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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第八十五回 第五章B:御遣い奪還編①・適材適所

stsさん

みなさんどうも大変お久しぶりでございます!初めましてな方はどうも初めまして!

まず初めに、蒸発しないしないと言っておきながら蒸発してしまいすみませんでした 汗

もう前回のお話なんてまったく覚えてないぜという方ほとんどだと思いますが、

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2016-05-29 00:14:25 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3723   閲覧ユーザー数:3320

 

【益州、成都城】

 

成都に無事帰還した陳宮と高順は、許で目撃したすべてを呂布たちに伝えた。

 

 

 

陳宮「――――――というわけなので、ここにいる公孫賛殿と協力して、処刑されていたのは全くの別人で、一刀殿は今も生きていると

 

いう情報をつかんだのです」

 

 

 

陳宮が話し終えるまで、呂布たちは一切口をはさむことなく、一言一句聞き逃すまいと静かに聞いていた。

 

 

 

張遼「あの白馬長史も色々苦労しとるみたいやねんな」

 

呂布「・・・・・・大変」

 

公孫賛「まぁ、この乱世じゃよくある話さ」

 

 

 

白馬長史と聞けば、北方系異民族でなくともその実力は大陸中に轟いていたが、袁紹軍に敗れて以来は一切情報がなかっただけに、

 

陳宮たちの口からとはいえ、公孫賛の歩んだ道の一端を聞いた張遼と呂布は、かつて虎牢関で敵対したとはいえ、

 

しみじみとした思いで聞いていたが、当事者たる公孫賛はよくあることとあっさり言ってのけてみせた。

 

 

 

厳顔「しかし、曹操め、手の込んだことを仕掛けてきよるな」

 

鳳統「偽天・・・文字通り偽りの天の御遣いというわけだったんですね」

 

 

 

天の御遣いを処刑するという大々的なことを、偽物を処刑することで成した曹操軍に対して、厳顔と鳳統はそれぞれ舌を巻いていた。

 

 

 

高順「とは言うものの、一刀様が依然曹操軍に捕らえられていることに変わりはないので、全然安心はできません」

 

 

陳宮「その通りなのです。一刀殿が殺されなかったのも、恐らく天の知識目当てか、或は人質としての価値を見出しているかと思われる

 

ので、すぐに殺されるとは考えにくいのですが、それでも身の安全は保障できないので早急な救出が求められるのです」

 

 

 

陳宮たちから北郷存命という事実を聞き、各々若干気が緩みかけていたところで、

 

高順が全然安心できる状況ではないという楔を打ち、陳宮も乗っかることで気の引き締めにかかる。

 

 

 

魏延「だが、なぜお館を誘拐するだけでなく、わざわざ偽物の御遣いを処刑するなどと回りくどいことをしたんだ?」

 

陳宮「恐らく、自軍の士気を高めるためか、それともねね達を挑発しての事か・・・」

 

 

鳳統「あるいは、権力の誇示、曹操という人物は天の御遣いを軽々処刑できるほどの人物であると知らしめるためか、もしくは私たちの

 

精神的支柱を奪い、内から崩すためか、ですね」

 

 

 

魏延が頭をひねりながら曹操軍が行った手の込んだ仕掛けに疑問を呈すると、

 

陳宮と鳳統が御遣い処刑による影響を、引き継ぐ形でそれぞれ答えた。

 

 

 

厳顔「しかし、天の御遣いは今や大陸中から乱世を鎮める英雄と認識されておる。そのような人々にとって希望の象徴たる御遣いを処刑

 

すれば、御遣いを軽々処刑できるほどの人物と恐れられるどころか、大陸中の人々から疎まれ、大陸中を敵に回し、孤立する結果になる

 

だろうに・・・」

 

 

 

天の御遣いを処刑することで、人々に恐怖を植え付けられることができたら問題ないだろうが、

 

当然恐怖どころか怒りを買い、それこそ天の御遣いに太平の希望を抱く人々全員を敵に回すことも十分考えられることであった。

 

