No.884985

艦これ仕掛人其の壱『仕掛けて仕損じなし』

晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ人でなしを消す。

いずれも人知れず仕掛けて仕損じなし。

人呼んで『仕掛人』

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2016-12-24 16:40:53 投稿 / 全19ページ    総閲覧数:1575   閲覧ユーザー数:1566

 

 新年が明けたばかりの、この上ない寒い日の夜であった。

 その車は、横浜の保土ヶ谷にある〔池田屋〕という料亭の玄関口で待っていて、宴席から抜け出してきた40半ばの男を乗せると、街道へ走り出した。

 車は、この近くに事務所をおく広域指定暴力団〔権田組〕のものだ。男は〔池田屋〕のなじみの客で、名を牟田口弁蔵といい、この権田組の若頭であった。

 牟田口はこの日、事務所から車を仕立て、保土ヶ谷の池田屋へ向かい、車を待たせていたのだ。

 運転手は牟田口の舎弟であったが、月も星もない暗夜の街道へ走り出して暫く経った頃に

 

「旦那、お寒くは御座いませんか?」

 

 と、声をかけてきた。

 その声を聞いたとき、牟田口は

 

(はて…)

 

 妙な気がした。

 自分の舎弟の声には、聞き覚えがある。だが、その声ではなかった。

 暗い玄関口へ、池田屋の主人と座敷女中に見送られて出てきて、何気なく車へ乗りこんでしまった牟田口は、そのとき運転席で頭を下げて迎えた運転手の顔を、別に確かめてはいなかった。

 ただ、顔にマスクをつけていた運転手を

 

(無礼な…)

 

 と見たままである。それも

 

(寒いのだろう)

 

 と思いなおし、むっつりと車に乗り込んだまでの事であった。

 

(声が違う…)

 

 はっと、牟田口が辺りを見渡すと、車が事務所とは全く逆の方向へ走っている事に今やっと気づいた。

 

「あっ…」

 

 大男の運転手である。牟田口の舎弟は、もっと躰が小さかった。牟田口が車へ戻った時、この舎弟はこれ程の巨漢であったか…

 牟田口は少しも気づかなかった。

 

「何だてめぇは!?何処の組のモンだ!」

 

 誰何して、牟田口は座席のシートベルトを外すと、躰を前にだして顔を運転手に向けた。

 

「海軍軍人の輝梅安(ひかりばいあん)という者でございますよ」

 

「ぐ、軍j…」

 

 言いさして、牟田口の声が途絶えた。

 牟田口の目から輝きが消え、口を開けたまま静止している。

 舎弟…いや、仕掛人・輝梅安の左手が、牟田口の眉間から、ゆっくりと離れた。その左手に、殺し針がきらりと光った。牟田口の眉間の急所を深々と貫いた殺し針である。

 梅安が殺し針を懐にしまうのと同時に、静止していた牟田口の躰が運転席と助手席の間に崩れ落ちた。

 梅安は車を人気のない裏路地に停めると、周囲に人影がないのを確認すると、車から牟田口を引き摺り下ろして、何処かへと去っていった。保土ヶ谷の池田屋の玄関口にほど近い草むらで、若い舎弟の遺体が転がっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴らせぬ恨みを晴らし

 

許せぬ人でなし消す

 

いずれも人知れず

 

仕掛けて仕損じなし

 

人呼んで『仕掛人』

 

ただしこの稼業

 

江戸職業尽くしには

 

載っていない…

 

 

 

 

 

 

 

 

≪必殺仕掛人オープニングより≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 第13鎮守府…

 そこはどこにでもある普通の鎮守府である。最盛期には300人以上の艦娘が所属する大所帯であったが、深海棲艦との停戦が成されて以降、軍縮の煽りを受け、現在では120人近くに落ち着いていた。

 仕掛人・輝梅安はこの鎮守府の2代目にあたる司令官であり、提督としての執務と同時に、自身の軍医としての経歴を生かして、入渠施設において艦娘のケアもしていた。

 その梅安が鎮守府の自室に帰り着いたのは消灯時間(2300時)ギリギリであった。

 

(酒は明日にするか…)

 

 梅安は直ぐ、押し入れから布団を取り出すと、8畳間の部屋に敷いてさあ寝ようとしたその時、自室の戸を叩く音が聞こえた。

 

「提督、梅安提督、まだ起きていらっしゃいますか!?」

 

 声は、本日の秘書艦係の明石のものであった。

 

「なんだ?また川内と江風が馬鹿騒ぎでなんかぶっ壊したのか?」

 

 梅安が戸を開けると、明石が転げ込んで入ってきた。

 

「じ、実は先刻遠征から第6駆逐隊の皆さんが帰ってきたんですが、その際負傷した深海棲艦を運んできまして…」

 

「種類は?それと容体は?」

 

「かなりの重症です。それに姫クラスで、外見から見て恐らく中間棲姫かと…」

 

「ふむ…」

 

