『帝記・北郷:十八~二雄落花・五~』
笛の音が聞こえる。
季節は春。桃の花が咲き乱れる庭園の片隅。石造りの椅子に腰かけて一人の男が笛を吹いていた。
その音色は流々として朗々。聞く者の三魂を溶かし七魄を奮わせる。
ふと。笛の音がやむ。
朱色の唇から笛を離し、男は切れ長の瞳を庭園の入口に向けた。
「あら、やめちゃうの?」
「陛下…」
優美な笑みを口元に浮かべ、陛下と呼ばれた桃色の髪の少女は男に歩み寄るとその隣に腰を降ろす。
「あと陛下は止めなさいって言っているでしょう?さもないと私もあなたの事を龍志郎君と呼ぶわよ」
「…それは止めてくれ華龍」
苦笑を浮かべる男にしてやったりというように微笑む少女。
どこかで鶯の声が聞こえた。
声のした方へ視線を移しながら、龍志郎は華龍に問う。
「それで…何の用だい?」
「大切な軍議をすっぽかしてこんな所でぐーたらしている誰かさんに軍議で決まったことを教えてあげようかと思ってね」
「ふ、秦王自らとは恐れ入る」
「そう思うなら軍議に出なさい」
龍志郎は聞こえなかったかのように春風に目を細めた。
そんな彼に姿に華龍はやれやれと…しかし決して不快ではなさそうに肩をすくめ。
「まあ良いわ。我が国はいよいよ韓侵攻の軍を出すことにしたわ…いよいよ天下への挑戦が始まるわよ」
「いよいよ…か。君の御祖父様(おじいさま)が思い描き、君が受け継いだ夢の一歩。君の望む大きな法の元に統一された秩序ある世界の序章……しばらくはこうしてのんびりも出来ないな」
「当たり前よ。天の御遣い殿にもしっかり働いてもらうんだから」
「善処しよう」
ふと。華龍の顔が暗くなる。
それに気付き、龍志郎は怪訝そうな顔をして。
「どうしたんだ?急に顔を曇らせて」
「ねぇ龍志郎。天下が統一されたら…あなたは天の国に帰るの?」
「ふ、なんとも気が早い……」
そう言ってごまかそうした龍志郎だったが、華龍の顔から何時ものからかうような笑みが消えている事に気づき。
「…さて。この世界に来たのもそもそも自分の意思じゃない。天下が君の手に収まった暁に俺がどうなるのかも解らない…ただ一つだけ言えるのは」
そっと龍志郎は華龍の頭に手を置く。
普通ならば無礼と言われ首を刎ねられても仕方のない所業。だが華龍は何も言うことなくその瞳に龍志郎を映し続ける。
「あの世界にはもう俺の居場所は無い…俺の居場所はここだけだってことだ」
それに。と龍志郎は言葉を繋ぐ。
「君に優しい魔王なんてものを目指させてしまった責任もとらないとな」
「……当たり前よ」
その表情にいつもの嗜虐的にも見える余裕を戻し、華龍は頭の上に置かれていた龍志郎の手をそっと取ると、両手で柔らかに包む。
長きに渡り続いた混沌の時代を纏めてみせる。たとえ後世に魔王と恐れ罵られようとも、自分の力で天下を収め次代に繋ぐ。
そんな彼女の意思を揺るがしてしまったのは目の前にいる男。
秦王といえたかが人間。どれほどのものを背負おうとも人を越える事はできない。そのことを教え、限りある人生の幸福を享受する権利があるのだと説いた、かつて生きることを諦め、今また生きる価値を見出した男。
「責任をとって…こき使ってやるんだから」
「了解…女王陛下の御心のままに」
「あ、勿論女としてもだからね」
「…善処しよう」
「ええ、善処しなさい」
空いた手でガリガリと頭を掻き視線をそらす龍志郎に、そんな彼にクスリと笑い少しだけ握る手の力を強くする華龍。
この数年後。二人の愛した世界は壊れ、愛する者と居場所を失った青年は人を辞めた。
