No.939870 英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇soranoさん 2018-02-02 20:52:11 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1750 閲覧ユーザー数:1517 |
午後8:00――――
~演習地・デアフリンガー号・2号車~
演習初日の夜、生徒達がそれぞれの夜を過ごしている中リィン達教官陣はミハイル少佐に演習の状況を報告していた。
「ふむ………演習一日目はそれなりに順調だったようだ。Ⅷ組、Ⅸ組共に予定していたカリキュラムは終了……Ⅶ組の特務活動にしても一定の成果を上げたと言えるだろう。」
「ふふっ、そうですね。」
「ま、ガキ共とっても、俺達教官達にとっても初めての演習初日としては上出来の類に入るだろうな。」
報告を聞き終えたミハイル少佐の感想にトワは微笑みながら同意し、ランドロスも静かな表情で同意した。
「は~、しかしマジでどこかで聞いた活動みたいだな。」
「うふふ、奇遇ね♪レンも聞いた事がある活動ね、”特務活動”は♪」
苦笑しているランディの言葉にレンは小悪魔な笑みを浮かべて同意し
「―――生徒達3人もよくやってくれたと思います。思いがけない手助けがあったというのもありますが。」
「フフ……ですが、そう言った手助けがあった”運”もまた実力の内だと思いますわよ。」
静かな表情で答えたリィンの話に続くようにセレーネは微笑みながら答えた。
「ふふっ、まさかラウラちゃんやフォルデさん達までアルトリザスに来ていたなんて。他にも関係者がいるみたいだし、ちょっと心強いね。」
「フン、あまり馴れ合わないようにはしてもらいたいものだがな。」
「はは、そのくらいは構わないんじゃないッスか?……ただでさえ、キナ臭い気配がしてるみたいだし。」
トワの言葉を聞いて呆れた表情で注意をしたミハイル少佐に対して苦笑しながら指摘したランディは表情を引き締めて話を続けた。
「ああ……3箇所での人形兵器の出現―――特殊なタイプまで含まれています。サザ―ラント州以外を狙った陽動の可能性もあるでしょうが……念のため、各方面に要請して危機に備えた方がいいのでは?」
「それにシャーリィさんもアルトリザスにいましたし……人形兵器の出現とシャーリィさんがアルトリザスにいた事は偶然とはとても思えませんわ。」
「ふむ……」
リィンとセレーネの話を聞いたミハイル少佐は考え込み
「通信網の構築も完了しました。今なら各方面にも要請できます。」
「TMP以外だと、現地の領邦軍にエレボニア正規軍の司令部あたりか。遊撃士協会(ブレイサーギルド)が機能してりゃあ連携のしようもあるんだけどな。」
「まあ、それは無理な相談よ。エレボニア―――いえ、”革新派”のギルド嫌いは筋金入りだからね♪」
「クク、1年半前の内戦終結後のエレボニア帝国内に起こった混乱も結局ギルドに頭を下げずにテメェ達だけの力で治める程の”意地”を張っていたものなぁ。」
ランディの話を聞いてそれぞれ指摘したレンとランドロスの微妙に危ない発言にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「フン……ギルドはともかく。放たれていた人形兵器も少数―――大規模に運用されている気配もない。”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”の目撃情報があったとはいえ、猟兵団”赤い星座”の猟兵達のサザ―ラント州入りは確認されていない。各方面への連絡はしているし、本格的な要請の必要はないだろう。」
「で、ですが……」
ミハイル少佐の話を聞いたトワは反論をしようとしたが
「そのための第Ⅱであるというのも弁えてもらいたい。あらゆる場所のカバーは不可能だ。それを補うという意味でもな。」
「………………………」
ミハイル少佐の正論に反論できず、黙り込んだ。
「ったく、御説ご尤もではあるが……」
「……現時点の状況なら第Ⅱが備えるだけでも十分だと?」
「専用の装甲列車と機甲兵を擁し、こうして演習地まで構築している。新兵ばかりとはいえ、中隊以上の戦力はあるだろう。国際的な規模とはいえ、相手は所詮、犯罪組織風情―――それもトップや最高幹部の大半を失った”残党”共だ。何とでも対処できるはずだ。」
そしてリィンの指摘にミハイル少佐が答えたその時!
「アハハ、それはどうかなぁ?」
突如娘の声が列車内に響いた!
「なに……!?」
「せ、生徒の声じゃないみたいですけど……」
「クク、どうやらお出ましのようだな。」
「うふふ、演習初日で”これ”なんだから、今後の演習も退屈せずにすみそうね♪」
「御二人はどうして、そんな呑気な様子でいられるのですか……」
声を聞いたミハイル少佐が驚き、トワが困惑している中不敵な笑みを浮かべたランドロスと小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたセレーネは疲れた表情で指摘し
「この声は―――!」
声に聞き覚えがあるランディが立ち上がって厳しい表情を浮かべたその時、何かがぶつかり、爆発する音が聞こえてきた!