「と、兎に角、早く医務室に来てください!」

 

 明石の話を聞いた梅安は、重い腰を上げると、明石と共に医務室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明石と共に医務室に着いた梅安が見たのは、医務室のベッドで横になっている衰弱した中間棲姫と、それを看病する第6駆逐隊の面々であった。梅安が来たことに気付いた6駆の面々は、梅安に事のあらましを説明してくれた。

 事はこうだ。6駆がボーキサイト輸送任務を終え帰りの航路についたその時、電が岩礁で倒れている中間棲姫を見つけたのだ。彼女は酷く衰弱しており、ただ

 

『タス…ケテ…』

 

 と、途切れ途切れであるが、助けを求めていた。仕方なく、6駆は持っていたワイヤーを使って彼女を曳航して、鎮守府に帰還したのである。梅安が鎮守府に帰還する10分前の事であった。

 

「司令官さん…どうですか?」

 

 電が恐る恐る梅安に聞くと、梅安は優しい声で答えた。

 

「お前さんらの応急処置のおかげで少しは和らいではいるが、まだ危険な状態だ。こりゃぁ徹夜になるかもしれんな」

 

 梅安はそういうと、鞄から医療器具を取りだして、手当と治療をを開始した。

 なるほど、重症であった。

 あったが、しかし、梅安の奮闘と適切な処置でなんとか中間棲姫は一命を取り留めた。

 

「これでなんとか大丈夫だろう。だがまだ油断は出来ん。何かあったら直ぐに呼んでくれ」

 

 と、言い置き、梅安はひとまず自室へ戻った。空は既に夜が明けようとしていた。

 梅安はグラスに注がれたスコッチ・ウィスキーを飲み干すと、寝床へもぐりこみ、たちまちねむりこんた。

 深い眠りに落ちこみつつ、梅安は

 

(この一夜で、俺はこの手で一人を殺し、一人の命を助けた…)

 

 そんなことをちらりと思ったが、それ以上の事はもう、覚えていなかった。己の所業の矛盾は、理屈では解決できぬものだ。世の中の矛盾も同様だ。これを無理に理屈で解決しようとしても、必ず矛盾が勝ってしまうのである。昨夜、梅安が仕掛けた牟田口弁蔵は、たしか、

 

(世の中に生きていても仕方がない、生かしておいては世のため人のためにならん奴)

 

 であるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…い督、提督。火急の要件です」

 

 この時、梅安はこの日の秘書艦係りであった香取の声で目覚めた。

 

「今何時だ?」

 

「現時点で1230時です」

 

「で、用件は?」

 

「実は…」

 

 香取が言うには、前任の提督が鎮守府に来て梅安に会いたいという事であった。梅安はその前任の司令官に心当たりがあった。その男こそ、昨夜の牟田口弁蔵の仕掛けを梅安に依頼した元締めだったのである。

 梅安は軍服に着替えると、鎮守府に正門に向かった。

 

「やぁ、山本閣下でしか」

 

「“元”閣下ですよ。梅安さん。私は既に退役した身ですから」

 

「ここでは立ち話もなんですから、私の執務室に行きましょう」

 

 そういうと、梅安は客を鎮守府の中へ案内した。

 

 

 

 

 この客の正体は、前任の第13鎮守府司令官で名を、山本半右衛門(やまもとはんえもん)といい、外見は60半ばの初老の紳士であるが、実年齢は遥かに若く、梅安とは10しか離れていないのだ。そんな半右衛門だが、かつては「鬼」と恐れられる凄腕の仕掛人で、現在はこの辺一帯の仕掛人の元締めを務めていた。昨夜の牟田口の仕掛けを梅安に依頼したのも、この半右衛門である。

 

 

 

 

 提督執務室で、半右衛門は仕掛料の後金である600万を梅安に手渡すと、梅安はそれを懐にしまい込んだ。

 

「ときに、梅安さん。実は、貴方に会いに来たのは、別の要件がございまして…」

 

「元締め、続けざまの仕掛けはしない約束の筈ですよ」

 

「いえ、これは裏の稼業とは一切関係ない件です。実は昨夜、私の店に怪我をした深海棲艦が来ましてな。どうも誰かに追われていたようで、一応かくまったんです」

 

 半右衛門の言葉に、梅安は昨夜の深海棲艦の事を思い出した。

 

「ほう…奇遇ですな。実は私の鎮守府にも、昨夜衰弱した中間棲姫の看病を徹夜でしたんですよ」

 

 そう言いながら、梅安は2つのカップにコーヒーを淹れると、応対用の机に置いた。

 

「おや、それはまた奇遇ですな。実は私の所に来たのは、戦艦タ級でしてな。それはもう酷く衰弱しておりまして、出来れば、梅安さんに看てもらいたく…」

 

「あいや、みなまで言わなくて結構です。つまり、私に往診してほしいという事で?」

 

