No.920169

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 47

風猫さん

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。


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2017-08-27 23:15:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1064   閲覧ユーザー数:978

~休息:轍~

 

 あくる日の昼下がり。俺は警邏へと出ていた。

 

「くぁ……」

 

 董卓との戦が終わり、幽州へ戻って早一週間。これといった問題もなく、平穏な日々が続いていた。

 

 俺はというと、劉備に陣を抜けるという話を……

 

(いつできるんだろうなぁ……)

 

 そう、できていなかった。というのも、どうにも避けられているようだ。

 

 政務中に行けば、

“ごめんなさい! 今ちょっと手が離せなくて……”

 

 終わったタイミングでいこうとすれば、

“え、えっと、急な会合が入っちゃって!”

 

 仕方なしに劉備の休みの日に訪ねれば、

“そ、その月ちゃんたちとお買い物に行く約束が!”

 

 といった具合にこの一週間、まともに話せてすらいない。

 

(……あれほどあからさまなことをやっていて、気が付かれないなんて思ってないよな。まさかとは思うんだが)

 

 ……いかん、不安になってきた。雪華の居場所として安全だと思っていたのだが、雲行きが一気に怪しくなったぞ。

 

「……まぁ、他の面々がいれば問題ないだろ」

 

 将達はもとより、孔明、鳳統、北郷もいる。

 

「……そう言えば、北郷の奴も避けてるな」

 

 まぁ、劉備ほどあからさまではないのだが。

 

(それに、話そうと思った回数も少ないしな)

 

 だが、これは本当に早めに話さなければならない。隊の面々には出ていくことは話していないものの、引継ぎ自体はほぼ完了している。いざとなればすぐにでも回せるはずだ。

 

(あとは……)

 

 いつ、関羽からあれを返してもらうかだ。

 

(……いっそのこと、返してもらった後で話をするか?)

 

 なんか、そっちの方がいいような気がしてきた。

 

(……そうだな。そうするか)

 

 それに、関羽から劉備に自動的に話がいくだろう。そうと決まれば……

 

(話は今夜あたりにでもして、返してもらう。で、そのあとで雪華に話をするか)

 

 大まかな予定を決めた後は実行するのみ。とはいえ今は昼間だ。夜まではいつも通りの仕事をしよう。

 

「やぁ!」

「なんのぉ!」

 

 そう決めたところへ子供の元気な声が耳に入ってきた。何となくそちらへ歩を進めると、5人の子供がチャンバラをしていた。

「このぉ! このっ!」

「へへん! 当たらないよぉーだ!」

「このまま押し込めぇ! やつらを倒すのだぁ!」

 

 どうやら、3対2でやっているらしく、二人の方が不利になっているようだ。まぁ、子供のチャンバラで人数が一人でも少ないってのはよっぽど実力が離れてないとどうしようもない。

 

 と、そこへ一人の増援が現れた。

 

「もう大丈夫だ! 俺に任せろ!」

 

 黒い、外套を身に着けて。

 

「や、やばい! 黒の御使いだぁ!」

「ひるむなぁ! いくぞぉ!」

 

 思わず、その子供のチャンバラに目が釘付けになる。

 

 御使いが加わったことで、さっきまで不利だった子供たちは息を吹き返して、そのまま押し勝ってしまう。

 

「この黒の御使いがいる限り、お前たちの命は俺が守る!」

「おー!」

 

 かわいらしい勝鬨を上げ終えると、さっき負けた子供たちが戻ってくる。

 

「じゃあ、次は俺が御使い様ね!」

「え~、次は俺がやるぅ!」

「僕の番だよぉ!」

(……俺、あんなこと言った覚えがないんだが)

 

 そういや、孔明がいつぞや俺が正義の味方のように扱われているって話をしていたな。

 

「実際には、真逆の存在なんだがな……」

 

 正直、今の今まで警邏に出ても子供の様子なんて気にしたことがなかった。まさか子供にまでこんな風な扱いをされていたのは意外だ。

 

「ん? あぁ! 御使い様だ! 黒の御使い様だ!」

「げっ」

 

 しまった。気づかれた。

 

「ほんとだぁ! 本物の御使い様だぁ!」

「すげぇ!」

 

 一人に気が付かれれば、それは一気に伝染して他の子どもも気が付くことになる。いつもなら、気配を消して近づかれないようにしていたんだが……

 

(追い払うのもな……下手に逃げると後々面倒になりそうだし、怪我をしないように注意だけするか)

 

 そう思って子供たちに溜息を吐いてから近づいた。

 

「おい、小僧ども。元気なのはいいが、怪我や他の人に迷惑はかけるなよ」

「ねぇねぇ! それよりも御使い様! どうやったらそんなに強くなれるの!?」

「その外套、どうして真っ黒なの!?」

「御使い様の剣みせて!」

「……はぁ」

 

 つーか、こっちの注意は“それより”で済まされるほど軽いんかい。なんて思いつつも目を輝かせて質問攻めする子供たちをどうにか抑えるために、質問に答えていく。

 

「強くなりたかったら毎日鍛錬しろ。外套が黒いのは影や夜の闇に紛れやすくするためと、汚れが目立ちにくいから。剣は街中でむやみやたら抜くもんじゃないから却下だ」

「やっぱり鍛錬なんだ!」

「でも、昼間は目立たないの?」

「え~」

 

 まぁ、これでいいだろう。

 

「今は警邏中だからこれで質問は終わり。じゃあな」

「え~! 遊んでよぉ!」

「白の御使い様は遊んでくれるのにぃ~」

「ケチ」

 

 おい、なんか最後おかしい言葉がなかったか? というか、その前の発言もある意味問題じゃないか?