「これは―――!」
「対戦車砲(パンツァーファウスト)だ!」
音を聞いたリィンは目を見開き、ランディは音の正体を口にした。
~演習地~
リィン達が外に出る少し前、装甲列車や機甲兵は対戦車砲(パンツァーファウスト)によって攻撃され、煙をあげ、更に機甲兵は爆発の衝撃によって地面に倒れた!
「う、うわああああっ……!?」
「な、なんなの……!?」
「ああっ……!列車に機甲兵が……!」
突然の出来事に生徒達が混乱したり驚いたりしている中、列車から出て来たリィン達と共に出て来たトワは生徒達の元に向かって警告をした。
「危ないから離れて……!」
「くっ、どこだ……!?」
「―――あそこだ!」
「っ………!」
列車や機甲兵を襲撃した張本人―――空港付近で出会った赤毛の娘は高い丘で対戦車砲(パンツァーファウスト)を片手に持って騎士装束の娘と共にリィン達を見下ろしていた。
「シャーリィ、てめえっ!!」
「うふふ、まさかそっちから”殲滅”されにくるなんてね。」
ランディは赤毛の娘を睨んで声を上げ、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。
「あはは……!ランディ兄、久しぶりだね♪」
「”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”……!それにあんたは――――」
「やはり結社に残っておられたのですか……」
厳しい表情で赤毛の娘に視線を向けたリィンはその隣にいる騎士装束の娘に視線を向けて厳しい表情をし、セレーネは真剣な表情で騎士装束の娘を見つめた。
「フフ、久しいですわね。灰の起動者(ライザー)に聖竜の姫君。”身喰らう蛇”の第七柱直属、”鉄機隊”筆頭隊士デュバリィです。短い付き合いとは思いますが第Ⅱとやらに挨拶に来ましたわ。」
「執行者No.ⅩⅦ――――”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド。よろしくね、トールズ第Ⅱのみんな♪」
騎士装束の娘―――結社”身喰らう蛇”の第七柱直属にして内戦でも何度も剣を交えた”鉄機隊”の筆頭隊士―――”神速”のデュバリィと、同じく結社”身喰らう蛇”の”執行者”の一人にして、猟兵団”赤い星座”の”臨時”の団長を務めている”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランドはそれぞれ名乗り上げた!
「くっ、結社最強の戦闘部隊と”執行者”の一人とは……!」
「結社と手を組んだとは聞いたが”執行者”になってたとはな……まさかガレスや他の”赤い星座”の連中も来てんのか!?」
予想外の強敵の登場にミハイル少佐が唇を噛みしめている中、ランディは厳しい表情でシャーリィに問いかけた。
「ふふっ、こんな楽しい仕事、ガレス達に任せるわけないじゃん。あくまで個人的な暇つぶしかなぁ?」
「まったく貴女は……少しは使命感を見せなさい!」
「執行者に鉄機隊筆頭……予想以上の死地だったみたいだな。問答無用の奇襲――――一体どういうつもりだ!?」
シャーリィの発言に呆れたデュバリィがシャーリィに指摘している中厳しい表情で二人を睨んでいたリィンは二人に問いかけた。
「ふふっ、決まってるじゃん。」
リィンの問いかけに対して答えたシャーリィは対戦車砲(パンツァーファウスト)を地面に投げ捨てた後自身の得物であるチェーンソーが刃となっている特注のブレードライフルを構えた!
「………!」
「”テスタロッサ”………!」
「ほう~?まさかここで俺達とやりあうつもりかぁ?」
「うふふ、それならそれでレン達も構わないわよ?結社の残党の一部をわざわざ探さずに殲滅できるんだから♪」
「お二人とも、お願いしますからせめて状況を考えてから相手を挑発してくださいよ……」
シャーリィの行動を見たリィンとランディが表情を引き締めている中不敵な笑みを浮かべたランドロスとレンにセレーネは疲れた表情で指摘した。
「勘違いしないでください。わたくし達が出るまでもありませんわ。ここに来たのは挨拶と警告―――貴方がたに”身の程”というものを思い知らせるためですわ!」
そして剣と盾を構えたデュバリィが剣を掲げると大量の人形兵器がデュバリィとシャーリィの周囲に現れ、更に街道方面からも大量の人形兵器が現れた!