 梅安はカップのコーヒーを飲むと、棚から医療器具や薬を入れた手持ちサイズの手提げ付きの箱を取り出した。

 

「早速、往診しましょう」

 

「おお、診てくれますか?しかし、提督業の方は…」

 

「その点はご心配なく」

 

 そう言うと、梅安は館内電話の受話器を取り出した。

 

「おう、俺だ。すまないが矢矧を呼んできてくれないか」

 

 1分と20秒後、矢矧が執務室に入ってきた。

 

「提督、お呼びですか?」

 

「おぅ、すまんが俺の留守を頼めんか。実は…」

 

 梅安は事を矢矧に説明した。

 

「なるほど、それならお任せください」

 

「助かる。それじゃ元締め、行きましょうか」

 

「どうも」

 

 梅安と半右衛門は立ち上がると、そのまま鎮守府を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 半右衛門が海軍を退役したのは、今から2年前の事である。海軍を退役した半右衛門は、鎮守府の近くにある自宅を改築して、小さな料亭〔音羽屋〕を開いた。この料亭は、第13鎮守府の面々にとっては憩いの場の一つであり、忘年会や新年会、更にはクリスマスパーティもここで行う事が今では定番となっている。

 ここまでなら、普通の料亭であるが、もう一つの顔がある。それは、この音羽屋の中庭にある茶室の存在であった。

 この茶室は、主に仕掛の取引が行われる際にしか使われない場所であり、普段は立ち入り禁止となっていた。

 梅安と半右衛門がその音羽屋に到着したのは、既に夕刻であった。

 

「で、その患者はどこにいますんで?」

 

「中庭の茶室に匿っております」

 

「あの茶室に?」

 

「はい。本当でしたら病院に運ぶつもりでしたが、どうにも訳ありなようでして…」

 

 梅安と半右衛門は中庭の茶室に入ると、半右衛門の妻であり元艦娘の三笠陽子と、意識を取り戻した戦艦タ級であった。

 

「あ、貴方、お帰りなさいませ。梅安さんもいらっしゃい」

 

「ああ、ただいま」

 

「どうも、お邪魔します」

 

 タ級は梅安を見ると、少し警戒する素振りを見せた。それを見た三笠は、梅安は味方だと教えると、落ち着きを見せた。

 梅安は、戦艦棲姫の躰に痛々しい痣と、数箇所に包帯を確認した。

 

「だいぶ酷くやられたな…一体誰がやったんだ?」

 

 タ級は答えない。ただ、その眼から、酷い折檻を受けたことがわかった。

 

「私もそれを聞こうとしているんだが、これがどうにも…」

 

 半右衛門も頭を抱えていた。とりあえず、梅安は手提げ箱から薬と医療器具を取り出した。

 

「後は私がやりますから、奥さんは手桶にお湯を入れてきてください。元締めは手拭いを」

 

 梅安がそういうと、半右衛門と三笠は茶室から出ていった。

 梅安の治療と診察は、そこまで時間はかからなかった。殆どの処置が音羽屋の手で行われたことが幸いしたのだろう。

 

「まぁ、大丈夫でしょう。暫くはここで養生して下さい。明後日また来ます」

 

 梅安は一通りの処置を終えると、半右衛門にこう言い残すと、鎮守府に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 鎮守府に帰った梅安に待っていたのは、昏睡状態だった中間棲姫が意識を取り戻したという報告であった。梅安は直ぐに医務室に向かうと、そこには既に矢矧と今すぐにでも寝そうな6駆の面々が来ていた。

 ベッドの中間棲姫は、程よく回復していたが、目は虚ろになっていた。

 

「ふむ、だいぶ容体は安定しているが、どうにもな…」

 

「なにが『どうにも』なんですか?」

 

「彼女は精神的に深い傷をおっている節がある。これを直さん限り、事情聴取もマトモにできねぇって訳だ」

 

 梅安は頭を抱えながらそう言った。梅安の専門はあくまで外的損傷や病気であり、精神療法は専門外であった。

 

「心の傷ってもんは、こいつぁ俺でもどうしようもないからな…ま、気長に待つしかないな」

 

 そんな…と、6駆の皆が口を揃えて言った。その時、梅安は雷が右手にハート型の南京錠を持っている事に気付いた。

 

「おい、雷、そりゃあなんだ?」

 

 梅安は南京錠に指を指すと、雷は手に持っていた南京錠を梅安に渡した。

 

「え?これのこと?これは私がこの人のアキレス腱にかかってたのを見つけて、明石さんに頼んで開錠したの」

 

 梅安は雷の説明を聞きながら、その南京錠を観察した。すると、南京錠の背面に、漢数字で小さく『五十三』と彫りこまれている部分を見つけた。

 

(『五十三』…『五十三』…もしや、第53鎮守府の事か…!)

