No.907389

英雄伝説~光と闇の軌跡~エレボニアカオスルート

soranoさん

外伝~メンフィル・エレボニア戦争の和解調印式~ 第7話

2017-05-26 22:06:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2080   閲覧ユーザー数:1768

~グランセル城・会議室~

 

「シルヴァン陛下。第六条の説明をして頂く前に、何故今回の和解調印式に両帝国の戦争とは無関係である内容を第六条にしたのか、詳細な説明を私達―――――リベール王国にして欲しいのですが。”百日戦役”の講和条約として”ハーメル”の件を一切沈黙する事を我が国が合意した事を貴国もご存知であるのに、何故12年も経った今になってあの件を白日の下に晒そうとされているのですか?」

「お祖母様………」

「陛下……」

「………………」

静かな表情で質問するアリシア女王の様子をクローディア姫とユリア准佐は辛そうな表情で見つめ、カシウスは真剣な表情でシルヴァン達を見つめていた。

「”百日戦役”の仲介をし、講和に立ち会った七耀教会としても女王陛下と同じ意見です。もし”ハーメル”の件を白日の下に晒せば、エレボニア帝国だけでなく、リベール王国にも大きな混乱が起こる可能性があるのですぞ。」

「エ、エレボニア帝国だけでなく、リベール王国にまで混乱が……!?」

「あの……そもそも第六条に記されている”ハーメルの惨劇”とは一体何の事なのでしょうか?”パンダグリュエル”でわたくしを捕縛したレン皇女殿下はその”ハーメルの惨劇”という出来事が”百日戦役の真実”と仰っていましたが………」

アリシア女王に続くように口を開いたカラント大司教の話を聞いたダヴィル大使は信じられない表情をし、アルフィン皇女は困惑の表情をしていた。

「え………」

「………御二方は”ハーメルの惨劇”についてご存知ないのですか?アルフィン皇女殿下はまだわかりますが、ダヴィル大使もご存知ない事は少々おかしいかと思われるのですが。”百日戦役”終結の為の講和条約式の際にもエレボニア帝国の大使がエレボニア帝国政府を代表して講和条約に調印したと伺っておりますし………」

「いえ、私がグランセルの大使館に務めるようになったのは”百日戦役”が終結した直後でしてな。前任者からの引継ぎは”百日戦役”の講和条約の調印式が終了した翌日からだった為、お恥ずかしながら”百日戦役”の講和条約の詳細については存じていないのです。」

二人の様子を見たクローディア姫は呆けた声を出し、エルナンの質問にダヴィル大使が戸惑いの表情で答えた。

「――なるほどな。アリシア女王、クローディア姫。第六条の説明の前に”ハーメル”の件を何も知らない二人に”百日戦役の真実”を教えるべきだと思うのだが?幸いにも二人はエレボニア皇族と大使なのだから、当然”ハーメル”の件についても知る権利があるしな。」

「それは……………」

「…………………………わかりました。御二方共気をしっかり持ち、お聞きください――――――」

シルヴァンの正論にクローディア姫が複雑そうな表情で答えを濁している中目を伏せて黙って考え込んでいたアリシア女王は目を見開いて決意の表情になり、アルフィン皇女とダヴィル大使に”ハーメルの惨劇”についての説明をした。

 

「そ、そんな!?それではエレボニア帝国はリベール王国の領地欲しさに”ハーメル”の――――自国の民達を………ッ!」

「戦争末期に突然、帝国政府がリベール王国に停戦を申し出、講和条約を結んだ事については私を含めたエレボニアの多くの民達の疑問でしたが、まさかそのような”真実”が隠されていたとは………」