「きゃあっ……!?」
「クルトたちが言っていた……!」
人形兵器達の登場に生徒達は悲鳴を上げたり、表情を引き締めたりしていた。
「あはは、それじゃあ歓迎パーティを始めよっか!」
「我等からのもてなし、せいぜい楽しむといいですわ!」
シャーリィとデュバリィはそれぞれ第Ⅱ分校に宣戦布告をした!
「―――狼狽えんな!Ⅷ組戦術科、迎撃準備!機甲兵は狙われるから乗り込むな!―――お待ちかねの”戦場”だぜ、エルンスト!」
「”実戦”だからって、ビビる事はねぇ!相手は所詮犯罪組織の残党共だ!逆に相手に”身の程”を思い知らせてやる気概で戦え!」
「イ、イエス・サー!」
「Ⅸ組は後ろに下がって!戦術科が討ち漏らした敵に対処!医療班は待機、通信班は緊急連絡を!」
「単独行動は絶対に厳禁よ!戦うにせよ、報告するにせよ、必ず誰かと行動を共にしなさい!」
「イ、イエス・マム!」
エルンストを召喚したランディとランドロス、そしてトワとレンの指示にそれぞれ答えた戦術科と主計科の生徒達がそれぞれ人形兵器達に対する迎撃を始めている中ユウナ達特務科の生徒達も担当教官であるリィンとセレーネに仰ぐためにそれぞれ武器を構えた二人の元へと集まった。
「リィン教官……!セレーネ教官……!」
「僕達はどうすれば!?」
「Ⅶ組は遊撃だ!Ⅷ組・Ⅸ組をフォローする。来い――――メサイア!」
「連戦も予想されるので、体力の配分に気をつけてください!」
「了解です。」
生徒達にセレーネと共に指示をしたリィンはメサイアを召喚し
「チッ、どこからここまでの戦力を……Ⅷ組、スリーマンセルで対応!Ⅸ組は散開しすぎだ!Ⅶ組、遊撃を頼む!」
既に生徒達や教官達が人形兵器達と戦っている中敵の戦力の多さに舌打ちをしたミハイル少佐は気を取り直した後指示をした。
「了解―――みんな、行くぞ!」
「イエス・サー!」
そしてリィン達は遊撃を開始し、まず最初に街道方面から新たに現れた人形兵器達を撃破した。
「よし……!」
「こ、これで何とか……!」
「うわあっ、なんや……!?」
「くっ………」
「うわああ……っ!?」
「ぁうっ……!」
人形兵器達に勝利したユウナとクルトが一息ついたその時、Ⅷ組、Ⅸ組の生徒達がそれぞれ新たに現れた人形兵器達の戦闘によって苦戦したり、戦闘不能に陥ったりしていた。
「ああっ……!ゼシカ!?」
「シドニー、ウェインも!」
「両翼側面!」
「二手に分かれてカバーする!俺とメサイアは右翼!残りのメンバーは左翼のカバーに当たれ!セレーネ、ユウナ達の事は頼んだぞ!」
「わかりましたわ!」
「「はい!」」
「「了解しました!」」
そして生徒達に新たな指示を出したリィンはメサイアと共に窮地に陥っているⅨ組の生徒達のカバーへと向かい、セレーネはユウナ達と共にⅧ組の生徒達のカバーに向かった。
「リィン教官!」
「私達じゃ保たない!」
赤茶色の毛の少女―――サンディと銀髪の少女―――ヴァレリーは救援に来たリィンとメサイアに援護を頼み
「後は任せてください!」
「撃破するぞ!」
メサイアとリィンは人形兵器達に向かって行き、戦闘を開始した!
「「―――――――」」
新たに現れた敵であるリィンとメサイアに対して人形兵器達はそれぞれ回転するレーザー―――サイクロンレーザーを解き放った。
「「!」」
襲い掛かるレーザーに対して二人はそれぞれ側面に跳躍して回避し
「斬り裂け―――斬闇!!」
メサイアが暗黒の魔力を宿した剣による薙ぎ払い攻撃を放って反撃をした。
「「!?」」
「崩しましたわ!」
「隙あり!――――緋空斬!!」
メサイアの反撃によって敵の態勢が崩れるとメサイアと戦術リンクを結んでいたリィンが続くように炎の斬撃波を放って追撃をした。
「ブレイブオーダー起動―――聖魔陣”聖淵”!出でよ、断罪の光よ―――斎戒の洗礼!!」
リィンが追撃している間にあらゆる能力を一時的に上昇させるブレイブオーダーで自分達の能力を上昇させたメサイアは断罪の力を持った光柱を発生させる魔術を発動して人形兵器達に更なるダメージを与え
「二の型―――洸波斬!!」
リィンも続くように神速の抜刀による斬撃波を放って更なるダメージを与えた。
「「――――」」
リィンによる追撃が終わると人形兵器達は背中にある砲台からミサイルを次々と二人に放ち
「二の型・改――――裏紅蓮剣!斬!!」
「闘技―――虎口一閃!!」
襲い掛かるミサイルに対して二人はそれぞれ電光石火の速さで敵に詰め寄って攻撃をするクラフトを放って回避と共に反撃を叩き込み
「これで――――」
「終わりですわ!」
反撃を叩き込んだ後それぞれすぐに反転して強烈な一撃による袈裟斬りを放って止めを刺した!
