No.922586

恋姫†英雄-蝶々戦隊華蝶連者 INTERVAL 1

人の記憶や想いに残っても人々を楽しく幸せにできなければ意味は無い。
自分は人を楽しく幸せにする為の創作を貫く為に、昔生路が考えた物語を恋姫†無双二次創作として再編成!
メイン作品は恋姫無双だけだけれど…色んな作品からのキャラも登場します(しかもこの物語は全く新しい外史なので設定も所々違う)、そういうのがダメな人は…気合で見てください。
続きを長考していましたが今回割と重い鬱展開なので注意。
生路は悲劇を書かせると下手すると虚淵卿やきのこ卿以上に暗い?

続きを表示

2017-09-16 18:51:04 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1753   閲覧ユーザー数:1728

 

 1

 

 スーパー聖フランチェスカ学園、放課後の剣道部部室にて…

 

「……腕を上げたでござるな、一刀殿、星殿…そして、拙者よりも強くなった。」

 スーパー聖フランチェスカ学園剣道部主将、不動如耶は仰向けに倒れた状態で一刀と星に語り掛ける。

 

「…俺も星もやっと目標だった如耶先輩に一対一で勝った…けれど、俺達の戦いの道はここで終わりじゃない。」

 一刀はそう言うと、如耶の手を引き起き上がらせる。

 

「先輩、俺を去年のインターハイで、エースとして抜擢してくれて、ありがとうございました。」

「かまわぬよ…いずれ、一刀殿は拙者を超えると確信していたでござる…。」

 如耶はよろよろと立ち上がる

「それより、一刀殿、星殿、1つお伺いして宜しいでござるか?」

「?」

「私達に答えられる範囲なら。」

「これから、去年のインターハイで唯一敗北した白皇学院高等部元生徒会長、桂ヒナギクにリベンジするのでござるか?」

 如耶は真剣な表情で問う。

「いいや、ヒナギクはすでにあの東京23区壊滅で政府によって死亡が発表された。住民票も死亡扱いだ…。」

 一刀が沈んだ表情で答える。

「そ…そうだったでござるな……。」

 如耶は悪い事を聞いた、という表情で返す。

 

「じゃあ、俺達はこれで、先輩。」

 

 一刀と星はそう言い残すと荷物を持って部室を出て行った。

 

 

 1人になった如耶は辺りを見回した。

「さて…」

 如耶は剣道部部室の壁にぶら下がっている紐を引っ張る、そして一枚の大きな写真が下りてくる。

 

 一刀が扮する華蝶仮面、華蝶レッドのプロマイド…だった。

 

 

 如耶はプロマイドの前で正座し、手を合わせ、祈る手の形をし、願う表情で華蝶レッドの写真に語り掛ける。

 

「ああ、華蝶レッド様…! どうか、可愛い後輩から、唯一負けた相手にリベンジする機会を奪った、禿十字団を倒してくださいませ…。

 そして、願わくば…これからも、桃花町の…………いえ、世界の平和を華蝶連者達と共に守ってくださいませ……。」

 

 そう、自他共に厳しく気品が高くプライドの高い事で生徒から慕われている、不動如耶が実は華蝶連者、特に華蝶レッドの熱狂的な(狂信的な?)ファンだったのである…

 その正体が自分の後輩である一刀だとも知らずに。

 

 

 

 その夜、不動如耶は自前のノートパソコンで……1つのホームページを運営していた。

 

 

『蝶々戦隊華蝶連者ファンクラブ』 管理人:愛河 マナ

 

 そう、彼女は「愛河マナ」というハンドルネームを名乗って、ネット上で華蝶連者のファンクラブを作っていたのだ。

 

 

 

 場所は変わってスーパーセントフランチェスカ学園学生寮、一刀の部屋。猪々子や白蓮も一緒にノートパソコンの画面を見ていた。

 

