ジンダイ再び
「・・・や・・・く・・・」
(・・・?)
「く・・・や・・・」
(誰・・・だ・・・なんて、いってるんだ・・・?)
「クウヤ!」
「・・・!」
名前を呼ばれて、クウヤははっと目を開けた。
視界に入ったのは、以前出会った男だった。
「目が開いたな・・・よかった」
「・・・ジンダイの、おっちゃん?」
「ああそうだ」
それは、なんとジンダイだった。
何故ここに彼がいるのかも気になったが、自分がどういう状況なのかを思い返そうと頭をひねる。
確か自分はアカギの野望を止めようとして、テンガン山を登ってやりのはしらに到着して、彼が赤い鎖を使って神と呼ばれるポケモン、ディアルガとパルキアを呼び出す光景を目の当たりにした。
その2匹を止めようと、駆けつけたユクシー、エムリット、アグノムとともに彼の元に向かおうとした矢先のことだった。
影が出現し、アカギを飲み込んだのだ。
「・・・そっか・・・おれ、巻き込まれちゃったんだ」
「ああ・・・そうだ。
俺もあいつらを止めるためにやりのはしらに向かったら、お前が飲み込まれるのを見つけてな。
急いで俺も飛び込んだんだ」
「そうだったんだ、ありがとな、おっちゃん」
クウヤはにこっと笑ってジンダイに礼をいうと、ジンダイもふっと笑みを浮かべる。
その顔にどこか懐かしさを感じつつもクウヤは起き上がり、そのまま立ち上がって周囲をみた。
「ここって・・・」
「反転世界だ」
「はんてんせかい?」
確かに自分は地面にたっているが、上を見たら自分がたっている地と同じものが浮かんでいた。
隣をみても、同じだ。
さらに遠くを見てみると、高層ビルのように積みあがった家が柱であるかのように立ち並んでいる。
下を見下ろしても上と同じ景色が広がっていて、どこが空でどこが海なのか・・・ましてやその二つが存在しているのかどうかも怪しい世界だった。
「じゃあもしかして、おれってあの影のようなものにここに連れ去られちまったってことか!?」
「そうなるな」
そしてクウヤの脳裏によみがえるのは、コウキたちのことだった。
「元の世界のみんな、大丈夫かな?」
「彼らなら大丈夫よ」
「シロナさん」
もしかして彼女も巻き込まれたのか、とクウヤは思った。
それを察したシロナは微笑みながら言った。
「大丈夫よ、私もこの人と同じように、自分からここに飛び込んだの。
君やアカギに巻き込まれたわけじゃないし、すべての原因は君じゃないわ」
「・・・え、もしかしておれの考えばれてる?」
「だってわかりやすいもの、クウヤくんって」
シロナにそう言われてクウヤは頭をポリポリと掻きながら赤面した。
その様子を見てシロナは本当にわかりやすいわね、と言いながらくすっと笑う。
そのときだ。
黒く大きな影が彼らの真上を飛んでいった。
「あれは!」
「あれが、ギラティナだ」
「ギラティナ・・・もしかして、あいつも神様って呼ばれるポケモン?」
「史実で言えばね」
ギラティナは初めて聞く名前だ。
ここはギラティナについても教えておくべきだと思ったシロナは彼に語り始める。
「ギラティナはアルセウスによって生み出されたディアルガとパルキアの影のような存在のポケモンよ」
「アルセウスってなんだ?」
「この世界のすべてを生み出したと言われる、ディアルガよりもパルキアよりもさらに力を持った神様・・・創造神よ」
アルセウスのことを説明しつつも、シロナはギラティナの話に戻る。
「ギラティナはアルセウスに生み出されたとき、かの2匹と同じように役目を授かった。
時間と空間・・・そして私達のいる現実世界のバランスを保つために作られたこの反転世界を守る役目を。
その役目を受けたギラティナは、現実世界の鏡を利用して私達の世界を見守っているのよ。
もし時間と空間のバランスが崩れたときには、自ら制裁をくだせるようにね・・・。
まぁ、一説には暴れん坊で悪さをしたからその罰を受けて、ここに追放されたというものもあるけど、私は前者の説を推しているわ・・・。」
「そうなんだ」
シロナの話にたいしクウヤは、難しいながらも理解しようとしてその話をすべて聞いて記憶した。
だが話をすべて聞いたクウヤはあれ、となにかに気づく。
「じゃあまさか、今って・・・!」
「察しがいいな、クウヤ。
ディアルガとパルキアが強い力によって現実世界に呼び起こされ、操られている。
その原因はほかでもない・・・強い力、赤い鎖を使い2匹をしたがわせようとしたアカギだ。
ギラティナはアカギに制裁を下すために、ここに引きずり込んだのだ」
「そ、そんな・・・!」
ジンダイの言葉にクウヤは驚きながらも顔をきっとさせ、二人より先に行動を開始しようとした。
「クウヤ?」
「ギラティナをとめて、アカギの野望もやめさせなきゃ!
確かにギラティナが怒るのもわかる、あいつは世界を守ろうとしてるわけだし。
それに、アカギは悪い奴かもしれないけど・・・あいつのしたことは簡単に許せるものじゃないけど・・・。
だけどこんなケリの付け方はダメなんだとおれは思う!