 

 

張遼「そら、曹操は覇を唱えとるくらいやし、全部潰すつもりでおるんとちゃうか?」

 

 

鳳統「曹操勢に降伏の意を示すか、或は大陸中が反曹操勢力と化すか、確率は五分五分といったところでしょうし、ここが勝負どころと

 

打って出たのかもしれません。仮に大陸中を敵に回したとしてもやむなしと判断したのでしょう」

 

 

 

大陸中を敵に回すというハイリスクを背負ってでも、御遣い消失による敵対勢力の無力化の可能性を取った。

 

よもすれば大陸統一の特急券と言っても過言ではないジョーカー。

 

ただし、その路線の行き先は大陸統一の天国か、はたまた四面楚歌の地獄か。

 

どちらに転ぶかは、灯りのないトンネルの中を突き進むように見えず、先に進んでみなければわからない。

 

 

 

張遼「けど、処刑したんが偽物やってことがウチらにバレてしもたから、曹操軍の士気云々はともかく、ウチらに対する効果はまったく

 

ないっちゅーことやな」

 

 

 

張遼の言う通り、御遣い処刑によって呂布たちに影響するはずのことは、

 

御遣いが偽物とばれてしまっている今となってはあまり大したことはないと言えた。

 

 

 

厳顔「まぁ、効果がまったくないというのは少しばかり強がりが過ぎるかもしれぬが・・・ちなみに、処刑されたのが偽物だとわしらが

 

知っておることを曹操軍に悟られる可能性はどうなのだ?」

 

 

高順「恐らくかなり低いと思います。見張りの兵に対しては、かなり強めに口止めしておきましたし」

 

 

 

張遼のやや楽観的な感想に厳顔は苦い顔をしながら、曹操軍がこちらが情報をつかんだと知る可能性を尋ねるが、

 

高順は見張りの老兵士と若兵士に対して行った、割とえげつない脅しを頭の片隅に思い浮かべながら、涼しい表情で低いと答えた。

 

 

 

公孫賛「それに、あまり曹操軍に対して忠誠心の高い奴でもなさそうだったし。たぶん袁紹軍とか劉表軍とかからごっそり引き抜かれた

 

新参の兵だったんだろうな」

 

 

陳宮「口は軽そうでしたが、真実など言ってしまえば自身の失態を暴露するようなものなので告白するとは考えられないのです」

 

 

 

高順の何事もないような様子に若干冷や汗を感じながらも、公孫賛と陳宮もまた、

 

曹操軍に情報が漏れる可能性は低いという見解を示した。

 

 

 

呂布「・・・・・・気づかれてない今が好機」

 

セキト「わんわんっ!」

 

 

 

すると、陳宮たちの見解を静かに聞いていた呂布は、やがて静かに、

 

しかし呂布にしては力強くすぐ動くべきと告げ、頭の上に乗ったセキトも呂布に呼応するように鳴いた。

 

 

 

陳宮「恋殿の言う通りなのです。最近は潼関、南蛮と戦続きで国力的に厳しい状況ですが、やはり曹操軍に気づかれていない今こそ好機。

 

しかも、曹操軍が南下を始めるのも時間の問題。恐らく大陸史上指折りの大戦になるはず。そして、その時必ず城は手薄になるはずなの

 

です。一刀殿を救出するならその時しかないのです」

 

 

 

呂布の宣言に陳宮も呼応した。

 

確かに、潼関への遠征に南蛮軍に対する対応という立て続けの大規模な戦闘があった後だけに、

 

兵糧は勿論のこと、兵たちの疲労を蓄積されているのは明らかであった。

 

しかし一方で、曹操軍が大規模な遠征に入ることがほぼ確実なだけに、突くならそのタイミングしかないというのも頷ける主張であった。

 

 

 

鳳統「兵糧を最小限に抑えるためにも電光石火の強行軍が必須ですね・・・状況が状況だけに、疲弊している兵の士気を上げるのに頭を

 