「見ろよ兄貴、ついにあたいらのファンクラブが出来たぜ。」

 猪々子が溌剌とした声で言う。

「禿十字団の襲撃で怪我人や死者も出たのにのんきだなぁ…。」

 斗詩がため息をつきながら零す。

「どこでどうやって私達の写真を撮ったのだろうな?」

 星が不思議そうに語り掛ける。

「まあ、正体がバレなかっただけ、良いとしないか?」

 白蓮は気楽そうに言う。

「まあ、そうなんですけれどね。」

 麗羽が心配そうに話を続ける。

「真桜さんのお父様のご協力の基、巨大勢力の導入で私達の戦力は大幅に上がりましたが、前回は問題もありましたわ。」

「そうね…。」

「そうだな…。」

「そうですね…。」

 辺りが重い空気に包まれる。

 

 あれから、2日…桃花町の殆どの場所が禿十字団の被害に合い、多くの人や建物が被害を受けた。

 怪我人や死者も少なくなく、中には禿十字団に連れ去られた者も居たという…。

 

 星はネットのニュースサイトを開いて、禿十字団で記事を検索してその中の1つを開く。

「死者35名、重軽傷者150人超、行方不明87名…」

 

「その行方不明者達は皆…」

「十中八九、禿十字団に攫われた。」

 

「くそっ!あの時、西澤桃華だけでも捕まえる事が出来りゃ、アジトを聞き出せたのに!」

 猪々子が悔しそうに嘆く。

「鷺之宮伊澄も、あの後、尋問前に脱獄したって言うし…ほっといたら何するか…。」

 斗詩が心配そうな声で言う。

「一応、マサラタウンのサトシってフリーのカメラマンが2人を含め禿十字団の顔を写真に撮ったんで、団員達の顔はすでに世界中に割れているけれどな…」

 白蓮がため息を吐きながら言う。

 

「昨日のオーストラリアへの禿十字団の攻撃の被害はこんな物じゃありませんわ。」

 麗羽が不安そうな声で説明する。

 

「死者数だけで200を超えましたもの…。

「あの、サトシってカメラマンも……信用しすぎるのは危険だと思う。スパイである可能性もあるわけだし。」

 

 斗詩が心配そうな声で呟いた。

「かと言って」

 

「だが、悪い事ばかりじゃないさ。」

 一刀がそう言うとファンクラブの掲示板を開く。

 

「これは…。」

「ほう。」

 

 掲示板には華蝶連者のサイドキックや情報屋を希望する書き込みがあった。

 また、どこかから調べて来た禿十字団の情報等も書かれていた。

 

「壊滅した東京二十三区の地に禿十字団のアジトらしきものを発見?だけれど、鷹の爪団が突入した時にはすでにもぬけの殻…」

 麗羽は少し驚いたような口調で言う

 

「アカネイア大陸から日本へ亡命して来た敗軍の将…カナリス、ベンソン、エイベル、ネーリング、ルーメル、盗賊界隈の有名人ダール、海賊ガザック、ゴメス…」

 星が仲間に志願して来た中で目ぼしい名前を読み上げていく

「ジュリオ・飛鳥・ミスルギ?亡国の皇太子が何で……?」

 猪々子が不思議そうにつぶやいた。

 

「これはこれは…。」

「どうする?彼らに会いに行くか?」

 

「…。」

 一刀は考えた。

 

「けれど…禿十字団ばかり相手にしている訳にもいきませんわよ?」

 麗羽は説明口調で一刀に話しかけた。

「わたくしや猪々子と斗詩や星さんもそうですけれど…愛紗さん、鈴々ちゃん、沙和ちゃん、凪ちゃん、焔耶ちゃん、桂花ちゃん、蓮華さん、思春さん…。」

「明命さんや音々音ちゃん、詠ちゃんに季衣ちゃん、ソーニャちゃんや章仁君と羽未ちゃんも…シャドーガバメントや怪人の被害に合って酷い時は家族を亡くした。」

 麗羽と斗詩は辛そうな声で呟いた。

「…そうだな、親を亡くした愛紗と鈴々は桃香の、沙和と凪は真桜の、ねねは恋の、詠は月の、季衣は流琉の家に引き取られて…。」

「名前の名字こそ親を亡くす前と変わっていないが…自認は本当の姉妹同然…あたいと斗詩と羽未に至っては孤児院育ちだしな。」

 猪々子と白蓮は肩を落としながら話した。

 

