「うぉあ寒っ!? うわ暑っつ!?」
「負傷者は全員中に入れろ!! ついでにナイトレイドとイェーガーズの負傷者も引っ張って来い!!」
ガルムとカンナが戦闘を開始した
「お~お~、ガルムさん暴れてらっしゃいますねぇ~」
「…ねぇ、そろそろこれ外してくれても良いんじゃないかしら?」
一方で、ガルムとカンナが戦っている場から少し遠い場所にて、竜神丸はロープでグルグル巻きにされている白衣の男―――Dr.スタイリッシュの上に座りながら、双眼鏡で二人の戦いを呑気に眺めていた。彼等の周囲には
「いやぁ~しかし驚きましたよDr.スタイリッシュ。自爆機能もちゃんと搭載しているのは流石です」
「…その割には全部しっかり防いでいたじゃないの」
「そりゃまぁ、実験体と言えば自爆機能搭載はよくある物でしょう? 私のタイラントには自爆機能の代わりにAMFを搭載していますが」
「…道理で強化兵達の魔法も効かなかった筈だわ」
スタイリッシュの上に座り込んでいる竜神丸の傍に、転移してきたイワンが無言で姿を現す。イワンが放つ威圧感に気圧されたスタイリッシュは冷や汗を掻くも、内心ではまだまだ反撃の隙を窺っている真っ最中だった。
(まだよ、まだチャンスを待つの……縄抜け程度なら簡単よ、後は彼が少しでも隙を見せてくれれば、最後の切り札である
「あ、そういえばスタイリッシュさん」
竜神丸は白衣のポケットからある物を取り出した。それを見たスタイリッシュはギョッとした表情に変わる。
「これ、あなたので間違いありませんかね?」
「んな!? それアタシの薬剤!?」
「すみませんねぇ。私、手癖も悪いもので」
スタイリッシュが最後の切り札として用意していた専用の薬剤。その薬剤が入った注射器は、いつの間にか竜神丸の手ですり取られていたのだ。
「…何よもう。完全に詰みじゃないの」
「つまり、降伏するという事で良いんですね?」
「それ以外何もありはしないわ。いよいよ私も年貢の納め時って事ね…」
「う~ん、その事なんですが」
ここで竜神丸がスタイリッシュに提案する。
「あなたの頭脳、技術、そしてあなたが持つ
「…何が言いたいのかしら?」
「スタイリッシュさん。あなたはこれを見てどう思います?」
竜神丸はタブレットをスタイリッシュの顔の前に置き、タブレットの画面を見せる。するとスタイリッシュの表情が諦めの表情から興奮気味な表情に変わっていく。
「…ちょっと何よこれ。あなた、こんな凄い物を研究していたの?」
「どうです? 私の下で研究してみませんか? ウイルスの漏洩は絶対にさせない条件付きで」
「…良いわ、やってあげる。こんな良い物を研究しないなんて人生が勿体ないわ」
「決まりですね」
今ここに、凶悪なマッドサイエンティストが手を結んだのだった。
「チィ…いい加減落ちろ!!」
「断る!!」
「今のは…」
「ガルムの奴か……アイツ、どれだけ
距離を取った二百式はバズーカ砲を取り出し砲撃を放つも、アカメは素早い動きで砲撃を村雨で両断。後方で2つの爆発が起こる中、アカメは瞬時に接近してバズーカ砲も真っ二つに斬り裂き、二百式は即座に抜いた2本の太刀で村雨の斬撃を受け止めるが…
(!? また捨てただと…!?)
