「ねえオルシュファン、少し縮んでくれない?」
何時も唐突な彼女は、今日は一際突拍子もない事を口にした。
彼女なりの冗談なのだろうかと考えるが、真意が読めない。
そんな彼女は珍しくイシュガルドの強めの酒に舐めるように口をつけていた。
「少々無茶がすぎる要求だな」
「けち」
けちとかそういう問題だろうかと思うのだが、彼女は不満そうに尻尾でソファーを叩いている。
「屈めというのならばわかるが、縮めと言うのは無理難題だろう、お前の願いは出来る限り叶えてやりたいと思うが、できることとできないことがある」
そう答えると彼女は不貞腐れて、普段は見せないような表情を見せた。
わかったうえで言っていて、でも私の答えが不満なような、そんな雰囲気だ。
普段、あまり自分の本音を話さない──あるいは話せない意地っ張りな彼女は、たまに酒を口にして酔った事を言い訳に本音を吐き出すことがある。
おそらく、先ほどの一言も何かしら意図のある本音なのだろう。
できれば理解してやりたいと思うが、彼女は少々難解だ、そんなところも彼女の魅力ではあるが。
「もう少し言葉を増やしてもらいたいものだな、お前の心が読めるわけではないのだぞ?」
彼女の隣に腰を下ろしながら言うと、彼女は眉をひそめて溜息をつく。
「そんなことしってる」
「なら──」
言いかけた私の言葉は、彼女の唇に酔って塞がれた。
本当に唐突な口付けは、重ねるだけの軽いものではない。
潜り込んだ彼女の舌が口内を舐め、舌に絡みつく。
不意打ちのそれに暫くの間私はされるままになり、こちらから答えようとした時にはするりと彼女は距離をとっていた。
「……随分と、唐突だな」
「貴方が立ってると背が高すぎて届かないのよ」
「なるほど、そういう意味か」
彼女が最初に口にした唐突な言葉の意味、それがようやくわかって合点がいった。
おそらく、どこかの恋人同士の逢瀬を見たのだろう。
私と彼女では、彼女が多少背伸びをしたところで唇を奪うことなどできはしない、それぐらいに小柄な彼女だからこそ、不満に思ったのだろう。
だが、それはつまり──。
「なるほど、だがお前が言ってくれれば何時でも私は応えるぞ」
「そういうのじゃないの」
再びふてくされる彼女、その様子にやっと私の理解が追いついた。
言ってからではなく、彼女は不意打ちで唇を奪いたかったのだろう、その結果が先ほどの行為というわけだ。
彼女にしては珍しい話であるが、それはつまり気持ちが確実に育っているということの証左で、そう考えると心が躍った。
恥ずかしそうに、けれど少し満足そうにしている彼女を見て、今度は私が不意打ちをしてやろうと心に決めるのだった。
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2016-08-02に書いてぷらいべったーに上げていたものの転載になります。
1000文字程度の短いオル光♀のお話。
夜中に浮かんだセリフと、Twitterのフォロワーさんと話した不意打ち云々がこうなりました。
需要はしらんけどぶん投げておきますね。
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