 星は雑誌を開いて仲間に声をかけた。

「桃香町は組織城下町…我々華蝶連者のスポンサーである組織『十戒』も一応、警備を強化してくれるそうだ。

 切り札だったであろう、巨人の卵を破られたとなれば禿十字団も攻撃を慎重にならざるを得ないだろうが…」

「そう楽観するのは危険ですわよ!!星さん!!」

 麗羽は星に力強く訴えた。

「言いたい事は解ってる。禿十字団以外の悪の組織は勿論、野良犯罪者や野良怪人にも警戒しろ、という事だろ?」

 一刀は麗羽を優しく諌めた。

 

「だが、麗羽の言う事も一理ある。理事長には桃花町の不審者情報とかの提供も頼もう。

 人間に化けられるワームやオルフェノク、ファンガイアやドーパント辺りの怪人が紛れ込んでいたら最悪桃花町が壊滅する恐れがあるしな」

 一刀はそういうと腰のポケットに入れていたパピヨンダイヤルを取り出し何処かに電話した。

 

 2

 

 翌日の昼休み…一刀は珍しく校舎の屋上で1人で食事を採っていた、自作の卵焼きとブロッコリーの御弁当を食べ終えて昼寝しようかとしていた時…。

 

「一刀?ちょっと良い?」

 そんな一刀に話しかけたのは前の横髪が長く後ろの髪が揃えられておらず短い聖フランチェスカ二年生の少女…蓮華だった。

 

「愛紗ちゃん…何か、最近不機嫌で…お兄ちゃんを殺した人を見たとか…。」

 蓮華は心配そうに話す。

「華蝶連者がこの街を守っているんだ、そいつは命知らずにも程がある。そのうち捕まるさ。」

 一刀は気楽そうに返すが、そう言われた蓮華は横髪をすくい上げ不安そうな表情を浮かべる…。

 

「その髪…中学生の頃に『神威の剣帝』を名乗る悪の組織に無理矢理後ろの髪を切られたんだっけか…。」

「ええ…情報屋に場所を特定されて世界各国のアジトをヒーローや魔法少女に幾つか潰されているけれど…未だ…壊滅できていないそうね…。」

 蓮華は沈んだ表情を浮かべる。

 

「蓮華、すでに愛紗にも言った事だけれど、被害を受けたからといって悪に復讐しようとするような事はやめろよ」

「解っているわ、でも…」

 

「もし、どうしても今なお自分の髪を切った悪が健在である事に蓮華が我慢ならないのなら、卑弥呼理事長に頼んである物を用意して貰おうと思う。」

「え?」

 しっかりした口調から優しい言葉に変わる一刀に蓮華は驚く

 

「蓮華のお母さん…炎蓮さんが蓮華の保険証管理しているんだよな?」

 一刀が落ち着いた声で蓮華に聞く

「そうだけれど?」

「じゃ、待ってて、それと…蓮華の髪を切った奴等も、何時か華蝶連者が倒してくれるさ」

 そう言い残すと蓮華を背に階段を降りて去って行った。

 

「一刀…く…ん…」

 蓮華はそう呟いた。

 

「ずっと、そこで見たんでしょ?思春」

 蓮華は隠れていた親友にして従者に話しかけた。

 

「蓮華様……」

 影からのそりと姿を現した長い黒髪の少女…思春はそう呟いた。

 

「私は北郷の事はあまり好きでは無い…けれど、蓮華様にとって大切な方なら…蓮華様を守るという立場は同じなら…」

「思春…いえ、思春ちゃん?」

 蓮華は思春に微笑みかけるように言う。

「はい?」

「紫苑先生が…この学校の保険医になったの…わた…アタシや一刀くんが中学3年生の時の事よね?」

 

 

 その頃、教室では…

 

「それは本当?猪々子?」

「ああ、愛紗。お前の兄ちゃんはまだ生きているぜ。」

 猪々子は得意げに愛紗に語りかけた。

「最後の目撃情報は昨日ドイツのフランクフルト空港にて、けれど、それ以来また行方不明で…」

 猪々子は持っていた目撃写真を愛紗に見せた。

 金髪碧眼のゲルマン民族ドイツ人ばかりの人混みの中、1人だけ黒髪の男がまぎれて居る

「どう愛紗?」

 猪々子は愛紗に聞く、愛紗は黒髪の男の横顔を覗いて…

「…………間違いない、あたいのお兄ちゃん…だ」

「そうか、間違いないんだな?」

 愛紗は小さく頷いた。

「華蝶レッドからの伝言ありがとう、猪々子」

「どーいたしましてっ♪」

 猪々子はそう言うと教室から出て行き、

「潮田渚先生も、女優の磨瀬榛名と結婚して、同時に養子を何人も貰うって話だし、こんな世知辛い世の中に負けずに楽しく行こうぜ!」

 

