No.845359 閃次元ゲイムネプテューヌFinal 18になれなかった少年ヒノさん 2016-05-01 00:06:55 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:824 閲覧ユーザー数:786 |
少年の人生は、波乱に満ちたものだった。
3歳のある時までは神の加護に拒絶反応を示しており、死に掛けた事もあった。
それ故に「神様さえいなければ」と思うようになり、それが災いして3歳にして丁度試作段階だった【再教育】の実験台となってしまう。
7歳の頃に仮の両親が市民団体の活動をして捕まってそのまま病死した為、施設に預けられる・・・・が、8歳の頃に両親(仮)の死を知り、国を飛び出した。
独立国家設立を目論む人々のリーダー格の養子となった所からは上り坂だったが、その義父の死をきっかけに心が欠けた。
10歳の頃に不良グループにスカウトされ、馴染んで来たと同時に心が癒えて来たと思いきや、14歳の頃に国からのスパイによって
事態が収束した後、兄貴分に託された意志と思い、そして「強くあれ」という言葉で心の欠けた部分を補い、15歳にS級の危険種狩りに至るまでとなる。
16歳の頃に防衛兼奪還戦争に参加して貢献するも、敵に拉致られ再度洗脳され、17歳前半まで敵側としてすごした。
近々敵側の兵器になる所を敵の一人に助けられ、しかもその
死に際に自分を取り戻した義父と話せたことにより、ようやく少年の心は欠けた部分を取り戻した。
だがその反面、記憶は全て保持したまま精神だけ3歳の頃に戻った為に、これまでの事をぶつけるが如く怒り狂う。
その結果、神を3人殺して4人を戦闘不能にした上、1人を精神的に再起不能にさせたが、その代償として寿命が激減し、余命3年となる。
けれどその少年はそれで良かった・・・・・生きていてもうけものだった上に、「制限時間内にやる事を済ませるというのは、意外とやり甲斐があるから」「それにもし自分に来世があるなら、そこで一からやり直せばいい」との事・・・・・案外ポジティブである。
もし実験の都合がいいと再教育の
こうして少年は残りの余生を楽しんでいたが、そんな少年に最大にして【最後/最期】の試練が訪れる。
少年の名前は
遊ぶように人生を楽しむ子で在って欲しいという願いが込められた名前なのだが、その事は本人含め、もう誰も知る事はない・・・・実の親は既に亡くなっているのだから。
ある日ユウザは、女神から決闘を申し込まれた。携帯端末の画面を開くなりいきなりだったから驚いた。
指定の日に指定の場所に来るようにと言われたユウザだったが、完全に罠だと判っていた。
かと言って集団で来れば、その時の映像を用いて卑怯者呼ばわりしてシェアの足しにするだろう・・・・結果、ユウザは一人で挑む他なくなった。
「そんなわけで・・・・・女神と一騎討ちする事になりました」と馬鹿正直に報告すると、インターセンター内に居たモンスター達は荷物をまとめて出て行ってしまった。
・・・・・というのも別に見限った訳でなく、勝っても負けても後の人間同士の争いから離れるためにと、前から皆で相談していた事である。
人間の中にはモンスターと家庭を作った者もおり、ある者は再会を誓って別れ、ある者はお互い別々のところで生きようと別れ、ある者はモンスター側に嫁いだ。
・・・・・それでも希望に満ちていたのは、何時か来る
「・・・・・思えば長い夢じゃった」
竜人の長の源はそう呟いた。リンク・ワーカーの補佐として、彼の自由奔放さに最も振り回されながら充実した人生(?)を送ったと本人は語る。
彼も本当は共に戦いたかったが、「決闘の場にモンスターを引き連れている卑怯者」等と言った女神達の
「・・・・・戦いで亡くなる子孫は、お主で最期にして欲しいのう・・・・・・・・」
「・・・・・・・ごめん、お爺ちゃん。」
「その言葉やめい、泣きそうになる・・・・・後生じゃから、せめて涙脆いジジイとしてではなく、最強最古の戦士として・・・・・去らせとくれ」
このやり取りを境に、あと3年という短い生涯を更に削って逝こうとする孫と別れた最老の住人は、インターセンターを去って行った。
<そして決闘当日・・・・・>
指定された場所でユウザが待っていると、約束の時間にリラがやって来た・・・・・・数千数万の兵士を引き連れて。
しかも全ての兵士が信仰心の高い高位の契約者で、相当殺しにかかっている。
「やっぱりか」と思いながら、ユウザは直してもらった上に改造してもらった剣を構える。