 

 梅安は、一昨年の聖夜の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 一昨年の師走、当時海軍陸戦隊の帝都守備隊に所属していた梅安は、札屋を営む仕掛人の元締め『東間吉兵衛』からある仕掛けを50万で引き受けた。仕掛の的は第53鎮守府の司令官『五味銑十郎』といい、海軍内でも暴力沙汰で何度か営倉入りをくらっていた問題人物であった。この男は典型的な差別主義者であり、艦娘を物以下のように扱い、ひいては自分の性欲のはけ口に使うなど、まさに“生きていても仕方がない奴”であった。師走のクリスマスイブの夜、○×橋でホームレスに変装した梅安は、通りかかった五味を

 

(事故死に見せかけて)

 

 仕掛けたのである。数日後、五味は憲兵隊によって『事故死』として処理されると、第53鎮守府は海軍特別警察隊第53方面隊の押し入り調査の後、解隊されたのである。

 

 

 

 

 自分が仕掛けた相手が生きている…嫌、あの時確かに手ごたえはあった。となれば、何者かがその〔第53鎮守府〕の名を騙り、アコギな事をやっている事を思うと、怒りが込み上げてきた。

 

「矢矧、すまんが日進を呼んできてくれないか?大至急だ」

 

「えっ?は、はい。了解しました・直ちに」

 

 梅安は矢矧に耳打ちすると、矢矧は直ちに医務室を退室した。

 

「さぁおめぇら、後は軍医さんのお仕事だ。お前さんらは昨日っから徹夜続きだったから、早く寝たほうがいいぞ」

 

 梅安が手を叩いてそういうと、6駆の面々を部屋に送った。

 梅安は、自分がとんでもない事件に巻き込まれたという事を、肌に感じていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 一刻後、梅安の執務室に一人の女性が入ってきた。

 この女性、名を〔おひろめの日進〕といい、表の稼業は駄菓子屋だが、裏では山本半右衛門お抱えの密偵をしている。かつては梅安が贔屓していた情報屋の一人で、今でもその中は続いている。

 日進が入ってきたとき、梅安は執務室の火鉢で軍鶏鍋を造っていた。

 

「珍しいですね。梅安さんからあっしに頼み事ってのは。なにか調べ事っすか?」

 

「まあそんなところだ。まぁかけてくれ」

 

 日進は梅安に向かい合うように座った。

 

「それで、調べたい事はなんすか?」

 

「ああ、実はだな。一昨年の暮れに俺が仕掛けた五味銑十郎の件で少し気になることがあってな」

 

「へぇ」

 

「実は昨日の夜、俺が治療した中間棲姫に、こんなものが付いてたんだよ」

 

 梅安はハート型の南京錠を日進に見せた。

 

「それって確か、解隊された第53鎮守府の……」

 

「ああ、その通りだ。で、本題なんだが、一昨年の銑十郎殺しを札屋の元締に頼んだ〔起こり〕を調べてほしい」

 

「銑十郎殺しの〔起こり〕っすか!?梅安さん、そりゃあ不味いっすよ。下手したらそれは〔掟〕に背くことでっせ!」

 

 

 

 

 仕掛人は、殺した男が何処の何者か、何故殺さねばならなかったのか、それには一切関知してはならない。

 ただ、仕事の仲立をした〔蔓〕の

 

「世のため人のため、生かしておいてはいかん奴」

 

 という一言を信じて、この〔仕事〕に精魂を傾ける……それが、仕掛人の掟である。

 輝梅安とて、それは例外ではない。

 そして仕掛人は、あくまで仲立をした〔蔓〕の依頼で殺しを行うのであり、本来の依頼人である〔起こり〕の事を知ってはならないのだ。

 

 

 

 

「掟を背くことは百も承知だ。だが、札屋の元締が〔起こり〕に騙された可能性も否定できん。だからこそ、調べてほしい」

 

 梅安のその言葉に、日進は軽く舌打ちをし

 

「しようがないねぇ。他ならねぇ梅安先生の頼みだ。引き受けますよ。そのかわり!銭は高くつきまっせ!」

 

「わかったよ。さ、一杯やろか」

 

 軍鶏鍋は、既に出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 梅安が日進に頼みごとをして数日たったある日の早朝、梅安と矢矧は音羽屋を訪れていた。診察したタ級の往診と、もう一つ別の案件があった。それは、中間棲姫のアキレス腱から雷が見つけた『五十三』の刻印が彫りこまれた南京錠の事で、半右衛門から話があるとの事であった。

 梅安は二階の個室に招かれると、そこには半右衛門と、もう一人、梅安がよく知る男が茶を飲みながら待っていた

 

「やぁ、梅安さん。急に呼び出してしまって申し訳ない」

 

「いえ、しかしこりゃ驚いた。あの〔阿修羅の源蔵〕がここにくるとはね」

 

「ふ、まあな」

 

 

 

 

