No.85711

『かりんの休日』

めずらしく短編です(’’
作者も大好きな華琳にお休みをあげたお話。

2009-07-21 17:04:39 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:7748   閲覧ユーザー数:6271

 

 

 

 

 

 

晴れた青空の下。

 

気候から言えば、この季節は日本でいうところの夏だ。

 

そんな暑い中でも、街はいつも通り活気に溢れていた。

 

「なぁ、華琳」

 

「あら、何かしら?」

 

隣にいる覇王様に声をかける。

 

この状況もイマイチよく分からないが、他にもっと見過ごせない状況があるのだ。

 

「いいのか?」

 

「何のこと?」

 

「いや、だって…」

 

街を歩きながら、俺はばれないように後ろを注意する。

 

「華琳さま~~…」

 

「華琳さま…」

 

春蘭と桂花が建物の影から、こちらを眺めている。

 

いや、あれは睨んでいるんだろうな…主に俺を。

 

今日は華琳が休みの日なのだ。

 

ここのところ華琳は内政など、かなり忙しく、休みが取れたのもかなり偶然と言えば偶然だった。

 

そんなわけで、今日は魏をあげて華琳を休ませることとなったのだ。

 

ちなみにそれ自体は華琳には秘密である。

 

だが、そんな華琳が言い出したのが…

 

『明日一日、一刀をもらうわ』

 

と言うことだった…。

 

当初仕掛けようとしていた計画は完全に白紙となり、まったくの無計画で迎えた当日。

 

 

「………一刀、私と歩くのが嫌なの?」

 

突然華琳がそんなことを言い出した。

 

「え?いやいや、そんなことはないさ。俺だって嬉しいよ」

 

「ならどうして、さっきから後ろばかり気にするのよ」

 

「だってさ…」

 

気になるんだからしかたない。

 

桂花は怨念じみているし、春蘭の殺気だって本気だぞあれ。

 

「………………」

 

華琳の顔色が急に不機嫌に変わっていく。

 

「あ、いや、なんていうか…」

 

「だったら…」

 

ムギュ

 

「か、かりん?」

 

突然、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。というか、体ごと抱きついてきている。

よくみると、不機嫌な顔はどこか赤くなっていて。

 

「これで……うしろなんて気にならないでしょ…?」

 

そんな顔で見上げてきて、自然と背中が反る様になり、そのつつましい胸が俺の腕に当たって、その光景と感触に気絶しそうになる。

 

「あ、あぁ…」

 

確か気にはならなくなったが…これでは華琳の顔を直視できない…。

 

思わず顔をそらすようにしてしまった事が、また華琳の機嫌を損ねてしまったようだ。

 

「一刀…」

 

今度は怒るというより、どこか悲しげな感じになった。

視界の端でそんな華琳を見てしまって、少し後悔する。

でも、やはりこの状況は気恥ずかしいなんてものではなくて、もはや興奮すら抑えられないものである。

 

それを否定できないのもまた事実なわけで…

 

「ごめん、華琳……その…」

 

それだけ言って、俺は華琳から少し離れた後。

 

「これで、許してくれるか?」

 

手を差し出した。

 

「………………」

 

少しうつむいた後、華琳は俺の手をとってくれた。

 

「仕方…ないわね…」

 

赤くなった顔は少し晴れたようで、俺達は指を絡ませ、手をつないだ。

 

そんな感じで華琳の休日が始まる。

 

 

『ああああああああああああああああ!!!』

 

 

指を刺しながら叫ぶ覗き二人。

 

もう少し空気を読んでくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、桂花や春蘭の視線を掻い潜りつつ、俺達は通りを歩いていた。

 

「あ、一刀。ここよってもいいかしら?」

 

「ん?あぁ、もちろん」

 

そう言って華琳が指差したのは、行き着けとは違う新しく出来た服屋だった。

 

いちいちこちらに確認をとってくることに少し戸惑いつつ、俺はかるく承諾する。

 

そして、俺達は店に入るのだが…

 

先ほど快く承諾した俺は、一瞬で後悔した。

 

店の内装は一言で言えば、『THE・女の子』

 

これでもかと言うほどかわいらしいと思われるであろうものがそこらじゅうに散りばめられ、しかもこの店の売っている服はなんというか…

 

そこを見てもかわいらしいフリフリのものばかりで、人形が着ていそうなものばかりだった。

 

いわゆる「ゴスロリ」というやつである。

 