「どうやら見限られたようですね・・・・・行きなさい!ゲイムギョウ界の兵士達!敵は一人!恐れることはありません!!」
リラは計画通りと思いながら、兵士達をユウザにけしかけた。兵士達がユウザに襲い掛かろうとしたその時・・・・・
「良くぞ来た!後に語り継がれるであろう、神聖なる決闘の生き証人達よ!!」
「えっっっっっ!?」
襲おうとした兵士達は、歓迎の言葉に立ち止まってしまった。
「わが名はユウザ・ワーカー!此度の決戦において、そこな女神に決闘を申し込んだ!!まさかこれ以上犠牲を生まないで済むと快く受けてくれただけでなく、見届け人まで用意してくれるとは、感謝しようにもし切れない!!!」
ユウザの演説に、敵側の兵士達は全員固まってしまった・・・・・率いたリラも何がなんだかわからない状態だ。
さらにユウザの演説は続く。
「このユウザ・ワーカー、一国の当主として、貴行の気高さに応える戦いをする事を誓おう!!」
・・・・それは得意中の得意である不意打ちを使わず、正々堂々と剣を交えると言うことを意味した。
この敵すら圧倒する演説に、兵士達は戸惑った・・・・が、「そんな話聞いて無い」と兵士の一人が再び構えようとした。
「どうした諸君!・・・・まさか言われてなかったのか?・・・・成程!試されていたのか!!!」
「え、何を?」という表情のリラと兵士達に畳み掛けるように演説を続ける。
「あえて言わないことにより、この決闘に水を差さないかどうか、諸君らの忠誠心を、意思を試していたと見える!!流石は次世代の女神だ!これは余計なことをしてしまった!!!」
「もしかして、こっちに来た女神様が一人だけなのって・・・・・・」
「そういうことだろうなぁ!そんなわけだ諸君!!!俺に機会をくれ!その女神の厚意に応える機会を!!!」
兵士達は納得しだした・・・・・もし決闘をする気が無かったら、戦力を一箇所に集めて数の暴力で圧倒する筈だから。
ユウザは予感がしていた・・・・【女神が一人しか居ない】事、【付いて来た兵士達は詳しい事情とか知られて無い】事
これは人には言えない計画でも立てているのではないか・・・・ということを意味している気がしたからだ。
「え・・・・・え?」
リラが通れるように、兵士達が道を開け「御武運を」と羨望の眼差しをリラに向ける・・・・・どうやら上手く兵士達を言いくるめられたようだ。
ここで攻撃するよう命令すれば「女神様は敵を騙して且つ、自分は敵が消耗するまで安全な所で待機するつもりなのか」と疑われかねない。
戦争とはいえ、女神は敬われてこそである。
そして何より彼らには国に家族や友人など、自分の帰りを待つ者がおり、女神は信仰しているもののそれらと引き換えには出来なかった。
さて次はどうするか・・・・そう考えていたユウザは直後、信じられない光景を目にして思わず走り出す事になる。
<一方その頃>
「あいつ・・・・上手くやってるんでしょうね」
「なになにユニちゃん心配なの?別に行ってもかまわないよ、わたし一人で十分だから」
「違うわよ、上手く引き付けてくれなきゃあたしたちの計画が台無しじゃない」
ユウザが演説している間、二人の少女が、インターセンターの拠点に向かって目立たないように走っていた。
一人は軍服の少女、ネクストブラックのユニ、そしてもう一人は可愛らしいドレスの少女、ネクストホワイトのメリーだ。
名前から分かるように、二人とも
三人の次世代女神の目的は唯一つ・・・・・それはユウザを絶望させることだった。
それぞれの姉を殺したユウザに復讐をするためのこの作戦は、ユウザと感覚を共有した事で行動パターンを読んだリラが計画したものだった。
馬鹿正直に挑まざるを得ない状況を作り、それで時間をかけたせいで居場所とそこに済む住民を失った絶望を味あわせ、女神を手にかけたことを後悔させる為に。
最早気高さや誇りのかけらも無いものだったが、そうでもしなければ気が治まらなかった・・・・それにこれ以上女神の面子を汚すわけにも行かなかった。
その為にユニは憧れを捨て、ロムとラムも【一人前】になる為に身も心も混ざり合い、一つとなった。
「やれやれ・・・・・やっぱ復讐者ってのは手段を選ばんもんなんだな」
「「っ!!」」
上から鉛弾の雨が降り注ぎ、二人は後ろに跳んだ。そして雨が止んだ後、狙ったかのように着弾地点に二人の青年が着地した。
二人の名前はチータ&デバッカ・・・・ユウザが決闘すると言い出していやな予感がして待ち構えていた。
「・・・・っ!どきなさいっ!さもないと穴だらけにするわよ!!」
