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SAO~帰還者の回想録~ 第16想 デスゲーム、スタート

本郷 刃さん

キリト達が辿ったSAOでの軌跡がいま、明かされる…

※一人称は全て過去回想となります

2018-04-12 14:53:26 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:12793   閲覧ユーザー数:11082

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SAO~帰還者の回想録~ 第16想 デスゲーム、スタート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

過去の自分に関わる景色や出来事が移り変わるように流れていき、和人の過去の風景は彼が中学二年生の秋にまで進んだ。

中学校に入学した彼はより一層勉学や武術などに励み、その一方で自分の好きなことや趣味であるゲームや機械弄りにも没頭していた。

それは彼の親友達であり仲間でもある同門の面々は勿論、中学二年生になり新たに加わった二人の姉貴分である雫と奏も同様だった。

 

男性陣は類稀な運からか全員がVRMMORPG『ソードアート・オンライン(以降SAO)』のベータテスターに受かった。

また、雫と奏の二人はそれぞれ親の会社に対して商売の宣伝としてベータテスターの枠が設けられていた。

和人達がプレイしていることを知り、まだ会社や家族が誰もプレイしていないことも知り、

雫と奏は珍しく家族に強請ってベータテスターとしてSAOをプレイし始めた。

 

そして、SAOのベータテストが終了し、2022年10月31日にゲームメーカーの『アーガス』から正式版のSAOが発売された。

 

(ついにここまで来たか。現実ではどれくらいの時間が経っているか分からないが、少なくとも数日は経過しているところだろう。

これが俺の意識を表層に呼び覚ます為のものなら、むしろここからが本番のはず、果たしてどれくらい掛かるやら…)

 

この先のここまでよりもなお濃い出来事、それをこれから再び見る形で体感する事になる。

 

(だがまぁ、これも必要な事ならどうということはないな。

桐ヶ谷和人()キリト()となり、そして大切な物をたくさん手に入れた物語なんだからな)

 

これはゲームであってゲームでない、もう一つの現実を駆け抜けた戦士達の、激動の物語である。

 

No Side

 

 

 

 

キリトSide

 

ついさっき別れた野武士面が良く似合う気の良い男、クラインは彼の仲間の所へ向かい、俺は一人になった。

俺がベータテスターと気付いても一切の負の感情を持たず接してくれた彼と、

きっと同じで気の良いだろう彼の仲間が無事であることを願う。

 

「俺も行こう」

 

仲間達のことは気になるけど、みんななら大丈夫だと信じてる。いまは優先事項をこなすことからだ。

 

『始まりの街』の路地を駆け抜け、一気に門を通り抜けて目的地に向けてMAPをひた走る。

途中、何度もMob(モンスター)が出現して襲い掛かってくるが『ソードスキル』を使用したり、

上手く弱点(クリティカルポイント)を突いて即座に倒し、なるべく経験値を稼ぎつつ先を急ぐ。

木々の生い茂る森の中へ踏み込み、目的の武器を手に入れる為の行動を起こす。

 

 

 

GM(ゲームマスター)の茅場晶彦により、このSAOがゲームをクリアするまでログアウト不可能となり、

一度でもHPが0になると現実世界でも死んでしまうデスゲームと化したことが宣言された。

現実世界でも影響は出ていて、ログアウトできないことから自らHPを全損させて強制ログアウトしようと実行した人、

不審に思った現実世界の家族などが無理矢理頭部の『ナーヴギア』を外したことで死亡した者などが続出していた。

この宣言に伴い、現実世界でもそれらの行動を制止させることにはなったが、約1万人の人間がデスゲームに囚われることになった。

 

茅場が姿を消すと、女の子と思われる声を発端に周囲は阿鼻叫喚に包まれた。

そこで俺は指導していたクラインに同行を勧め、けれどクラインには仲間がいて放っておけないからと別行動になった。

 

俺はベータテスターとして結果的に周囲の人達を見捨てる形で、

それでもこのゲームから生き残りクリアするためにスタートダッシュを切ることにした。

一先ず、ここから先の数階層にかけて非常に使える片手剣の『アニールブレード』を入手するために。

 

 

 

アニールブレードが入手できる『森の秘薬』というクエストを受けるために『ホルンカの村』に到着し、

そのクエストを受けることが出来た。

 

「クエストに行く前にレベルが少しは上がってるからスキルにポイントの割り振りと……そうだ、

 みんなにもメッセージを送っておこう」

 

注意を怠らなければ一人でも十分にクリアできるクエストとはいえ、ここはもうデスゲームなんだ。

余計な情報を取り入れないのも重要だけど、気がかりを放っておくわけにもいかないからな。

 