ちゃんと現実世界にかえって、今までしたことをちゃんと謝らせて、罪を償わせなきゃ・・・アカギのためにも、ギラティナのためにも・・・誰のためにもならねーよ!」
「・・・」
「だからおれ、ギラティナとアカギを探しに行くよ!
・・・うわぁ!?」
クウヤの周りに、さっきと同じ3色の光が現れ、それぞれの光はポケモンへと姿を変えた。
まるで、彼とともにいこうとしているかのように。
「ユクシー、エムリット、アグノム!
おれ達にちからをかしてくれるのか!?」
「きゃううん」
「きゅううん」
「きょううん」
「ありがとう!」
クウヤの言葉に対しうなずく3匹。
その3匹の返事にクウヤは笑った。
シロナも彼に続こうとしたが、そこでジンダイの存在を思い出す。
「では私達も参りましょう・・・えぇっと・・・」
「おっとこれは失礼しました、チャンピオン・シロナ殿。
私の名前はジンダイ、バトルフロンティアのフロンティアブレーンの一人です」
「まぁ、バトルフロンティア・・・存じています。
しかもジンダイさんだったとは・・・本当ならゆっくりお話ししたいのですが・・・今は無理ですね」
「そうですね、まずは解決を急ぎましょう」
「ええ」
シロナとそううなずきあい、ジンダイはクウヤに歩みよる。
「ゆくぞ、クウヤ」
「うん!」
ジンダイに対し不思議な頼もしさをかんじながら、クウヤは反転世界を進むために歩き始めた。
「あれ、行き止まり?」
しばらく歩き進めているとクウヤ達は壁に当たった。
別の道を行くしかないのかな、とクウヤが思っていると、ジンダイは壁に足をかけそのまま歩く。
「おっちゃん!」
「おい、普通に歩いて大丈夫だぞ!」
自分達に対して垂直になりながら、二人にそう呼びかけるジンダイ。
その姿をみたシロナは問題ないという確信を持ち、歩き出す。
「そのようね・・・さ、いきましょう」
「お、おう」
クウヤもシロナの後についていった。
そのあとも急に体が軽くなる階段や逆さの道を歩いたり、見えない道を進んだりすることもあった。
「な、なんか変な感じ・・・」
クウヤは反転世界の動きにくさに苦笑しつつもジンダイやシロナについていく。
時折真上を黒く大きな影・・・ギラティナが横切っていくのを何度も確認しつつ、3人はアカギを探す。
「アカギ!」
「・・・」
そしてとうとう、アカギを発見した。
クウヤはアカギの姿を見つけるとジンダイとシロナの制止をふりきって彼の前にたち、彼を説得しようとした。
「アカギ・・・あの赤い鎖を使うのはやめてくれ!
そうでもしねーと、お前は元の世界には帰れないぞ!」
「・・・」
「おい、聞いているのかアカギ!」
クウヤの呼びかけに対し、アカギは黙っていた。
もう一度クウヤが呼びかけて、アカギは口を開く。
「・・・この奇妙な世界が、かの伝承にのっていた反転世界・・・そして私をここに誘ったのはここの主であり3番目の神、ギラティナ・・・そういいたいのだな」
「まぁ、そんなところだ!」
「・・・世界を変えることは許されない、ということなのか・・・。
私は自らの正義を貫こうとした、ただそれだけなのに許されぬのか」
「それが、貴方の正義なのね」
シロナは腕を組みながら、話に入ってきた。
「・・・そんなに心のない世界がいやなら、自分だけ私達と関わらない世界で一人でいればいいのに・・・貴方はそれができなかったのね」
「なぜ私だけが世界から逃げるようにして、こそこそと生きねばならんのだ。
そんなことをするよりは、私が自ら望む世界に作り替えた方がいいだろう」
「だからといって、こんな危険な力に手を出し、また多くのものを神の名を使い惑わしていいものではないぞ」
「危険な力に手を出す・・・それはお前も同じだろう、ジンダイ」
「・・・」
アカギはジンダイをみて、そう言った。
「レジロック、レジアイス、レジスチル。
かつては戦争にも使われたという伝承も残っている、謎に包まれた古代のポケモン・・・。
その力ゆえに封印された危険な存在を今に蘇らせ、お前はそれを自分自身のために使っている。
そこで、私となにが違うというのだね?」
「てめぇ・・・!」
「クウヤ、俺は大丈夫だ」
「おっちゃん・・・!」
そうジンダイに言葉で責めるアカギにだがジンダイは怒るクウヤを押さえつつ、彼に対しひるむことなく話をする。
「違いといえば、その本当は危険な力の使い道というところだな」
「?」
「・・・俺はその3匹に戦いを挑みポケモンバトルを通じてこいつらの力をどう生かしたいかを示した。
聞き入れられず負けて追い返されるならそれも仕方なし、と思っていた。
だがこいつらは、俺を選んだんだ。
だから俺の仲間のフロンティアブレーンにも、伝説のポケモンに選ばれたやつがいるんだ」
「伝説に選ばれた・・・だと・・・」
「ああ、というよりもそれがふつうだ。
お前は選ばれてなんかない、ただ操って自分が優位に立っているように思っていただけだ」
「この私が、選ばれなかったというのか・・・!?