ひねる必要がありますが、それは私たち軍師の仕事です。まずは、善は急げということで、具体的な話をしましょう。つまり、役割分担

 

をどうするかです。分かれ方としては、ご主人様奪還組と、江夏援軍組と、益州防衛組と、ですね」

 

 

 

話がまとまりつつあるところで、鳳統が話を整理して進めるべく、

 

今人員が求められている“北郷奪還”“孫策劉備連合への援軍”“南蛮軍に備えた益州防衛”の3か所で、

 

それぞれ分かれて対応すべきことを告げた。

 

 

 

張遼「ほんなら、まずウチは一刀救出組やな」

 

 

 

すると、いの一番で北郷救出組に名乗り出たのは張遼であった。

 

張遼は腕を組みうんうんと得意顔で頷きながらさも当然のごとく振舞っている。

 

 

 

魏延「おい、抜け駆けするな!それなら私もお館救出組だ」

 

 

 

当然待ったが入るところだが、ここでは魏延が代表して真っ先に待ったをかけた、かと思いきや自らも便乗するという暴挙に出た。

 

 

 

呂布「・・・・・・恋も」

 

セキト「わんわんっ!」

 

呂布「・・・・・・セキトはお留守番」

 

セキト「くーん・・・」

 

高順「なら、私もですね」

 

 

 

すると、魏延に続き呂布・セキト・高順と続けざまに自分も自分もと次々と名乗り出ていったが、

 

セキトについてはさすがに呂布が止めに入り、セキトは寂しそうにうなだれた。

 

 

 

陳宮「コラー!恋殿は良いとして皆何好きかって言ってるですか!ちゃんとよく考えて発言するです!まずは軍師としてねねが選ばれる

 

のです!」

 

 

 

そして、プンプン怒りながら陳宮が真面目にツッコミを入れたかと思いきや、やはり陳宮もまた他の者同様図々しく便乗するのであった。

 

 

 

鳳統「あわわ、それなら私も・・・」

 

 

 

結局、そのような便乗合戦の応酬にあわあわしていた鳳統も最後には便乗してしまった。

 

ここで北郷がいればどうぞどうぞとかいう無意味なノリを展開するところなのだろうが、当然北郷がいない今、

 

そのノリを知っている者もおらず、厳顔と公孫賛を除く全員が北郷救出組に立候補するという我が儘極まりない結果となってしまった。

 

 

 

公孫賛「はは、本当に御遣いっていうのは凄いな・・・」

 

 

 

そのような様子を見ていた公孫賛は、あらためて北郷一刀という男の人望の大きさを目の当たりにし、感嘆の声を漏らしていた。

 

 

 

厳顔「・・・はぁ、まぁ、当然皆お館様救出組に立候補するだろうとは思ったが、そう言うわしも無論だ。雛里よ、いっそのこと、この際

 

江夏の方は無理だと言ってしまえばよいのではないか?お館様が囚われている今、奪還するために兵を割く必要があるためそちらに援軍

 

をよこす余裕はないと」

 

 

 

最後に、厳顔が想像通りの結果に対してため息をつくと共に、自身も同じく北郷救出組に立候補したい旨を告げ、この際全員で北郷救出

 

に向かい、孫策劉備連合からの援軍要請は断るべきだと主張した。

 

 

 

鳳統「確かにその通りなのですが、今後のことを考えると、ここは気持ち程度でも兵を差し向けるべきだと思います」

 

 

 

しかし、鳳統は厳顔の主張を受け入れず、やはり江夏に援軍は送るべきだと主張した。

 

 

 

厳顔「今後というが、お館様が奪還できなければ今後などないのだぞ?今は今後のことなど考えている場合ではなかろうに」

 

 

鳳統「このような時だからこそです。このような時だからこそ今後ご主人様の築き上げていく太平の世のことを考えるんです。それが、

 

軍師としての私の役目ですから」

 

 

 

厳顔は鳳統の返しに、しかし納得がいかずに食い下がるが、それでも鳳統は引き下がらなかった。

 

普段のおどおどした様子など見る影もない、軍師モードの鋭い瞳でその声色に迷いは一切ない。

 

 

 

張遼「けど、それでねねは失敗したんやろ!?天の御遣いの存在を涼州軍と曹操軍に見せつけるために前線に出陣させてこのザマやろ!