交わされる剣戟の音。駆ける馬蹄の響き、怒りも恐れも無いただ叫ぶ為だけの叫び、そして生命が奏でる最後の断末魔(メロディー)
先程までそう遠くない所から聞こえていた戦場の喧噪が、今は酷く遠く聞こえる。
誰もが言葉を発さない。いや発せない。
一刀達の上空十数メートル上に佇むその男は、足場も羽もなく中空に有りながら酷く冷たい深緑の瞳を輝かせていた。
視線の先にいるのは琥炎。何も言わず、ただ耳まで裂けんばかりの笑みを浮かべて深紅の瞳で男を見上げる。
「………」
静寂を破ったのは男…厳密にはその手が軽く掲げられ振り下ろされると共に響いた轟音。
「んなっ!!」
「ぐう!!」
吹き荒れる土煙と突風に、一刀達は顔を腕で庇い足を踏ん張ることで何とか耐えた。
手を挙げ降ろす。たったそれだけの動きで放たれた旋風は先程まで琥炎の立っていた地面を大きく抉り取った。
「今のが…旋龍牙……!?」
武器を用いず溜めもほとんどなく自分をはるかに超える威力のそれを放った男に、雪蓮は戦慄する。
それと同時に、別段急ぐこともなくひらりとそれをかわして再びニヤニヤと笑う琥炎を土煙りの合間に見て確信する。
先程までの戦いなど、遊戯に過ぎなかったという事に。
「…北郷様」
煙が晴れるとそこには、一刀達を庇うように彼等に背を向け琥炎と相対する男の姿があった。
「怪我はありませんか?」
「ああ。雪蓮達が守ってくれたよ」
「そうですか…それは良かった」
心底ほっとしたように小さく息を吐く男。
その姿に、一刀は酷く懐かしい気持ちとなる。
一刀が男と最後に会ったのは数ヶ月前。だが一刀にはそれが何年もの長い月日に感じられた。
二人が始めた出会ったのですらほんの二、三年前の話。一刀の一生の中でも男との付き合いは長くもないが短くもない。そんな長さ。
密度においても、華琳達と過ごした日々には遠く及ばない。
なのにどうしてこうも一刀は男を求めたのだろうか。
(ああ、そういうことか)
ふっと一刀は笑い、目の前の男の背を見る。
男が一刀に惚れ込んだのと同じように、一刀もまた男に惚れ込んでいたのだ。
臣下として、同士として、友として。
「…陛下。私のこの姿に対して色々と問いただしたい事もおありかと思います」
琥炎に視線を向けたまま言葉を紡ぐ男。
「この事に関してはあなたに首を刎ねられてもしょうがないこと、私は人間だとあなたを欺き続けていたのですから…ですが、願わくばその責任はこの闘いが終わった後に……」
「龍志さん」
男―龍志―の言葉を遮り、一刀が口を開く。
首を回して彼を見た龍志に、一刀はビッと親指を上に突き出し。
「あなたが何だろうと龍志さんは龍志さんそれだけだよ…存分にやっちまいな」
「…はっ!!」
短く鋭く応え、龍志は碧龍剣の片割れを抜き放つ。
輝く鋼の光沢、そして鍔元に嵌め込まれた碧玉。
抜いた剣をだらりと下げる無形の構えを取る龍志に、ニヤニヤと笑っていた琥炎は嬉しさを抑えきれないというかのように興奮した様子で。
「フフフ…良い闘氣、殺気、鬼気!!やっと本気を出してくれましたね龍志さん!北郷一刀を襲った甲斐があるというものです!ああ、本気のあなたと刃を交えるのは何年振り、いえ何十年振りでしょうか!!あはは、興奮しすぎて全身の穴から血が噴き出そうですよ!!」
そう言う琥炎の眦から伸びる、一筋の紅い線。
それが歓喜の血涙だと気づき、一刀達は思わず一歩引いていた。
そんな中龍志だけは見飽きたというかのように肩をすくめ。
「御託は結構。望みどおり本気を出してやるから…お前も気を抜くなよ?」
「当・然!!」
刹那。二人の姿が消えたと思うが否や、金属同士のぶつかる激しい音が響き再び先程と同じ位置に二人が現れる。
