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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第11話

久しぶりの投稿になります。

転勤や戦国恋姫をプレイしたせいもあり、前回投稿より約4ケ月経過してしまいました。

今回は少々長めですが、華琳のあれが前回作より酷くなっています。華琳ファンの方は申し訳ありません。

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2016-06-02 23:05:36 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6839   閲覧ユーザー数:5356

「そうか…韓遂が紫苑に射殺されたか…」

 

伝令から韓遂の死を聞いた碧はかつての同胞の死を心の中で悼んだ。

 

だが韓遂とは昔は共に西涼の為に戦っており、碧は韓遂の手強さは誰よりも知っていたので苦戦が必至と予想していた。しかし結果的には韓遂を射殺したことに紫苑の弓の腕には改めて敬意を表したくなった。

 

そして韓遂が戦死したことで戦況は一気に維新軍に有利になったことは間違いなく碧は韓遂の事を吹っ切って再び戦人の顔となり、現在大将である韓遂が討たれ孤立状態である韓遂軍の左翼部隊を攻める。

 

一方官軍も手を拱いている訳ではなかった。

 

皇は、韓遂軍苦戦を見て曹操、孫堅、張遼にそれぞれ第2陣として出陣する様に指示、孫堅や張遼は韓遂とのいざこざがあったので内心不満があったものの流石に命令を無視する訳にも行かず出陣を開始する。

 

だが行軍途中で韓遂戦死の報が入り、それまでの戦の経緯も併せて聞く。

 

そして翠が逆落としを敢行して韓遂軍を撃破した事を聞いて張遼の目の色が変わった。

 

何故なら張遼も西涼では「錦馬超」と並び「神速」という二つ名を持ち自分の技量に自信を持っており、そして碧と月に交流があったことから翠とは幾度か稽古や馬の技量等を行ったが腕は全くの互角であった。

 

その翠が逆落としという荒行をしたことで張遼の負けん気に火が付いてしまった。そして報告を聞き終えて張遼は

 

「なあお二人さん。ウチに馬超軍と戦わせてくれへん?」

 

「その理由は?」

 

曹操は冷静に張遼に理由を聞くと

 

「理由な…騎兵と武人とのして血が騒ぐ。これであかんかな」

 

張遼の理由を聞いて曹操は少々呆れた顔をし、孫堅は逆に武人なら当然な話だとばかりに納得した様な表情を見せる。

 

すると別の兵が現れ

 

「現在こちらに韓遂軍を破り馬超軍並びに別動隊として馬騰軍がこちらに向かってきています!」

 

韓遂軍右翼を破った翠と同じく左翼部隊を崩壊させた碧が進軍してくる。

 

「チッ!よし張遼、馬超はお前さんに任せる。俺は馬騰を相手にする。曹操アンタに後で出てくる御遣いたちの相手を任せるよ」

 

「ちょっ…」

 

「グダグダ言っている暇はねえ!ここは年長者の言うこと聞けや!!」

 

「……分かったわ。ここは議論している時間がないから二人の相手は貴女たちに任せるわ」

 

流石の曹操もこの状況で直ぐに良案が出すことが難しいと分かっていたのでここは孫堅の案を受け入れ軍勢を三手に分ける形となり曹操軍は一刀たちに備えの部隊という形になった。

一方官軍の第二陣が動いた事に一刀たちも気付き、最後に残った曹操軍に対応できる部隊が現状一刀たちの本隊しか無かった。

 

曹操軍を放置すれば翠や碧の部隊に横入りされる可能性が高く、下手をすれば戦線が崩壊する恐れがあることから一刀は部隊を前進させることにした。

 

これには紫苑も異論を挟まず承諾した。

 

その頃既に翠の部隊と霞の部隊が対峙しており

 

「霞…まさかお前が私を迎え討つとは思ってもみなかったよ」

 

「最初ウチはこの戦、韓遂のおっさんの助けなんかしたくなかったから乗り気じゃなかったけど。翠、アンタが逆落としという凄い事やってくれたから、ウチは武人として馬乗りとしてアンタと勝負したくなったんや。勿論受けてくれるやろな?」

 

霞の話を聞いて翠は少々呆れたが、だが元々根が単純な翠は

 

「売られた喧嘩から逃げるというのは私の流儀には無いからな。その喧嘩買った!!」

 

そう言いながら翠と霞はお互い武器を構え対峙する。

 

「「うおおおお―――――!」」

 

両者の咆哮と共に両軍が激突した。

 

同じ頃、碧の軍も孫堅軍と既に対峙している状態であった。

 