「か、華琳……」

 

さすがに場違いOKな空気に俺は少したじろぎながら、華琳に話しかける。

 

『本当にここでいいのか?』という言葉がでないのは…察してほしい。

 

「え、えぇ……新しい服がほしくてね……さ、さぁ、見て回りましょうか」

 

少しどもっているのは気のせいだろうか…。

 

俺のそんな心配とは裏腹に華琳はどんどん進んでいく。

 

だが、奥に行くにつれて、店の雰囲気がどんどん変わっていく。

 

嫌な予感が止まらない俺は、思わず足が止まってしまった。

 

入り口付近から見えるものは確かに可愛いものだった。

 

だが、奥に行くにつれて、かわいらしさはどんどん薄れ、ピンク色な雰囲気になってきた。

 

しかも、最初はただの服屋(ゴスロリの時点でおかしいが)だったはずが、並べられた商品は服ではなく、衣装…現代のコスプレめいたものになってきた。

 

さらに奥には、おもちゃ(主に大人の)まで並べられているように見える。

 

「………………」

 

「華琳、そ、その…他の店にしないか?……ここだと、ほら…な」

 

「一刀が…」

 

「え、お、俺?」

 

「ここで売ってるような服……その、着れば一刀が喜ぶって聞いたから」

 

明らかに動揺しながら、華琳がこちらを向いて言う。

 

しかし

 

ここの服ってことは、華琳がゴスロリやらナースやらブルマやらってことか…。

 

………………………イイ。

 

っと、おもわず下半身に意識がいきそうなるのを抑える。

 

「って、それ誰に聞いたんだよ…」

 

そんなこと言いそうなのは…

 

「沙和よ」

 

やはりお前か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、俺達は店から出ることにした。

 

やはりあの店の空気はつらいものがあったのだ。

 

そして、華琳は気づかなかったが、俺は出口付近で嫌なものを見てしまった。

 

『于禁将軍経営店』という看板。

 

あいつ…いつのまにサイドビジネスなんか覚えたんだ…。

 

ああいう衣装があることを教えたのは自分なだけに、ちょっとやりきれない。

 

「で、買ってしまったわけね」

 

「当然でしょう。手ぶらで帰るなんて、沙和にどういう顔すればいいのよ」

 

「まぁ、それもそうなんだけど」

 

華琳の手に紙袋があるのをみて、思わず笑いそうになった。

 

 

「で――」

 

「次にいきましょうか」

 

何を買ったかは聞かせてくれないわけね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、まだ何も食べてないことを思い出し、俺と華琳は適当に飲食店を選び、入った。……桂花と春蘭も遅れて一緒に。

 

 

そして、適当にあいている席を探していると

 

「あ、一刀~~~」

 

「一刀、こっちこっち~~」

 

「華琳様、一刀さん」

 

人気者の三人組がいた。

 

「………………」

 

「おはよ、三人とも元気だった?」

 

「元気じゃないよ~~。もうお腹ペコペコだよ~~」

 

本当にしょんぼりしながら天和が答えてきた。

 

「あはは。なんだ、天和達もお昼これからなのか」

 

「もって、一刀も?」

 

「あぁ」

 

目ざとく間に入ってきたのは地和。

 

「あ、じゃあ、一緒にたべよ~?」

 

「ちょ、ちょっと姉さん…」

 

「そうだな。華琳もいいよな?」

 

「え?え、えぇ。そうね」

 

少しぼんやりしていたんだろうか。いまいち反応が悪く、華琳が答えてくる。

 

まぁ、いいと言ってるんだし、よしとしよう。

 

俺達は隣の席から、二人分(春蘭と桂花は遠くから見ているため一緒ではない。どうやらまだバレていないと思っているようだ。)の椅子を持ってきて、座った。

 

料理を注文し、しばらく時間が経ってから、注文した料理が運ばれてきた。

 

「で、今度はどこまで行ってきたんだ?」

 

「涼州まで行ってきたよ~」

 

「涼州って大丈夫なのか?」

 

一応彼女らは素性は分からないとはいえ、元黄巾党のトップ。

 

「あれから時間も経ってるし、受け入れてもらえてるよ」

 

地和が食べながら答える。

 

「そっか。ならいいんだけどな」

 

「まねーじゃーとしては心配?」

 

やはり食べながらだが、人和が話しかける。

 