 

クラインへの指導の最中、俺は一度だけど始まりの街へ戻って仲間達と合流し、フレンド登録などを済ませていた。

そうすることでメッセージを送り易くなるし、現在地も把握が可能になって、皮肉にもいまとなっては生存の確認もできるわけだ。

だからこそ、街を出るまでは急ぎっぱなしだったから余裕はなかったけど、

村を見た限りでは少なくとも大勢のプレイヤーが来ているわけではないし、

ここに来る途中の様子でもいますぐに向かってきている気配はなかった。

アニールブレードの入手が困難になることもいますぐはないだろう。

 

 

そう判断して、宿屋の最初の村ということもあり激安の宿の一室で仲間達に状況の確認を始めとしたメッセージを送信した。

すると、以外にもすぐにメッセージが返ってきた。

 

『Re:全員に向けて、一先ず無事でなにより。俺もいまから両手剣武器の入手に向かう。みんなの無事を祈る』

 

志郎、ハクヤからだったな。

もう少し上の階層に行けばアイツの得意な《鎌》のスキルが入手できるから、いまはベータの時と同じく最初は両手剣で行くんだな。

 

『Re:同じく全員に、分かっていても無事で安心した。

 キリト、ハクヤ同様に私も曲刀で一番使える武器のクエストを受けたところだ。また後で会おう』

 

景一、ハジメだな。

こっちも《カタナ》スキルを入手するために《曲刀》スキルを上げる必要があるから、曲刀で使える武器を手に入れるんだろう。

 

『Re:みなさんへ、無事で良かったです。お三方と同じくここで一番使える槍の入手に向かってます。

 慎重に行くつもりなので心配は御無用です。みなさんもどうかご無事で』

 

烈弥、ヴァルは真面目だな。

最終的にはお得意の《薙刀(グレイブ)》スキルにするうえで、薙刀と同じく槍自体が彼の得意な武器でもある。

 

『Re:みなさんへ、こっちは大丈夫っす。みなさんも大丈夫で良かったっす。

 ボクもまずは片手棍ゲットしてきます。必ず無事に戻るっす』

 

刻、ルナリオはメッセージにも口癖を入れてるか、いまは逆に安心するな。

こっちも最終的には《鎚》スキルを得る必要があるし、

その為には一定以上の筋力と棍系スキルを高めておかないといけないんだったか。

 

『Re:全員無事だな、よしよし。俺はティアとカノンと三人で行動中だ。

 先に二人の武器を入手してから俺もアニールブレード取りに行く。絶対に無事でいろよ』

 

『Re:皆さんご無事で良かったです。

 私達は一人でも大丈夫と言ったのですが、シャインはどうしてもと言ったものですから、お言葉に甘えました。

 最初に私の短剣を取りに来ています。皆さん、必ず無事でいてくださいね』

 

『Re:みんな無事そうね、ホッとしたわ。ティアの短剣の後はあたしの細剣をゲットして、そのままシャインの剣を取る形ね。

 あたし達のことは心配しなくていいから、自分の身を一番に考えてね、お姉さんとの約束よ』

 

公輝、シャインと二人のお姉様方、雫さんことティアさんと奏さんことカノンさんは三人で一緒か。

三人の戦い方を考えるとこれなら安心だな、シャインは盾も使うし。それに、さすがはシャインだな。

ティアさんとカノンさんのことも考えて行動できて。

 

それに比べて俺は……いや、いま考えるのはやめよう、栓無いことだからな。

 

『全員、武器を入手したら例の宿に集合。全員で必ず帰ろう』

 

そうメッセージを送ると全員からほぼ同時に了解と返信が来て、それを確認して俺も武器を得る為にクエストの為にこの宿を出た。

 

 

 

結果的に言えば、俺は『森の秘薬』クエストをクリアし、アニールブレードを入手できた。

だが、正直なところあまり良い気分にはなれなかった。

 

〈リトルネペント〉というMobの内、花付きと呼ばれる個体がドロップする胚珠が必要なアイテムなのだが、

それ以外に実付きと呼ばれる個体の実を破壊することで同じMobを引き寄せる場合もある。

 

俺の前後に来たのだろうベータテスターらしきプレイヤーが花付きと相対しており、その足元には実が落ちていた。

そのプレイヤーは少しばかり苦戦していた様子だったが、

俺を視認するとあろうことか実を破壊し、Mobを出現させて俺の方へ向かってきた。

花付きを倒すとモンスターの群れをなすりつけようとしたが、動かずすぐに身を隠した俺には僅かな数しか襲い掛からず、

多くがそのプレイヤーの方へ向かっていき瞬く間に彼を蹂躙した。

モンスター・プレイヤー・キル(MPK)と呼ばれる行為だったのだが、彼の思惑は失敗して自滅してしまった。

 