”ハーメルの惨劇”の説明を聞き終えたアルフィン皇女は悲痛そうな表情で声を上げ、ダヴィル大使は重々しい様子を纏って呟いた。

「―――シルヴァン陛下。御二方への”ハーメルの惨劇”についての一通りの説明も終わりましたし、先程の私の質問に答えて頂きたいのですが。」

「いいだろう。―――今回の戦争の和解条約に”ハーメルの惨劇”を白日の下に晒す事を入れた理由は”ある人物”による要請だ。」

「”ある人物による要請”………?―――!ま、まさか……レーヴェさ―――いえ、レオンハルト・ベルガー大佐がリィンさんのように手柄をたてて、その”褒美”としてハーメルの件を持ち出したのですか!?」

アリシア女王の質問に答えたシルヴァンの話を聞いて一瞬不思議そうな表情をしたクローディア姫だったが心当たりをすぐに思い出し、血相を変えてシルヴァンに問いかけた。

「いえ、今回の戦争ではレオンハルト大佐はそれ程目立った活躍はしていない為リウイ陛下達に表彰はされていませんし、そのような事を望んでいる事を口にした事はございません。」

「あの……何故”ハーメル”の件でその”特務部隊”の一人でもあるレオンハルト大佐という方が関係してくるのでしょうか?」

「それは……………」

クローディア姫の問いかけにセシリアが否定すると、アルフィン皇女は自身の疑問を口にし、アルフィン皇女の疑問を聞いたクローディア姫は辛そうな表情で答えを濁した。

「――――レオンハルト・ベルガー大佐は元結社”身喰らう蛇”に所属していたエージェントの一人にして、”ハーメルの惨劇”から生き延びる事ができた数少ない”ハーメル”の民の一人だ。」

「何ですと!?」

「”ハーメルの惨劇”から生き残る事ができた”ハーメル”の民がいらっしゃったのですか………あら?シルヴァン陛下は先程レオンハルト大佐は貴族連合軍にも協力している”身喰らう蛇”という組織に所属していると仰いましたが……」

シルヴァンの説明を聞いたダヴィル大使は血相を変えて声を上げ、アルフィン皇女は辛そうな表情で呟いたがある事に気づき、戸惑いの表情でシルヴァンを見つめて問いかけた。

 

「レオンハルト大佐は”ハーメルの惨劇”の真相を知った事により”人”に絶望し、絶望した彼は”人という可能性”を試す為に”身喰らう蛇”の誘いに乗り、”身喰らう蛇”に所属したとの事です。」

「かの”剣帝”が結社に属したのはエレボニアに対する復讐ではなく、”人”を見極める為だったのですか………」

「……………」

セシリアの説明を聞いたカラント大司教は驚きの表情で呟き、カシウスは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「―――説明を続けます。”身喰らう蛇”に所属した彼は2年前に”身喰らう蛇”が起こした”リベールの異変”にも関わり、リベール王国全土に加えて両帝国の南部を”導力停止現象”に陥らせた原因である浮遊都市を攻略した精鋭部隊の一人にしてレオンハルト大佐と同じ”ハーメルの遺児”である遊撃士と交戦し、敗北。敗北した彼はその遊撃士の説得に応じて”身喰らう蛇”から脱退し、更にリベール王国に対するせめてもの償いにレオンハルト大佐と交戦した後窮地に陥った精鋭部隊に助太刀並びに”リベールの異変”を起こした首謀者にして”身喰らう蛇”の最高幹部と交戦し、撃退。そして浮遊都市崩壊後リベール王国に自首をし、自首後の彼の身柄は”ハーメル”の件で”ハーメルの遺児”達に対して罪悪感や責任を感じていたアリシア女王陛下の慈悲によって超法規的措置として我が国に預けられる事となり、我が国に預けられた彼は自らの”力”をリウイ陛下に示して自身の希望であるプリネ皇女殿下の親衛隊副長に就任しました。」

「ゆ、遊撃士協会にまで”ハーメル”の民が所属しているのですか………!?」

「……………ええ。ただし予め言っておきますが、その人物が誰なのかはプライバシー保護の関係で教える事はできません。」

「「「「「………………」」」」」

説明の続きを聞いて驚きの表情をしているダヴィル大使に視線を向けられたエルナンは静かな表情で答えた後真剣な表情になって答え、エルナンの話に出て来た人物が誰であるかを知っているカシウスやユリア准佐は重々しい様子を纏い、シェラザードとクローディア姫、アネラスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