「初めてお目にかかるわね。孫文台殿。いや『江東の虎』と言うべきかしらね?私が馬寿成よ」

 

「貴様が『西涼の狼』と言われた馬騰か…馬騰、貴様何を企んでいやがる。『天の御遣い』を利用して涼州を独立させて、貴様王でも名乗るつもりか?」

 

炎蓮は碧を挑発して少しでも碧や一刀の真意がどこにあるのか聞こうとするが、碧は炎蓮の挑発に敢えて乗り本音を語る。

 

「……独立ね。確かにそのような事も考えた事があったわ。だけど私たちはあの三人に出会って考えを変えたわ。あの三人を涼州だけで収まる器じゃないことをそしてこの国を安定させるのは誰が良いのかをね…」

 

「まさか馬騰貴様…」

 

「ええ私たち馬一族は『天の御遣い』の配下となった。だから西涼を独立させるというちっぽけな事より漢という腐り切った国を滅ぼした方が世の為に人の為になることを気付いてたわ」

 

「フフフフフ…アハハハハ!馬騰、貴女『天の御遣い』に毒されて面白い夢物語するようになったか!!」

 

碧に対しそう言い返したものの、孫堅の心の中には現状への不満はある。だが流石に漢王朝に謀反を起こして滅ぼすという考えまでには至ってなかったので碧の発言に畏怖を抱いたのも事実であった。

 

「さあ…夢物語かどうかはこれ以上語る必要はないわ。後は武人らしくこれで語るだけよ」

 

碧は自分の愛剣である『牙狼』を炎蓮に向け、炎蓮を逆に挑発する。

 

「フフフフフ…それもそうだな。確かに俺らは武人だ。武人らしくこれでカタつけようじないか!」

 

炎蓮もいらぬ事を考えるのを止め自分の愛剣である『南海覇王』を碧に示しこの勝負を承諾した。

 

「さて私を楽しませてくれよ!ハアアアア!」

 

「貴女、私を舐めてるの?こんな力だけの斬撃で私を討ち取ろうなんて10年早いわよ!」

 

炎蓮は奇声を上げると南海覇王で碧に斬り掛かるが、その一撃を碧は真っ向から受け止めた。炎蓮の斬撃を真っ向から受ける者などそうそういる者では無い。

 

「私の一撃を受け止めるとは、馬騰貴女やるわね?」

 

「その言葉そっくりそのまま貴女に返すわよ!!」

 

今度は碧が乱舞の様に炎蓮に攻撃すると炎蓮が防戦一方となる。そしてお互い凄まじい斬り合いを演じ続け、両軍の兵士たちは二人の戦いを固唾を飲んで見守るしか無かった。

そして一刀たちも曹操軍と対峙する。

 

何せ相手は曹孟徳、まともに当たれば損害が大きく、そして勝てる保証も無い。それは紫苑や璃々も同じ考えであった。

 

だがここは引く訳にも行かないと迷っている一刀に

 

「ご主人様、お気持ちは分かりますがここは引く訳には行きません。ぜひ私に行けとお命じ下さい」

 

紫苑は少し迷いが出ていた一刀の決断を後押しするかの様に少し強い口調で言う。

 

紫苑の言葉で漸く迷いが吹っ切れた一刀は

 

「よし!行こう!みんなの力で!!」

 

これは紫苑だけで無く自分や璃々も共に突撃するという一刀の強い意志表示で紫苑は仕方がないという表情を浮かべていたがそれを咎める様な言葉は出さなかった。

 

紫苑の中ではここまで乱戦になれば力と力の勝負で後は相手の隙を如何に見つけ、それを突くかそれに掛かっていると思っていた。

 

「突撃ぃ―――――!!」

 

「うおおおおおおお!!!」

 

一刀の部隊と曹操軍が激突した。曹操軍の兵士の能力は高いが一刀の部隊も異民族との戦いで鍛えられた兵士が揃っており実戦経験の差でじりじり曹操軍が押されつつあった。

 

それを本陣で見ていた華琳は

 

「西涼の兵は勇猛果敢ね。だけどこれ以上押されると不味いわね。春蘭」

 

「はい!華琳様!!」

 

「貴女の力、『天の御遣い』たちに見せつけてやりなさい」

 

「ありがとうございます、華琳様!!必ずや天の御遣い共を討ち取って来ます!!」

 

華琳から命令されると春蘭は待ってましたとばかりに勇んで陣から出陣する。

 

