皆さんこんにちわ。
『身も心も狼に』シリーズも早三話目。
今回の話は最初から最後までルビナス主点です。
しかも、前回のように個人主点でありながらも客観的に表現してるんじゃなくて、
完全に個人、ルビナス主点です。
苦手な書き方ではありますが、
やっぱり彼女の心情を表現しようとしたらこのほうがいいので頑張りました。
ではどうぞ。
ルビナスが楓・桜の二人と友達になれた翌日。
休日の翌日と言えば平日。
義務教育を課せられている稟達にとって避けては通れない日々。
それは、学校。
そこは、国の将来の為に同年代の子供達を集め、競争意識と協力意識と共に様々な知識を身に付けさせる施設。
そして、友達と出会い、触れ合い、仲良くなっていける場所でもある。
楓や桜と会えて、話したり遊んだりできるので、いつもは心躍らせる所だ。
が、その日はちょっと事情が違った…
side.ルビナス
~あっさでーす あっさでーす おっきましょお♪~
って声が、耳がない赤い鼻の青い太っちょな狸?みたいな置物から流れる。
その声を聞いて私と稟は起きて、稟はその狸の頭を思いっきり叩いて声を止める。
「っん、ふわ~~…おはよう、ルビナス」
抱きかかえながら挨拶してくる稟に、私は稟の頬を舐めて返事する。
パジャマを脱いで着替えた稟と一緒に、私達は下に降りる。
そこには、昨日と同じような服を着て、灰色の文字がたくさん書かれた紙を片手に持って、
もう片方の手には湯気を立たせてる黒い水の入った白い入れ物を持った稟のお父さんと、
みんなの分の朝ごはんを用意してる稟のお母さんがいた。
「あら、起きたのね。おはよう、稟、ルビナス」
「おはよう。昨日も一緒に寝たのかい、稟」
「おはよう、お父さん、お母さん。昨日もルビナスと一緒に寝たよ。
だって、ルビナスの寝る所ってまだないじゃない」
「そうだな~。それじゃ、ルビナス用の新しいベッドでも買うかい?」
「う~ん…僕のベッドで一緒じゃダメなの?」
「それは…本人の意見を聞かないとね。ルビナスは自分専用の寝る場所って欲しい?」
稟のお母さんに聞かれてちょっと考えたけど、私は首を横に振る。
いつもならお母さんの身体を枕にして寝ていたけど、今は傍にいない。
でも、その代わりに稟が傍にいてくれて、私のことを抱きしめてくれる。
お母さんとちょっと違うけど、私を安心させてくれる。
新しい寝床が出来るとなるとそこから離れなきゃいけないなら、私はいらない。
「いらないってさ」
「そう。ルビナスがそういうなら別にいらないわね」
「そうだな。 おっと、もうこんな時間か」
「あら本当。それじゃ、朝ごはん食べちゃいましょうか」
言いながら、稟のお母さんはみんなの分のご飯を用意し終えて椅子に座る。
稟と私もそれに続いてゴハンの前に座る。
「「「いただきます」」」
3人が手を合わせて同じことを言いながら頭を下げるのと同時に私も目を瞑りながら頭を下げる。
最初この行動を見た時な何かと思ったけど、稟いわく食材に感謝しているとのこと。
その後はみんなしてパクパクと目の前にあるゴハンを食べていく。
ただ、昨日の夜みたいにいろんなことを食べながらゆったりと食べるんじゃなくて、
なんというかテキパキと急いで食べてく感じだった。
当然昨日の夜よりも早く食べ終える。
「さて、それじゃぁ会社に行って来るよ」
「「いってらっしゃーい」」
朝ごはんを食べ終わって、黒い水も飲み終えた稟のお父さんは、椅子にかけてあった黒い上着を着て出て行った。
仕事に出かけたんだろう。
「それじゃ、稟も準備してらっしゃい」
「はーい」
稟のお母さんに言われ、二階に戻る。
自分の部屋にはいって、黒くて硬い四角い袋に何冊かの本のを入れる。
それから、また下に下りて、稟のお母さんから布に包まれた箱を受け取る。
「はいお弁当。他に忘れ物はないわね?」