二人の様子に別段変わった所は無い。ただ二人の右手に握られたそれぞれの獲物がヂーンと微かに振動している以外には。
「な、何が起こったんだ?」
「互いに地を蹴ると共に交差しながら三合。それから再び距離をとって五合…私が見れたのはここまで、後は速すぎて二人が寄ったり離れたりする以外は全く解らなかったわ」
一刀の疑問に答えたのは、副長からもらった沿え木で折れた腕を固定している雪蓮だった。
「まったく…あんなのに勝てる気でいたなんて…今思えばゾッとするわね」
笑う雪蓮の顔が引き攣っているのは痛みのせいだけではないだろう。
想像をはるかに超えた龍志と琥炎の戦いに、凪も副長も言葉が出ない。
「流石…武芸は以前と変わらず、いやむしろ上がっている。まったく底の知れない方だ」
「教え子が出来たものでな…そこから学べる事もあるものさ」
銀髪の愛弟子の姿を思い出し、ふっと龍志は笑う。
「それは良い事を聞きました。機械があれば私も弟子でも取りましょうかね」
「そうだな。お前だったら案外良い師になれるかもな」
「それはどうも…では、お次は氣の勝負と行きましょうか!!」
言うが否や、剣を持たない左手を甲を上にしてアンダースローの形で勢いよく前方へ突きだす琥炎。
その手を中心に左右対称の炎の列が大地を走る。
「荒野を行く彼岸花の葬列(リコリス・パレード)」
続いて右手の刃の切っ先を龍志に向け。
「煉獄に咲く真紅の薔薇(ヘル・ローズ)」
その切っ先から一閃の紅い矢が放たれる。
炎で左右の逃げ場を奪い必殺の一撃で相手を仕留める。無論、上空という逃げ場はあるが、その程度の事は琥炎も予想済みのはず。
龍志は慌てることなく琥炎と同じように碧龍剣の切っ先を前方に向け。
「饕餮の胃袋……」
放たれた氣団が彼の前方数メートルで自ら破裂する。
そこに炎と矢は周りの土の一部ごと吸い込まれていき。
どしゃ。
土だけが再びあるべき場所に帰った。
「ふふふ、刺激、興奮、享楽、喜悦!!やはり死合(しあい)は良い!!ぞくぞくしますよ!!」
「……先程も聞いたが。一体お前をそこまで闘いに駆り立てるものは何だ?闘争は確かに人の業。だがそれだけでそこまで命の応酬に執着する理由にはならんだろう」
「そうですね…私を殺したら教えてあげますよ」
「…おいおい」
再び互いに地を蹴り剣戟を交わす。
今度は先程のような高速ではない。一刀でも目視できる程度の速度だ。
速度よりも精度。そして威力を重視した技の応酬。
捌き、受け、流し、避わし、隙を見ては必殺の一撃を放つ。
並の武将であればすでに首が五十は転がっているであろう激闘。見ている一刀の掌にもしらずしらず汗がにじむ。
「……妙ですね」
不意にそう言ったのは近衛副長だった。
「妙って…何がだい?」
「はい。先程から龍将軍と琥炎の動きを見ていたのですが、どうも龍将軍の動きにキレがないような……」
「それは私も思ったわ」
横から雪蓮も口を挟む。
「あの二人の実力は全く持って互角…のはずなのにさっきからほんの少しだけど琥炎が押しているの。単純に実力差とも考えられるけど……なんか腑に落ちないのよねぇ」
「それは得物の差ですよ」
背後からの突然の声に、一刀達はぎょっとして振り返る。
そこにいたのは九江港の制圧をしているはずの新魏軍筆頭軍師・蒼如月。
ぺこりと頭を下げ、蒼亀は一刀へ謝辞を述べる。
「申し訳ありません。九江港の制圧はすぐに終わったのですが、事後処理に追われ陛下の危機に間に合う事ができず」
「いや。それはいいよ。ちなみに蒼亀さんがどうやってここに来たのかもとりあえずはいい。それよりも得物の差って言うのは……」