「やったぁ!」
「すげぇ……!たった二人で俺達だとどうしようも無かったあんなとんでもない人形兵器達を撃破するなんて……!」
人形兵器達の撃破を見たサンディは喜び、赤茶髪の男子―――パブロは二人の強さに興奮した。
「ここはもう大丈夫のようですわね……」
「ああ。遊撃並びに援護を再開するぞ!」
「はい!」
そしてリィンとメサイアは他の遊撃や援護の為にその場から離れた。
リィンとメサイアがⅨ組の救援に駆けつけた同じ頃、セレーネ達もⅧ組の救援に駆けつけた。
「ク、クルト、セレーネ教官も!」
「き、気を付けなさい……!」
加勢に来たセレーネ達の登場に一人でライフルで牽制していた男子―――シドニーは僅かに安堵の表情をし、蒼髪の女子―――ゼシカはユウナ達に忠告した。
「敵多数、迎撃を開始します!」
「ここが正念場ですわ――――行きますわよ!」
そしてセレーネの号令を合図にユウナ達は戦闘を人形兵器達との戦闘を開始した。
「「―――――」」
「っと!」
「その攻撃は既に見切っている……!」
戦闘開始時、人形兵器達はそれぞれ回転する刃を放ったが、放たれた対象―――ユウナとクルトはそれぞれ武器で叩き落した。
「ブリューナク、照射。」
「――――――」
「落ちよ、聖なる雷――――ライトニングプラズマ!!」
反撃にアルティナはクラウ=ソラスにレーザーを解き放たさせ、セレーネは詠唱時間が短い魔術を発動して人形兵器達にそれぞれダメージを与えた。
「逃がさない……!ヤァァァァッ!!」
「ハァァァァ……これで、沈め――――黒鷹旋!!」
ユウナとクルトも続くようにそれぞれ遠距離攻撃のクラフトを放って追撃し
「いきます――――ノワールクレスト!――えいっ!」
「―――――」
「ヤアッ!」
アルティナはブレイブオーダーを起動して味方全体に反射結界を付与した後セレーネと共に人形兵器達に詰め寄って近接攻撃をして更なるダメージを与えた。
「「――――――!?」」
近接攻撃を仕掛けて来た二人の行動を好機と判断した人形兵器達は麻痺毒が塗り込まれている糸を放って反撃したがアルティナのオーダーによって、反射結界が二人に付与されていた為、人形兵器達は自分達の反撃でダメージを受けてしまった。
「ハァァァァァ……!―――斬!!」
「ハァァァァ……!えいっ!!」
「「!?」」
クルトとユウナもセレーネとアルティナに続くようにそれぞれ人形兵器達に接近してクラフトを叩き込んで人形兵器達の態勢を崩し
「崩したぞ!」
「追撃します!」
「崩したわ!」
「そこですっ!」
人形兵器達の態勢が崩れるとそれぞれと戦術リンクを結んでいたアルティナとセレーネがすかさず追撃を叩き込んだ。
「アークス駆動――――エアリアルダスト!!」
追撃を終えた後、戦術オーブメントの駆動を終えたアルティナは竜巻を発生させるアーツを発動して人形兵器達の動きを止め
「全てを塵と化せ―――超電磁砲(レールガン)―――――ッ!!」
止めにセレーネが両手から極太の雷光のエネルギーを放って人形兵器達を跡形もなく消滅させた!
