開けてみよっと」
やはり先がどうなっているか気になるレヴィアタンは、誰かが作ったと思われる不自然な扉のことはさして気に留めず、開けて中に入ることにした。
ガチャリ
扉を開けると、そこは雰囲気が違っていた。
ゴツゴツした岩肌の道ではなく、明らかに人工的な通路が現れた。
扉から岩肌は途切れており床に赤い絨毯が敷き詰められている。
左右は白い壁になっており、整備された綺麗な道となっていた。
壁にはランプが付けてあり、灯りのおかげで周囲は普通に明るい。
「何、ここ……?」
違和感のある場景にレヴィアタンは不思議に思う。
こんな海の底にこんな場所が造られているなんて。
もちろん、海底に基地のような建造物があるのはおかしなことではない。
ネオアルカディアのような発展都市ならば海底要塞が設置されているのが普通だ。
だがここはネオアルカディアのような都市ではなく、辺境の海底。
(人が住んでない地域の海底にこんな施設があるなんて。いったい何故――?)
彼女はこの空間に違和感を抱きつつ、先へと進む。
この場所は誰かが何かの意図で造ったのだろう。
こんな海の底でする事といえば……?
「海中レストランでも開いている、とか?」
ふと彼女はそんな事を呟いてみる。
海の奥底で海中レストランを運営して、物珍しさでお客の好奇心を引くのが狙いなのではないか?
深海の景色を窓から眺められるようにすれば、それはとてもレアで興味をそそられる。
実際彼女は今そういった可能性に関心を抱かされていた。
「フフ。まさか、ね」
自嘲するようにレヴィアタンが笑みをこぼす。
そんな馬鹿気た事のためにこんな施設を造るわけがない。
自分ともあろうものが随分ぶっ飛んだ妄想をしたものだ。
戦闘馬鹿じゃないんだから。
彼女はしばらく歩みを進めた。
少し行くと一度曲がり角があり、そこを曲がると道幅に余裕が生まれる。
相変わらず通路は綺麗に造られていて、絨毯が敷き詰められた道は優美だ。
壁にかけられたランプが温かい灯りを放っており雰囲気を出している。
「ここ、すごく綺麗なところね。こんな深海にあるとは思えない環境だわ」
ここは意匠が凝らされているらしく、さながら高級ホテルのような洋装だ。
ネオアルカディアにあるような海底施設とは趣が異なっている。
優美な造りに彼女は若干うっとりしながら歩みを進めていた。
ふと、前方の壁沿いに一つの扉が見えた。
何かの部屋だろうかと彼女は近付いていく。
寄って見ると、扉には【in use】とプラカードが付けられていた。
「何かしら。使用中って事は………」
中に誰かいるのだろうか。
不思議そうにプラカードの表示を見るレヴィアタン。
すると、彼女の耳に何かの音が聞こえた。
部屋の中からだ。
(これは……誰かの話声……!)
扉の奥から聞こえてきたのは人の話す声のようだった。
彼女は耳を寄せて中の状況を窺う。
『いかがにゃん?みーのデザートのお味は』
『最高ニャ。肉の筋がとても繊細ニャ』
『そうかにゃ。それは良かったにゃ』
(…………)
扉の奥から誰かが会話している声が聞こえてくる。
何故か語尾が猫口調だ。
『相変わらずここの料理は絶品ニャ。前菜もディッシュもデザートも美味しいニャ』
『光栄にゃ。料理人冥利につきるにゃ~』
(……何で猫みたいな語尾つけてるの??)
不思議な語調のやりとりにレヴィアタンは不思議がる。
どうやら料理を食べているようだが、何故猫調で話しているのか。
気になった彼女は喋り手の姿を確認して見たくなった。
扉に手をかけて、開くか確認してみる。
どうやら、鍵はかかっていないようだ。
カチャリ
彼女は慎重に音を立てないよう扉をそっと開ける。
1cmほど隙間を作って、中を確認できるようにした。
彼女が隙間から中をのぞくと、喋り手の姿は口調から想像できる通りだった。
(あれは、ねこ……?)