「やってみろよ・・・・でき「出来るものならな」おい!台詞取るなよ!」
「そこは変わりばんこで言うところだろ、普通。」
「・・・・・まあいいや」
女神の前に立ちふさがった人神。彼らの目的は二人の女神の逆で、ユウザの時間稼ぎだ。
<そしてその頃・・・・>
「・・・・・ッ!」
「・・・・・ふん」
兵士達は、今目の前に広がっているこの光景を理解出来なかった。
我らが女神リラが敵のユウザと剣を交えていて、周囲には兵士達の屍があって、その兵士達を殺したのが・・・・・リラだという事を。
「なに・・・・っしてんだっ!!」
「何って・・・・・敵に言いくるめられた裏切り者を罰しているのですが?」
「それにしたってやりすぎだろ!」
「これは戦争ですよ?」
「決闘って言い出した奴が!!」
「まあでも、死んだ契約者の命は私の力になりますし、後々精神を操られた事にしましょう・・・・それに今もこうして役立っているのですしっ!!!」
つば競り合いを制してリラはユウザを切りかかる・・・と思いきや、兵士の群れに切りかかる。
思わずユウザはそれを防ぐ、その後また別の兵士の群れに切りかかってまた防ぐ、そして・・・・・
「いい加減にしろ!お前の仲間だろ!!」
「何故庇うのです?貴方の敵でしょう?」
「思わず守っちまうんだよ!!!」
「だからやってるんですよっ!!!」
リラの腹に蹴り入れて距離を取る。いかに力に差があれど、体重がそこまで重いわけでもないから押し出すのは難しくない。
リラが人を襲い続け、ユウザが人を護り続ける。その度にユウザは疲労し、傷付き、このままいけば死ぬ可能性まであると思えるほどだった。
けれど全力で戦うと周囲にも被害がかかる為、出力は制限せざるを得ない・・・・・そこはリラの思惑通りだった。
(このままいたぶりつつ時間を稼ぎ、他の二人が拠点を住民ごと焦土に帰す・・・・自分の無力さを呪いなさい、
「ぜんたーい!構え!!」
二人が距離を取った瞬間、兵士達が一斉に銃をユウザに向ける。
当然と言わんばかりの顔をするリラと流石に忠誠心は堅いなと感心するユウザ・・・だが、二人の予想に反した思いがけない行動をとった。
「撃てえええええええええ!!!」
兵士達が全員、一糸乱れず、まるで打ち合わせたかのように、リラにすばやく向けて引き金を引いた。
その時の兵士達の手の甲には、以前はあった契約の印が消えていた。
思わぬ不意打ち&裏切りに驚きを隠しきれぬままリラは右手に持っている刀で銃弾を打ち落とす。
そんな中でユウザは銃弾をかいくぐり、青い炎を封じ込めて拳に挟んだ投剣を、リラの左腕に突き刺した。
直後に急激に膨らみだした左腕を見て、直感でリラは左腕を切り落とした。
切り落とされた左腕は、青い炎をあげながら木っ端微塵に爆散した。
「そんな暇があるならとっとと逃げろよ・・・・まあでも・・・・・ナイスガッツだった、正直助かった(・ω・)b」
その一歩間違えれば殺されかねない兵士達の命がけの行為を、純粋に賞賛した後、ユウザはご乱心のまま裏切り者を狩ろうとやっけになり始めて隙だらけなリラの右腕を切り落とした。
剣の名は【ゲハバーン・カイ】・・・・おやっさんが砕け散ったゲハバーンを数週間で直し、ついでに改造したものだ。
つまり切り落とした剣は取り込まれ、それが治る事はないと言う事である・・・のだが、何故か吸収されなかった。
「周囲の信用を失い、両腕を失った・・・・お前に勝ち目はない、おとなしく負けを認めろ」と言って剣を向けるユウザ。
ユウザは女神と戦う場合、いかなる場合でも殺さず倒す予定だった。殺した後で統一して圧制をしいても、信仰者達が素直に言うことを聞く保証は無いからだ。
ならば女神自身に負けを認めさせた方が、ユウザは後々楽になると考えていた。
「(しかしまさか味方を殺すとは思わなかったよ・・・・・ある意味迷いが無い)お前達は早く逃げろ。契約印は消えてるようだけど、コイツまた何をするか・・・・っ!?」
ユウザが辺りを見渡すと、リラが殺した筈の遺体とその血の跡が【消えていた】
大技戦いの衝撃で吹き飛ぶ程軽いわけでもなし、一体何処に行ったのかと見渡すと、リラが突然発光した。
無くなった両腕には二本の刀が挿し込まれていて、これまで見た刀の刀身が左に挿しこまれていたが鍔はなく、右腕に挿し込まれている刀には見覚えのある鍔があった。
(これまで鞘で斬ってたのか・・・・・と言うか何で柄が見えないところまで刺さってるんだ?奴には両腕が無いはず・・・・ひとりでに刀が?)