「うん、大丈夫だよ」
「そう。それじゃいってらっしゃい」
「いってきまーす」
さっき本を入れた袋を抱えて、稟は出かけようとする。
私もそれに続いて行こう…としたところで、
「…ちょっと待ちなさい」
稟と一緒に頭を掴まれた。
「稟~…何当たり前のようにルビナスを連れて行こうとしてるの?」
「え…………ぁあ!?」
稟のお母さんの言葉に、少し呆然としながら私を見て、暫く見つめた後大声を上げた。
「そういえば!?……ねぇ、ルビナスって連れて行っちゃダメかな?」
「ダメに決まってるでしょう…そんなことしちゃったら大変なことになるわよ」
「た、大変なことって…」
「例えば…退学、はないか。停学とか…」
「…停学…………」
「最悪な場合…没収とか」
「ぼ、没収って…何を?」
恐る恐ると言った感じで稟は聞いてくる。
稟のお母さんは少しニヤニヤしながら私のほうを指差す。
稟は指差す方、つまり私のことを何秒か見つめて…
「だ、ダメ!ルビナスは渡さないんだから!!」
叫びながらぎゅっと抱きしめてくる。
ここまで必死になって私のことを想ってくれてると思うと、嬉しくなる。
「冗談よ♪いくらペットを連れてきたとしてもそんなこと学校はしないわよ。
でも、連れて行っちゃいけないのには変わらないわね」
「……やっぱり…」
稟は悲しげな顔をして、抱きしめている私のことを見下ろしてくる。
「ルビナス…僕、学校に行かなきゃ行けないんだ。
だから…僕が帰ってくるまでお留守番しててね…」
家で留守番…つまり、稟と一緒に行けない…
稟の傍にいられないとわかると途端さびしくなり、私は稟に抱きつく。
「ルビナス!!」
稟も私のことを抱きしめてきてくれて、二人で抱き合う。
「ハァ~、稟~。別にもう会えなくなるんじゃないんだから、そこまで大げさに考えない!
ほ~ら、学校から帰ったらすぐに会えるんだから、そろそろ離れなさい。
それにもう時間よ」
「あ、本当だ。…それじゃルビナス、行って来るね。学校が終わったら急いで帰ってくるからね!」
私を放した稟は、扉が閉まる最後のときまで私から目を離さなかった。
そして…扉が閉まり、稟の姿が見えなくなった…
「さってと、今日は何をしましょ~…そんな悲しそうな顔しないでよルビナス。
心配しなくても、稟は夕方になったら直ぐ帰ってくるわよ。
それじゃ、稟が帰ってくるまでいろいろ手伝ってもらおうかしら♪」
本当は稟に付いて行きたかったけど、ここは稟のお母さんの言葉を信じて待つことにする。
稟が学校に行った後、私と稟のお母さんは、さっきまで皆でご飯を食べてたところに戻る。
そこには、さっきまであったゴハンがなくて、それを乗せていたお皿や入れ物だけが残ってた。
「さってっと、それじゃぁ片付けちゃいましょうか。
じゃぁ、ルビナスにはそこらへんの食器を運んでもらいましょうか♪
な~んてn…」
言われて、私はお皿を二、三枚咥えて、水が流れる台に向かって跳ぶ。
お皿を置いた所で、これでいいのかと確認しようと想って稟のお母さんのほうに向くと、
・・・( ゚д゚)・・・って顔してた。
十何秒しても全然動く気配がないから、ちょっと強めに、
「ゥワン!!」
私の声を聞いてはっとする。どうにか戻ってきてくれた。
「落ち着きなさい、落ち着きなさい私…食器を運んでって頼んだのは私自身よ…
ルビナスは言われたことをやってくれただけよ、そう言われたことを~…
ねぇ、ルビナス…もしかして、私の言ってること、分るの?」
と聞いてくる。何か変なことなのかな?
何でそんなことを聞いてくるのかは分らないけど、言っている事は分るので、私は頷く。
「す…すごいわルビナス!ここまで人間の言葉が分る狼は世界で貴方だけよ!!」
大きな声で褒めながら私のことを抱きしめてくる。
言葉が分ることがそんなにすごいことなのかな?
