孫呉の人間達は戦後処理に追われてはいたものの、比較的平穏な日々を過ごしていた。
「あ~~、面倒くさいわね」
積み上げられた竹簡の山を前に、ぼやく雪蓮。
「面倒だろうと今度ばかりはやってもらうぞ。逃げたらただではおかないからな」
そんな雪蓮に釘を刺す冥琳。
いつもの光景である。
「はいはい、分かってますよ」
ぶつくさ言いつつ筆を走らせる雪蓮。
「そういえば、一刀にも仕事やらせてるんだっけ?」
「ああ。効率は基本的に並だが、時折面白い案を出してくる。それと計算関係の仕事には強いようだな。早いし確実だ」
「そういえば電卓とかいう計算用の道具持ってたわね」
「自力でやっても早いらしいがな。一刀といえば、小蓮様とよくつるんでいるようだな」
「シャオと?」
「うむ。何かと一緒にいる所が目撃されている」
・・・・・・
噂の一刀と小蓮はと言うと、小蓮は蓮華に、一刀は思春に勝負を挑んでいた。
小蓮はともかく、一刀が思春に挑む理由はと言うと、
「自分の事をまだ認めてくれていないようだから、分かりやすく力で認めさせて見せる!」
との事であった。
・・・・・・で、結果はというと、小蓮は粘ったものの負け。
一刀はまるで歯が立たず、ボコボコにされての惨敗だった。
「次は勝つんだからね~~!!」
「お、おぼえてろよ・・・・・・」
捨て台詞を吐きつつボロボロの小蓮と一刀は去って行った。
「ふう・・・・・・」
「お疲れ様です蓮華様」
「貴方もね、思春。それにしても、懲りないわね。あの二人」
「ええ」
一刀と小蓮の挑戦は、これが始めてではなかった。
毎日のように挑んできて、既に七回目。
もっとも、蓮華、思春共に全勝している訳だが。
「どうせ来るなら、しっかり鍛えなおしてからにしてほしいわ。特に北郷。まるっきり相手になってないじゃない」
「確かに。まあ毎回あれだけボコボコにしても挑んでくる根性だけは認めますが・・・・・・」
「・・・・・・」
蓮華は一刀が嫌いだった。
第一印象が最悪だった事もそうだが、天の御使いと言う名の道化であり種馬と言う一刀の役割。
その役割を引き受けた一刀をいやらしい、恥知らずと軽蔑していたのだ。
また、雪蓮達とすっかり馴染んでいる事も、蓮華の気に障った。
蓮華は一刀を異物とみなしているのに、雪蓮たちはすっかり仲間とみなしている。
その認識の違いが、蓮華に自分の方が場違いのような疎外感を生み出していたのだ。
思春も決して一刀を好ましく思っていたわけではない。
とはいえ、蓮華ほど嫌っている訳でもなく、一刀に対しては、そこまで気にかけるほどではないという位の印象だった。
そして、それからも小蓮と一刀の挑戦は続いたが、十四回目を終えた後からパッタリと挑戦は途絶えた。
「諦めたのかしらね?」
「さあ・・・・・・」
一刀と小蓮は本当に諦めたのだろうか・・・・・・
無論、一刀と小蓮がこの程度で諦めるはずは無かった。
「一刀、覚えた?」
「ああ。これだけボコボコにされれば嫌でも身体で覚えるさ。シャオはどうだ?」
「シャオもばっちり!」
「なら、後は地力の底上げと、頭の中での戦いだな」
「うん。次は絶対に勝とうね!」
「あたぼうよ!」
互いに手を握り、気合を入れる一刀と小蓮。
二人が短期間の間に幾度も挑戦を繰り返した理由は二つ。
相手に自分たちの実力を認識させ、多少鍛えた所でまだ勝てる段階ではないと思い込ませること。
もう一つは、相手の戦い方を覚え、正確なイメージトレーニングを行うためだった。
かくして、一刀と小蓮は本格的に特訓を開始した。
暇があれば、目を閉じて集中し、イメージトレーニングに励んだ。
また、互いに特に伸ばすべき点を話し合い、基本的な訓練に加えて、小蓮は演舞などで身体の柔軟性、身軽さを磨き、一刀は重りを仕込んだパワーリスト、パワーアンクルを着けてのランニングなどで足腰、手首を重点的に鍛え上げた。
仕上げに、皆が寝静まる時間を見計らって自分の対戦相手を想定したシャドーで練習。
これらを日々繰り返しているうちに時は過ぎ、特訓を開始して一ヶ月。
再戦の時は来た・・・・・・
どうも、アキナスです。
何か、まともに特訓してますね。
二人の努力は身を結ぶのでしょうか?
では次回・・・・・・
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将来の名コンビは現在・・・・・・