 

 フランチェスカ近くの草原、巨真聖(スーパーセント)☆フランチェスカ学園小等部5年生朱里、雛里は自分達の生い立ちを思い返していた。

「雛里ちゃん…あれから、もう6年になるね…私達がみなしごになってから…」

「うん、朱里ちゃん…」

 雛里は小さく呟く。

「私達が生まれた街は『2ちゃんねる』によって壊滅させられた…風評被害を受けて…悪人扱いされて…」

「……朱里ちゃんの本当のお母さんも、私のお母さんも自殺しちゃって…遺された家族は離れ離れに…」

「そして、私達2人は女子校だった頃からのフランチェスカの先生だった水鏡先生に拾われて…」

「雛里ちゃん、水鏡先生は酷い事をされて、酷い事をされたのが忘れられなくてどうしても謙虚に一歩引けない時が来たら、学園長を頼るよう私達に言ってた…」

「…そうだね…行こう」

 

 

 フランチェスカ校の動物の飼育小屋…フランチェスカ高等部一年生恋、小等部5年生音々音が

 大量の動物の世話を追えても尚、大量の動物たちの前で立ち尽くしていた

 

「人類の危機とは言いますが、別にピンチなのはねね達人間だけじゃないのです…」

「動物達も、怪人や改造人間を作る為に解剖されて、遺伝子を吸い取られて…殺されていく…」

 呂布の子孫、恋は悲しかった。

「悪の組織の人達がどんな理想で動いているか、恋は知らない…けれど、こんなの絶対間違っている…」

「恋さん…」

 ねねは悲しそうに恋に話しかける。

 

「理事長の処へ行こう。華蝶連者に入れて貰う…」

 

 それを遠目から見ていたフランチェスカ高等部三年生春蘭、秋蘭の姉妹…

「なあ、秋蘭…今、恋は悪の組織について憤慨していたが…」

「ああ姉さん。どういう理由でどういう理想であんな事をしているのか解らんが迷惑な話だ…」

 秋蘭はため息まじりに語る。

 

「けれど、秋蘭。禿十字団の目的はそうでないかもしれんが、かつてのショッカーといい黒十字軍といい悪い奴は

 大概世界征服って言うが、仮に成功したとしてもその後の事をどう考えているんだ?」

「…? どういう事、姉さん?」

「例え独裁者がIQ5億ぐらいあったとしても、世界中の全員の面倒みるなんてかなり大変じゃないか?」

 純粋かつ勤勉でまっすぐで融通が利かない性格の姉の言葉に、秋蘭は考える事があった。

 

「そうね…やめさせるべきね、こんな事…」

「潮田渚先生…もうすぐ女優と結婚して同時に養子を貰うというのに、少し前に母親を亡くしたらしい上…

 今度は共同で管理していたかつての母校、椚ヶ丘校のE組の教室が、大破してしまって落胆していたし…

 勤務に支障がない程度ではあるらしいが、ただでさえ母親が死んでしまってからというもの原因不明の記憶障害に悩まされて紫苑先生の診察受けているのにな…」

 

「その潮田先生自身も最近怪しいわ…。赤羽業って官僚の人と…市島先生とその友人の人達4人…。

 市島先生の友人は何でも女の人が3人でミクモと八千代…金髪の人の名前は解らないわ、長髪の男の人は皆葉祐樹って名前らしいわ…と何やら話をしていたけれど…

 『開運石鹸がどうとか…渚先生の母親は石鹸の魂と融合して生まれ直してしまった』とか…そんな内容を喋っていたわ」

 