〔阿修羅の源蔵〕…本名を長谷川源蔵(はせがわげんぞう)といい、江戸寛政の頃に火付盗賊改役であった長谷川平蔵宣以の子孫にあたり、現第7鎮守府の司令官であるこの男のもう一つの顔こそ、海軍軍令部が本土近海における海賊行為や密漁、テロ行為及びブラ鎮取り締まりのために創設された警察組織〔海軍警務隊〕の長官であった。彼は仕掛人の存在をいち早く感づいており、仕掛けの後処理などを進んで行うなど、協力的な人物である。

 

 

 

 

「で、元締、ご用件は?」

 

「うむ、実は…」

 

 梅安が聞くと、半右衛門は袖の下から、梅安が持っているのと同じ形状の南京錠を取り出した。

 

「これは…」

 

 梅安はもしやと思い、懐からあの南京錠を取り出した。

 

「おや、梅安さんもそれを」

 

「ええ、実は数日前から、日進を呼び出してちと調べ事を…」

 

「ほほぅ…それはまた奇遇な…」

 

 偶然、というには、いささか奇妙なものであった。源蔵は二つの南京錠を手に取ると、すぐに携帯用ルーペを取り出して調べた。

 

「どうですか源蔵さん」

 

「…間違いなくこの二つは全く同じものだ」

 

 源蔵の言葉に、梅安と半右衛門は目を合わせるのと同時に、一つ目のパズルのピースが見つかった事を感じた。

 

「これでやっと一つ目の謎が解けましたな」

 

「ええ、やっとです」

 

 この時4人は、梅安の鎮守府に来た中間棲姫と音羽屋が匿った戦艦タ級が、同じ場所から逃げてきたこと、そして途中で離ればなれになってしまった事がわかった。

 しかし、まだ謎は多い。どうして2人は“第53鎮守府”から逃げてきたのか、どのような目にあったのか?まだまだパズルの完成は遠いものであった。

 4人は行動に移った。

 

「源蔵さん。すみませんが、第53鎮守府について、少しあらってもらいませんか?」

 

「わかりました。遠征任務を利用して、第53鎮守府跡地に探りを入れます」

 

「あっしは中間棲姫から何か聞き出せないかやってみます。」

 

「頼みます」

 

 4人は立ち上がると、それぞれの行動に移った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 第7鎮守府……

 第13鎮守府と同じ第2地方に置かれたこの地方鎮守府は、海軍警務隊の本部としての機能を有しており、その陸上設備は第22SAS連隊の総本山であウェールズRAF基地グレデンヒルに匹敵する規模を持つ。

 所属隊員は艦娘以外にも深海棲艦、陸戦隊員など、その総数は横須賀鎮守府に引けを取らない。

 音羽屋での会合から一夜明けた朝、長谷川源蔵は密偵、出浦伊三次と小房のワ級を呼び寄せた。

 

 

 

 

 この出浦伊三次という男、かつては情報屋であったが、源蔵にスカウトされ海軍警務隊の密偵となった男である。

 もう一人、小房のワ級はかつて長谷川源蔵によってお縄にかかった兇賊〔野鎚のヲ級〕の手下であったが、長谷川源蔵の人柄に惚れ、自ら密偵となった深海棲艦である。

 

 

 

 

「おう、来たな」

 

『長谷川様、今回ハ何ノ用デ?』

 

「おう、実はだな。一昨年の暮れに海軍特別警察隊第53方面隊が第53鎮守府にガサ入れしたのは覚えているか?」

 

「はい、ニュースで見ています」

 

「実はな……」

 

 源蔵は二人に昨日の会合の事を説明した。

 

『成程……ソウイヤ二年前グライニ、中国マフィアト特警隊ノ幹部ガ裏デ癒着シテルッテイウ噂ヲ耳ニシタ事ガアリマス』

 

「あっしも、情報屋仲間から五味と地元特警隊員が裏で人身売買をやってるていうのを聞いた事があります」

 

「ふむ……となればこのヤマと一昨年の銑十郎殺し、繋がってると見ていいかもしれん。よし、お前達は第53方面隊の裏を洗ってくれ。場合によっては我らの出番もあるやもしれんからな」

 

『ハハッ!』

 

「承知いたしました!」

 

 密偵達はそのまま執務室を立ち去った。

 源蔵は懐から煙草を取り出し、吸い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日が経過し、やっと中間棲姫がマトモにコミュニケ―ションが取れるくらいに回復すると、梅安は中間棲姫を執務室に連れてくるよう矢矧に指示した。

 正午近く、梅安は執務室に特別に造らせた厨房で、昼飯のたまご雑炊を作っていた。

 雑炊が2杯出来上がるのと同時に、矢矧が中間棲姫を連れて執務室にやってきた。

 

「おう、お前はもういいぞ、それと今日は遠征無しだ。皆英気を養ってくれ」

 

 梅安のその言葉で、矢矧は中間棲姫を残して退室した。二人きりとなった執務室で、梅安は応接用のソファに彼女を座らせると、たまご雑炊を置いた。

 

「腹減っただろう。食ってくれ。俺の特製だ」

 