「そりゃ、当たり前だ。三人とも俺にとっては大事な人なんだから」

 

『………………………』

 

三人を含め、華琳も黙り込む。というか、華琳はさっきから何も話してこないな。

 

「そ、そういうのはもっと場所とか状況とかそういうのを選んでからいいなさいよ!」

 

「まったくです…」

 

「えへへ~、大事だって~~」

 

照れながら、叫び散らす地和。冷静に受け返す人和。あいかわらずな天和と三者三様の反応を見せる。

 

「………………」

 

そんなときに店内が少しざわめきだした。

 

さっきの地和の叫びで、ここに役満しすたぁずが来ていると噂になっているらしい。

 

しかも、相席してるのが、魏王と天の遣いなら、話題としては申し分ないだろう。

 

ざわめきはドンドン大きくなり、やがて騒ぎと呼べるほどにまでなっていた。

 

「まずいな。これ以上騒がれる前に出ようか。」

 

「そうね」

 

ようやく口をひらいた華琳は、椅子を行き、そのまま店を出て行った。

 

「あ、ちょっと待ってくれよ!!」

 

「あ、一刀またね~~」

 

「次はおごりなさいよー!」

 

天和達の声を聞きつつ、華琳を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追いついた後、華琳にどうしたんだよとたずねてみたが、

 

「別になんでもないわ」

 

と言われてしまい、それ以上は聞けなかった。

 

不機嫌になりながらも、手を出せば握り返してくれた。

 

「春蘭たちは、いないようね」

 

「ん、そうみたいだな。さっきの騒ぎではぐれたのかな。」

 

会話がそれだけで終わり、また沈黙が続きながら、俺達は町を再び歩いていた。

 

何も話すことが見つからず、ただ無作為に歩き続けて、時刻はすでにお昼ごろ。

 

そんな風に無駄に時間を消化していると、手から伝わる華琳の感触が強くなった。

 

「華琳?」

 

「次、いきましょう。一刀」

 

そういって、こちらを振り向いた華琳の顔は、また少し赤くなりながらも笑っていた。

 

その理由が分からなくて、俺は戸惑いながら、華琳についていった。

 

手を引かれながら、やってきたのは本屋だった。

 

「欲しい本でもあるのか?」

 

「なんとなく、よってみたいのよ」

 

「ん、了解」

 

中に入ってみると、当然だが、書籍が本棚にぎっしりと並べられていた。

 

行き着けというのもあるのだろうが、勝手知ったるようで、すいすいと華琳は進んでいく。

 

置いていかれたように俺は別の本棚の前でボーっとしていた。

 

俺が本をほしいわけではないし、読んでみようかと自分から行くほど文学に興味があるわけじゃない。

 

文字の勉強のために本を読んでいた時期もあるが、基本的にそこまで読書がすきというわけでもないのだ。

 

まぁ、ようするに手持ち無沙汰という状況なわけだ。

 

そんなふうに店内を眺めていると

 

「あ、一刀やん」

 

「お、霞か」

 

霞が後ろから声をかけてきた。

 

「あ…一刀がここにおるってことは華琳もいてるんやろ?」

 

「あぁ、今あっちのほうで本選んでるはずだけど」

 

「一緒に選べへんの?」

 

「一緒にって、俺に華琳が読むような本を読めってのか?」

 

「あははは。それもそうやな」

 

笑い飛ばす霞だが、どこか華琳を気にする様子だ。

 

「あぁ…んじゃ、うちもういくわ」

 

「え、ここに用事あったんじゃないのか?」

 

「え!?…あ、あぁ、あったんやけど、別にええねん。急いでるわけやないしな」

 

「そうなのか。じゃぁ、またな」

 

「ん、またな~」

 

霞が入ってきた入り口からまた外へ出て行った。

 

後姿が見えなくなるのを見送ってから、振り返ると

 

「………………………」

 

「わぁ!!……いたのか、華琳。もういいのか?」

 

「えぇ。………ずいぶん霞と楽しそうだったわね」

 

「そ、そうか?」

 

と、言ったところでやばいと感じた。

 

華琳の表情が引きつっている。

 

華琳はそうねとだけ言い残し、会計を済ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

/???side

 

 

 

「姐さん!なにしてんの!」

 

「ほんま、すまん!まさか「でえと」で本屋なんかいくと思わんかったんよ…」

 

「あの二人ですから、予測なんて立てるほうが馬鹿というものですね~」

 