ユウザが思考をめぐらせて様子を見ていると、兵士達が銃を構える。
「何やってるんだ!」
「こっちの台詞だ!何を企んでいても、起きる前なら奴を倒すべきだろ!」
「俺たちをコケにしやがって・・・・仲間の敵だ!」
「撃てええええええええええ!!!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!」
ユウザの制止も虚しく、兵士達がリラに向けて発砲する・・・・・と同時に何か衝撃波が飛んできた。
「何かマズい」と予感したユウザが咄嗟に剣で防ぐが、あまりに力強いのか押されてしまった。
ちらりと横を見ると、兵士達の首が吹き飛んでいた・・・・と同時に、兵士達は光の粒子となってリラに吸い込まれていった。
それを見て切り殺した女神を取り込むゲハバーンを連想したユウザは、同時にゲハバーンが砕けたあの一瞬も脳裏に浮かんだ。
「まさか・・・・お前は・・・・・」
ユウザは考えた・・・・
それは現実に起きている事で、自分の考察が合っている事だと再確認し、ユウザは叫ぶ
「何処まで人を・・・・贄にすれば気が済むんだ!!」
それは奇しくも、リンク・ワーカーが契約システムの存在を知った時と同じだった。
リラの発光が激しくなり、欠損した両腕の断面に差し込まれた刀と鞘が腕に変換される。
纏うものは機械のような布のような・・・・少なくとも、従来のように身体のラインがくっきり見えるボディスーツ姿ではなかった。
コートを羽織ったかのような形状のスラスターと装甲、何か仕込んでいるように見える機械的な両腕両脚
コートの下にも服を模したような鎧を着込んでおり、露出はほぼ皆無だった。
発光が納まり姿を現したリラを見たユウザは、その雰囲気と姿がある人物と重なった。
「父・・・・・さん・・・・・・?」
そっくりだった。姿形ではない、そっと吹き抜ける冷めたそよ風のような気配が、標的を刺すような視線が・・・・
自然体で虚ろなその表情が、リンク・ワーカーそっくりだった。
「どうして・・・・・・?」
「グレイヴシステム・・・・この身に宿した死者の魂を力とする・・・・・「そんな事を聞いてるんじゃ」そしてこれが
ユウザの質問に答えず、ただただ呟くように語るリラ・・・・表情だけでなく、その心も虚ろのようだ。
「
虚ろな顔が歪む様な笑みを浮かべ、己の胸に手を当てる。
視界にはユウザどころか世界そのものが映ってないかのように、
そんなリラを見てユウザは思った、「『お姉ちゃん』とか『パパ』とか言ってたけど、もしかして・・・・」と
「まさかお前の中に・・・【父さんがいる】のか!?」
確かめずにはいられなかった、叫ばずにはいられなかった、そこに父がいるのかと。
そんなユウザの声に反応したのか、リラはユウザに顔を向ける。
「・・・・誰?アナタのせいでパパがもがき始めたの」
リラは右腕を銃に変形させて光弾を撃ち、ユウザはそれを避ける。
一瞬の間もなくリラは、今度は両腕をキャノン砲に変えてレーザーを放ち、ユウザは剣で流し逸らす。
「どうしてワタシからパパを引き離すつもりなの?アナタは何様なの?ワタシとパパの・・・・
狂ったような叫びをあげるリラに、ユウザは剣を向ける。
<一方その頃>
「あーあ、しぶとく邪魔されて気分悪くなっちゃったよ・・・もう帰っていい?」
「良い訳無いでしょうが」
「じょーだんだよじょーだん。いくらこいつらがしつこかったとしても、連中にどーんってやればスッキリするしね!」
ユウザが変異したリラと戦っている中、チータとデバッカも戦っていた・・・・のだが、二人の女神の姿が変わった瞬間、あっけなく倒れてしまった。
ユニは軍服から背中が開いたボディスーツに変わっており、周囲に火炎放射器、散弾銃、ライフル、ガトリング等の21の重火器を浮かべている。