 

ほんで今度は先を見据えて一刀を全力で救おうともせず孫策と劉備に恩売っとこっちゅーことかいな!?ちゃうやろ!?全力で当たらん

 

と救えるもんも救えへん!一刀の身の安全を確保するんに全力挙げるんが先やろ!?」

 

 

 

しかし、鳳統の考え方が張遼の怒りに触れたのか、張遼は眉間に深いしわを刻みながら激しい剣幕で鳳統の主張を批判した。

 

張遼にとって、北郷がさらわれた、だから全力で助ける、

 

という単純な答えに行きつかない鳳統の意見は、我慢のならないことなのであった。

 

 

 

陳宮「・・・・・・・・・」

 

高順「霞、少し落ち着―――」

 

 

鳳統「もちろんご主人様をお救いすることに全力を注ぎます。ですが、全兵力を救出組に当てることが、即ち全力で救うということでは

 

ないのです」

 

 

 

鳳統を批判する言葉の引き合いに出された陳宮は口を堅く結んだままうつむいており、

 

このままでは手が出そうな張遼に対して自制を促そうとする高順に、しかし言葉をかぶせる形で、

 

鳳統は全くひるむことなく、江夏に援軍を送ることが、北郷を全力で助けないことを意味しないと告げた。

 

 

 

張遼「どういうことや!?何言ってるんか全ッ然わからへん!!」

 

 

 

怒れる張遼に対して、あまりにも冷静に鳳統は返してくるものだから、鳳統が言っていることの意味が理解できないことも相まって、

 

張遼の怒りのボルテージがさらに上がり、怒声が部屋中に響き渡った。

 

 

 

鳳統「まず、そもそもの兵力差が歴然です。いくら南下中とはいえ、たとえ私たちが全兵力で曹操軍に攻め込んだところでまともな戦い

 

にすらならないでしょう。だからこそ策を弄するのです。これから、曹操軍には私たちがご主人様を失い戦意を喪失しているという偽の

 

情報を流します。それと同時に私たちの中の一部の兵が暴走して勝手に行動し、孫策劉備連合と合流して曹操軍に報復しようとしている

 

という情報も流します。私たちが江夏に軍を送ることは、その情報に信憑性を持たせるためにも必要なことなんです。その結果、曹操軍

 

にとって、南下中に私たちが許に攻め込むという可能性が排除され、油断が生まれ、ご主人様を救出する成功率が少しでも上がります」

 

 

 

それでも、鳳統は全くひるむことなく、張遼にもわかるように丁寧に自身の思い描く考えを説明していった。

 

自身の信じる策の成功につながるのなら譲らないところはとことん退かない。

 

本当に、普段の鳳統を知っている人が見たら眼を疑うような堂々たるふるまいだったが、

 

しかしこれこそが鳳凰の雛と称される稀代の軍師鳳士元として元来備えている胆力なのかもしれない。

 

 

 

魏延「・・・・・・ワタシは雛里の意見に従う」

 

 

 

すると、張遼と鳳統の言い合いを黙って聞いていた他の面々の中、魏延がゆっくりとした口調で鳳統の意に従うことを宣言した。

 

 

 

張遼「何やて!?前から思っててんけどアンタちょっと雛里に甘いんちゃうか!?」

 

 

 

当然、どちらかというと張遼同様激情的なところがある魏延も張遼側に立つものと思っていただけに、

 

思いがけない裏切りに会い、張遼は魏延が北郷と同じくらい鳳統の事を甘やかし気味なことを引き合いに、嫌味も含めて批判した。

 