「何気にきっついなぁ……」

 

「隊長…」

 

「嫉妬する華琳様………………フガフガ」

 

「ところで、春蘭様と桂花様はどこへいったの~?」

 

『さぁ?』

 

 

 

 

 

 

某飲食店内

 

「ええい!、どけというに!!」

 

「華琳様ーーー!!!」

 

『ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

 

「みんなー、げんきかなーーー?」

 

 

『ほわっほわっほわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………」

 

今日はなんだか、どこかへよるたびに華琳の機嫌が悪くなっていってる気がする。

 

「華琳…」

 

「………………………………」

 

もう返事もほとんど無くなった。

 

つないでいた手もいわゆる恋人つなぎから、普通のものになっていた。

 

「もう…」

 

「え?」

 

つぶやいた華琳の言葉が上手く聞き取れなくて、思わず声がでた。

 

「もう…帰りましょうか」

 

うつむいて、華琳はそれだけ言った。

 

その顔は機嫌が悪いとか、そういうものではなくて、どこか悔しそうで、悲しそうで。

 

そんな顔を見るのがつらくて、俺は

 

「だったら…」

 

「え?」

 

思わず話し始めていた。

 

「最後に俺の行きたい場所があるんだけど…いいかな…?」

 

「えぇ…」

 

承諾してもらえたことにひとまず安心し、今度は俺が華琳を先導した。

 

俺の行きたい場所。

 

それは、この辺り…つまりこの北のあたりでは珍しく草原となっており、今の時期にはところどころに花も咲いている場所。

 

近場には違いないが、少し道がややこしく、特に地理的に重要な場所でもないため、あまり人も来ない場所。

 

ただ、そこはとても広くて、周りにも何も無くて、

 

昼は太陽が照り続け、夕方になれば夕日が世界を朱色に染めて、夜になれば、星がうるさく輝きだす。

 

黄河の支流が近くに流れているため、この時期には蛍までいるという場所だ。

 

 

「ここは………」

 

「ここ、知らなかった?俺は結構すきなんだよ。城壁に上った時に偶然見えてさ。

その後に気になってきてみたんだよ。そしたら、結構開けた場所で…」

 

と説明を続ける間に、華琳は前へと進みだしていた。

 

「こんな場所もあったのね。」

 

時刻は夕方。

 

西から朱色の光を飛ばす太陽を見つめながら、華琳はそういった。

 

「ずっと、華琳ときたかったんだよ」

 

「そう…」

 

「なぁ、華琳」

 

「何かしら?」

 

「さっきの服屋で何買ったんだ?」

 

「秘密よ」

 

「そんな事いわずに教えてくれよ」

 

「………………………」

 

「華琳…」

 

「なら、少しうしろ向いてなさい」

 

「え?あ、あぁ…」

 

一瞬とまどい、すぐに言葉の意味を把握した俺はそのまま華琳に背を向けた。

 

 

 

 

 

 

「さて……そこに隠れている者、出てきなさい。」

 

「は?」

 

と、突然何を…とおもったが、すぐに解決した。

 

背を向けたまま、俺はガサガサと音がするほうに目むけると、そこには魏の幹部がほぼ全員集合していた。

 

「覗いていたことはもういいから、これを着せてもらえないかしら。一人では着れないようになっているのよ」

 

「え??…一人できれない衣装なんて置いてなかったはずなの~……あ!」

 

沙和がおかしいなという表情をした後、すぐに合点がいったように表情を変え、華琳のもとへ駆けつけた。

 

その表情がニヤニヤしていたのはスルーするべきだろうか。

 

数分後、着付けが終ったようで、華琳から数人が離れていった。

背を向けているから、誰かはわからないが、沙和と、秋蘭あたりだろう。

 

「もう、いいか?」

 

「まだ、だめよ」

 

そういわれては振り向くことは出来ない。

 

「ここ、いい場所ね」

 

「だろ?」

 

「えぇ…ほんと綺麗」

 

綺麗?と疑問に思った俺は周りを見てみると、いつの間にか、空は夜になっていた。

 

気づかないなんて、どこまで華琳ばかりきにしていたんだろう。

 

そして、足を思わず踏みなおしてしまい、草がガサっと音をたてる。

 

その瞬間―――。

 

 

若草色の地面から、光があふれ出す。

 

ひとつ、ふたつ…その光はやがて、どんどん増え続け、数え切れないものとなっていた。

 

