第2章.反董卓連合編 2話 董卓達との再会
ドドドドドドッ
約50騎の騎馬隊が疾駆していた。
「一刀、しっかりしろよ。洛陽が見えてきたぞ。」
「……………ああ。」
一刀は殆ど死んでいた。落馬しないように馬に体を縛り付けられた状態で。
「まったく、軟弱な奴だな。これくらいでヘロヘロになるなんて。」
「………(うるへ~、おまえらと現代人をいっしょにするんじゃね~)」
後方からは疾駆する音に混じって笑い声が聞こえていた。………
洛陽に到着した馬超達は大至急月達に会いたい旨を告げて今玉座の間へ通されていた。
「おい、一刀。シャキっとしろ。着いたぞ、お前の出番だろう。」
青白い顔で馬超の肩を借りてフラフラと歩いていた一刀は扉の前に立つと頬を2度両手で叩き、自分に活を入れた。
「よっよし。行くぞ。」
扉を開けて中に入るとそこは涼州では考えられないくらい豪奢な飾りを施された広間だった。
おのぼりさんのようにキョロキョロしていた馬超ではあったがなじみの顔を見つけ、声をかけた。
「月、詠、霞。ひさしぶりだな!」
「どうも、おひさしぶりです。」
「翠ちゃん、一刀さん。お元気そうでなによりです。」
「月、翠が元気なのは当たり前だけどこいつ死に掛けてるわよ。……」
董卓は賈駆に指摘され苦笑していたが霞と呼ばれていた女性に気付き一刀に紹介した。
「一刀さん、大丈夫ですか?あのこちらは張遼さんと仰ってとっても強い武将さんなんです。」
賈駆の指摘通り半ば死に掛けていた一刀は頭が回らず思ったことをそのまま口に出してしまった。
「……張遼?張文遠か……神速を謳われた将だからな、そりゃ強いさ。」
それを聞いた董卓、賈駆、張遼は驚いた顔になり賈駆は馬超に問いかけた。
「翠、こいつに霞の字教えたの!?」
「いや、教えてないよ。多分知ってたんだろう?」
「知ってた?意味わかんないわよ!」
「あたしもよくわからないからこいつは天の御遣いだからということで納得してくれ。」
「翠はあいかわらず脳筋ね。いいわ、後でこいつに聞くわ。」
驚いていた張遼であるがとりあえず納得したのか一刀の肩をバンバンと叩きながら自己紹介した。
「にゃはは、天の御遣いなんちゅうのがほんとに居るなんてな~。よっしゃ名は張遼、字は文遠、真名は霞や。よろしゅうな。」
「はは……名は北郷一刀、字と真名は無いんで一刀と呼んでくれ。………(うっぷ)……詠、余り持ちそうにないから手短に行かせてもらうよ。馬一族は董卓殿に味方させてもらうことにした。俺達50騎は勝つ為の下準備に先行してきた。本隊1万騎は蒲公英が率いて後からくる。菖蒲さんはある人物をこちらに引き込む為、別行動をとってもらってる。………うー、やべえもう持たん。最後に……1つ頼みがある。菖蒲さんの手助けとしてある人物宛に今回のことの真実を告げた上でこちらに付くよう勅令を出してもらってくれ。その人物……は……平原の相、劉玄徳。中山靖王劉勝の末裔だ……」
言い終わると一刀は気絶してその場に倒れた。
当然騒ぎになったのだが涼州より強行軍に次ぐ強行軍で来たことにより、それが原因の疲労と思われ誰も気にしなかった。実際次の日には一刀はけろっとしていたので本人も気にしなかったのであるが、後になって馬超は悲劇の前兆だったのではと悔やむことになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日の朝
一刀が寝かされている部屋の前に馬超が立っていた。
「勅令は母様のところに持って行かせたし、一刀の様子でも見るか。……」
なぜか馬超は顔を真っ赤にさせ、言い訳のように何かをブツブツと言い始めた。
「べっ別にあいつのことが心配だからとかじゃないぞ。……そうあいつは家の軍師なんだ、しゃんとしてもらわないと困るから見に来ただけで……ああーー、もういい一刀入るぞ!」
意を決して中に入る馬超であるが中は静かで一刀はまだ寝ているようである。
「なんだ、まだ寝てるのかよ。」
一刀がまだ寝ているのを見た馬超はホッとした表情になり一刀が寝ているベッドへと歩み寄る。
「……すーすー……」
近寄った馬超は一刀の寝息が聞こえたので寝顔を覗き込んで見る。
「どうやら大丈夫のようだな。穏やかな寝顔してら、心配かけやがって……突いてやる。」
穏やかな顔で寝ている一刀を見た馬超はいたずら心を刺激され頬を突いてみた。
「んっ……んん……」
突かれた一刀はいやいやするように顔を振る。
「はは、バカやろう心配かけやがって……」