「……あの。メンフィル帝国に身柄を預けられたレオンハルト大佐はプリネ皇女殿下の親衛隊に所属している事を希望されたのでしょうか?」

「―――その件に関しては第六条の件とは関係が無い為黙秘させてもらう。軽々しく”我が国の民”のプライバシーを他国に教える訳にはいかないしな。」

アルフィン皇女の質問に対してシルヴァンは静かな表情で答える事を拒否した。

 

「………わかりましたわ。アリシア女王陛下、我が国の愚行によって”身喰らう蛇”に所属する事を決意させ、かの”異変”で貴国を混乱に陥れる事に加担した我が国の民であったレオンハルト大佐の罪を許して頂いた事、心から感謝しております。そしてシルヴァン皇帝陛下、貴国の同盟国であるリベール王国を混乱に陥れた”ハーメル”の民であったレオンハルト大佐に新しい生活や好待遇での仕事を用意してくださった事、心から感謝しております。」

「どうかお気になさらないでください。私は自国の安寧の為に”ハーメル”の民達の無念を切り捨てたせめてもの償いをしただけですから………」

「お祖母様………」

「――レオンハルト大佐の件については別にエレボニアがメンフィルに感謝する必要はない。メンフィルは”光と闇”、両勢力の共存を謳う国。我が国の民達の中にはレオンハルト大佐のように様々な複雑な事情で祖国で生きる事が不可能になったり、”裏世界”で生きざるをえない者達が平穏な生活を求めて我が国に亡命してきた者達もいる。よって、我等メンフィルは当然の事をしたまでだ。―――――最も、”ハーメル”の件を”影の国”事件で出会ったクローディア姫達から教えてもらった母親から教育の一環として聞かされた娘の要請によって、闇に葬られた”ハーメル”の件が白日の下に晒される事になる訳だがな。」

アルフィン皇女の感謝の言葉に対してアリシア女王は静かな表情で答え、アリシア女王の答えを聞いたクローゼは辛そうな表情でアリシア女王を見つめ、シルヴァンは静かな表情で答えた後不敵な笑みを浮かべた。

「なっ!?」

「ふえっ!?」

「ハアッ!?」

「ええっ!?ハ、『ハーメルの件を影の国で私達から教えてもらった母親の娘』って……一体どなたのご息女が貴国に”ハーメル”の件を白日の下に晒すように要請したのですか!?」

シルヴァンの答えを聞いたユリア准佐とアネラス、シェラザードと共に驚きの声を上げたクローディア姫は信じられない表情でシルヴァンに問いかけた。

「――――アリシア女王。件の人物をこの場に呼び出し、その人物に第六条の件の説明をさせたいのだが、構わないだろうか?ちなみにその人物には今回の和解調印式についても説明し、呼び出す了解は既に取っている。」

「………―――構いません。私達としてもその人物と話をしたいと思っておりますので。」

シルヴァンの要請に目を伏せて考え込んでいたアリシア女王は目を見開いて答えた。その後シルヴァンはその場で通信機を取り出してある人物と通信をした。

「―――メンフィル皇帝、シルヴァン・マーシルンだ。グランセル城に貴女が参上する許可が今取れた。」

「わかりました。すぐに向かいますのでちょっとだけ待っていて下さい。」

ある人物との通信を終えたシルヴァンが通信機を懐にしまうと、会議室の外が慌ただしくなり始めた。

 

「何やら外が騒がしくなっているようですが………何かあったのですかな?」

「不測の事態が起こったのかもしれません。―――ユリア准佐、何が起こっているのか外の者達に状況を聞いてきてくれ。」

「ハッ!」

騒がしくなり始めた状況にカラント大司教は眉を顰め、カシウスの指示に敬礼したユリア准佐が会議室を出て外で騒がしくしている人物達に状況を聞いた後再び会議室に入室した。