星空と、輝く草原と。

 

その二つに包まれ、俺はもう一度尋ねた。

 

「もう、見てもいいかな?」

 

「えぇ…」

 

そして、俺は振り向いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………」

 

言葉を失ってしまった。

 

そこいたのは、さっきまでの不機嫌な女の子じゃなくて、ましてや魏の覇王でもなくて…

 

「どうかしら…」

 

藍と蒼にはさまれ、そこから溢れる光に照らされ…

 

その“純白のドレス”はそれ自体が輝いているように見えた。

 

「華琳…それ……」

 

「説明のところに、その…恋人と結ばれる時に着る衣装だって……」

 

たしかに、それの存在も沙和には教えていた。

 

だが、こうして目の前に実物…しかも華琳がそれを着ているとなると、話は全然違ってくる。

 

「一刀、どうなの―――きゃっ」

 

我慢できずに、華琳を抱きしめた。

 

遠くからおおおなんて声が聞こえたがこの際気になんてしていられない。

 

「やばい…………」

 

「何が?」

 

「これは…反則だろ」

 

「だからなにが?」

 

 

「綺麗すぎるんだよ」

 

「―――――――――っ」

 

それから、しばらくお互い何も言わず抱きしめあった。

 

何も言えるわけ無いだろ?

 

だって、あの華琳がだぞ?

 

ウエディングドレスなんて着て、その上…

 

“恋人”なんていわれたら…

 

 

それでも、時間が経つにつれ俺達は自然と少し距離を開けた。それでも距離と呼べるほど互いの間に隙間があるわけではない。

 

「失敗したな…」

 

「え?」

 

「こんなことがあるなら指輪のことも言っておけばよかった…」

 

「指輪?」

 

「あぁ…」

 

服のことばかり聞いてくる沙和に、たしかに色々と面白がってコスプレ衣装を教えたが、それにまつわるものまで教えているはずも無かった。

 

「こういう場合に贈るものだよ。裏に愛する人の名前を彫ってね」

 

「………ほんとね。なんで用意してないのよ」

 

「まさかこんなイベントがあるとは思わないし」

 

「……最近、天の言葉を気にすることが無くなってきたわね……」

 

いいかげん、分からないというのも嫌になったんだろうか。

そんな言い方になる。

 

立っているのも疲れはじめる頃で、俺達は自然とくっついたままその場に腰を下ろした。

 

 

 

「ふぅ…」

 

膝の上に座っている華琳がトサっと俺の胸にもたれかかる。

 

「つかれたか?」

 

「当然でしょう。今日一日最悪だったわよ」

 

「それは……ごめんな」

 

「いいわよ、全てがあなたが悪いわけではないもの」

 

よく考えれば、今日一日、デートだったんだよな。と今更になって気づく。

 

そして、朝から今までのことを振り返ると、たしかにあまりいいデートではなかった。

 

「それに今はこうしているんだから。」

 

華琳は俺の腰に手を回し、つぶやいた。

 

それに答えるように俺も華琳の背中から手を回して支える。

 

そんな事をしている間に、さっきまで後ろにあった気配がなくなっていた。

 

「あの子達にはなにか罰をあたえないといけないわね」

 

「おいおい…」

 

「冗談よ」

 

そう聞こえないのが怖いところだ。

 

「一刀」

 

「なに?」

 

「……大好き」

 

「俺もだよ」

 

「一刀…」

 

「ん?」

 

華琳がさっきより少し強くこちらへ体を押し付ける。

 

「ふふ…」

 

そんな華琳がどうしようもなく可愛く思えて、思わず頭をなでていた。

 

「華琳」

 

「何?」

 

「愛してるよ」

 

「……当たり前よ」

 

そして、お互い引き寄せあうように顔を近づけ

 

この日、初めてのキスをした。

 

 

 

今日の華琳は、俺の知る限り、今までで一番女の子だった気がした。

 

 

 

 

 

 

                      『かりんの休日』 完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

めずらしく1話完結です!

この話自体は少し前に考えたものです。

気が向いたので、こちらに投稿してみました(`・ω・´)

 

まぁ、ひたすら作者の妄想が爆裂してる作品ですねー

華琳との絡みなんて今更かもしれませんが、やっぱりボクの中では華琳が一番ですので(。。

 

ではでは、あまり長く書く事もないのでこの辺で~

 

(`・ω・´)ノ


 
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