俺は実を破壊しないようにネペント達を殲滅し、最終的に新たに出現した花付きを倒して胚珠を手に入れた。

プレイヤーが死亡した際、アイテムはその場にドロップされる。

死んだプレイヤーのものである胚珠を手に入れておけばシャイン達は安全にアニールブレードを入手できると思うが、

自業自得かもしれないが、それをする気にならずに俺は彼が死んだところに胚珠を置いて名も知らぬプレイヤーを供養した。

しばらくすれば消滅する以上、他のプレイヤー達に奪われることはないはずだからな。

 

そんなこともあり、少しとはいえ意気消沈してしまった。

初めてこの世界でプレイヤーが死ぬところを見てしまったんだ。

跡形も無く消滅してしまい、茅場の言う通りなら現実世界で脳を破壊されて死んだということだ。

さすがに恐怖を感じずにはいられなかった。

 

「だが、いつまでも落ち込んでる場合じゃないな……みんなと合流しに行こう」

 

現実世界では感じることがほとんど無かった死への恐怖を覚えながら、それでも生き残るために仲間と集まる場所へ行く。

覚えてしまった新たな感情(・・・・・)に目を背けながら。

 

 

 

 

「一番乗りはヴァルか。改めて、無事で良かったよ」

「お互い様です、キリトさん」

 

辿り着いた待ち合わせ場所の宿にはヴァルが一人で待っていたし、彼の反応からしても俺が二番目で間違いなさそうだ。

他のみんなはまだのようだが…いや、誰か来たな。

 

「お、キリトとヴァルが来てたか。そこでハジメと会ったんだ」

「……メッセージや位置情報での確認よりも、直接会う方が安心できるな」

 

ハクヤとハジメが二人で来た。確かに直接会った方が安心感も大きいな。

 

「到着っすね~、あぁみんなよかったっす」

 

ハクヤ達から遅れる形でルナリオが入室し、俺達を確認するとこちらもホッとしたようにゆっくりしだした。

あとは三人だけど一緒だから多分大丈夫だと思うが、順番に回ってるはずだし少し時間が掛かるだろうな。

案の定、数十分が経過した頃にメッセージが届き無事に武器を入手できたことが伝えられ、

また十分ほどが経ったら三人が到着した。

 

「まぁ、ただいまって言っとくぜ。ホント、全員生きててくれて良かったよ」

「ただいま戻りました。ご心配をおかけしたと思いますが…」

「ただいま。みんなも大丈夫そうね」

 

シャインとティアさんとカノンさんがやや疲れたような表情を見せながらも、ちゃんと微笑んで言葉をかけてくれた。

これで全員が無事に揃ったわけだな。

 

「全員の無事を喜びたいところだが、まずは状況や情報の確認を済ませようと思う…よし、それじゃあ色々と整理していこう」

 

俺の提案に疲れを、いや精神的な疲れを表情に浮かばせながらだけど同意してくれたので、

俺達はこれまでの状況と情報の整理と共有を行うことにした。

 

ウインドウを操作してログアウトの表示が無いことを改めて確認し、

今度は顔を見せずに赤いローブを纏い茅場晶彦と名乗った者が本人なのか、

本当にSAOで死んでしまえば現実世界でも死んでしまうのか、などを話しあう。

 

「確かに赤ローブは茅場晶彦って名乗ったが、本人なのかって考えると怪しいとも思うな」

「素顔を隠す理由が無いはずですよね? 顔を明かすくらいはしてもいいと思います」

「……茅場晶彦を語る偽者か、あるいは…」

「姿を露わにしない、または露わに出来ない確かな理由がある…ってところっすね」

「俺の主観的な考えで良ければ聞くか?」

「頼むぜ、キリト」

 

男性陣の意見に対して彼らが頷いてシャインが促し、黙っていた女性二人も頷いたので俺の考えを話す。

 

「ハクヤとハジメが言ったように偽者の可能性も無くはないが、俺はあの言動や今回の行動から茅場晶彦本人で間違いないと思う。

 奴の記事や情報は何度か雑誌やネットで見たことがあるし、その際の発言や街での宣言と比較しても本人と遜色なかった。

 一応、茅場晶彦以外にも彼に匹敵する天才は日本に居て全員が奴と面識があるけど、

 彼らには少なくとも俺が知る限りの情報じゃ動機が無かったと思う。

 