 

 

魏延「阿呆め、そういうのじゃない。ワタシが言いたいのは、ワタシたちは武将で、雛里は軍師ということだ。適材適所。小難しいことを

 

考えるのが軍師の仕事で、ワタシたちはその策に適う動きをすればいい。それだけのことだ」

 

 

 

張遼に小馬鹿にされ、普段なら声を荒げて否定するなりなんなりするはずなのだが、

 

しかし、魏延は驚くほど冷静に、自身が鳳統の言に従う理由、つまり、一時の感情的勢いに任せ突発的に動くよりも、

 

軍師として冷静に考えを巡らせた結果導き出された策に従うと魏延は説明したのであった。

 

 

 

厳顔(ふ、“適材適所”か・・・劉焉様よ、まったく、法正にしろ焔耶にしろ、皆あなたに影響され立派に成長していますぞ・・・)

 

 

 

そのような思いがけない冷静な魏延の反応に、また、かつての主である劉焉の考え方がしっかりと受け継がれている様を目の当たりにし、

 

その出会いから、半ば保護者のような感覚すらある厳顔にとっては、成長を喜ぶ一方、何だかしんみりするのであった。

 

 

 

公孫賛「まぁまぁ、張遼殿、だったっけ、ひとまず落ち着こう。鳳統殿も御遣い様を救出する確率を少しでも上げるために知恵を絞って

 

出したことぐらい、仲間のアンタならわかるんじゃないのか?」

 

 

張遼「そ、そら!・・・そらそれくらいウチやってわかる。雛里が考えなしなこと言うわけあらへんからな」

 

 

 

そして、魏延のそのような普段見ないような冷静な主張を聞き、金棒で頭を撃ち抜かれたような衝撃を受けた張遼は、

 

さらに追い打ちをかけるように公孫賛がなだめにかかったことで徐々に冷静さを取り戻していった。

 

 

 

魏延「なら、ワタシたちがグダグダややこしいことを考えるよりも、雛里ら軍師の策に従い行動すれば結果上手くいくはずということだ。

 

ねねのことだって失敗とは言うが、お館が生きている以上、まだ完全な失敗とは言えないからな」

 

 

張遼「そ、それはそーやな・・・スマン、ちょいキツー言い過ぎたわ。雛里もねねも堪忍な」

 

 

 

さらにとどめと言わんばかりに(本人は無意識なのだろうが)魏延がシメの言葉を告げると、

 

張遼は完全に冷静さを取り戻し、これまでの暴言を悔い、深々と頭を下げて鳳統と陳宮に謝罪した。

 

 

 

鳳統「あわわ、私は全然気にしていません」

 

陳宮「その程度でねねは凹みませんぞ!」

 

 

 

張遼の謝罪に対して、鳳統はほっと胸をなでおろしながら、普段通りの大人しい様子に戻り、

 

一方陳宮はなぜか偉そうに大平原の胸をこれでもかというほど張りながらドヤ顔で頷いていた。

 

 

 

高順「白蓮様に檄を入れてもらうまではかなり凹んでいましたけどね」

 

 

 

そして、そのような残念な様子の陳宮に対して、スルーすることなく高順が的確にツッコミを入れた。

 

 

 

公孫賛「なな、言ってやるなよ」

 

陳宮「何か言ったですか?」

 

高順「いいえ、何も?」

公孫賛「いやいや何も!」

 

 

 

さらに公孫賛が妙にノッてしまったせいか、陳宮がギロリと二人を睨み付けたものだから、

 

面倒事を回避すべく二人は同時に白々しく知らぬ顔をした。

 

 

 

呂布「・・・・・・恋は元々賛成」

 

高順「私も恋様に従うだけです」

 

 

陳宮「桔梗と霞の言うことももちろん一理あるですが、曹操軍の目を引くという意味では、少数でも江夏の方で暴れる役を務める人間が

 