「ふう………ゼシカ、大丈夫!?」
人形兵器達の撃破を確認したユウナは一息ついた後ゼシカに安否を確認し
「ええ……!でもウェイン君が……!」
「う……ぐううっ……」
ユウナの言葉に頷いたゼシカは地面に倒れて人形兵器達との戦いで負った重傷で呻いている眼鏡の男子生徒―――ウェインを心配そうな表情で見つめた。
「皆さん……!」
「だ、大丈夫ですか……!?」
「こちらへ、応急処置しますっ!」
するとその時医療班を担当しているミュゼ、中性的な容姿の男子生徒―――カイリとティータが駆け寄ってゼシカ達に声をかけた。
「シドニーさん!ウェインさんを連れて下がってください!」
医療班の到着を確認したセレーネはシドニーに指示をした。
「わ、わかりましたっ……!クルト、ここは頼んだぜ!」
「ああ、任せてくれ!」
「索敵を再開します!」
そしてセレーネ達は遊撃や援護を再開した。
「フン、思ったよりも食い下がりますわね。」
「ふふっ、ランディ兄も、教え子君達も悪くないじゃん。指揮と遊撃のおかげかな?なかなかソソらせてくれるねぇ……」
一方分校の生徒や教官達による迎撃戦をデュバリィと共に観戦していたシャーリィは不敵な笑みを浮かべて自身の得物のチェーンソーの部分を起動させ
「ちょ、ちょっと貴女!まさか―――」
シャーリィの行動を見て何かを察したデュバリィは表情を引き攣らせた。
「あはは、美味しそうな匂いには我慢できないタチなんだよね……ちょっとだけ―――味見するくらいだからさああっ!!」
そしてシャーリィは装甲列車を攻撃する為に演習地に突撃し
「ああもう―――どうしてわたくしが御守を!」
シャーリィの行動を見たデュバリィは疲れた表情で溜息を吐いた後シャーリィの後を追って行った。
「………!」
「チイ……ッ!」
シャーリィとデュバリィの行動に逸早く気づいたリィンは厳しい表情を浮かべ、ランディは舌打ちをし
「し、死角を……!」
「くっ、狙いは車両―――」
トワは不安そうな表情をし、ミハイル少佐は唇を噛みしめた。
「うおおっ……!?」
「ひええっ……!」
突撃してくるシャーリィを見た生徒達は悲鳴を上げ
「ほらほら!巻き込まれたくなかったらとっとと逃げなよねぇ!」
そしてシャーリィが車両に近づいたその時、シャーリィの頭上から銃弾が解き放たれ、突然の奇襲に気づいたシャーリィは一旦下がった。
「え………」
「うふふ、なるほどね。となるとアルトリザスにいる他のメンバーも――――」
シャーリィへの奇襲を見たティータが呆けている中レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。
「あははっ……!ナイスタイミングだね!」
「………バッドタイミングの間違いだと思うけど。」
「………あ………」
「フィーさん……!」
シャーリィの言葉に対して列車の屋根にいるフィーは静かな表情で答え、フィーの登場にリィンは呆け、セレーネは明るい表情を浮かべた。
「3年―――いや4年ぶりかな?おっきくなったねぇ!”西風の妖精(シルフィード)”!」
「”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”―――……ううん、結社の”紅の戦鬼”。4年前は敵わなかったけどこっちもそれなりに成長した。今日は届かせてもらう。」
「アハッ、いいよ!それじゃあ小手調べと行こうか!」
フィーの言葉に好戦的な笑みを浮かべて答えたシャーリィはフィーとの戦闘を開始した!
「まさか”旧Ⅶ組”が他にも来ていたとは……しかもあの娘は確か………!これは――――」
一方二人の戦いの様子を見守っていたデュバリィは突如戦場に響き始めたバイオリンの音に気づき、音がしてくる方向へと視線を向けた。
「響いて――――レメディ・ファンタジア!!」
デュバリィが視線を向けた方向―――列車の屋根でバイオリンに変形した魔導杖で演奏をしていたエリオットが演奏を終えると何と戦闘によって傷ついた生徒達の傷が回復し始めた。
「おおっ、動けるぞ……!?」
「なんて綺麗な音色……」
「エリオット……」
「す、凄い……」
「魔導杖の特殊モードによる戦場全体の回復術ですか……」
「ふふっ、さすがはエリオットさんですわね。」
エリオットの回復術に生徒達だけでなく、リィンやセレーネも驚いたり感心したりしていた。
「つ、次から次へと……いいでしょう!ならばわたくしも本気を――――」
次から次へと現れるリィン達に対する援軍に顔に青筋を立てて身体を震わせていたデュバリィが本気を出そうとしたその時
「その本気は私達が受け止めさせてもらおうか。」
娘の声が突如聞こえ、声に気づいたデュバリィが視線を向けると高い丘にいつの間にか大剣を構えたラウラがいた。
「くっ………現れましたわね!」
「奥義――――”洸凰剣”!!」
ラウラの登場にデュバリィが表情を引き締めて迎撃をしようとしたその時ラウラは高い丘から突撃してデュバリィに闘気によって蒼く輝く大剣による強烈な一撃を叩き込んだ!