「渚先生の母親って、息子を娘の代用品にしたあげく、息子に逃げられるや、十戒の薬品研究に株とかで稼いだ金を継ぎこんだような人らしいな。

 最終的にそのミクモって人から危険な道具を買ってその道具のせいで死んだんだろ?」

「その危険な道具を持っていたミクモ氏も大概だけれど…潮田渚先生、赤羽業、市島先生とその友人たちは共通して社(やしろ)とかいう組織にかかわりがあるらしいわね…」

 

 秋蘭がそう言うとしばらく沈黙が続いた…。

 

「で、どうする?秋蘭」

「学園長に頼んで十戒から圧力をかけてでも禿十字団の事を全国に報道して貰おう…もっと多くの人が知らないと…

 それに、市島先生はただのロリコン教師じゃなく、何だかんだでご友人と楽しくやっているようじゃないか」

「そうだぞ秋蘭。こんなご時世でもささやかな夢や幸せがあるんだ。潮田渚先生の雪村あかり氏との結婚も祝福してやろうじゃないか!」

 

 

 こうして、人々は悪の組織の進撃で大変な時でも支え合っていた。

 就職、結婚、芸能、向上、栄誉、絆、愛、友情、再開の希望、技術や能力の習得…

 人々はこんな時代でもささやかな幸せや夢と希望を持って支え合って生きていた。

 

 

 だが…

 

「何の用だい?キュゥべえ」

「突然会いにきて、すまない一刀。僕は警告に来たんだ……」

 白い生物…キュゥべえは窓から部屋に入り込むと悲しそうな怒ったような声色で一刀に語りかける。

 

「最悪だよ…禿十字団のやり口は…!!」

「え…?」

「どうマクロな視点で見ても、どうミクロな視点で見ても最悪だ。」

「…どういう事だ?」

 一刀は心配そうに聞いた。

「実に回りくどいが最悪だ。僕や僕の仲間たちはこの桃花町や他の禿十字団の襲撃に合った町を見て回ってきた処、最悪だったよ。」

「最悪?そうなのか?」

「それは是非君達の目で確かめて方が早いはずだ。戦うべきは、禿十字団より先に、今もこの桃花町の最悪の状況だよ」

「最悪、か」

「感の良い人はみんな気づいている頃さ。それに一刀のそのあまり驚かない様子だと…薄々感づいているんだろう?」

「まあ、それなりには?」

「そして、これだけは言っておくよ一刀。向こうにどんな理由や事情があるにせよ、禿十字団などの悪人に同情する事はしない事だ。

 例えば宇宙を終焉させないためだとしても、罪もない少女を悲劇と絶望に誘うなんてよくないよ。

 宇宙が終焉する事など無いし、どう理由をつけたって悪となる行為が許される事は無いんだよ、絶対に」

「同情するな、か…そういう考え方は好きになれないな、俺は…」

「警告はしたよ。」

 そう言ってキュゥべえは逃げるように去っていった。

 

 

 キュゥべえの忠告は的中した。

 

 

 放課後…桃花町の電機ショップの前から出てくる姿…

 スーパーセントフランチェスカ学園…学校帰りの1人の男子生徒が妹含む4人の女子生徒が見ている処で、

 買ったばかりの赤い携帯電話を片手にと財布の中身を見つめていた。

 

「くそ…かなり高値が付いた…明らかに足元見てる…」

 スーパーセントフランチェスカ学園高等部二年生早坂章仁は苦虫を噛み潰したように呟いた。

「あきちゃん…確かに…私が初めてここの携帯買った時の二割増しの値段だよ!

 十戒の開発支援と真桜ちゃんの家の技術でローコストでより高品質な携帯電話が量産できるようになったのに…」

 高等部二年生、芹沢結衣佳は章仁を優しく慰めた。

「章仁君は今時の学生には珍しく携帯電話を持っていなかったけれど、短期間に二回も襲撃があっちゃ

 もう非常時の連絡の為の携帯電話を桃花町の誰もが手放せなくなっちゃったね…。」

 章仁のクラスメートの二年生女子、織戸莉流は心配そうに章仁に語りかけた。

「羽未も…千絵先生や博嗣さん、季衣ちゃんや沙和ちゃん、思春さんや焔耶ちゃんが何かを買い込んでいる処見た…」

 章仁の妹、スーパーセントフランチェスカ学園高等部一年生早坂羽未は心配そうにつぶやいた。

「博嗣君が何かつぶやいているの聞いたけど……ご飯とか衣類とか生活に必要な物を売っている処が次の襲撃で破壊される前に

 自分だけ買い溜めしようとしているんだ…」

 スーパーセントフランチェスカ学園高等部三年生、楠原彩夏は悲しそうに話した。

 