 

(……って、子供の言うことか)

 

 そも、子供ってのは理がないことを平然と言うものと相場が決まってる。うちの雪華とか。

 

「ケチで結構。遊ぶのもほどほどにしてけよ」

 

 そう言って完全に立ち去り、警邏へと戻る。

 

 しかし、今度は別のところでまた俺の話が出てくる。

「~♪ ああ、もはやこれまで。男は地に膝をつきこれから襲い来る死に覚悟を決めた~♪」

(……語り部か)

 

 人だかりができていたので、何事かと思って近づいたらどうやら語り部が音楽に合わせて何かの話をしていたようだ。

 

(まぁ、今のところ問題はなさそうだな)

 

 語り部の方も間諜というわけでもなさそうだ。そう思って立ち去ろうとした時だった。

 

「~♪ しかれどその眼は地獄の黒を見ずに生(せい)の黒を見る。狂刃を防ぎしは黒の御使い~♪」

(ごふっ!?)

 

 思わず軽くせき込んでしまった。町人には聞かれていないようではあるが……

 

(おいおい、どうなってんだ? 今日に限って……)

 

 俺、そんなに警邏の時に町の様子を見てなかったか? と若干不安になり、色々と思いだそうとしている間に語り部は話を終えて、聞いていた町人はお金を投げ入れてその場から立ち去っていく。中にはこちらに気が付いて慌てて礼をする者もいたが、それには軽く手を挙げて返事をした。

 

(……今日は、早めに切り上げるか?)

 

 どうにも今日は俺の話に出会うのが多すぎる。

 

(正直、現実の俺と違いすぎて吐き気すら覚えるんだよな)

 

 別に、町人に嫌悪感を抱いているわけじゃない。現実の俺との差異がありすぎて、心に靄がかかりそれが嫌悪感に変わる。

 

(……切り上げよう。とりあえず、裏通りを見れば問題はあるまい)

 

 警邏に出ているのは俺一人じゃないし、担当個所もそこまで大きいわけじゃない。なら、その中で一番危険な個所を重点的に見れば、問題ない。

 

(さて)

 

そう思って裏通りへ歩を進める。そして今度は、

 

「おいおい、これっぽちしか持ってねぇんかよ」

「ほんとはもっと持ってんじゃないかぁ? ん?」

「……はぁ~」

 

 もはや定型といっていいゴロツキが町民から金を巻き上げていた。

 

(なんでこんな時に起こるかね……)

 

 警邏をしている以上は捕まえるのが道理。俺は釘十手を抜いてから巻き上げているゴロツキを力いっぱい蹴飛ばす。

 

「いってぇ!」

「てめ、なにしやがっ!?」

 

 残っていた方のゴロツキが俺を見た瞬間、一気に青ざめる。

 

「よぉ。こんなところで小遣い稼ぎたぁ精が出るな」

「こ、黒死神だぁ~!」

 

 なんとも情けない大声を出しながら逃げようとするゴロツキの襟首を掴み、蹴飛ばされた方には暗器を投げつけて、地面から起き上がれないようにする。

 

「なにも逃げなくてもいいだろうが。別に殺すわけじゃないんだ、怯えなくても大丈夫だっての。まぁ、牢獄にはいれるが」

「くそぉ!」

「と、牢獄へいてもらう前にっと」

 

 体中をポンポン叩いて、さっき巻き上げていた金を探す。金は懐に入っていた。

 

「ほれ」

 

 それを被害にあっていた男に返すと、男は何度も頭を下げる。

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「別にいい。他に盗られた物はないか?」

「いえ、いいえ、ありません! ありがとうございます! 御使い様!」

「……じゃあ、こいつらを詰め所に連れてくからこれでな。あんまり金持って裏通りは歩くなよ」

「はい!」

 

 そう言って、俺は捕まえた男たちを詰め所へ連れて行った。助けられた男は俺が背を向けても、ちらと見れば延々と頭を下げていた。

 

(……なんだろうな)

 

 俺は、なんとも言えない胸の痛みを、その時に感じた。

 

はいどうも、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

久しぶりの休息ですが、まだまだ続きます。ちょっと長くなったらごめんなさい……

 

あ、話は変わるのですが、いよいよ今週、ミクさんのライブがあるのですが……

 

超 楽 し み で す !

 

この時をどれほど待ち望んだか……! ただ、唯一心配なのは前日寝れるかどうかですね……

 

え? 子供っぽい? いやいや、皆さんだって眠れませんよね? いや、眠れないはずです。寝れるわけがない!

 

……すいません、そう言ってくださいお願いしますorz

 

と、冗談はここまでにして。

 

また次回お会いしましょう。誤字脱字等があったらコメントに書いていただけるとありがたいです。

 

では。

 

 


 
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