「ルビナスが家族になってくれて、学校と会社の時間はルビナスと一緒にいたら楽しくなるかなとは考えてたけど、
まさか、言葉が分るなんてね~♪これからいろんなことを教えてあげるからね!
まずは~…お皿片付けちゃいましょう」
皿を運び始めたのを見て私も手伝う。
その後は、稟のお母さんにいろんなことを教えてもらって過ごした。
本を読んだり、家から出てアレが何だこれが何だと教えてもらいながら散歩したり。
そのお陰で、私はここ、稟がいるこの場所のことをたくさん知ることができた。
今度は稟と一緒に行きたいと思った。
早く帰ってこないかな…
夕方、縁側でうとうとしてた私は、家に近づくある匂いを嗅ぎ取る。
風と一緒に運び込まれるこの匂いの正体は…
そう思った瞬間私は走り出してた。
稟のお母さんが慌てて止めようとしてたけど、聞かなかった。
少しでも早く匂いの正体、稟に会いたかったから。
家の前の道を暫くまっすぐ走って曲がり角を曲がった所で、こっちに向かって走ってくる稟を見つける。
「ルビナスーーーーーー!!」
手を振り、私の名前を呼びながら走ってくる稟の所に向かって私も走る。
後何歩かって所で、私は稟の胸に向かって跳ぶ。
それを稟は抱きとめて、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「ただいま、ルビナス」
言いながら私を撫でてくれる稟の手を、稟の温もりを堪能する。
右も左も分らないこの世界では、少しの間でも稟と離れ離れになってる時間はすごく長く感じられた。
「全く…突然走り出してどこに行ったかと思ったら、
まさか稟が帰って来るのに気付いたからなんてね」
後ろから稟のお母さんが、呆れながらも笑いながら声を掛けてくる。
その声を聞いて、稟は私のことを抱きかかえながら言う。
「ただいまー、お母さん」
「お帰りなさい稟。もう少ししたら3人で出かけるから、早く鞄とか片付けちゃいなさい」
「…3人?もしかしてルビナスも!?」
「そうよ。公園とかいろんな店とか、後ペット同伴の店とかも稟に教えたいから、はやk……」
稟のお母さんが言い終わらないうちに、稟は家に入って階段を駆け上がる。
強めに扉を開け、すごい速さで鞄の中身を机に並べて、何冊かを本棚に戻して、
残りの少しの本は机に残してまた部屋を出る。
どれくらい速いかと言うと…扉が反動で閉まるうちに全部済ませて、
閉まったときにはもう下に降り始めてるくらいに…
しかも私を抱きかかえたまま片手で…
下に降りたときに丁度、稟のお母さんが家に入ってきた。
「お母さん、準備できたよ!」
「……いくらなんでも早すぎでしょう…ま~いっか。それじゃ出かけましょうか」
その後、私達3人はいろんな場所を見て回った。
私みたいな、人間じゃなくて動物が入れる場所が思ったより少なかったのが残念だった…
それから暫くいろんな場所を回って、日も沈みかけたとき。
私達は駅の前にいた。稟のお父さんを迎えるためだ。
「やぁ、ただいま3人とも」
「「おかえりなさーい」」
「それじゃあ行きましょうか」
その日の晩御飯は”ペット同伴可”、つまりは私も入れる店で食べることになっていた。