2本の太刀が村雨を防いだ直後、またしても村雨を手放したアカメは即座に跳躍して二百式の頭を掴み、着地する勢いを利用して彼の後頭部を床に思いきり叩きつける。二百式は忌々しげな顔ですかさず太刀を振るうも、アカメは斬撃を回避すると同時に太刀の峰の部分を踏みつける事で太刀が床に刺さり、1本目の太刀が二百式の手から手放される。
「小賢しいと言っている!!」
「ッ…!!」
素早く起き上がった二百式の太刀が突き立てられるも、アカメの右足が二百式の左手を蹴りつけた事で2本目の太刀が吹き飛び、近くの壁に突き刺さる。これで太刀を2本共失った二百式だが、流石に無傷で武器を手放させるのは無理があったのか、アカメの右足から少量の血が流れる。
「俺から武器を取り上げれば、少しは勝率が上がるとでも…?」
「少しは対応がしやすくなる」
「…あぁそうかよ!!」
マントの下からショットガンを構える二百式。しかし先程床に刺さった1本目の太刀を素早く抜き取ったアカメがショットガンの銃身を斬り裂き、それを想定していた二百式はマントを華麗に翻し、アカメの振るって来た太刀を薙ぎ払う形で弾き飛ばし、お互いに素手となったところで拳による殴り合いが始まる。拳をかわし、両腕で拳を受け止め、相手の顔面や腹を殴りつける。まるでボクシングのような戦いだが、彼等の戦いはそんなスポーツのような美しい物ではない。
「ぐっ…!!」
「うらぁ!!」
二百式の右手がアカメの腕を掴んだ。そのまま二百式の目の前まで引っ張られたアカメは体勢が崩れ、それを見逃さなかった二百式の膝蹴りがアカメの腹部に直撃。それだけでは終わらず、アカメの腕を右手で掴んだまま二百式はアカメのスカートのベルト部分を左手で掴み、そのまま彼女の身体を高く持ち上げてから床に減り込ませる勢いで強く叩きつけた。
「…ッ!!!」
苦悶の表情となるアカメ。動けずにいる彼女を他所に、壁に突き刺さっていた2本目の太刀を抜き取った二百式はアカメを見下ろす。
「手間をかけさせてくれたな……これで終わりだ」
-ズガァンッ!!-
「!?」
…が、そうは問屋が卸さなかった。先程2人が落下した事で空いていた天井の穴から、今度はタツミとマイン、そして朱音が瓦礫と共に勢い良く落下して来たからだ。
「「!? アカメ!!」」
「! 朱音さん、まだやってたんですか」
「あははは……ごめんね二百式さん。この子達、思ってた以上に強かったわ」
「待っててアカメ、今助けるわ!!」
「!? ヤバ、来るわよ!!」
アカメが倒れているのを見たマインがパンプキンを構え、それを見た朱音は慌てて回避行動に入る。まだマインのパンプキンの性能を知らない二百式はひとまず警戒態勢に入るが、パンプキンから放たれた弾丸が二百式の顔面スレスレで放たれ、朱音が焦っていた原因を理解した二百式は何度目かも分からない舌打ち。二百式と朱音に反撃の隙を与えないよう、マインはすかさず2発目の弾丸を放つが…
「ぜあぁ!!」
「!? ウッソォ!?」
二百式が翻したマントにより、飛んできた弾丸が別方向へと反射し城壁を破壊。使い手がピンチになればなるほど火力が上昇するのが
(思ったよりマントのダメージも大きい……あと1,2回しか防げそうにないか…!)
流石の二百式も、マントのダメージ量をここまで蓄積させたパンプキンの射撃に警戒心を強める。ならば接近あるのみだと判断した二百式は、太刀を構えてマインに突撃を仕掛けようとしたが…
「―――ッ!?」
直後、殺気を感じ取った二百式は素早く頭を伏せ、後方から襲い掛かって来た村雨の斬撃を回避。彼が振り返った先には、傷だらけながらも村雨を構えているアカメの姿があった。
