「司令……有り難う」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:34話(改1.4)<山城の攻防>
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気がつくと時計は09:00を回っている。
「本省と舞鶴連中は間に合いませんね」
私が状況確認と併せて二人の参謀に伝える。彼らも頷いた。
「仕方ないな」
「そうですね」
美保湾で始まった敵との戦闘は、さらに激しさを増す。湾では白煙が立ち込め砲声が響く。
「二式大艇が海側から、この鎮守府に近づくことは、もはや難しいな」
副司令の祥高さんは寛代の呟くような報告を聞き、しきりにメモを取っている。そのメモを確認した大淀さんが作戦配置盤上の駒を動かす。
祥高さんが再度、確認して私に報告する。
「山城さんの艦隊は再び敵に押されています」
次いで大淀さん。
「由良沖で川内さんや神通さんの艦隊も援護する予定でしたが今日は敵が多くて分断されています」
私も盤上の駒を見て腕を組んだ。
「おまけに敵は浅い中海にまで出現して陸攻を一機、落としたからな」
それを受けて呉も続ける。
「奴(やっこ=敵)さんも一気に勝負をかけてきた! って感じやなぁ」
(敵も総力戦か。面倒な状況だ)
「大挺は接近を断念し由良沖で着水した模様!」
大淀さんが報告する。やっぱり。
私は返した。
「川内と神通さんを大挺護衛のため由良沖方面へ少しずつ後退させてくれ」
「了解しました」
頷く大淀さん。
「くれぐれも敵に悟られないように」
「はい」
盤上を見つめる呉が心配する。
「かなり厳しそうやなぁ」
「そうですね」
着任早々いきなりの戦闘。しかも敵は多勢で戦力もありそうだ。
祥高さんが盤上の敵駒を動かした。
それを見ると川内姉妹を下げた影響か山城さんの艦隊に敵の駒が集まって来ている。
ちょうど、その時だ。
『やだ、魚雷?』
雑音に混じって山城さんからの無線が入った。美保湾は相変わらず弾幕と水柱で見通しが悪い。さらに黒煙の数が増えてるのが心配だ。
『きゃあっ』
という叫び声と共に山城さんの無線が途切れ途切れに入った。
『……各艦は私を顧みず前進して! 敵を撃滅してくださぁい!』
思わず私は無線機に向かって叫んだ。
「山城さん、引けっ! 直ぐに後退だ」
知る人ぞ知る私流の『迷わず引く』戦術だ。
『司令、嬉しい。でも駄目、戻れませ……』
彼女の反応には呉と神戸も少し意外な表情を見せた。もちろん私も同様だった。
(嬉しい?)
あの山城さんからは想像できない反応だった。しかし激しい雑音が無線をかき消した。
(あまり情が移ると厄介なのだろうか?)
兵士とはいえ艦娘だって感情はある。私は努めて冷静さを保つようにした。
爆音と共に衝撃波を伴った地響きが美保湾から断続的に響く。鎮守府の窓ガラスは幾度もビリビリと震え、指令室の受像機の画像が歪む。
弓ヶ浜全体に戦闘の黒煙が増え、かなりきな臭くなってきた。
地元自治体の警戒放送が何度も響く。墜落する敵機と上昇する味方機の音が交差する。
無線からは艦娘の叫びと怒号。警報と爆音が入り乱れ指令室も含め地域全体が戦場と化していた。艦娘も必死に一進一退を繰り返している。
ただ艦隊主軸である山城さんが心配だ。
(思い切って、強引に引くべきか?)
艦娘を指揮していて判断に迷う一番嫌な瞬間だ。それは二人の参謀も同じ気持ちだろう。
この間、私には長い時間に感じられた。
(何の因果で艦娘の指揮を執ることになったのやら)
……って今更、嘆いても始まらない。
業を煮やした私は思わず無線機に近寄って叫んだ。
「山城部隊の誰かっ、状況を報告しろ!」
『……』
無線機はガリガリという雑音を返すのみ。
「ゴホッ、ごほ」
やや年配の呉が咳き込む。とうとうこの鎮守府にまで黒煙が達したのだ。
「ココにまで硝煙が来ると言うことは、現地は激戦ですね」
若い神戸も身を屈(かが)める。
「状況把握どころではないか」
私も諦めかけた。
しかし次の瞬間。
「間に合いましたぁ!」
……という軽い声が響いた。
『斉射ぁ! ……ちょっとそこの駆逐艦、早くどけて!』
(えっと、この声は)
「伏せろって言ってもなぁ」
ハンケチで口元を押さえながら苦笑する呉。なるほど、艦娘の強引さを、よく分かっている。
『改めて、斉射ぁ!』
美保湾からは聞き覚えのある戦艦の砲声が響く。
「新手の艦娘ですか?」
神戸も聞く。
「この音は、あいつか?」
思い返すように私は美保湾を見渡した。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
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戦闘は徐々に拡大し魚雷を受けた山城が不利な状況に。そんな中、新しい無線が入る。