必要なのです」

 

 

公孫賛「私はどちらかというと許に兵力を集中した方がいいんじゃないかと思ったんだけど、もちろん最終決まった方針に従うよ」

 

 

 

そして、他の面々も改めて鳳統の策に従うことを告げた。

 

 

 

厳顔「まぁ、わしとしてももはや異存はないが、なら組み分けをいかにするかが問題だな」

 

 

 

最後に厳顔も了承したところで、鳳統の意見の採用が確定したわけだが、しかし結局は振出しに戻ったにすぎず、

 

次の問題として当然浮上するのがどのように分担わけしていくかということであった。

 

 

 

陳宮「特に江夏に行く組を考えるのが問題になってきますな。少なくとも相手は万全の準備を整えた攻めの姿勢の曹操軍。孫策劉備軍の

 

勝機は薄いでしょうし、こちらもそれ相応の覚悟で行かなければいけないのです」

 

 

 

陳宮の言うように、曹操軍と孫策劉備軍の戦力は単純に比較しただけでも圧倒的に差があり、

 

地の利を加味しても孫策劉備軍の勝機は薄いと言うことができ、そこに援軍として向かうとなると、かなりの危険が伴うと思われた。

 

 

 

公孫賛「負け戦と知っての援軍か・・・やっぱり色々厳しいものがあるよな・・・」

 

高順「ですが、江夏に援軍を送らなければ本命の一刀様救出組の方に影響が出る・・・なかなか難しい選択ですね」

 

 

 

ただでは済まないだろう場所に援軍に向かう。

 

しかも、北郷を救える可能性を上げるためには誰かが行かなければならない。

 

そのような厳しい選択を迫られ、各々険しい表情を作りながら立候補できずにいた。

 

 

 

呂布「・・・・・・・・・なら、恋が―――」

 

魏延「ワタシが行こう」

 

 

 

そして、そのような重たい空気の中、呂布が意を決して立候補しようとしたその時、呂布の声をかき消すように魏延が自ら名乗り出た。

 

 

 

張遼「何やて!?えーんかいな、アンタ、さっきウチの次に一刀救出組に立候補してたやんか!?」

 

魏延「当然構わなくはないが、少なくとも恋は絶対お館救出組でないとダメだ。何といってもウチの最高戦力だからな」

 

 

 

張遼の驚きの声に、しかし魏延は冷静に切り返し、自軍が誇る最高戦力は、陽動ではなく本命に投入されるべきだと説いた。

 

 

 

呂布「・・・・・・けど、焔耶も一刀助けたい・・・」

 

 

魏延「だが、それはワタシに限らず皆同じ気持ちだろう。だったら、あとはどれだけ戦場で活躍できるか、つまり、生き残れるかが判断

 

材料になる。江夏での戦闘なら恐らく海上戦だろう。それなら、この中で一番泳ぎの得意なワタシが行くのが筋というものだ。これも、

 

適材適所というやつだな」

 

 

高順「焔耶・・・」

 

 

 

呂布は呂布で、当然魏延も他の者同様北郷を助けたい思いは強いはずと悲しげな表情で魏延を気遣うが、

 

それでも、魏延は海上戦が予想される江夏に行くのは、それに見合った動きのできる自分であると主張した。

 

確かに、この場においてまともな泳ぎの機会があったものと言えば、長江流域である荊州出身の魏延か鳳統ぐらいのものであった。

 

 

 

厳顔「・・・わかった。みな、ここは焔耶の気持ちをくみ取ってやるべきだろう。・・・本当に良いのだな?」

 

魏延「はい、少なくとも皆に任せていればお館は大丈夫でしょうから」

 

 

 

そのような魏延の決意を察し、厳顔は了承すると共に再度念を押して確認をとるが、魏延の意志に一切の揺るぎはなかった。

 

 

 

鳳統「ありがとございます、焔耶さん。では、軍師として私も同行させてもらいます」

 

 

 