出てくるお料理は見た目は皆同じだけど、中身は私のだけは動物用に変えられてるらしい。
味のほうは…稟のお母さんが作ってるれるお料理のほうが美味しかった。
晩御飯を食べ終わって、私達は家に帰る。
帰ってきた時間は丁度ニュースの時間で、稟のお父さんはテレビを見に、
稟のお母さんはお風呂に、そして稟は自分の部屋に戻って机に残してた本を開いて何かを書く。
多分、学校の宿題だと思う。
宿題が終わった頃、丁度稟のお母さんがお風呂から上がったから、次に私と稟がお風呂に入る。
川で水浴びするのと違って、勢いのあるお湯で全身を濡らされ、泡だらけにされるのはちょっと怖かったけど、
その後、身体を拭いて、ドライヤーで風を当てながら櫛で私の身体を梳いてくれる稟の手が気持ちよかった。
パジャマに着替えて、歯を磨いた後、稟は「おやすみなさーい」を2人に言ってから二階の自分の部屋に向かう。
何かが書かれた紙を時々見ながら鞄の中に本を詰め込んで、それからベッドに向かう。
「おいで、ルビナス」
布団を被った稟は私が入る場所を捲る。私はそこに入る。
私専用のベッドなんて要らない。ここが、稟の腕の中が私の寝る場所だから…
数日後…
私達はいつも通り、青狸の声で目を覚ます。
朝同じような感じで朝ごはんを食べて、稟のお父さんは出かける。
でも私は…
「それじゃ忘れ物はないわね?」
「お母さん、今日は一時間目が体育だよ。昨日で体操服が乾くから今日の朝渡すって言ってたじゃん」
「あら、そうだったわね…それじゃ取ってくるわね」
そう言って、洗面所から体操服の袋を取って持ってくる。
「はい、体育館シューズもその中に入ってるから。
これで忘れ物はないわね?」
「うん、それじゃぁ行って来まーす」
体操服袋を片手に、背中には教科書やドリルの入った鞄を背負って稟は学校に向かう。
途中、いつもより重く感じる体操服袋を肩に背負いかえる。何故重いのかと言うと…
「おはよう楓ちゃん、桜ちゃん」
「「おはよう稟くん」」
三人は楽しそう嬉しそうに挨拶する。やっぱり友達に会えるのって嬉しいことなんだね。
「今日は一時間目は体育だね」
「稟くん今日はちゃんと靴持ってきた?前はまだ乾いてないからって持ってこれなかったけど」
「うん、今日はちゃんと持ってきたよ」
言いながら、稟は本当にちゃんと靴が入ってるのか確かめようとして袋を開ける。
すると…
「「……………」」
目が合った…稟が呆然と袋の中を見てて変に思ったのか、楓と桜も中を覗く。
「「「「……………」」」」
袋の中の、本当なら稟の靴が入ってた場所にいる私を見て二人も呆然としちゃった。
でも、何秒かしたら…
「「「ルビナスー!?」」」
驚かれちゃった。そりゃそうか。
昨日の夜、稟のお母さんが準備してた白い服と靴と黒いズボン、それを入れる袋。
どうしても稟と一緒にいたかったから、こっそり夜のうちに袋の中身を抜き出して、
朝、稟がカバンの方の準備をしてるうちに、私は袋の中に潜り込んでた。
私が入った袋を稟のお母さんが稟に渡す。
ちょっと狭かったけど、お陰で稟と一緒に学校に通えちゃった♪
「りりりりりり稟くん!?ルビナス学校につれてきちゃったの!!?」
「ぼ、僕は気付かなかったよ!体操袋の中に入ってたなんて!