 中間棲姫は雑炊を見ると、傍にあったスプーンを持つと、勢いよく食べ始めた。よほど腹が減っていたのだろう。

 

「こらこら、そうガッツくな。おかわりはたんまりあるぞ」

 

 そう言いながら、梅安も雑炊を食べ始めた。我ながら美味い。言葉にできねぇ味だ!梅安は自身が作った雑炊を心の中で自画自賛した。

 そう時間が経たない内に、二人はおかわりも含めて完食した。

 

『貴様…優シイナ…』

 

 中間棲姫は言った。

 

「あったりめぇよ。俺は軍人だが、それ以前に医者でもあるんだ。『医者たる者患者には優しく接しろ』ってね」

 

 梅安は笑顔で答えた。

 その答えを聞いた中間棲姫は、少し微笑んだ。

 それを見た梅安も、微笑んだ。

 

「さて…実は君に、少し聞きたい事がありましてね」

 

『ドンナ事ヲダ…』

 

 梅安の言葉に、中間棲姫は首を傾げた。

 

「嫌なに、『医者たる者、病のよって来たる根源を知り、それに応じて治療の法をこうずる者』なんてね。君はどうしてあの岩礁にいたのか、どうしてあのような躰になったのか。私は知りたいんでね」

 

 中間棲姫は、顔を下げて黙っている。

 

「無理に話さなくてもいい。誰も、嫌な思い出は思い出したくないものだ」

 

 梅安は労いの言葉をかけた。すると、中間棲姫は小声で梅安に語りかけた。

 

『貴様ハ…私ノ…味方カ…?』

 

「大丈夫、味方だ。信じてくれ」

 

 梅安はサムズアップで答えた。中間棲姫はそれを見ると、恐る恐る語り始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

≪推奨BGM:仕掛人無常≫

 

 私ハ…今カラオヨソ二4日前、奴ラニ連行サレタ…

 

 誰に?

 

 海軍特別警察隊…第53地区方面隊…

 

 特警隊がなんで深海棲艦を?

 

 ワカラナイ…ダケド、奴ラハ私ヲ捕マエルト、廃棄サレタ鎮守府ニ連レテ行カレタ…

 

 第53鎮守府…

 

 ワカラナイ…私ハソコデ、足首ニ南京錠ヲツナガレ、一晩中奴ラニ犯サレタ…休ム暇モナク犯サレ、叩カレタ…

 

 お前さんの体中の痣はそれが原因だったのか…

 

 ソノ後、私ハ地下ノ牢ニ監禁サレタ…ソコニハ、他ノ深海棲艦ヤ、艦娘モイタ…

 

 奴らはなんでそんな惨い事を…?

 

 ワカラナイ…タダ、奴ラハ私達ヲ「家畜」トシカ言ッテイナカッタ…

 

 どうして逃げてこれたんだ…

 

 アル時、噂ヲ聞イタ…

 

 噂?

 

 コノ国ニハ、〔仕掛人〕ト呼バレル人達ガ、恨ミ辛ミヲオ金デ晴ラシテクレルッテ…私ハ、タ級ト2人ノ艦娘ト一緒ニ、皆カラ手持チノオ金ヲ持テルダケ持ッテ、隙ヲ見テ見張リ番カラ牢屋ノ鍵ヲ盗ンデ、脱走シタ…ケド

 

 けど?

 

 私達ガ海上ニ出テスグ、奴ラノ監視網ニ引ッ掛カッテシマッタ…ソノ時、2人ノ艦娘ガ私達ノタメニ…

 

 …そうか

 

 追手カラ逃レルベク、私トタ級ハ二手ニ別レタ…ソノ後、私ハ追手ヲ何トカ撒イタガ、モウ走ル力モ無ナクナッテシマイ…

 

 あの岩礁に座っていたのか…

 

 ……アア、後ハ知ッテノ通リダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 梅安は中間棲姫の話を聴き終えると、湯呑みに淹れていた茶を啜ると、執務室のカーテンを閉めて、低い声で言った。

 

「…幾らだ」

 

『エッ…?』

 

「…今どれくらい持ってるかと聞いている」

 

 中間棲姫は懐から金を出した。萎れてはいるものの、確かに金であった。梅安はそれを見ると、それを懐に入れた。

 

「これは俺が必ず仕掛人に届ける。安心しな」

 

『本当ニ…』

 

「ああ、約束する」

 

 梅安はそう言うと、中間棲姫を医務室まで送ると、矢矧を呼び、

 

 

 

 

 

 

 

 

 梅安が、中間棲姫から経緯を聞いている頃とほぼ同じ頃、半右衛門は、茶室でタ級から経緯と、仕掛けの依頼を聞いていた。

 

「よもや特警隊がそのようなアコギな事をやっていたとは…」

 

『ハイ…』

 

 タ級は、懐から金を取り出すと、改めて半右衛門に依頼した。

 