すると、今度は鳳統が魏延に礼を述べると共に、自らも江夏援軍組に名乗りでた。

 

 

 

魏延「何!?別にワタシ一人で十分だ。雛里はお館を救出するためにその知恵を絞ってくれればいいだろう?」

 

 

張遼「せや、焔耶が行くって決めたんや。それは野暮ってもんやで。それに焔耶と違って雛里やと危なすぎる。ここは焔耶に任せておく

 

べきやろ」

 

 

陳宮「先ほども言いましたが江夏は厳しい戦場になるはずなのです。いざとなればすぐに戦場を離脱できるようにするためにも、動ける

 

ものでないと、まして雛里が行っては下手をすれば・・・」

 

 

 

鳳統の予想外の申し出に、ある程度覚悟を決めて立候補していた魏延は勿論のこと、

 

魏延とは違い鳳統ではあまりに危険すぎると、皆次々に考えを改めるよう鳳統に促すが、

 

 

 

鳳統「確かに江夏の方が厳しい戦いを強いられるでしょう。ですが、私は江夏の援軍は陽動と言いましたが、別に負け戦をするつもりは

 

ありません」

 

 

 

鳳統は引き下がらないだけでなく、江夏において敗けるつもりはないと宣言したのである。

 

 

 

張遼「何やて!?」

 

厳顔「勝つための策があると?」

 

 

鳳統「いいえ、それはまだ何も・・・ですが、江夏の劉備軍には私の知己、諸葛亮や徐庶が所属しています。特に臥竜と称される諸葛亮の

 

才については改めて言うまでもありませんね。彼女たちとなら連携もとりやすいでしょうし、勝機が見えてくるかもしれません」

 

 

高順「なるほど、臥竜鳳雛揃い踏みで戦いに臨むというわけですね」

 

 

 

勝つための策らしい策がなくとも、諸葛亮や徐庶といった規格外の知者たちとの連携を取ること。

 

鳳統にとってはそれらも計算に入れて、江夏への援軍投入を決断したのであった。

 

 

 

呂布「・・・・・・焔耶、雛里のことを頼む」

 

魏延「・・・わかった。そういうことなら、ワタシの武にかけて、必ず雛里共々無事に戦い抜いてみせよう」

 

 

 

すると、鳳統の言葉を受け止めた呂布は、無表情ながらも真剣な面持ちで一緒に向かう魏延に鳳統の身の安全をたくし、

 

魏延もまた真面目な顔で決意を上書きするのであった。

 

 

 

陳宮「では、あとは誰を益州に残すか―――」

 

厳顔「ねねよ、皆までいうな。それはわしが引き受けよう」

 

 

 

すると、陳宮が残りの益州残留組を選ぼうとしたその時、厳顔が、陳宮が言い終わる前に割って入るように自ら進んで立候補した。

 

 

 

張遼「桔梗はんはそれでもええんかいな?」

 

 

厳顔「この中で一番長くここにおるのはわしだ。それに最近遠方への遠征に行っていないせいか、長時間馬に乗ると腰をいわしてしまう

 

ようでな。許までの強行軍などとてもではないが腰が持たぬ」

 

 

魏延「桔梗様・・・」

 

 

 

張遼の問いかけに、厳顔は何ということはないと、腰のあたりをさすりながら、

 

許までの遠征など、まして休みなしの強行軍となると、とてもじゃないが体が持たないと告げた。

 

しかし、そのような厳顔の様子に、その心のウチを悟っているのか、魏延は寂しそうな様子で厳顔を見つめていた。

 

 

 

厳顔「そのような顔をするな。なに、心配はいらぬ。この前は南蛮の動きが予測できず慌ててしまい不甲斐ない姿を見せてしまったが、

 

今は南蛮が不定期に暴走すると分かっているだけに心づもりもできておる。お主たちがおらずとも対応してみせるさ」

 

 

 

すると、厳顔は魏延の様子に嘆息すると、ワザとなのかそうでないのか、

 