「買い溜めしたり!足元を見たり!生きる為に!生きようとする気持ちにつけこむ為に!次の襲撃の時も自分だけ生き残る為に!皆卑しくなっていく!」

 莉流は空を仰ぎ怒りをぶつけた。

 

「これじゃあ怪人を追い出して、禿十字団も討伐されたとしても桃花町は御終いかもね…

 学校の合併運動の中、色んなトラブルがあって、人殺しまで起こった頃に逆戻りしちゃう…」

 彩夏は悲しかった。

 

 

 彩夏や莉流が危惧したとおり、実際桃花町は誰の目に見えても急激に治安が悪くなっていった。

 

 そのころ、食品店では…

 

「ちょっと!!野菜も肉もこの前の値段の三割増しなんてどういう事よ!!」

 スーパーセントフランチェスカ学園高等部一年生沢口麻衣は激怒した。

「この親父…舐めてんの?」

 スーパーセントフランチェスカ学園教師深潮冴美は不機嫌そうに言う。

「これでは十分な料理が…お財布が…」

 スーパーセントフランチェスカ学園小等部五年生上岡由佳里は悲しそうに言う。

 

「どうもこうも値上げは値上げだ。嫌なら別の処で買ってくれや。」

 食品店の店主の成人男性はきっぱり言う。

 

 傍で見ていたスーパーセントフランチェスカ学園中等部二年生の二人組は呟いた。

「ここもだぜ、さやか。値上げした挙句諍いになっちまってやがる。」

「そうだね…今の状況を考えると盗みとかに及ぶ人もでかねないよ。」

「…なんであたしの方見るんだ?さやか」

「だって杏子は両親を魔女に殺されてからは、国と契約するまで妹を養う為に魔法少女としての活動の他にも盗みとかもやっていたから…

 あたしが杏子と一緒にいるのは二度とそういう事しないよう監視する立場でもあるからって事は忘れないように」

「信用ねーな…」

 

 

 その日の夜は、強盗が公園前の通りのパン屋に押し入り、禿十字団登場以来、最初の華蝶連者による犯罪者の捕り物となった。

 

 その翌日の朝はワームの群れが近くの森に現れ、小さな孫と一緒に散歩していた祖父が孫の目の前で殺されて、ZECTが出撃する事態になり

 その日の昼に、桃花町がグロンギのゲゲルの舞台になってしまい、また犠牲者が出た。

 

 

 禿十字団の攻撃が無い時も、禿十字団の攻撃で生まれた不安や混乱は、桃花町に大きな爪跡を残しており、

 単独やそれに類する小集団での犯罪者や悪人の活動が、華蝶連者登場以前より増えた。

 

 全て華蝶連者や警備兵によって撃退されたが、その度に人々の心に疑心と不和が生まれ…

 

 『人を見たら、グロンギか、オルフェノクか、上級アンデッドか、ワームか、イマジンとの契約者か、ファンガイアか

 ドーパントか、グリードか、ゾディアーツか、ファントムか、オーバーロードインベスか、ロイミュードか

 ダークライダーかと思え』

 

 この言葉が桃花町に深く刻まれていた。

 

 

 いや………………桃花町に…いや日本に限った話ではなかった。

 

 

 あれから禿十字団に限らず、様々な悪の組織によって世界各地の様々な市町村が被害を受けた。

 

 

 警察とヒーロー達は協力して出来る限り街を護ろうと戦い、最後には撃退するが、

 その度に町は破壊され、怪我人や死者も出て世界の治安はガタガタになった。

 

 返り討ちに合うと解っていて街を襲い、出来るだけ被害を多く出す事で世界の治安を悪くして行き…

 

 いずれ見せる、自分達の目的を果たせるだけの隙を突く、

 

 

 これが、禿十字団の遣り方だったのだ。

 


 
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