『オ願イシマス!コレハアノ牢獄ニ閉ジ込メラレタ皆ノ恨ミノ全テデス!ドウカコレデ、アイツ等ヲ…!』

 

 タ級の怒りがこもった声を躰で受け止めた半右衛門は、畳に置かれた金を懐にしまうと、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

「その恨み、確かに聞きましたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜中の酉の刻(2100時)、音羽屋の地下にある物置に、半右衛門、梅安、矢矧の3人が集まっていた。

 そこに、日進とその姉にして同じく半右衛門配下の密偵である〔油紙の春日〕が入ってきた。

 

「で、日進。どうだった」

 

「梅安さんの読み通りです。どうやら銑十郎殺しを札屋の元締に依頼した〔起こり〕は、第53方面隊の隊長に間違いありません」

 

「やっぱりそうだったか。情報料は次の仕掛の時に払ってやるよ」

 

「まぁ、それに関してはそれで手を打つとして、これには続きもあるんですよ」

 

 日進は懐からある資料を取り出した。

 

「これはなんです?」

 

「これは一昨年の第53方面隊が第53鎮守府に立ち入り調査をした時の写真だよ」

 

 梅安と矢矧は、写真を一枚一枚捲りながら見ていたが、殆どの写真が見たことのないものであった。

 

「おい、こいつぁ…」

 

「察しの通りです梅安さん。これは全て第53方面隊の保管庫の中に管理されていた未公開の写真です」

 

 写真には、大型の地下牢獄と、拷問機器、更には媚薬の製造工廠であった。更に春日は、一つの書類を出した。

 

「こいつは?」

 

「源蔵さんが私達にと…」

 

 

 

 

 その書類には、驚くべき事が書かれていた。銑十郎と第53方面隊隊長〔近江弥之助〕は、裏で中国マフィアと繋がっており、手当たり次第に手篭めにした艦娘達を人身売買にかけていたのだ。その時の取り分で銑十郎と対立した弥之助は、遂に吉兵衛に銑十郎の仕掛けを依頼したのである。銑十郎が殺されると、弥之助は銑十郎を事故死として扱い、更に第53鎮守府に“形だけの”立ち入り調査を行い、第53鎮守府を表面上“解隊”させたのである。その結果、弥之助は銑十郎の利益と施設すべてをそのまま手に入れ、今度は深海棲艦にも手を出し始めたのである。

 

 

 

 

 報告書を読み終わった梅安と矢矧の心には、静かな怒りの炎が燃え上がっていた…

 

「〔起こり〕は、深海棲艦の中間棲姫と、戦艦タ級。それと、札屋の吉兵衛。的は海軍特別警察隊第53方面隊司令官〔近江弥之助〕大佐、同隊副官〔的場平次〕少佐。仕掛料は、前金として一人頭200万、後金200万の合計800万、御二方、引き受けてくれますな」

 

≪推奨BGM:出陣<M35>(必殺仕掛人より)≫

 

 半右衛門の言葉を聞いた二人は、綺麗に配分された仕掛料を、それぞれ懐に入れると、その場を去った。

 一人となった半右衛門は、薄暗い物置を照らす蝋燭の炎に息をかけると、暗闇が半右衛門を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 仕掛けは、今夜_

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、53方面隊隊舎の執務室では、脱走した中間棲姫と戦艦タ級の捜索結果が報告されていた。

 

「で、まだあの2人は見つからねぇのか!?」

 

 近江は苛立ちながら的場の報告を聞いていた。

 

「隊を総動員して捜索しておりますが、これ以上やると警務隊に露見する恐れが…」

 

「言い訳は聞きたかぁねぇ!その前に奴らを見つけて消すのが貴様の仕事だ!わかったらさっさと行けい!」

 

 近江はそう言うと、的場は執務室から退室した。

 

(折角仕掛人利用して手に入れた利益だ、それをあの時代遅れの警務隊に潰されてたまるかってんだ!)

 

 近江は執務机の棚からブランデーボトルを取り出すと、そのまま飲み始めようとした、その時だった。

 

≪推奨BGM:仕掛人梅安≫

 

「!?な、なんだ?」

 

 突如、隊舎の証明全てが消灯した。まだ消灯時間には1時間半早い…近江は不安に駆られた。近江は館内電話の受話器を取るが、繋がらない…

 

「お、おい…どうなってるんだよ…」

 

 近江は恐怖した…直ぐに机の引き出しにあった94式拳銃を取り出した。しかし、既に時遅しだった。

 

ドシュッ!

