「バカさ加減もまた、この艦隊に不可欠なのだ」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第43話(改2)<認められません>
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私は呟くように言った。
「多分、もう司令ではないからなぁ」
「……!」
「司令? それは、どういうことですか?」
窓の外には浅瀬や小さな島が見えてきた。
しかし機内では私の言葉を受けて艦娘たちに不穏な空気が漂っていた。
艦娘たちは、もう直ぐ着陸だというのに、ほとんど立ち上がって、次々と私のそばに集まっていた……寛代と技術参謀を除いて。
「司令ぇ水臭いですよぉ、突然」
青葉さんが言う。さすがの情報通だが、この事態に少々動揺しているようだ。
「自分独りで思い悩まないでください」
これは祥高さん。彼女がこういう場で前に出てくるとは珍しい。
「いや、悩む以前に、さっきのアレだ」
私は頭に手をやって答える。
「短絡的に動いた結果だ。軍隊で上官に刃向かえばこういうことになる、それは分かるな?」
艦娘は互いに顔を見合わせている。
私自身は妙に落ち着いている。だが、わずかな期間でも苦楽を共にした仲間と、いとも簡単に別れても良いのか? ……という思いもある。
すると赤城さんが口の周りに何かをつけながら言う。
「私たちは……家族でしょう?」
その容姿と発言内容の落差に思わず噴出しそうになった。まるで葬式で笑いを堪えて悶絶するようだ。
「oh! シット。一連クタクタではナイですかぁ? コレは、おかしいヨ」
な……なぜ、お前が目に涙をためるんだ金剛?
その意外さに貰い泣きしそうだよ。
今度は隣の比叡が続ける。
「司令! 一蓮托生っ、私たちは家族以上の関係ではないのですか? 独りで勝手にやめるって……許さない!」
(比叡、鼻水が出ているぞ)
真剣な彼女には悪いけど、こっちは違和感無いから笑えなかった。
「司令……」
あ、やばい。
振り返ると日向だ。
(こいつは苦手だな)
彼女は躊躇(ためら)うことなく私の手を握るとウルウルして言う。
「認められません……命令であっても」
(……い、痛い)
相変わらず、すごい力でプレスするなぁ。
(アマゾネスめ!)
そう思って彼女を見る。
だが、あまりにも悲しそうな表情なので、その例えが悪かったと反省した。
(それでも痛い!)
手が砕けるっ ……てか、もう堪忍してくれぇ!
急に視線を感じた。見ると向こうから技術参謀が腕を組んで、こっちを見ている。
寛代は首をかしげて無線を気にしつつ、やはり振り返っていた。
「あの……そろそろ」
機長が着陸態勢に入ることを申し訳なさそうに告げる。
それを受けたように技術参謀は、大きくため息をついた。
「提督……いや司令」
私は日向の圧迫に耐えながら顔を上げる。
「はい」
「ちょっと、こっちに来い」
その言葉に私は日向を見た。だが、それでも彼女は手を離さなかった。
「……日向もう良いから離してやれ」
参謀の命令だが彼女は無言で首を左右に振っている。
圧迫されて感覚が鈍くなってきた手に何か水滴が落ちたような気がした。
(お前……)
泣いているのか。
私はふと、境港で彼女もろとも水路に落ちた時のことを思い出した。
技術参謀は再び、大きな声で急かす。
「早く来い!」
機体は降下中だ。
参謀は焦ったように言う。
「ばか者っ……時間がないぞ!」
仕方無く私は強引に技術参謀の方向へ歩き出す。
日向は、それでも離さなかったが手が解けて直ぐに解放された。
私が技術参謀の前まで来ると彼女は言った。
「本当にお前は、進歩がない。何というかだな! ……ったく」
「申し訳ありません!」
確実に呆れているな。
だが彼女は表情を緩める。
「まあ良い。そういう裏表なき真っ直ぐなバカさ加減もまた、この艦隊に不可欠なのだ」
「はぁ?」
それは、ほめ言葉なのか? ……いや逆か?
参謀は、ちょっと怖い顔になった。
「歯を食いしばれ!」
「ハッ!」
私が気合を入れると同時に鈍い音がした。
(痛ったア!)
目の前に火花が散った。思いっきりビンタを食らわされた。
危うく横飛びするところだった……いや揺れる機内では正直、少しよろめいた。
マジで倒れる寸前に祥高さんと日向が私の両脇を支えてくれた。
「あ、有り難う」
そうは言ったものの、かなり恥ずかしかった。
(でもやはり、いざという時に私を支えるのは、この二人なのだろう)
……そんな実感があった。
さすがの技術参謀も痛かったのだろう。自分の手をしきりに振って言った。
「痛ぅ……まあ良い。これでチャラだ」
「え?」
(もしかして軍法会議なしに無罪放免ですか?)
祥高さんと日向も顔を見合わせている。
「しっかり励め」
席に戻りつつ参謀は言った。
「バカ者め!」
それでも彼女は微笑んでいた。
「はっ」
思わず敬礼した。釣られるように祥高さんと日向も敬礼をした。
その光景は私の軍隊生活の中でも最も美しい敬礼の一つに成るだろうと実感した。
揺れる機体の操縦席から機長が叫ぶ。
「あと3分で着水します。全員、ご着席願います!」
「済まん機長!」
私たちは慌てて席に戻った。
着席してから叩かれた頬に手を当ててみる。当たり前だがジンジンしていた。
(こりゃ腫れるぞ)
何となく腫れぼったくなった頬を摩りながら眼下を見る。
そこにはブルネイの群青の海面が広がり、機体の影を映していた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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司令が解任されると聞いて動揺する艦娘たち。それを黙ってみていた技術参謀は彼を呼ぶ。