続けて突かれた一刀は逃げるように寝返りを打ち、馬超と一刀の間にそれなりのスペースができる。
「ふぁ~~、まだ朝早いし、ちょっと横になるか。」
一刀のことが心配で余り眠れなかった馬超はホッとしたことで気が抜けたのか急に眠くなり頭が回らず何も考えずに一刀の横に寝転んだ。
「ふぁ~~、……ちょっとだけ……すーすー」
しばらくして……
「月~、それほんとに信じてるの?……ってここね。起きてる?入るわよ。」
扉を開けて入っていったが中には誰も居らず、どうやら一刀はまだ寝ているようで寝台で寝ているのが見えた。
「まだ寝てるの?強行軍だったのはわかるけど軍議をやるからそろそろ起きて………」
一刀を起こすべく寝台に歩み寄った賈駆だがそばに寄ったところで止まった。
「詠ちゃん?どうしたの。」
「なっななな、なんで翠がいっしょに寝てるのよ!」
「んっ、……うるさいな~もう少し寝かせて……」
さすがにすぐ傍で大声を出されれば目が醒めるようで一刀は目を開けるのだが目の前には翠の寝顔の弩アップ。
一刀は混乱した。
「えっ、なななんで翠が?俺昨日どうしたっけ?……ん~洛陽に着いて月達に会って……それからどうした・(ビクッ)」
なにやら怒気のようなものを感じた一刀は横を向く。そこには怒りのオーラを漂わせた賈駆がいた。
「あ・ん・た・ね、来た早々の他人の家でいきなり女を寝台に連れ込む?この~女の敵!あんたなんか天の御遣いじゃない!チ〇コの遣いよーーー。」
ゲシゲシと一刀を殴り始める賈駆。
傍でこうやって騒いでいれば馬超も目を覚ます訳で
「んっ、なんだよ煩いぞ………なっなななんであたしが一刀と寝てるんだ!このエロエロ魔神!」
馬超のパンチ炸裂。
「ぐはっ……(俺なにも?してねー)」
そして
「えっと……」
急な展開についていけず唖然としている董卓だった。
では気を取り直して軍議です。
華雄や呂布等、一刀と初顔合わせの者達との自己紹介が終わると軍議が始まった。
「じゃあ顔合わせもすんだようだし軍議を始めるわ。袁紹達諸侯連合にどう対するかだけど、様子を探らせに行かせた細作が帰ってきたわ。それによると袁紹側に付いたのは一族の袁術の他、陳留の曹操、徐州の陶謙等で総数約20万とのことでぞくぞくと集結中らしいわ。こちらは僕達が2万5千、翠達が1万の3万5千。約6倍ね。頭が痛いわ……」
「詠、何を言うか!所詮諸侯連合といっても寄せ集めの烏合の衆ではないか。我が武をもって蹴散らしてくるわ!」
華雄が勇ましく言うものの賈駆は渋い顔で
「そりゃあんたの武は知ってるし当てにしてるけど6倍よ!6倍。2,3倍なら汜水関と虎牢関があるんだからなんとかなるけど……」
董卓や賈駆達は数の暴力の前に暗澹たる気持ちになっていた。
「おいおい詠、いつも強気のお前らしくないぞ。なんであたしらが来たと思ってんだよ。」
「はぁ~、翠はお気楽ね………ってそう言えば昨日の勅令はいったいなんなの?あんた達、なにか策でもあるの?」
「ああ、それについては一刀から説明させるよ。今回の件に関しては一刀が軍師として全てを任されているんだ。」
「ええーこいつが?」
「あいかわらず酷いな。勅令については昨日言った通り劉玄徳という人物をこちらに引き込む為の切り札みたいなものだよ。」
「確か中山靖王の末裔っていったわよね。聞かない名だから小勢だと思うけどどういう意味があるの?」
「劉玄徳自身はこの戦いの後に意味を持ってくるんだけど、その配下にいる武将は今回の戦いに大きな力となるはずだよ。呂布殿には負けるけどこの大陸で5本の指に入るくらいの強さだよ。後、北平の公孫賛と昵懇の仲だからうまくいけば公孫賛も引き込めるはずさ。」
「んふふ、当たり前なのです。呂布殿は天下無双なのです。」
「……………」
「呂布っちが強いのはわかっとるけど、そうかそんなに強いんか。来たら手合わせしてもらわんとな。」
「おい、張遼。私が先だぞ。」
一刀の話にわいわいと騒ぎ出す武将達+α。
「はは、ほどほどにね?……翠もだぞ。唯、この戦いが終わるまではそんな暇はないと思うよ。」
「勅令についてはわかったわ。策はどうなの?よくよく考えてみればあの菖蒲様が勝ち目のない戦いに一族を連れてくるとは考えにくいものね。」
「その前に詠はどう戦うつもりだったんだ?」
「どうもこうも、汜水関、虎牢関で防衛して補給切れを待つしかないでしょう?」
「まあ、確かにこの兵力差だ。普通はそうだろう。でもそれだけじゃ駄目だ。どこかで最低1回はがつんっとかましてやらないとあいつら勢いに乗って洛陽まで来てしまうぞ。」