「!!」

 

 近江は声にならない悲鳴を上げた。そして、その背後には、黒衣に似た服装をした梅安が、近江の盆の窪の急所に深々と殺し針を刺していた。

 

「己の欲の為に仕掛人使ったツケだ…釣りはいらねぇぜ」

 

 梅安が殺し針を抜いた直後、息が絶えた近江はそのまま崩れ落ちた。梅安は殺し針を懐にしまうと、そのまま暗闇に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…一体どうなっているんだ…」

 

 的場は部下2名と共に外にある電源施設に走っていた。隊舎には今殆どの人員を鎮守府の警備と脱走した2名の深海棲艦の捜索に割いていたため、今この隊舎には的場と近江の2人を含めた4人しかいなかった。この状況で警務隊に突入されたら一溜りもない…それは的場と、他の2人もわかっていた。だからこそ、電源が落ちた原因を究明することは、急務であった。

 的場達が電源施設へ近づいた、その時だった。

 

♪~

 

 突如、後ろから笹笛の音色が聞こえた。3人は音色を背中から聞くと、後ろを振り返った。

 そこには、黒装束に身を包み、腰に長ドスを帯刀した矢矧が立っていた。

 

「誰だ貴様は!」

 

 的場が問うと、矢矧は笹を捨てて、名を名乗った。

 

「仕掛人、軽巡矢矧」

 

≪推奨BGM:仕掛けて仕損じなし≫

 

「…仕掛人?」

 

 的場達は首を傾げると、矢矧は腰の長ドスの柄に手をかけた。

 

「御命を頂戴します。刀を抜きなさい…抜きなさい!」

 

 矢矧は的場達に近づきながらそう言った。的場達は矢矧の闘気に後ずさりするが、すぐに気を取り直した。

 

「やせ艦娘風情が調子に乗りやがって…構うこたぁねぇ、ぶっ殺せ!」

 

 的場はそう言うと、部下2名が軍刀を抜いて矢矧に突っ込んできた。

 

 部下が刀を振り下ろそうとしたその一瞬、矢矧は持ち前の抜刀術で返り討ちにした。

 

「なっ…!?」

 

 的場は恐怖に駆られた…殺される。矢矧の目から出る闘気は、的場の防衛本能を暴走させるに、十分な起爆剤だった。

 

「う…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 的場は軍刀を抜き、出鱈目にぶん回しながら矢矧に突っ込んだ。しかし、それが的場の寿命を縮めた。

 

ズバッ!

「ぐぇっ!」

 

 矢矧は一瞬の内に的場の躰を横に斬り裂くと、トドメとばかりに的場の心臓を貫いた。

 

ドスッ!

「ガハッ!」

 

 的場は吐血すると、すぐに息絶えた。矢矧は的場の躰に刺したドスを抜くと、刃にこびり付いた血を払い落とすと、ドスを鞘に収め、暗闇に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから約1時間後、源蔵率いる海軍警務隊第1夜戦特化隊が第53鎮守府跡地並びに第53方面隊隊舎に突入、およそ200人近い艦娘と深海棲艦を救出、司令官及び副官他2名を除く第53方面隊所属隊員を停戦条約及び軍規違反で拘束。数日後、第53方面隊が秘匿していたものの数々の所業が警務隊による調査で判明。軍令部は、第53方面隊の解隊及び再編成を決定した。

 また、死亡した近江弥之助少将は、死亡する数分前にアルコール飲料を摂取していた事が判明し、源蔵の手により『急性アルコール中毒による病死』として片づけられ、的場以下3名は『抵抗の末止む無く殺害した』として処理された…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪推奨BGM:必殺仕掛人エンディングテーマ(M21)≫

 

「ねぇ提督」

 

「ん?どうした陸奥?」

 

 入渠施設に設けられた鍼療治施設で、梅安の鍼を受けていた陸奥が、妖艶な口調で梅安に問いかけた。

 

「提督って、世間では大層な女“ごろし”なんですってねぇ~」

 

「ほほう…誰がそんな酷い噂を、青葉ですかな」

 

 梅安は答えると、陸奥の右肩に軽く刺した治療用の鍼を抜くと、消毒液を入れたボールに入れた。

 

「みぃ~んな知っているわよ」

 

 陸奥は妖艶な口調のまま、そう答えた。梅安はそれを聞くと、手を洗い、顔を陸奥の耳に近づけた。

 

「お答えしましょうか…でもね、女なら誰でもってわけじゃぁ、ないんですよ」

 

 梅安の耳打ちを聞いた陸奥は、下着だけ身に付けた上半身を梅安に向けた。

 

「提督ぅ。私みたいな女人(ひと)じゃぁ、駄目なのかしら?」

 

「へっ?」

 

 梅安はとぼけたが、陸奥はそんな梅安に抱き着いた。

 

「えっ、ちょっ不味いぞ陸奥こんな真昼間から夜戦(意味深)なんて…」

 

「今日は皆遠征と演習で出払ってるから、大丈夫大丈夫♡」

 

 そのまま梅安と陸奥は、ベッドに横に倒れた。

 

 

 

 

 その日の夕方、遠征と演習から帰ってきた皆が見たのは、妙に顔にハリがついた陸奥と、酷く寝不足な梅安であったという…

 

 

 

 

 

 

 

 

艦これ仕掛人「仕掛けて仕損じなし」

 

終劇

 

 

 
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