この完璧な存在を、すべてを超越した存在を・・・!」
「おい、アカギ!?」
「認めぬ、認めぬぞ!」
そういいアカギは別の場所へ行ってしまった。
後を追おうとするクウヤだったが、アカギのギャラドスに妨害されて先へ行けなくなってしまった。
「・・・また探して追いかけるしかないな」
「・・・うん」
クウヤは引き続き、アカギを追いかけた。
一方、現実世界では3人と幹部二人は突然消えてしまったクウヤやアカギに対し驚き戸惑っていた。
「どういうこと・・・なんなのよ今のは・・・!
アカギ様は、どこにいっちゃったのよ!」
「わからないわ・・・あんなもの、私は初めてよ・・・」
自分たちの指導者がいなくなって、混乱するマーズとジュピター。
「あ・・・赤い鎖をみて!」
同じように呆然としていた3人だったが、突然ヒカリはなにかに気づいてジュンとコウキにそう呼びかける。
ヒカリにいわれたとおり2人が赤い鎖をみると、さっきまで動いていたのに今は空中でぴたりと止まっていた。
「そういえばディアルガとパルキア・・・さっきから微動だにしていない・・・どうして」
「赤い鎖の動きが止まったからだ」
突然そこに第3者の声がしてそっちを向くと、ルカリオをつれた青いスーツの男性、ゲンがそこにいた。
「あなたは?」
「私はゲン、ポケモントレーナーで波導使いでもある。
ここで異変が起きていると聞いて駆けつけたのだが・・・まさかディアルガとパルキアがここに同時に現れていたとは・・・」
この男は敵ではない、と思ったコウキは赤い鎖が止まった原因について聞いてみることにした。
「どうして、赤い鎖が止まってしまったんですか?」
「おそらく、それを使った存在がここから消えたことが原因だろう。
ディアルガとパルキアを操っていた2本の赤い鎖・・・それは作った主と連動していた。
だがその主は今はいない、だから力は行き場を失いその力に乗っ取られていたあの2匹も動けないんだ」
「そんな・・・それじゃあどうなっちゃうんですか?」
「・・・主はなく2匹も動けなくなった今でも、あれは動きを止めただけで力を発している。
このままでは、あの鎖の力が2匹を内側から食らいつくしていく・・・そしてそこからまた、多くの人々やポケモンも同じように・・・」
「・・・」
ゲンの話を聞いた3人はその顔に恐怖を浮かべる。
そんな3人のリアクションに対し、ゲンはそれを止めるすべを3人に説明しはじめる。
「それを止める方法は一つ。
あの鎖を、どちらか一方だけでも破壊することだ。
そうすればディアルガとパルキアは自我を取り戻し、自らの力でもう一つの鎖を破壊するだろう」
「!」
「・・・キミ達、やるか?」
ゲンの言葉にたいしコウキとヒカリとジュンは互いの顔を見て、こくんと頷くとゲンに向き合った。
「ゲンさん、僕達にその役目、やらせてください!」
「少しでも、なにかできるのなら・・・」
「オレ達は全力で立ち向かうぜ!」
コウキ、ヒカリ、ジュン。
その3人の決意を聞いたゲンは口元に笑みを浮かべた。
「よし、ではともに挑もう!」
「「「はい!」」」
その3人に向かって、マーズは訴える。
「それで、どうなるのよ!
アカギ様は・・・あんた達も・・・あの坊やが・・・!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「例えこれでクウヤ達が戻ってこようがそうでもなかろうが・・・」
「オレ達は、オレ達で・・・できることをするんだ!」
クウヤのことだって、もちろん心配だし助けたい気持ちもある。
だけど今は目の前のことを解決しなければならないから、やる。
そう決意した3人はポケモンを全員だし、技を出す構えに入る。
「よし、私の合図にあわせて攻撃を開始してくれ!」
「はい!」
「ルカリオ、はどうだん!」
そう叫ぶとルカリオははどうだんを放ち、あとからリングマはストーンエッジ、ボーマンダはりゅうせいぐんを放つ。
「ドダイトス、ソーラービーム!」
「エンペルト、ハイドロポンプ!」
「パチリス、かみなり!」
まずは自分のポケモンの中で特にレベルの高いポケモンが技を出し赤い鎖を攻撃する。
それに併せて彼らのポケモンも、技をそこにぶつける。
「・・・ブニャット、はかいこうせん!」
「スカタンク、あくのはどう!」
「・・・!」
それをみたマーズとジュピターも、同じように技を放ち、赤い鎖を攻撃し始めた。
彼女たちも、コウキたちの姿に、心が動かされたように。
「いけぇぇぇーっ!」
3人がそう叫び、ポケモン達が技の威力を高めたとき。
パキィィィィン・・・。
赤い鎖は、2本とも、バラバラにちぎられた。
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今更ですが、ポケモン銀のバチャコンをゲットしました。
じーっくりと、遊びます。