 そして、姿を露わにしないのは間違いなく理由があるからだと思う。

 そこはGMとしてなのか、ラスボスだからなのかは分からないけどな」

 

あとは勘もあるけど、と付け加えるが仲間達にとってはその勘こそがある種の確かなモノの一つでもある。

実際、男性陣はなんとなくだけど赤ローブは茅場晶彦本人だと感じていたはずだしな。

 

「少なくとも、この事件を引き起こしたのは茅場晶彦さんで間違いなさそうですね」

「ええ。現状はそういうことにしておいた方が余計なことを考えなくても済みだものね」

 

ティアさんとカノンさんの言う通り、あくまでも仮の話であって本当に茅場晶彦だと確定したわけではない。

そして本人だったとしても、犯人が解っているのなら余計な考えを持たないで済むのもその通りだしな。

 

「それでキリト君、実際のところどうなのかしら? ナーヴギアで、その……本当に人を、殺せるものなの?」

「茅場晶彦の設計した通りの性能(もの)なら、街で宣言したように人を殺すことが可能だと思います。

 嘘を吐く理由もなさそうですから」

「そう考えると、やはり本当に死んでしまうのですよね? 昏睡状態のまま、ということは有りえないでしょうか?」

「それも可能性として無くはないと思いますけど、ほぼ0に近いと思います。奴の言葉が全て事実なのだとしたら…」

「そう、か…」

 

カノンさんとティアさんの意見に個人的なものだが答えて、シャインの力が抜けたような言葉が漏れた。

みんなも精神的にだいぶきているみたいだし、俺自身もあまりよくない。話し合いを早く済ませよう。

 

 

「次はゲームの状況と情報を整理しよう。クエストの細部やモンスターの行動パターンに変化はなかったか?

 ちなみに『森の秘薬』クエストに変化は無かったが」

「俺が会ったモンスターにもクエストにも変化はなかったぞ」

「……同じくだな」

「僕が感じた限りではありませんでしたよ」

「ボクの方もなかったっす」

「俺はキリトとクエストが同じだからなぁ。少なくとも感じるところはなかったし、モンスターにも変わったとこはなかったぜ」

「短剣のクエスト内容も変化なしでした。モンスターに関してはベータ時代で戦ったモンスターに限ってなら異常は無かったかと」

「こっちのクエストも一緒だったわ。モンスターはみんなと同じ感じね」

 

なるほど、各自の判断で見てもいまのところは変化はなしか。

 

「じゃあ現状は変化無しということで。ただ今後も覚えてる限りのクエストやモンスターは変化がないか確認しよう」

「俺達の知らないクエストの確認はどうする?」

「そちらはアルゴさんや他のテスターの方々と協力して行うというのはどうでしょうか?」

「だな。俺達だけで出来ることじゃないからな」

 

ハクヤの問いかけにティアさんが提案をしてくれたのでシャイン共々乗ることを決める。

 

「あとは、今後の方針を話し合おう。個々で動くか全員で動くか、どんな行動をするか、が主なところか」

 

いま話し合う必要がありそうなことは取り敢えずこれで最後だと思い、口にしたけど案の定みんなの雰囲気は重い。

まぁ、大体の方針は決まっているようなものだけど。

 

「話しを切り出した以上俺から言う。ベータテスターとしての知識もあるし、攻略のためのレベリングをしながら情報収集もする。

 外からの救出は期待できないだろうし、すぐに行動を起こしておきたいからな。人も増えるだろうし、後手に回りたくない」

 

今後、間違いなくベータテスターを始めとして、多くのプレイヤー達がレベル上げのために狩場を求めるはず。

後手に回れば回るほどレベル上げに支障をきたし攻略に影響が出る。

 

「俺もキリトと同じだ。一層では出来るだけ遅れを出さない方がいいからな」

「……当然、私もだな」

「僕もです」

「スタートダッシュを逃す理由がないっすよ」

 

ハクヤもハジメも、ヴァルもルナリオも俺と同じ方針か。まぁここは当然ってところだろ。

勿論、それぞれの武器やモンスターの能力なども考えたらレベル上げの場所やクエストは変わるけどな。

あとはシャイン達だけど、どうするんだ?