「貴様、まだ動けるのか…!!」
「ッ……マイン、撃ち続けろ!! 奴に反撃させるな!!」
「了解、任せなさい!!」
二百式の太刀をアカメの村雨が受け止め、距離を取ろうとする二百式をマインが射撃。反撃の隙を見出せない二百式に助太刀しようとする朱音だったが、そんな彼女に対してはインクルシオを纏ったタツミが長槍ノインテーターで斬りかかる。
「悪いけど、アンタをそっちには行かせない!!」
「ッ…援護はさせてくれない訳ね…!!」
久々にやり甲斐のある相手と戦う事になり、気分が高揚していた朱音は楽しそうな笑みを浮かべタツミと激しい攻防を繰り広げる。
「ピンチはチャンス……パンプキン発射ぁ!!!」
「ッ……餓鬼共が…!!」
まずは近距離のアカメを倒そうとする二百式だったが、マインの射撃で思うように反撃が出来ない。おまけにアカメの振り下ろした村雨が二百式の太刀をバキンとへし折ってしまい、苛立ちが増した二百式は強く歯軋りする。
「図に乗るなぁっ!!!」
「「!?」」
これで全ての武器が失われた……と思ったら大間違い。二百式はマントの下から伸ばした直鎖状の機雷―――チェーンマインを伸ばし、目の前のアカメを捕縛しようとする。
「な、まだ武器を…!?」
「させない!!」
それより前に二百式を狙撃しようとするマインだったが、彼女の放った弾丸は二百式の翻したマントでまたしても反射され、跳ね返った弾丸はチェーンマインを斬ろうとしていたアカメの村雨を弾き飛ばした。
「!? しまっ―――」
チェーンマインがアカメの胴体に巻きつくと同時に起爆し、大爆発が起きた。寸前でチェーンマインを切り離していた二百式は無傷な中、爆発に呑まれたアカメはその場に倒れ伏し、それを見たマインは慟哭する。
「アカメェェェェェェェッ!!!」
「ッ…!!」
アカメが戦闘不能になった事で怒りが爆発したマインは更に強力な弾丸を連射。しかし二百式は再度伸ばしたチェーンマインで弾丸を防ぎ、連鎖的に爆発が起こり土煙で何も見えなくなっていく。
「くそ、くそ、くそぉ!! …ッ!?」
土煙の中から突如、折れた太刀が飛来しマインのパンプキンを弾き飛ばした。怒りで冷静さを失っていたマインは折れた太刀にすぐに反応出来ず、そこに飛び出してきた二百式が勢い良く飛び蹴りを炸裂させた。蹴り飛ばされたマインは血を吐くと共に城壁に叩きつけられ、床に落ちてから意識を飛ばしてしまった。
「…たく、久々に骨の折れる相手だったな。念の為、チェーンマインを隠していて正解だった」
パンプキンの弾丸が掠ったのだろうか、二百式の右頬からは血が垂れていた。二百式はボロボロになり果てたマントを見て、小さく溜め息をつくのだった。
「!? マイン、アカメ!!」
「はい余所見しない!!」
アカメとマインが敗れたのを見たタツミは救援に向かおうとするも、朱音の振るうナイフから放たれる斬撃がそれをさせようとしない。タツミはノインテーターで飛んで来る斬撃を全て薙ぎ払い、朱音の振り下ろしたナイフと真正面からぶつかり互いを押し合う。
「邪魔だ、どけ!!」
「言われた通りにする馬鹿はいないわ。どいて欲しいなら、どかしてみなさい!」
ナイフと長槍で押し合う中、朱音の左手がタツミの腹部を殴りつけ、そこへ更に先程折られた刀剣の鞘を叩きつけタツミを通路の先まで大きく吹き飛ばす。吹き飛びながらも体勢を立て直すタツミに対し、朱音は鞘を刀剣のように振るい、刀剣を振るっていた時と同じように凄まじい斬撃を撃ち放つ。
「くそ…ッ!?」
回避しようとするタツミだったが、直後に身体がフラつき、上手く動けなかった。何かと思ったタツミは自身の腹部を見てみると…
(!? 毒針、いつの間に…!!)