…確かにいつもよりちょっと重かったけど…」
「気付こうよ稟く~ん…でも、どうしようか?」
「う~ん、家に連れて帰るとしてももう一時間目始まっちゃうし…」
ガラガラガラ)「何を連れて帰るんだー?」
「「「あ」」」
三人が悩んでる途中に、ドアが横に開いて大人の人が入ってきた。
それから直ぐに、稟達が囲む中、袋から頭を出した私を見つける。
「おいおい、土見…学校にペットを連れてきちゃいかんだろ」
「ゴメンナサイ先生。ルビナスどうしても僕と一緒にいたかったみたいで、
僕の知らない間に体操服袋に隠れてたみたいなんです」
「おいおい、どんだけお利口なワンちゃんだよwww
ま~そんだけお利口なら授業中もおとなしくしてるだろ。
てなわけで土見、ちゃんと面倒見ろよ」
「あ…はい!!」
「あと、くれぐれも他のクラスとか先生には見つかるなよ。
体育教師の俺だったから良かったが、他の奴だったらどうなるか分からんぜ」
「はい!ありがとうございます!!」
大人の人、先生の言うことを聞く限り、やっぱり私がいることはあまり良くないみたい…
でも…やっぱり稟と一緒にいられることは嬉しい。
「それで…土見は今日の体育はどうするんだ?」
「あ…この服のままやっちゃダメですよね?」
「ああ、結構動き回るだろうから汗とかかなりかくだろうな。
まぁ今日はその犬と一緒に見学しとけや」
「はーい」
その後、稟以外の子達は体操服に着替えて移動する。
広い場所、体育館についた後は稟は私と一緒に隅っこに、
他の皆は丸いもの、ボールを使って動き回ってる。
皆を見てる稟は、なんだかすごくうずうずしてた。ちょっとまずかったかな…
休み時間…
体育の授業がが終わって、皆が着替え終わった頃周りが騒がしくなる。
外に出てきて遊ぶ子、他の教室に行く子、いろいろいる。
でも、この教室にいるほとんどの女の子は稟と私の周りに集まってくる。
「土見くん、その子いつから飼ってるの?」
「撫でてみてもいい?」
「すごく綺麗な子だね」
「ねぇねぇ、抱っこしてもいい?」
稟が返事をしないうちに次から次へと私のことに聞いてきたりしてくる。
稟はどうしたらいいのか困ってるし、私もあんまりいい気分じゃなかった。
そこに…
「よぅ土見。ちょっとその犬貸せよ」
と、他の子に比べると丸くて大き目の身体の男の子がやってきた。
横にはとんがった髪型の稟より小さい子がいる。
いきなり稟の周りにいた女の子達を押しのけて、私のことをつかんできた。
「タケシくん、スネ男くん!何をするんだよ!?」
「っけ、こんな犬どこがいいんだかね?家で飼ってるドーベルマンなんかもっとカッコいいね」
「そんなのどうだっていいからルビナスを返せ!」
「ああ、そういえば学校にペットを連れてくるなんてだめだよなぁ。とりあえず先生に言ってくるか」
「だからどうでもいいからルビナスを返せ!!」
「うるせえんだよ!」
「うわ!?」
二人掛で稟を押さえつけて、突き飛ばしたのを見て、もう我慢できなかった。
私は体を捻って掴んでる手から抜け出て机の上に立ち、二人に向かって飛び掛る。
さっきの体育の授業でも、怪我をしたら直ぐに保険委員って子が、
その子を連れて行っちゃうくらいのことになっちゃうから、
私は爪で引っかくことも、牙で噛み付くこともしないで、体当たりする。
跳んで体当たりしては、机や床に立ってまた跳んで体当たり。こういうのをヒットアンドアウェーと言うみたい。
手を出して私を掴もうとするけど、そんな遅さじゃ私は捕まらない。
十何回か体当たりした所で、2人は床にへたり込んで、それを見て私は稟の腕の中に戻る。
「ルビナス、大丈夫だった!?」
私は怪我をするどころか、2人に反撃させる暇もあげなかった。
それを目の前で見ていたのに、それでも私のことを心配してくれる。私のことを想ってくれる。
私は喜びながら稟の頬を舐めて大丈夫だと教える。
「よかった~」
一層強く抱きしめれくれる稟の暖かさを堪能、してると…
「こ、このヤロー!土見、覚えてろよー!!」
「せ、先生に言いつけてやるからなー!」
と、立ち上がった二人は涙目で叫びながら教室を出て行った。
で、何秒かしたら大人の女の人を連れて戻ってきた。
「土見君?ペットを学校に連れてきたらしいけど…本当のようね」
「連れてきたというか…ルビナスがこっそり来ちゃったというか」
「?」
「先生、ルビナスちゃんは稟くんが連れてきたんじゃなくて、稟くんの体操服袋の中に入ってたんです」