「言葉通り。二人の持っている武器の差ですよ」
言われて一刀は龍志と琥炎、それぞれの武器を改めて見る。
龍志は言うまでもなく碧龍剣、つまり長めの直剣。対する琥炎は細身の長刀。
そう、まるで一刀の白狼のような……。
「ひょっとして琥炎の武器って!」
「ええ。陛下と同じ日本刀、それも名匠の鍛えた一本です…となればもう答えはお分かりでしょう?」
問われるまでも無い。今まで一刀達は琥炎の武器を単に細くて長い刀程度にしか思っていなかった。故に二人の武器の強度は同じだと思っていたのだ。
しかしそれが碧龍剣と日本刀となれば話は変わる。
そも、両刃の剣というのは『斬る』ことよりも『突く』ことに長けた武器だ。加えて刃を両方に持つが故にどうしても強度が片刃の武器に比べて劣る。それを補うには切れ味を犠牲にしてでも刀身を厚くしなければならない。
だが碧龍剣は突くのみならず斬ることにも長けた剣だ。そして両刃とは思えない程の強度を持っている。とはいえ斬れるようにする為にどうしても刀身自体は薄い。
一方日本刀は細身であるにも関わらず高い硬度を持ち、かつ斬ることにも突くことにも長けた武器である。
こんな話がある。かつて武器の研究をしている学者が集まり、近接武器最強の武器は何かを論議したことがあった。
槍、斧。多くの武器があげられる中である学者が提示したのが日本刀だったという。
しかし他の学者達は日本刀を見て首をかしげた。こんな細い剣がはたして実戦で使えるのか?と。
だが日本刀が幾重にも藁を巻いた太い竹をいとも容易く両断した光景を見て、学者達は度肝を抜かれたという。
火山が多い故に良質の鉄に恵まれ、たたら製法という独自の製鉄技術により純度の高い鉄を作り、さらに柔と剛を兼ね添えるよう洗練された技術で作られた武器・日本刀。
量産物の地刀ならともかく、名匠の作った刀はそう易々と折れず、仮に曲がったとしても数時間で元に戻るという。
そして琥炎の持っている者は恐らく彼が戦に相応しいと認めた名匠の逸品。
「義兄は普段は氣の力である程度剣を保護していますから、関羽の青龍偃月刀や呂布の方天画戟を相手にしても充分に渡り合えるのですが…流石に今回はきついかもしれませんね」
「だったら他の武器を…」
「いえ、そもそもあの剣自体が特別なものです。そこらの武器では義兄の力に耐えきれずに自壊してしまいます。あの大身槍ですら義兄は全力が出せないのですから」
焦る雪蓮達とは対照的に蒼亀は酷く落ち着いた様子で龍志と琥炎の戦いを見つめている。
その時ふと、一刀はあることに気づき蒼亀にこう尋ねた。
「それよりも蒼亀さんは加勢しなくていいのかい?」
「あれは義兄の決めた道…人であるという事にこだわり続けた義兄が初めてあなたの前で人であることを放棄したのです……その覚悟を私は汚せません。私の出来る事はちょっとした手助けだけですよ」
しかたのない義兄です。といった風に苦笑しながら首をちょいと傾ける蒼亀。
だが一刀は気付いていた。そう言う彼の掌は、血の滲まんばかりに握りしめられているという事に……。
「それで、そのちょっとした手伝いってのは?」
「それは…」
「龍志!!」
雪蓮の叫びが一刀と蒼亀の会話を断ち切る。
「ちぃ…」
琥炎の一撃を捌きそこなったのか、体勢を崩した龍志が地を蹴りバク宙をしながら大きく距離をとる。
それを逃さず琥炎も地を蹴り龍志を追う。
「良い位置ですね…義兄さん!!」
叫ぶとともに蒼亀の袖の中から何かが放たれる。それは空中で逆さになることによってちょうど一刀達を視界にとらえていた龍志めがけて飛んで行った。