夏候惇の旗が戦場に翻ると曹操軍は再び息を吹き返す。曹操軍の核はこの夏候惇と妹の夏侯淵の両名であるが、因みに今回の戦にはできるだけ自分たちの力を見せない為、既に名が知られている2名を除けば、他の将は任地に残留させていたのであった。

 

夏候惇が軍を進め一刀の軍に突撃すると璃々の姿を見つけた。

 

「私の名は夏候元譲だ。おい、貴様!『天の御遣い』の一味だろう!この私が討ち取ってやる、さっさと首を出せ!!」

 

「えーたった1つしかない私の首差し出せる訳ないよ?お姉さんそんな誰でも分かる事にも気づかないの?」

 

「貴様ふざけているのか!」

 

「別にふざけてないよ。当たり前の事を当たり前で答えただけだよ。あっ!お姉さんそんな事も分からないほど頭の中が筋肉でできているでしょう!?」

 

「貴様――――!!」

 

璃々の挑発に春蘭は既に逆上して七星餓狼を振り回す。春蘭の動きが速いが単調な攻撃であるので戦いの経験浅い璃々でもかわしながら何とか対応できる。

 

「ちょこまか逃げて貴様には、武人として誇りはないのか!」

 

「死ぬ事比べたら、武人としての誇りなんてそれ以下だからそんな拘りはないよ!」

 

璃々は元々幼い時に現代に来た事という特殊な経緯もあり紫苑より柔軟な視野を持っていた、その為戦いに置いては一刀や紫苑に劣る現状を考え「何をしてでも生き残る」ことを重要視するようなった。それは勿論璃々も武人や将としてあり方などは紫苑から教わり将としてのある程度の誇りは持っているが、この時点で春蘭という完全に力量差がある相手に対しまともにぶつかる程愚かではない。

 

だからこそ“口撃”をしてでも勝利への活路を見出そうとしていたのだ。だからその手段を春蘭に難癖を付けられる筋合いはなかった。

 

璃々に手を焼いている春蘭を妹の夏侯淵こと秋蘭が少々見かねて

 

「姉者、手を焼いているようだな。代わってやろうか?」

 

秋蘭も一流の武人なので、武人同士の1対1の戦いに手を出す様な無粋な真似などはしないが敢えて春蘭の冷静さを取り戻す為、敢えてこのような声掛けをしたのであるが、

 

「あら、夏侯淵殿ともあろうお方がそのような事をなされるのであれば、私も璃々に代わって相手いたしますわ」

 

「貴女は…」

 

「私の名は北郷紫苑。失礼ながら貴女の名前を勝手に呼ばせて貰ったけど何か間違いはあるかしら?」

 

秋蘭は紫苑の気配に気づかないまま接近を許していた事にも驚いていたが、紫苑の雰囲気が常人の者ではないにも気付いた。

 

「……間違いはないな。そして貴女の武人としての腕も相当な腕前と見たが?」

 

「曹操殿の片腕とも言われる夏侯淵殿にその様に見られて光栄ですわ」

 

「では私のもう一つの片腕にもなるのはどうかしら?」

 

「華琳様!!」

 

「……」

 

秋蘭が驚きの声を上げたのは無理もなかった。戦いの最前線に主自ら出てくるとは思っても見なかったのだから。

 

「春蘭!これ以上この者を傷つけてはならない。刀を納めなさい!!」

 

華琳は璃々をこれ以上傷物してはならないとばかりに春蘭に手を引くように命令する。春蘭も一瞬怪訝そうな顔をするが主である華琳の命令とならば仕方がないと観念して不服そうな顔をしながら渋々刀を納める。璃々も内心助かったと思ったが、まだ警戒心を解いてはいない。

「あなた達が『天の御遣い』でしょう?私は曹操、字は孟徳。いずれは天下を手に入れる者よ」

 

「私は北郷紫苑。姓が北郷、名は紫苑。それとこことは風習が違うので字と真名はありませんわ。そしてこちらが“妹”の北郷璃々。それで曹操殿はどのような要件でこのような危険なところに来たのですか?」

 

「そうね。単刀直入に言うわ。この戦、何れ私たちが勝つ。だけどその前に私はあなた達二人を我が軍に迎え入れたいと思っている。『天の御遣い』の力を私の元で振るうのが相応しいわ」

 

「曹操殿の言い様では我が夫を見捨てて来いと聞こえますわ」

 

「フフフ……さっきも言ったでしょう。この戦い今は苦戦しているがこの私がいるから何れは勝つ。そうなると首謀者の『天の御遣い』や扇動された馬一族は処刑されるのがオチよ。その前に降伏して私に仕えれば二人の命は必ず私が助けてあげるわ」