実は朱音がタツミを殴りつけた際、彼女の服の左袖に仕込まれていた毒針が彼の腹部に刺さっていたのだ。そのせいでタツミは上手く身体を動かせず、その結果飛んできた斬撃をかわせず胴体に直撃してしまう。
「ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「さて……二百式さん、あなたの借りるわ!」
「!」
二百式がアカメと戦う中で落とした1本目の太刀。それを拾い上げた朱音は目に見えない速度でタツミの目の前まで接近。斬られた胴体の痛みに耐えながらも応戦しようとするタツミだったが、擦れ違い様に繰り出された一閃はノインテーターごと両断。数秒経過した後、タツミの身体がゆっくりと床に倒れていく。
「ッ……マイン……ごめ、ん…」
「…ふぅ」
倒れたタツミが意識を失うのを確認し、朱音はその場に座り込んで一息つく。そこへ二百式が気絶しているアカメとマインを引き摺りながら歩み寄って来た。
「…珍しいですね。アンタがそこまで苦戦するなんて」
「まだまだ雑な部分があるのは否めないわ……だからこそ、この子はまだまだ成長するわ。いずれはナンバーズにも喰らいつけるくらいに」
戦闘中に受けた胸元の切り傷を手で触れながら、朱音は倒れているタツミを見下ろす。
「流石は東雲環那の弟ね。将来が楽しみだわ♪」
OTAKU旅団No.04 朱音 No.05 二百式 vs ナイトレイド タツミ マイン アカメ
勝者:朱音&二百式
一方、ガルムとカンナが激戦を繰り広げている屋外では…
≪Reformation≫
「ぐぅ…!!」
「チィ…!!」
ファイズ・アクセルフォームとなってスサノオと戦っていたokaka。目に見えないスピードでスサノオを圧倒しようと思っていたokakaだったが、目に見えずとも殺気で攻撃を見切っていたスサノオにより攻撃を悉く防御・回避され、結果として制限時間の10秒が経過。お互いがお互いを殴りつけると同時にファイズはアクセルフォームから通常形態に戻ってしまい、スサノオは殴られた右肩から灰が零れ落ちるも、自慢に再生能力ですぐに右肩の傷が修復していく。
「…マジかよ、アクセルフォーム相手に耐えるとはな…ッ!!」
「どうだ、私の自慢の相棒は!!」
「あぁビックリさ……おかげでこっちは面倒臭くてたまらねぇ!!」
左方向から義手をロケットパンチのように飛ばして来るナジェンダ。それをファイズエッジで薙ぎ払い、リールで繋がっている義手はすぐにナジェンダの右腕に接続され、接近して来たファイズの斬撃をかわし、足払いを繰り出すもファイズには回避される。
(右腕を失って前線から引いたとはいえ、腐ってもナイトレイドのリーダーか……おまけに超再生能力付きの生物型帝具までいて、厄介この上ない…!!)
ナジェンダとスサノオの連携がここまでとは想定していなかったのか、徐々に追い詰められていくファイズ。そしてナジェンダの回し蹴りがファイズのベルト部分に直撃し、吹き飛ばされたファイズはベルトが外れた事で変身が解除され、okakaの姿に戻ってしまった。
「ッ……流石だな、ナジェンダ・ロットー」
「お褒め頂き光栄だな……貴様も旅団ナンバーズの1人か? 手配書では見なかった顔だが」
「そりゃまぁ。俺、本業はアサシンなもんで」
「アサシン……まさかの同業者とはな。ぜひともナイトレイドに欲しい人材だ」
「悪いが勧誘ならお断りだぜ? 裏切ると団長が怖い」
「…そうか、残念だ。ならば貴様には悪いが…」
「その前に、死角に注意だぜ」
「「ッ!!」」
-ガキィン!!-
「…okakaさん。せっかく不意を突いたのに、バラさないでくれませんかねぇ?」
「いやいや、そのまま行ってたら殺してたでしょう? デルタさん」
「ッ…新手か!!」
スサノオが振るう槍で、別方向から振り下ろされて来た軍刀が防御され、不意打ちを仕掛けた人物―――デルタは後退すると共にokakaをジト目で見据える。しかしそのまま不意打ちをさせていれば間違いなくナジェンダの首を撥ねていた事から、okakaが助言を出したのはある意味で正解と言えるだろう。
「頼みますよ? 団長からは生かして捕らえるよう命令されてるんですから」
「面倒極まりないんですよ。奴等を相手に手加減出来るほど、私もそこまで器用ではありません」
「…まぁ、その辺は確かに同意見ですけども」
okakaとデルタ。
ナジェンダとスサノオ。
周囲を熱気と冷気が襲う中、お互いが正面から向き合い再び構え直す。
「さて、あんまり長引くとどっかの誰かさん達の戦いに巻き込まれそうなんで…」
≪5 5 5 Stunding by≫
「そろそろ、ケリを付けようぜ」
≪Awakening≫
ファイズフォンをトランク型ツール―――ファイズブラスターに装填し、ファイズ・ブラスターフォームへの変身を完了するokaka。デルタも軍刀を構える中、ナジェンダとスサノオの頬を汗が流れ落ちる。
「来るぞ、ナジェンダ」
「厄介な相手が1人増えたな……全く。後で呪うぞ、カンナの奴め」
激戦は、徐々にだが終結に向かおうとしていた。
To be continued…
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ナイトレイド&イェーガーズ その6