「くうっ……こ、ここまでとは……ラウラ・アルゼイド―――皆伝に至りましたわね!?」
ラウラの強烈な一撃を盾で防御したデュバリィだったが、あまりの威力に後ろへと下がらせられた後ラウラを睨んだ。
「フフ、お陰様でな。これでそなたらともようやく対等に渡り合える。」
「くっ、生意気な……―――なっ!?くっ………」
ラウラの言葉にデュバリィが唇を噛みしめたその時突如デュバリィに向かって狙撃が次々と放たれ、狙撃に気づいたデュバリィは間一髪のタイミングで盾で防ぎながら回避行動に移ったが銃弾が僅かに肩をかすった事でうめき声を上げた。
「今の狙撃はまさか――――!やはり、貴女でしたか………ステラ・ディアメル!口上も無しにいきなり狙撃をするなんて、パンダグリュエルで撤退する為に背を向けたわたくしを撃った時といい、その卑劣さも相変わらずですわね……!前々から指摘しようと思っていましたけどそれが騎士のやる事ですか!?」
ラウラがいた高い丘でライフルを構えているステラを見つけたデュバリィは声を上げた後ステラを睨んで問いかけ
「”銃騎士”の本領の一つは敵に気取られる事無く狙撃を成功させ、味方を援護する事です。それに確か貴女の部隊の隊員の一人に弓の使い手がいて、星見の塔での”特務支援課”の皆さんとの戦いで人形兵器達に”特務支援課”の相手を任せて、自身は”狙撃”による奇襲攻撃をしたと聞いています。私の”狙撃”による奇襲攻撃を”卑劣”と評した貴女のその言葉は貴女の仲間―――”魔弓”にも当てはまると理解していて、発言しているのですか?」
「ぐっ………!」
ステラの指摘と正論に反論できないデュバリィは唸り声を上げ
「フフ、それに先程私はそなたに対して、”そなたの本気は私達が受け止めさせてもらおうか”と言った。”ステラ達と共にそなたの相手をするつもりでいた私”の言葉をよく聞いていなかったそなたの落ち度だ。」
「くっ、やかましいですわ!―――――!?”ステラ達”という事はまさか他にも―――――」
ラウラの指摘に対して反論したデュバリィだったが、すぐにある事に気づいて血相を変えて周囲を見回したその時
「絶――――蒼龍天雷槍!!」
「あぐっ!?」
デュバリィの死角から全身に雷を迸る蒼き竜を宿したフォルデが突撃してデュバリィに強烈な一撃を与えた!
「やれやれ、わざわざ敵の落ち度を指摘してやるなんて、相変わらず正々堂々が好きだね~、ラウラは。」
「フフ、それが私―――いや、”アルゼイド流”の性分ですので。」
「クッ……―――フォルデ・ヴィント!死角から絶技による奇襲をするなんて、貴方には”ヴァンダール流”の使い手としての”誇り”はないのですか!?」
若干呆れた様子で指摘したフォルデの指摘に対してラウラが苦笑している中デュバリィは唇を噛みしめた後フォルデを睨んで指摘し
「”誇り”とかそう言うめんどくさいものは”本家”の連中が受け継いでいるから、”本家”の人間ではない俺達はやりたいようにやらせてもらうだけだ。それにメンフィルは奇襲、夜襲、暗殺と言った俗に言う”卑怯な手段”も十八番(おはこ)だし、第一”実戦”に”ルール”なんて存在しないぜ?”実戦”で相手が正々堂々な正面からのぶつかり合いの勝負に応じてくれるって思っているお前の方が随分とおめでたい考えをしているんじゃねぇのか?」
「だ、誰がおめでたい考えをしているですって!?というか”殲滅天使”といい、ステラ・ディアメルや貴方といい、1年半前の”七日戦役”や内戦の件といい、何でメンフィルはそんなに卑劣な手段ばかり取る事が多いのですか!普通、そういった手段は我々”結社”や”猟兵”のような裏の組織に所属している者達の専売特許ですわよ!?―――って、言った傍から……!ああもう……!どうしてわたくしばかりこんな目に……!」
「そんじゃ、俺達も始めるとするか。」
「フフ、承知した。」
フォルデの話や正論を聞くと怒りの表情で反論したが、ステラによる問答無用の狙撃に気づくと回避や防御行動に移り、フォルデとラウラもステラの狙撃に続くようにデュバリィとの戦闘を開始した。