机に一人、いや一体のレプリロイド?が腰掛けている。
猫っぽい姿をしていて黒いシルクハットをかぶっていた。
肌は灰色グレーで顔の三本ヒゲが決まっている。
大きさは普通の人の半分くらいの身長だ。
確認できる猫は、机に座っている者と、もう一人脇に立って控えている者がいる。
おそらく料理を運んでくるウェイターの役割を担っている者だ。
黒いタキシードに身を包み、落ち着いた様相で佇んでいる。
彼?も同じく顔が猫のようなので、同族だろう。
(ほんとに猫だったなんて。いえ、正確には猫型のレプリロイドだけど)
意外な正体にレヴィアタンは意表を突かれる。
彼女は、まさか口調通りに猫がいるとは思っていなかったのだ。
ただし、この者達は動物の猫そのものではない。
タキシードの猫は普通に二本足で立っているし、二匹とも言葉を喋っている。
そして、よく見ると彼らの体の関節部には継ぎ目があった。
毛の部分も皮膚のように見えるが、光沢が帯びているため、毛皮に似せた装甲のようだ。
つまり彼らはレプリロイドである。
猫の風貌をとっているのは彼らが猫をモチーフに造られたからだろう。
(どうしてこんな所で猫レプリロイドがディナーコースを味わっているのかしら)
見た所この猫レプリ達は正装で料理のフルコースを楽しんでいるようだ。
いくつかの料理と、高級そうなワインが置かれてあるのを見ればそれがわかる。
彼女は疑問に思いつつも、彼らの観察を続行した。
ちなみにこちらの事は気付かれていないらしい。
レヴィアタンのいる方には全く目もくれず、猫レプリ達は会話をしだした。
『ところでミレイア、あれの状態はどうニャ?』
『あれって何にゃ?』
『あれって言ったらアレニャ』
『にゃるほど、アレにゃね』
立っている方の猫が理解したというふうに頷いた。
『地下3階のアレにゃん?』
『そうニャ。首尾はいかほどニャ』
『快調にゃ。あと2人で必要分のエナジーが溜まり切る予定にゃ』
『それは良い知らせニャン。もうすぐエナジーの永久輪廻が誕生するニャ』
(な……エナジーの永久…輪廻ですって?)
気になる言葉が聞かれ、レヴィアタンは目を見開く。
エナジーの永久輪廻という事は、どういう事か。
まるでエナジーが消費されずに使い放題出来るような言い回しだ。
『あれが完成すれば僕らはずっとエナジーで満たされる事が出来るニャ』
『そうにゃ。困窮から解放されるのと同時に気分も快活でハッピーになれるにゃ』
『そして”無限エネルギー”の後ろ盾が出来るのもデカいニャ。今後のクーデターの際にエネルギー供給が切れる心配がなくなるニャ』
(クーデター……?)
『その通りにゃ。これでネオ・アルカディアの愚民どもを駆逐できるにゃ』
『エネルギーの供給切れさえ解消できれば、ネオアルカディア殲滅もかなりの確率で達成可能になるニャね』
(な……!?)
彼らの口から思いもよらぬ話がでた。
ネオアルカディアに対する攻撃を予期させる話が。
レヴィアタンは聞き捨てならない話に思わずフロストジャベリンを握りしめる。
(ネオアルカディアを、殲滅するですって??)
人間とレプリロイドが共存する、理想郷であるネオアルカディア。
ネオアルカディア四天王の一人である彼女は、この都市を誇りを持って敬愛している。それが貶められた。
いや貶められたどころか侵略攻撃を計画されているらしい。
都市を守護する妖将として、彼女が黙っていられるはずはなかった。
(ゆ、許せない…!私達のネオアルカディアを侮辱するなんて。そればかりか、殲滅するですって??)