そう一刀が賈駆を問い詰めると賈駆は悔しそうな顔になった。
「そんなのわかってるわよ!でも約5倍の兵力差で決戦なんかしてごらんなさい、奴らに損害を与えることができてもこちらはそれ以上の損害を受けてしまうわ。無理よ。」
賈駆の悲痛な叫びに董卓軍の将達は辛そうな顔になり俯いてしまう。
だが一刀は自信に満ちた顔で皆に声をかける。
「ははは、皆、20万という数に囚われすぎているぞ。」
一刀の言に賈駆は怪訝な顔になる。
「?、どういうことよ。」
「20万という塊で考えるから手が無いんだ。3分の1に分断して6,7万だったら?」
「3分の1?どういうこと。」
「俺の世界の昔の軍人の言葉でこういうのがある。敵の3分の1を武力で3分の1を情報操作や謀略で無力化すれば残りの3分の1は自ら崩壊するってね。」
一旦言葉を区切り、周りを見回して見るが馬超以外はよくわからないといった顔だった。
「つまりだな。予め奴らに脅しをかけておくんだよ、皇帝がいる洛陽に攻め込むとは大逆の罪人として極刑に処するぞってね。あっ後俺の天の御遣いってのを使って天罰が下るぞってのもいいかな。」
それを聞いた張遼は怪訝な顔で聞いてきた。
「いやそないなことゆうても奴らの方が遥かに大軍なんや。効果ないんとちゃう?」
張遼の言うとおりで皇帝の権威は既に失墜しており諸侯にとって自分達が権力を得る為の道具でしかなくなっていたし、天の御遣いにしても世間的には単なる噂話との認識しかなかったので圧倒的に有利な方に脅しになるとは思えなかった。
「はは、これは布石だよ。そうやって脅しをかけた上で3分の1を分断して殲滅したらどうかな?それもできる限り派手に。信憑性が出てくるだろ。」
そこまで聞いた賈駆はなるほどといった顔になる。
「なるほどね、確かにそこまで行けば追い討ちと逃げ道を作ってやれば脱走兵や離脱する諸侯が出てくるわね。そうなれば残った奴らは虎牢関や洛陽の城壁で撃退できる。」
「6,7万ならこちらの2倍以下。向こうは歩兵が殆どに対しこちらは大半が騎馬隊、十分可能性はあるだろう?それに家の秘密兵器を供与するよ。涼州の騎兵は中央の騎兵より精強だけどこの秘密兵器を装備すれば中央の騎兵の倍くらいの威力を持てるはず。」
一刀の策に希望が持てたのか各将の顔が明るくなるが陳宮がちょっと待てとばかりに立ち上がる。
「ちょっと待つのです。今の話は分断できたらという仮定の話なのです。どうやって分断するのですか?奴らだって馬鹿じゃない、わざわざ自分達で軍を分けるはずがないのです。」
「どうやって分断するか、それは………」
ちょいちょいと手を振って全員に集まるように指示する。
「なんなのよ。」
「これけっこう重要なことなので絶対に外に漏れないようにしたいんだ。」
頭を集めてヒソヒソ話。
「なんやてーー」
「しー、静かに。」
「わ、わかった。しかしなんちゅうこと考えるんや。」
「よくそんなこと思いついたものなのです。」
翠を除いた全員が驚愕の表情をしていた。
「……天の御遣いというのは本当なのかもね。この国の人間にそういう発想は中々できないわ。」
「おっ、名軍師賈文和に褒められるとは光栄の至りだな。まあ、分断する際に曹操の軍を序に分断できれば上々なんだけど。こればかりは運だな。」
「あんた、かなり曹操を警戒してるのね。まあ、わからないでもないけど。」
「なんせ乱世の奸雄だからな。この戦いもそうだけどこの後の戦いでも一番警戒すべき人物だよ。」
この後、準備の割り振り等を決め、軍議は終わった。
<あとがき>
どうもhiroyukiです。
今回、諸侯連合とどう戦うかということについて少し書いてみました。
作中で一刀が語った3分の1云々というのはなんという小説かは忘れたのですが、旧ソ連の将軍?(すみません、名前思い出せません。だれか分かる方いたら教えてください。)が考えた戦理論だとして出てたのを使わせてもらいました。
こんないいかげんなものを使い、お叱りを受けるかもしれませんが内容的には納得できると思い使うことにしました。
今後の更新についてなんですが会社の都合でアパートを引っ越すことになりゴタゴタしており少し遅れるかもしれません。
なんとか週1更新を最低でも維持したいとは思ってますので今後とも宜しくお願いします。
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第2章2話です。一刀と馬超が洛陽に行きます。