「願いは……かなう?」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第21話(改2)<艦娘たちの夢>
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それから椅子に座っていた3人は直ぐに立ち上がると武蔵様の指示に従って収集した資料を机の上に差し出した。
彼女は窓際に立ちながら返された資料をチラッと見た。
「それで全部だな?」
『ハッ』
青葉さんたちは返事をした。
武蔵様は軽く頷くと背を向けて工廠の窓の外を見た。
「今夜はもう良い、戻れ」
「はい」
私は軽く敬礼をした。他の面々も、それに続いて敬礼をした。
ホウっとため息を吐いた武蔵様は振り返らずに言った。
「……川内、五月雨がこの近くに居るはずだ。ここの皆さんを宿所に案内させろ」
「ハッ」
敬礼したブルネイの川内が「では」と言いつつ参謀たちを外へ案内する。美保の艦娘たちは「失礼します」と言いながら退出。
(結局、おとがめ無し、と言うことか)
全員が退出した後、私は最後に改めて武蔵様に軽く敬礼をした。
「では、これにて」
艦娘に敬礼するのは正直いって妙な感覚だった。だが彼女には自然にそうさせるだけの威厳があった。
(武蔵様は量産型だが結局、艦娘は歴史的なものを加重させるのだろう)
私が、そう思っていたら彼女は振り返る。
「いきなり外地に来て大変だったな」
「……」
つい何も返事が返せなかった。
すると武蔵様が近寄ってきた。私は思わず緊張した。
だが彼女は微笑みながら言った。
「美保殿、失礼!」
(あ……)
と思った次の瞬間、武蔵様は半ば強引に私の手を取ると、そのまま抱擁してきた。
(絞め殺される!)
つい他の艦娘を連想してしまった。
(……わけないか)
私は苦笑した。
もちろん彼女は帝国海軍最強の艦娘の一人だから本気を出せば私なんて一溜まりもないが。
「人間の指揮官、まして他所の司令殿に失礼を承知で許して欲しい……」
「あぁ」
私もソッと抱き返した。
彼女の身体は、ふくよかと言うよりは筋肉質だった。それでも女性らしい柔らかは感じられた。
(艦娘は海を司る女性たちだから父性よりは母性が強いのだろうか?)
不思議と如何(いかが)わしい気持は微塵もなかった。彼女自身、艦娘という立場を越えた何かが突き動かしているのだろう。
そんなことを思っていたら武蔵様は口を開いた。
「これは立場を超えて古(いにしえ)の指揮官への私なりの報恩の気持ちだ」
「……」
私も、その山陰出身の艦長のことを想起した。
彼女は続ける。
「……かつて私は、この地から最後の出撃をした。だが、お前たちには、ここを新たな出発の地として欲しい」
「あ、あぁ」
意外な出来事の連続で思わず、しどろもどろになった。我ながら情けないことだが他の面々は退出していたので体面は保てた。
私はふと幼い頃、母親に抱かれた感覚を連想した。
(正直ハッキリと覚えては居ないが)
「お互い、為すべき事が多いな」
そう言いながら武蔵様はソッと私から離れた。
彼女は日向のような武人タイプだが、やはり内外共に大きなものを感じさせる艦娘だった。
「山陰の美保か……いつか必ず訪れようぞ」
「待っているよ」
最後には、お互い微笑みつつ敬礼をした。
そして私は部屋を出た。
廊下は既に暗くなっていた。薄暗い常夜灯を頼りに私は外へ向かう。何だかんだで、すっかり夜も更けた。
(技術参謀の暴走で、すっかり疲れたな)
屋外に出ると、その参謀たちが待っていた。
「おぉ、来たな」
「最後に武蔵さんにダメ押しで詰められたんですか?」
余計なことを聞く青葉さんだな。
「まぁ……そんなところだ」
私は適当に誤魔化した。
「ひゃあ」
まだ先のトラウマが残っているのか青葉さんは素頓狂な声を出す。
「お疲れ様でした」
夕張さんが気の利いたことを言う。
私は頷いた。
「じゃ行こうか」
だが案内役の五月雨が妙に黙っていた。
「どうした?」
「提督……」
彼女は思い詰めたように私を見上げて言う。
「は?」
私は立ち止まった。
五月雨は決意したように言った。
「私も美保へ連れて行ってください!」
「は、はぁ?」
驚いた。開いた口が塞がらない……。
いや私だけでなく周りの艦娘たちも驚いた。
(どうして私の周りの艦娘たちは突拍子も無い行動を取る娘ばかりなんだろうな)
思いっきり引いた私は慌てて応えた。
「いや、急に言われても……な? 大将の意向とか、そもそも異動には軍令部の許可が要るだろう」
「そうだよ」
川内がカットイン。
「艦娘の意思だけで異動できる訳ないだろ」
「五月雨よ」
いきなり背後から武蔵様が現れて一瞬ドキッとした。
私の前にいる五月雨もハッとしたようだが、そのまま黙っている。
武蔵様は、ちょっとため息をついた。だが、その表情は意外に穏やかだった。
そして少し微笑んで話し始めた。
「お前の気持ちも分からくはない。何しろ美保の連中はオリジナル艦娘だからな」
(そういうことになるか……全然、意識したことも無かったが)
彼女は続ける。
「だが我々は艦娘だ。希望を持つことは咎めないが、それ以前に軍人だ。お前の行動は軍として、あってはならない」
「……」
五月雨は下を向いている。
武蔵様は続ける。
「落ち込むな。もしお前が、その気持ちを持ち続けるならば、いつか必ず願いは叶う……私がそうだったから」
「願いは……かなう?」
五月雨は武藏様を見詰めて復唱している。
うちの艦娘たちも顔を見合わせているが……まぁ彼女等にはピンと来ないだろう。
そもそも艦娘の存在自体が軍人や艦艇の無念さ或は、夢や希望が昇華し具象化した存在だ。
武蔵様には、その自覚があるのだろう。
(それが無ければ、さきの台詞は出て来ない)
やはり大きい艦娘だ。
見れば五月雨の瞳から一筋の涙が流れた。それでも微笑んだ彼女は涙を拭った。
「……分かりました。有難うございます」
純粋な笑顔だった。艦娘でも、こんなに自然な笑顔が出るんだな。その初々しさは新鮮な印象だった。
五月雨の青く長い髪が月明かりを反射し南国の夜風にサラサラと流れる。本当に、この子は妖精みたいだな。
彼女は再び笑顔で私たちに一礼すると改めて敬礼をした。
「失礼しました、皆さん。改めて、ご案内致します」
そして彼女は私たちの先頭に立った。
私と美保の艦娘たちは、互いに顔を見合わせて頷いた。
「あぁ、頼むよ」
この鎮守府は、ちゃんと艦娘同士で支え高め合う関係が出来ている。
私も無事に帰還できたら美保鎮守府でも、そういった関係を築きたいと決意した。
綺麗な夜空に浮かぶ南国の月はダイヤモンドの如く明るい。
明日も晴れだな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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工廠でのトラブルは何とか解消に向かい武蔵に別れを告げて外に出た提督たちは思い詰めたような五月雨と出会う。