「あら、そうなの芙蓉さん?それに土見君は…」
「気付きませんでした」
「そう、ならそれは仕方ないとして…ちゃんと躾はしとかなきゃダメじゃない」
「どういうことですか?」
「この2人がルビナスちゃんだっけ?に襲われたって言ってたけど?」
「ルビナスはそんなことしません!!」
「確かに引っかかれたり噛まれたりした跡はないけど、2人に何かしたんでしょう?」
確かにあの二人を懲らしめちゃったけど、その言い方だと私と稟だけが悪いみたい。
稟は何かを言おうとするけど、その前に周りにいた女の子達が喋りだす。
「先生!悪いのはその二人です!!」
「稟くんからルビナスを取って、それから稟くんが突き飛ばされたのを怒ったからです!!」
楓と桜から始まって、女の子達が口々に女の先生に向かって喋る。
先生はなんだか困った顔になってきて、後ろにいる二人は顔を青くしてる。
「わかったわかった、みんなの言いたいことはよくわかったわ。
それから…二人にはも~うちょっと詳しく話を聞きましょうか?」
「「ひぃいいいいいぃぃ!」」
先生は二人の頭を掴んでどこかに行っちゃった…
多分、私達が一方的に悪かったって思われる感じに嘘を言ってたんだと思う。
でも、みんなのお陰で誤解を解くことができた。
その後は、チャイムがなるまで、お礼も兼ねて私に触ることを許した。
稟と一緒にもみくちゃにされちゃったけど…
次の授業は、私はずっと稟の膝の上で座って過ごした。
さっきの女の先生が他の先生に知らせたのか、
次の授業の先生も「大人しくさせておくように」って言って、私がいることを許してくれた。
その授業が終わってから、稟は職員室って所に呼ばれちゃった。
稟のお母さんから電話が掛かってきたみたい。
私を連れて返りに来るかと聞かれたけど、稟は今日だけは一緒にいてもいいかって聞く。
出来れば私もそうしたい…
私達の希望は叶って、稟のお母さんは今日は稟と一緒に学校にいることを許してくれた。
その後は、学校が終わるまで私はずっと稟の傍にいられた。
クラスの子と話したり、一緒に遊んだり、一緒に昼ごはんを食べたり…
今日一日で、私は稟が通う学校っていうのを体験できた。
クラスの子(女の子が多め)とも仲良くなれた。
でも…やっぱり、稟と一緒に来られないと想うとちょっとさびしいな…
でも仕方ないか…
夕方からはずっと一緒にいられるんだからよしとしよっと。
それに、学校がない日は一日中いられるんだしね。
side.out
ルビナスが土見家に加わって早数週間。
ルビナスは着々と良好な対人関係を築き上げていた。
初対面の人に対しては、最初は若干抵抗するものの、
稟が仲裁に入ることで何も問題はなかった。
躾など諸々のことに関しても問題は皆無だ。
と言うのも、ルビナスは人間の言葉を完全に理解しているので、
大概のことは口で言えば解決できた。
お陰で、稟が忘れ物をしたときなんかはルビナスに頼んで届けに言ってもらうことなんかも出来たし、
買い物籠とお金を持たせてお遣いに言ってもらうことなんかも出来た。
ルビナスは、学校の時間を除いて常に稟の傍にいた。
起床時、朝食時、学校から帰った後宿題をしたり遊びに行ったりする時、夕食時、入浴時、睡眠時。
稟の傍にはルビナスがいることが当たり前となっていた。むしろいないときを見るほうが珍しいくらいに。
お互いが一緒にいることを望んでいて、二人の関係は兄妹のようにも、
親友同士のようにも、はたまた恋人同士のようにも見える。
そんな楽しく幸せな日々が続いたある日…
悲劇は起こった…
『学校に行こう』いかがだったでしょうか?
この時点ではルビナスはまだまだ若いですからね。
成長するにつれて性格がどう変わっていくのやら…
ま~稟に育てられる以上悪い方向には行きませんね。ウン。
さて、次回はいよいよSHUFFLE!では外すことのできないあの事件が起きてしまいます…
ルビナスがいることでどう変わっていくのか?
次回投稿お楽しみに!
ps.テスト勉強の休憩がてらコツコツと書いていってやっと完成…
テストが始まったら更に遅くなってしまいますことを今のうちに謝罪します。スマセン
Tweet |
|
|
17
|
0
|
追加するフォルダを選択
さぁ…来月からはテスト三昧だ。
勉強で苦しむ前に、投稿しましょう。
と考えて、急ピッチで仕上げました。
ではどうぞ…