 

「華琳様!」

 

「それに私なら貴方の夫よりも、貴女をより美しくさせる自信があるわ」

 

側近の秋蘭が華琳を制止しようとするが、華琳は気にせずこのような状況でも紫苑や璃々を欲する発言をする。紫苑は人材集めの貪欲な曹操らしいとは思ったが、まさかこのような戦場で引き抜きするとは思ってもみなかった。

 

それに男もまだ知らなさそうな曹操が経験者の紫苑や璃々に対して男女の事を説くなど呆れるしかなかった。

 

「……これまた笑止千万なお言葉ですこと。戦は水物で絶対はありませんし、私たちは負ける事は考えていません。それに私のこの身、心、屍までもがご主人様の物です。そして璃々も同じ意見ですので、申し訳ありませんが貴女の期待に添える返事できませんわ」

 

「でも、貴女のような優秀な女性がそんな男の許にいて良いの?女性としてそのご主人様とやらが、あなたたちを満足させられるだけの器量があるようには思えないけど?」

 

曹操の再三な無礼過ぎる言葉に流石の紫苑も限界に来た。

 

「そろそろ黙ってくれないかしら、男女の営みすら経験がない“おぼこちゃん”が、ご主人様の事や世の男性の事を語るなど片腹痛いわ!顔を洗って出直して来なさい!!」

 

「こ、この私をおぼこちゃんですって…!」

 

曹操自身、自分の能力に相当な自信を持っており、また女性としての魅力も他の者に負けないと自負している。この場には居ないが曹操軍の軍師である荀彧などは曹操のその魅力に引き込まれ身も心も曹操に捧げている。

 

自信家である曹操に面等向かって“おぼこちゃん”と普通の者が言えば負け惜しみと言われるが、今の紫苑は『天の御遣い』としての能力を持っており、更にここに来てから二十歳代の女性として肌やスタイルを取り戻しており、そして当然大人の色気も当然失われていない。

 

嗜好の差はあるかもしれないが女性としての魅力は現状では紫苑の方が満開に近い状態で、紫苑から見たらまだ発展途上にも見える曹操の事を“おぼこちゃん”扱いしても仕方が無かった。

 

曹操自身このような子供扱いを受けるなど思っても見なかった。だが逆に紫苑や璃々を手に入れて自分の前に跪かせて屈服させたいという嗜虐心が出てきた。

 

「……こうなれば貴女たちを捕まえて私の前で命乞いする姿を見てみたいわ…」

 

「ほう…名高い曹操殿が私の妻たちを引き抜こうとして試みて断れると、今度は脅しですか……曹操殿がこのような不作法を行うとは思ってもみなかったですよ。ああ申し遅れましたが私が維新軍大将で北郷紫苑の夫の北郷一刀です」

 

璃々が春蘭と対決している事を聞いて、一刀も我慢出来ず前線に来たが紫苑と曹操と対峙していたため兵に混じって会話を聞いていたのであったが、流石に曹操の無礼な発言に我慢できなくなり、敢えて名乗りを上げた。

 

流石の曹操も一刀の登場に驚いたのか、不機嫌な表情を見せる。

 

一刀の登場には紫苑や璃々も一刀が後方にいるものだと思って内心驚いていた。

 

曹操は一刀の風貌を見て、何やら勝ち誇った顔をしながら

 

「フッ…貴女達の見る目にちょっと失望したわ。貴女達くらいの器量が良い者が何でこんな平凡そうな男と情を通じているのかしら。もっと見目麗しい男なんて他の沢山いるのにね」

 

一刀の見た目は確かに好男子であるが、ずば抜けている訳では無く、言い方は悪いが一見ではその辺にいるちょっとカッコいいお兄ちゃんくらいにしか見えないだろう。

 

「男性の価値は顔だけでは無く、その人の本質を知って初めて判断できること。貴女の言い分はまるで『木を見て森を見ず』と一緒だわ」

 

「だって仕方ないよ。所詮“おぼこちゃん”なんだから。それにこの人の見る目は『表面の美』しか見えないから本当の人の心の美しさなんて見極められないもん」

 

「何ですって………」

 

紫苑と璃々は曹操に怒りを覚えたがここは人生経験豊富な紫苑が曹操の挑発を逆に切り返し、そして璃々が上手く乗っかる追撃する。それを聞いて忌々しげに顔をゆがめている曹操であるが

 