「フィーちゃん、エリオット君、ラウラちゃん、フォルデさんにステラちゃんも……」
「……トールズ旧Ⅶ組にメンフィル帝国の特務部隊。助かったがこのタイミングは……」
フィー達の登場にトワが安堵の表情をしている中ミハイル少佐はフィー達の登場のタイミングの良さに呆れていた。
「ふーん、口先だけじゃなかったみたいだね?ぬるい道を選んだと思ったけど紫電ってヒトの薫陶かな?」
一方列車の屋根でフィーと武器の打ち合いをしていたシャーリィは一旦離れた後興味ありげな様子でフィーに問いかけた。
「否定はしない。でも、まだそっちの方が上かな?」
「あはは、それが言えるだけでも十分凄いとは思うけど。……いいね、妖精。改めて気に入っちゃったよ。」
「こちらはお断り。」
そして二人が再び戦闘を再開しようとしたその時
「ええい、小腹を満たしたならとっとと行きますわよ!」
ラウラ達との戦闘を一旦中断したデュバリィがシャーリィに注意をした。
「あはは、ゴメンゴメン。」
デュバリィの注意を聞いたシャーリィは苦笑した後デュバリィと共に再び高い丘へと戻っていった。
「な、なんて身体能力……」
「これが”結社”……」
二人の身体能力にユウナとクルトは驚き
「チッ……化物娘どもが。」
「……しかも全然、本気を出していないな。」
ランディは舌打ちをし、リィンは真剣な表情で呟いた。
「……あら?ランディさん、ランドロス教官が見当たらないのですが……?」
「ハア?げっ……ちょっと目を離した隙にこの非常時にどこに行ったんだよ、あのオッサンは!?しかもエルンストも見当たらねぇ!まさかとは思うが―――」
ある事に気づいたセレーネの指摘を聞いたランディは周囲を見回してランドロスやエルンストがいない事に気づいて疲れた表情で声を上げた後ある推測をした。
「お遊びにしてはなかなか楽しめたかな?―――本当の”戦争”だったら5分くらいで壊滅だろうけど。」
「ひっ……」
「お、お遊びですって……」
シャーリィの言葉を聞いたカイリは悲鳴を上げ、ゼシカは怒りの表情でシャーリィを睨んだ。
「まあ、この場所を叩くのは今夜限りと宣言しておきます。明日以降、せいぜい閉じこもって演習や訓練に励むといいでしょう。―――この地で起きる一切のことに―――」
そしてデュバリィが第Ⅱ分校の生徒や教官達に忠告をしかけたその時!
「ほう。残党の分際でこのオレサマ達がいるにも関わらず、5分で”壊滅”とは随分と口がデカくなったようだな、小娘共?」
「へ。」
「な―――――」
なんとエルンストの転移魔術によってランドロスがシャーリィとデュバリィの背後にエルンストとレン、そしてパテル=マテルと共に現れ、エルンスト達の登場にシャーリィは呆け、デュバリィが絶句したその時
「クク、演習初日早々に仕掛けて来て、雛鳥達に”奇襲”を経験させてくれた事に関しては礼を言うよ。その礼代わりに……例え”お遊び”だろうと、”戦争”を仕掛けたんだったら、当然”思わぬ反撃”を喰らう事も覚悟していた事を確かめさせて―――もらうよっ!!」
そしてエルンストは両手に溜め込んだ膨大な魔力を解放してシャーリィとデュバリィの周囲に魔力による怒涛の連続大爆発を起こし
「なああああああああっ!?」
「あはは、さすがランディ兄の使い魔だけあって、容赦がないねぇ!」
エルンストのSクラフト――転移爆発に対してデュバリィは混乱しながら、シャーリィは不敵な笑みを浮かべて反撃の機会を練りながらそれぞれ必死に回避や防御行動に移り
「こいつは今回の”お遊び”の”土産”だ。遠慮なく持っていけ――――玄武の滅燐撃!!」
「あうっ!?」
「あぐっ!?」
そこにランドロスが膨大な闘気を纏った大剣を地面に叩き付けて広範囲の凄まじい威力の衝撃波を二人に命中させて怯ませ
「うふふ、そしてこれは”お土産のオマケ”よ♪――――パテル=マテル!」
「―――――――」
「ちょ――――ぐっ!?」
「さすがにこれは不味――――へぶっ!?」
二人が怯んだ隙にレンはパテル=マテルに指示をし、レンの指示を受け取ったパテル=マテルは二人に向かって突撃してアッパーカットを放って二人を空高くへとふっ飛ばした!