「蒼亀!…かたじけない!!」
飛来したそれを龍志は左手の義手でしっかりと掴む。そして空中で身を捻り、迫り来る琥炎をそのまま迎え撃つ。
ザンッ
「む…」
「ふ…」
空中で激突するや、そのまま後ろへと弾かれるように飛ばされる二人。
危なげなく着地した二人のパックリと裂けた頬から血が滴り落ち、二人の美貌をおぞましくも鮮やかに彩る。
「雌雄一対…比翼の剣とも呼ばれし碧龍剣の真価は二刀にあり、でしたね」
「そういうことだ」
龍志の左手に握られているのは右手のそれと全く同じ剣。そう、幽州にあるはずの碧龍剣の片割れだった。
「持って来ていたのか蒼亀さん…」
「厳密には取り寄せた、ですがね。琥炎が敵陣にいると聞いて入り用になるかと思ったもので」
「でも、どうやって袖に入れていたんだ?」
「禁則事項です」
そんな妙に気の抜けた会話を新魏の主と軍師がしているうちに、もう龍志と琥炎は動き始めていた。
「しっ!!」
「ふっ!!」
片や双剣、片や日本刀。剣と刀という点は変わらないが、戦況は大きく違う。
確かに日本刀の強度は見た目に反して高い。しかし武器全体で見ればその上は多い。
日本刀最大の特徴は強度よりも優れた殺傷能力だ。鉄棒と打ち合い続ければいずれ折れるし、大斧や大刀とでも結果は見えている(両者の品質次第では話も変わるが)
故に龍志と琥炎のような実力が伯仲した者同士では捌きや避わしの技術が重要なのだ。しかし先程は強度に勝る琥炎が捌き、避わしに加えて受けも守りに取り入れていたため龍志はどうしても決定打に欠けていた。
しかし双剣を龍志が握った今それは一変する。優雅にして変幻自在な龍志の剣技の前に不用意な受けはそのまま死につながる。
つまり琥炎も受けを封じられたのだ。
二人の猛者の命を燃やすかのような一騎討ちはすでに人のそれを超えている。いや、厳密には二人はすでにただの人間ではない。しかしその光景はそれを差し引いてもまるで……。
「美しい…」
「なんと見事な…」
感嘆の声を漏らす凪と副長。
龍志と琥炎。洗練された武者二人の戦いは見ている者にまるで龍と鳳凰が舞っているかのような幻想を思わせるほど美しい。
「はぁ…はぁ…タフだなお前も」
「ふぅ…朝から戦場を駆けまわり続けているあなたに言われたくはありませんね」
幾度目かの応酬の後、二人は距離を取り対峙する。
日は既に黄昏。霧に紛れた朝駆けから始まった二人の戦いは若干の休憩を得て一騎討ちという形に落ち着きながらすでに半日近くが経過している。
「まあ私は助かりましたよ。本来、持久戦ならあなたに分がありますからね」
「ふ。言ってくれる」
軽口をたたきながらも相手に切っ先を向け続ける両者。
間もなくあの美しく荒々しい殺戮の舞踏が再開されるのだろう。
そして両者の具合からいってそれが最後の舞い……そう思う一刀達もまた固唾を飲んで二人を見守る。
すでに新魏呉連合軍と蜀軍の戦は終局を迎えつつあり、華雄を初めとする部隊の多くは追撃戦に入っている。
もはやこれは国と国の戦ではない。龍志と琥炎。それぞれの信念を守るための闘い。
龍志は北郷一刀という信念の象徴を護るため、琥炎は闘争そして死という存在意義の為。
「……止めましょう」
不意にそう言って琥炎が刃を降ろした。
~続く~
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帝記・北郷:二雄落花いよいよクライマックス
超越者二人の闘いの行方は?
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