「まあいいわ、戯言はここまでよ。ここに貴方たちが来てくれたのは私たちに取って幸運の何物でもないわ。今は互角でも貴方達にこれ以上の後詰はないはず、少なくとも貴方たちを足止めさせすれば何れ兵力の差で勝利は私たちの物になるわ。今の内に頭を下げた方が良いわよ」

 

「それはどうかな?」

 

「それはどういうこ…“ジャーン” “ジャーン” “ジャーン”」

 

曹操の声が遮るかの様に本隊から撤退の合図が鳴らされた。

 

「何故撤退の鐘が鳴るのよ!」

 

曹操は一刀たちがもう後が無い状況で本隊さえ出陣すれば勝利が官軍の物になるのにこの撤退に当然納得できる訳がない。

 

本隊に戦いの継続続行の使者を送ろうとしたところ、本隊の使者が来たので一刀たちに聞こえない様に使者からの話を聞いて顔色が変わった。

 

何と遠征軍の本拠地である金城に鶸、蒼、渚(龐徳)の別働隊に襲撃され落城寸前の状態であった。

主な将が出陣している上、本来治めている韓遂の死が既に城兵に知れ渡ったため(早馬で別動隊に報告済み)、城兵の士気がガタ落ちで更に城の民も韓遂の治世に嫌気を指していたので別動隊に応じる形で一部では反乱まで起き落城も時間の問題であった。

 

本拠地を失ってなってしまえば遠征軍である官軍は補給が困難になり戦の継続どころか、最悪撤退する事も難しくなってしまう。

 

報告を聞いた皇甫嵩は、早急に金城奪還も考えたがこの状況では挟撃を受ける可能性が高く、下手に留まれば何れは飢えとの戦いも強いられてしまう。そこで皇甫嵩は処罰される事を覚悟の上、この戦を諦め全軍涼州から撤退することにしたため引き上げの鐘を鳴らしたのであった。

 

「これは貴方の作戦ね……男だと思って貴方の能力を甘く見積もってしまったわ」

 

「誰が考えたかは想像にお任せするよ」

 

「それでここで一気に私とケリを付ける?そう易々と討ち取られる気はないけど」

 

「いいや、窮鼠猫を噛むとも言うし、まだそっちの方が数も多いだろう。素直に涼州から出てくれるのなら追撃はしないよ」

 

曹操は一刀の評価を改めて見直し、この場自分を討ち取るのであれば最悪命令無視してでも決戦に及ぶ覚悟はあったが、一刀たちはこれ以上の流血を避け官軍の撤退を容認することにした。

 

これには理由があった。今回の遠征軍は官軍だけで無く曹操軍や孫堅軍、董卓軍の混成部隊で官軍は兎も角、他の軍については今後場合によっては味方として手を組む可能性もあるので、その辺を考慮して追撃を行わない事にしたのであった。

 

「……分かったわ。今回は貴方のその言葉を信じてこのまま引き上げて上げるわ。でも貴女達にこれだけ想われている男に私と同じ舞台で戦える相手……興味が出てきたわ。そして覚えておきなさい、私は欲しいと思ったものは必ず手に入れる。だから貴女たちを何れ私の物にすることを」

 

曹操もこの場に留まって戦いの継続は無意味だと分かっていたので、内心助かったと思いながらも、敢えて悠然とした笑みを浮かべ紫苑の事を諦めていないことを宣言して兵と共に引き上げて行った。

 

一方、撤退の鐘を聞いた孫堅は碧から一刀と同じ様に追撃しない事を告げられると一騎打ちで討ち取れなかった悔しさもあり

 

「馬騰、私たちを追撃しないとは恩を売ったつもりか!孫呉の兵を甘く見るな!!」

 

「フン!私たちの目的は涼州の防衛であり、貴様らを討ち取る事ではない!」

 

「チィ…覚えておけ!何れ孫呉の牙を貴様たちの体を喰い破ってくれるわ!!」

 

「そんな日が来るといいがな。ハハハハ!!」

 

孫堅は何とか撤退を開始し、張遼も翠との決着付かずで元々親交関係があり、今回はこれ以上の戦いは無用とお互い判断して双方軍を引いたのであった。

 

そしてしばらく官軍は留まっていたが、やがて静々と涼州から引き上げたのであった。

 

この官軍の敗北により『天の御遣い』と維新軍の勇名は一気に高まると共に漢の凋落が誰の目から見て明らかになり、そしてこの涼州の乱が群雄割拠の幕開けの戦いとなった。

 

後書き

 

戦国恋姫の中で、あるシーンで璃々が成長している姿が描かれていたのは思わぬ収穫でした(笑)。

 

 

 

 

 

 


 
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