「あはは、まんまとやられたねぇ。」
「くっ……去り際のセリフすらも言わせてもらえなかったなんて……!ううっ、今日は厄日ですわ……!今回受けた屈辱、1年半前に受けた屈辱も合わせていつか必ず倍返しにしてあげますから、絶対に覚えていやがれですわ――――!」
空高くへとふっ飛ばされたシャーリィは呑気に笑いながら、デュバリィは疲れた表情で呟いた後捨て台詞を口にした後転移魔術の効果がある道具を使ってシャーリィと共にその場から消え、その様子を見守っていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ったく………これだから目を離す事ができねぇんだよ、あのハチャメチャ連中共は!」
「レ、レンちゃ~ん………」
「ア、アハハ……敵どころか味方まで欺く所も、レン教官達らしいと言えばらしい行動でしたわね……」
我に返ったランディとティータは疲れた表情で溜息を吐き、セレーネは苦笑していた。
「くっ……まさか初日からとは。」
「とにかく被害状況を確かめましょう……!」
シャーリィとデュバリィがパテル=マテルの追撃によってその場からふっ飛ばされた後戦闘が終了した事によって生徒達が安堵や疲労で地面に座り込んだり倒れ込んだりしている中ミハイル少佐は唇を噛みしめ、トワはすぐにやるべきことを口にした。
「動けないヤツには手を貸してやれ!」
「動けない方達はわたくしとレン教官が治癒魔術で治しますので、わたくしかレン教官の所に運んでください!」
「軽傷で済んだ人達も動けない人達の治癒が終わったらちゃんと治癒魔術をかけてあげるから、後片付けが終わったら忘れずにレンかセレーネの所に来なさい!」
「手が空いている奴等はまず消火活動をしろ!火をほおっておいたら、二次災害が起きるぞ!」
「みんな、怪我はないな?ユウナとアルティナは負傷者のフォローを。クルトは被害状況の確認に回ってくれ。メサイアもすまないが、セレーネやレン教官に手を貸してやってくれ。」
それぞれの教官達が生徒達に指示をしている中、リィンはユウナ達に他の教官達のように指示をしていた。
「は、はい……!」
「……………(コクッ)」
「……了解です。」
「わかりましたわ。」
リィンの指示にそれぞれ頷いたユウナ達はメサイアと共にその場から離れてリィンの指示通りの行動を始めた。
「リィン。」
するとその時ラウラ達と共に来たエリオットがリィンを呼び止めた。
「エリオット、ラウラ……ステラにフォルデ先輩……そしてフィーも。ありがとう、助かったよ。」
「ん。ラウラとかミリアムみたいに再会のハグがしたかったけどちょっとそんな雰囲気じゃないね。わたし達も手伝おうか?」
「ああ、助かる―――ってミリアムのことまでなんで知っているんだ?」
「フフ、それは追々な。」
フィーの言葉に頷きかけたリィンだったが、フィーがその場にいなかったにも関わらず知っている出来事に困惑し、リィンの様子にラウラは苦笑していた。
「クク、しかしラウラやミリアムでハグなんだから、お前やエリゼちゃん達と”同じ立場”でありながら中々会う機会が無かったアリサが再会したら、ハグに加えてディープキスもするんじゃねぇのか~?」
「フフ、アリサさんでしたらありえそうですね。」
「ん。その光景がわたし達でも目に浮かぶ。」
「まあ、1年前の最後の”自由活動日”の時も、人前であるにも関わらずミリアムのように、リィンに突撃した後自ら口づけをする程、リィンを慕っている様子を見せていたしな。」
「というかそういう話はせめて当事者の一人になる俺がいない所でしてくれないか……?」
フォルデのからかいにステラが苦笑している中フィーの言葉に続くようにラウラは困った表情で答え、フォルデ達の会話を聞いたリィンは疲れた表情で指摘した。
「アハハ……とりあえず僕も治療を手伝うよ。医務室は列車の中?」
「ああ、よろしく頼む。それにしても――――」
苦笑した後気を取り直したエリオットの申し出に頷いたリィンは”戦場”跡となった演習地を見回し
「……とうとう事態が動き始めてしまったか。」
「うん……そうだね。」
「それも氷山の一角。全貌がまったく見えない。」
「やれやれ……今回の出来事はアルトリザスと隣接しているメンフィル帝国領(セントアーク)にとっても他人事じゃないだろうから、間違いなく今夜の件も既にリウイ陛下やシルヴァン陛下の耳に入っているだろうな。」
「はい………そして両陛下が例の”要請(オーダー)”を発動する可能性も非常に高いでしょうね。」
「ああ……―――明日は色々と忙しくなりそうだ。」
リィンと共に演習地を見回して重々しい様子を纏って呟いたラウラの言葉にエリオットは頷き、フィーは静かな表情で呟き、疲れた表情で溜息を吐いたフォルデの言葉に続くように呟いたステラはリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは頷いた後決意の表情を浮かべていた。
原作と違い、レン達がいるのでデュバリィとシャーリィは思わぬ反撃を喰らった上最後はポケモンのロケット団のように空高くへとふっ飛ばされましたww
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第18話