 

「俺はレベル上げやクエストは受けるけど、ティアとカノンを優先したい。お前らとも、一緒に行動したいけどな…」

「何かあったら連絡するから、シャインは自分の方を優先しろよ。絶対にな」

 

俺達の安全を心配してくれるのは嬉しいし有難いけど、シャインには恋人のティアさんとその親友であるカノンさんのこともある。

二人は令嬢だし、それぞれの家族から頼まれているだろうしな。

 

「あの、私なんですが……どうしてもやりたいことがあるんです…」

「ティアさん、遠慮しないで言ってください」

 

シャインや俺達のことを気にしてか遠慮気味のティアを促す。

 

「はい。私はベータの知識を活かして、一時の間ですが女性や子供のプレイヤーの方々と行動したいんです。

 あの広場、女性も子供もたくさんいました。キリト君達がベータの知識で攻略に乗り出すのなら、

 私もせめて攻略の前に可能な限りのことは教えてあげたいと思ったんです」

「あたしもティアに付き合おうと思ってるの。これでもそれなりの家柄だしね、やれることはやるべきだと思うのよ。

 同性の人も小学生くらいの子供達が死んじゃうかもしれないのも、放っておけないわ」

 

さすがだと、立派だと思った。この二人は自分達の立場や可能な知識を使って色んな人を助けようとしてる。

俺は自分の中に芽生え始めてるこの感情(・・・・)を信じたくなくて、自分のことに精一杯になっているのにな…。

 

俺に彼女達の行動を止める権利もないし、是非やってもらいたいとも思う。

 

「俺もティアさん達を可能な限りのサポートは出来るようにします。

 狩りをしたらコル()も稼げますから、必要なものや情報があったら言ってください。

 でも出来れば、アルゴとの接触をお願いできますか?」

「はい、何かあったらすぐに連絡します。アルゴさんのことは任せてください」

「みんなも無理はしないでね」

「「「「「はい」」」」」

 

精神的に大変な人達を相手にするし、必要なものも間違いなく多いはずだ。

でもアルゴのことは頼みたいところだ。

情報屋を自称するアイツだが信頼できるヤツだし、間違いなくアイツの力が必要になってくるはずだからな。

 

「一層の間の俺達の拠点は取り敢えずここにしよう、風呂もあるしな。

 ティアさんとカノンさんも入りたくなったら来てくださいよ」

「はい、そうさせてもらいますね」

「勿論、使わせてもらうわ」

 

仮想世界とはいえ、女性にとって風呂は嬉しいはずだ。精神的な疲れも取れるかもしれないしな。

 

「一先ず、今日のところは休もう。俺も含めて、全員色々とあって疲れただろうし。

 揃ってロクでもないことに巻き込まれたが……生き抜こう」

「「「「「「「ああ/はい/ええ」」」」」」」

 

宿として利用できる部屋の中で女性二人をベッドに寝かせて、俺達は床で雑魚寝する。

どうかこれが夢であればと願いながら、それでも明日からの日々に備えて。

 

 

こうして俺達の命を懸けた長きに亘る、戦いの日々(デスゲーム)が始まることになった。

 

キリトSide Out

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

今回からSAO過去編となります、基本的には時系列順でキリトやアスナを中心に個人の視点で進めます。

当時の視点での一人称にしたのはこの方が書きやすいと思い、実際書きやすかったからですw

 

今話は原作、並びに本作でクラインと別れてから、アニールブレードをゲットした部分、

そして本作におけるオリキャラの仲間との合流部分でした。

 

名も知らぬプレイヤーですが、コぺルです………はい、コぺルなんです。

まず彼は既に誰かを犠牲にしてでも生きるという精神が原作でも根付いていましたし、MPKしましたからね。

まぁ原作でも本作でも《隠蔽(ハイディング)》スキルの意味を間違えていたために死にましたが…。

あと、キリトと会っていないのは仕様ですが理由もちゃんとあります。

本作のキリトはさっさと武器を入手しようとせず、先に仲間達との連絡を取る為に宿に隠れていました。

そこでコぺルと入れ違いになり、キリトはメッセージを確認していたので時間がかかったんです。

 

そしてメインの仲間達との合流、情報共有や今後の話し合いという形にしました。

キリト達の拠点は原作でキリトが泊まっていた風呂付きの部屋です、宿とは言ったが宿屋とは言ってないw

 

キリト達の行動ですが原作と変化なくレベル上げたり、クエスト受けたり、クリーム取ったり(笑)なのでそこら辺は書きません。

あと1層に限らずボス戦なども書きませんし、原作でのアスナの立ち位置は男共なので書くつもりはないですw

いや、淡々と真面目に事件解決しちゃうのでつまんなくなっちゃいますからねw

なのでそこら辺はダイジェストで書いていったり、補足していく感じになります。

メインはあくまでもSAO編でのオリジナル部分だったり、未交際のキリアスをイチャつかせることですから。

 

次回は黒戦における第1層でのアスナの話になります。

彼女に限らず、他にも何人か原作キャラ登場しますよ。

 

それでは、サラダバー!

 

 

 

 

 

 
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