「それでユリアさん。一体何が起こっているのでしょうか?」

「それが……………先程空中庭園に2年前ボース地方に現れた”古竜レグナート”殿が降り立ち、古竜殿が女王陛下を含めた和解調印式に出席している人物達全員を空中庭園に呼ぶように伝えてきたとの事です。」

「ええっ!?」

「…………………」

アリシア女王の質問に信じられない表情で答えたユリア准佐の説明を聞いたクローディア姫は驚き、カシウスは呆けた表情をしていた。

「―――どうやら、件の人物が到着したようだな。」

一方シルヴァンは落ち着いた様子でセシリアと共に立ち上がった。

「まさか件の人物とは先程空中庭園に現れた竜なのですか?」

「それについては行けばわかる事だ。先程現れた古竜がこちらに危害を加えるつもりが一切ない事は我が国が保証する。」

「……わかりました。皆さん、ご足労ですが空中庭園に足をお運びください。」

自分の質問に答えたシルヴァンの答えを聞いたアリシア女王は立ち上がってクローディア姫達を促した。その後アリシア女王達は空中庭園へと移動した。

 

~空中庭園~

 

「あ…………」

アリシア女王達と共に空中庭園に出たアルフィン皇女は空中庭園の一角にいる巨大な竜を見ると呆け

「ま、まさかあの竜が2年前の”竜事件”の……!?」

「はい……ただ彼は”異変”終結後どこかへと飛び去っていったのですが……」

信じられない表情をしているダヴィル大使の疑問に答えたクローディア姫は不安そうな表情で竜を見つめていた。

 

 

(リベールとエレボニア、そして異界の国メンフィルの王達に告げる。我が名は『レグナート』。古よりこの地に眠る竜にして”空の女神”の眷族だ。かつて悪しき者に操られていたがそちらのリベールの姫や遊撃士たちによって解放された。)

 

「ふえっ!?と、突然声が頭に響いてきましたけど、もしかしてこの声って……あの竜なんですか!?」

「………恐らくそうでしょうね。2年前の事件の竜――――レグナート殿と直接会話をしたエステルさん達の報告によると彼は私達人間が持つ発声器官を持っていない為直接頭に語り掛ける”念話”という形で私達と会話をしたとの事です。」

竜――――レグナートの念話に驚いたアネラスの疑問にエルナンは真剣な表情で答えた。

「………久しぶりだな、レグナート。2年前に意味深な事を伝えて再び会う可能性があるみたいな事を言って去ったが、まさか今がその時なのか?」

するとその時カシウスが前に出てレグナートに話しかけた。

 

(フフッ、この邂逅は我にとっても想定外の邂逅だ。我はかの”ハーメル”の件を世間に白日の下に晒す事を決めたある者の頼みによって、その者をこの場に運び、その者の身分を証明する者として現れたのだ。)

 

「ええっ!?」

「”空の女神”の眷属であるレグナート殿がわざわざそのような事をするとは……その人物とは一体何者なのですか?」

カシウスの問いかけに対するレグナートの説明を聞いたクローディア姫は驚き、カラント大司教は信じられない表情でレグナートに訊ねた。

「―――それは私の事ですよ。」

するとその時神々しい雰囲気を纏い、セルリアンブルーの髪を腰までなびかせる清楚な美貌を持つ女性がレグナートの背後から現れた!

 

 

今回の話の最後でまさかのあの人物が登場しましたwwなお、アリシア女王達がアルフィン達にハーメルの事を教えている間のBGMは勿論SCかSCEVOの”ハーメル”、ユリアによってレグナートが現れたという報告がされたあたりからのBGMはFCかFCEVOの”虚ろなる光の封土”、そして今回の話の最後で登場した女性が現れたあたりからと次回の話のBGMはイースオリジンの”Genesis Beyond The Biginning”だと思ってください♪


 
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