魏延の気持ちを読み取らない、見当違いの返しで魏延を安心させようと答えた。

 

しかし、このような対応こそが厳顔流の思いやりなのかもしれない。

 

 

 

陳宮「・・・わかりましたです。なら、一応法正を漢中から緊急招致しておくです。火急の時は法正の知恵を借りるといいです」

 

厳顔「うむ、そうしてもらえると助かる」

 

 

 

厳顔の申し出を受け、それを受け入れた陳宮は、スケットとして法正を成都に呼び戻すことを提案した。

 

それを聞いた厳顔が胸をなでおろしていたところを見るに、実際はかなりの覚悟を持って成都残留組に立候補したとうかがえた。

 

それもそのはず、成都残留組とはつまり、北郷救出や江夏への援軍で主力が抜けている中、

 

南蛮族などの外患から本拠を守らなければならないのである。

 

仮に失敗すれば本拠を失うという、ある意味において3組の中で一番重要ともいえるポジションに、厳顔は自ら立候補したのである。

 

そのような中、法正という貴重な知者が傍にいてくれるだけでどれだけ安心感が増すだろうか。

 

それらの思いがすべて、厳顔が胸をなでおろすという動作に集約されていた。

 

 

 

鳳統「ありがとうございます。本当は南蛮対策を担当している私が務めるべきなのですが・・・」

 

厳顔「構わぬ。これもまた適材適所というやつだろう。お主は江夏の方で存分にその才を奮うがよい」

 

鳳統「・・・はいです」

 

 

 

鳳統は自身が南蛮対策を一任されているだけに、今回厳顔に任せる形になってしまい申し訳なさそうに謝罪するが、

 

適材適所と厳顔は穏やかな顔で気にしないように告げると、鳳統は安心したように柔らかく微笑んだ。

 

 

 

陳宮「では、決定事項を整理しますぞ。まず、江夏援軍組が焔耶と雛里。益州残留組が桔梗殿。一刀殿救出組が恋殿、霞、なな、そして、

 

ねねということですが、白蓮殿も協力してくれるということでよろしいですか?」

 

 

公孫賛「ああ、微力ながら協力させてもらうよ」

 

 

 

そして、最後に陳宮が今回の話し合いの結果決まった組み分けを整理していくとともに、

 

公孫賛についても、再度協力を仰げるか確認を取り、対して公孫賛は握り拳を作りながら快く引き受けた。

 

北郷を救出せんと、呂布たちが静かに立ち上がった瞬間である。

 

 

 

【第八十五回 第五章B:御遣い奪還編①・適材適所 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第八十五回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

改めまして長らく蒸発してしまい本当に申し訳ありませんでした。

 

言い訳しますと、今回のパートBは本当に難産でして、

 

途中エイプリルフール企画で趣向を変えてみたものの実らず四月中は実際完全放置状態でした、、、汗

 

が、ゴールデンウィークあたりから筆が進むようになって、ようやく今エピローグまでこぎつけそうなので、

 

今回見切り発車したという次第でございます。

 

 

さて、今回からBパートということで北郷軍反撃のターンとなります。

 

ただでさえ少ない戦力を3つに分散なんて、どう考えてもあり得ない話なのですが、

 

雛りんが言うような言い訳でゴリ押すことにしました。

 

焔耶の反応は意外だったかもしれませんが、焔耶の場合、頭に血が上りすぎて逆に冷静になってしまったというイメージ。

 

一見頼もしく見えますが、恐らく何かの拍子に爆発してしまうだろう危険な状態ともいえるのです。

 

さて、今後は一応主として北郷奪還組を中心に描写していくつもりで、他の組についてはチョロチョロでるかもといった感じです。

 

(ちなみに第五章が終わったら拠点フェイズか江夏組=赤壁組を投稿しようかなーなんて考えていたりしますが全くの未定です)

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

桔梗さんまたお留守番・・・

 

 


 
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