ギュッと手に力を込め、彼女はドアを開けて飛び込もうかと思った。
だが、今出ていくのは短期に損気だ。ここで一気に敵を倒して討伐するよりも、今はここで彼らの話から情報を得た方が益が大きい。
彼女は怒りを覚えながらも、冷静さを持って逸り気を抑えた。
構えたロッドを一旦下げて彼女はまた監視体制へ戻る。
だが、隙間から奥を見つめる妖将の顔は怒りを抑え切れずに睨みで歪んでいる。
『永久輪廻炉が完成したら、精聖キロハッシュ様もきっとお喜びになるにゃ』
『ファシュロカ タファテラス両雄もさぞ感嘆されるだろうニャン』
『だろうにゃ。そうなれば完成に携わった僕の貢献が認められて、さらに僕のボディ・ICチップを改良して知能・容姿アップをしてくださる事が期待できるにゃん☆』
『下心ありありニャね、ミレイア。ま、そうなるといいニャン』
『ふふふっ、にゃん。さて、では最終整備があるからそろそろ地下3階へ戻るとするにゃ』
ミレイアと呼ばれるタキシード姿の猫の方が、持っていた盆を机に降ろした。
皿の上にはこんがりと焼けた肉が湯気を立てて置かれてある。
『なので今日の所はこれで締めにゃん』
『了解ニャ。もっと食べていたかったニャン』
『ありがとうにゃん。まあまた明日たらふく食べさせてやるにゃん』
料理を惜しまれてミレイアが満足気にはにかんで見せる。
『今からずっと缶詰ニャン?』
『そうにゃ。今日中に輪廻炉の最終チューニングを終わらせる予定にゃ』
『ご苦労な事ニャ。つまり、明日には“侵攻”の準備が整うという事ニャね』
『その通りにゃん』
(……!な、なんですって)
猫たちの会話にレヴィアタンは動揺を隠せない。
ネオアルカディアへ侵攻する準備が明日にも整うというのだ。
彼らの言う永久輪廻炉はエネルギーの消費をなくし、無限に生み出すというとんでもない代物。
もちろん彼らの話がはったりではなく本物だったらと仮定しての話だが。
しかし、ハルピュイアの報告にあった異常なエネルギー反応を鑑みるなら、信憑性はある程度あるだろう。
その画期的な発明を、彼らは軍事目的で利用しようとしているらしい。
それもネオアルカディアへ向けて、だ。
(もし本当だとしたら、見過ごせる事態じゃないわね。ここで私が止めないと)
彼女は再びフロストジャベリンを握りしめる。
だが、まだ踏み込むのは早い。
本当に永久輪廻炉なる物が実在しているのかどうかを確かめるのが先だ。
これが彼らの妄言だったという可能性もあるからである。
(まずはこのミレイアっていう猫ちゃんの後をつけさせてもらおうかしら)
この雄猫は今から輪廻炉の元へ出向くようなので、彼女はそれを尾行してみる事にした。
そこでもしそれがあったならば、事は急を要する事態になる。
『じゃあロッテ、僕はお先に失礼するにゃ』
『バイニャン。明日の完成を楽しみにしてるニャ』
挨拶を交わすとミレイアは扉の方へと足を向けた。
レヴィアタンがいる扉の方へ。
(やば、こっちに来る……!)
彼がこちらへ来る事を予期していた彼女は既に扉を閉めていた。
だが他に隠れられる場所が見当たらない。
足音が扉の元へと近付いてくる。
コツコツコツ
ガチャリ
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四天王の一人レヴィアタンをメインとしたストーリーとなります。
・とあるミッションを依頼された彼女は、氷の扱いに特化したレプリロイド銘柄“アイスガーディアン”達と接触する。彼らには人間に虐げられた過去があった。
復習とエネルギー資源確保のため彼らは人間を捕らえて生け贄にしていく。残虐な敵組織“アイスガーディアン”に、ネオアルカディア四天の一人、妖将が挑む。