これは憧れる事、追いかける事を止めて前に行こうという意志、21の重火器は後には何も残さないという遺志が現れていた。
対してメリーはお姫様のようなかわいらしいドレスが装飾に彩られた女王のような豪華なものとなり、それぞれ先端がハートとダイヤ、スペードとクローバーになっている二本の杖を両手に一本ずつ持っていた。
「この気配・・・・あいつも変身したようだけど・・・・・・まーた暴走してるわね」
「それじゃーちゃっちゃと済ませにいこっか・・・・ん?」
飛ぼうとした時、何かに脚を摑まれた二人が足元を見ると・・・・・チータがいた。
「へへっ・・・・意地でも行かせねえ゛っ」
「離っしなっさいっよっ!」
「しつっっこいのよこの変態!痴漢!ストーカー!ロリコン!」
ユニとメリーが何度も踏みつけても、チータは意地でも離そうとしなかった。
ユウザとは付き合いがほんの数ヶ月程度だったが、一緒にクエストに行って共に過ごしてきた日々は濃厚だった。
地図を忘れて勘で進んだらモンスターハウスに入ったり、「ひきつけに行ってくる」と言って飛び出したユウザが標的の大型汚染モンスターを大量に引き連れて来たり、こんどはユウザを待機させて先行して行って中々見つからずに帰ってきたら既にユウザが汚染化した標的を仕留めていたり・・・・・
兎に角大変なことが連続で起きて、スリリングな体験をした。
それと「一人で暮らすには広すぎるから」と、元々住んでいたワーカー宅に移るときに一緒に住まわせてくれた。
性知識がほぼ皆無なユウザを言いくるめてワーカーの私室にエロ本が無いか探索したり、帰還祝いに義理の祖父が作ってくれたすき焼き鍋やバーベキュー等といった肉料理のオンパレードをめぐってガチ喧嘩したりもした。
そんな僅かでたあいもない平凡な日々だったが、色々な意味で修羅場を潜って来た二人にとってはかけがえの無いものだった。
「・・・・・それが報酬ってんなら、俺は・・・・・・・」
「はぁ!?何言ってんのコイツ!!」
「踏まれるのが報酬!?キモい!触るな!いい加減離せ!」
踏み付けだけでなく、杖で殴ったり魔法をぶつけたり銃身で殴ったり火炎放射器で火炙ったりするユニとメリーだが、チータは離さなかった。
「生きているのか?」「こいつホントに人間か?」そう思っていた二人はハッと気づく・・・・・【もう一人が居ない】
存在感があまりにも薄かったものだから居なくても全然気づかなかった二人は焦り始める。
もしもう一人の方が住民達にこの事を知らせたら、拠点から住民が外に避難して計画がパーになるどころか、下手すれば住民達が自分の国に入ってこの事を広められ、
「ところでよぉ・・・・・お前ら自分らの事
「ったく何質問してんのよ!?そこまで余裕があるの!?」
「待ちなさいメリー!コイツのペースに乗っかったら・・・」
「どーせこいつは引っ付いてるだけで何も出来ないわよ!冥土の土産にお得意のシェアアウトとやらが効かない事を教えてやるわ!」
踏まれながらも焼かれながらも、飄々と問いかけるチータに、メリーは完全に頭に血が上り、ユニの制止を聞かずにしゃべり始めた。
「わたし達には
「は?何言ってんだお前。女神はシェアあってのもんじゃねーかよ」
「もうそんなのいらないのよ。だってわたし達は、世界と接続してそこから力をもらってるんだから!!」
メリーの話によると、これがネクストシステムの完成系らしい。
女神の力が弱まると代理を立てるという世界の
ネクストシステムは、それを利用して世界とのパイプラインを作り、女神がそれと接続する事で、シェアエナジーを必要としなくなるというものだった。
最初は信仰の力に世界の力の一部を上乗せするというものだったが、ユウザとの戦いによるデータによって劇的に研究が進んだことで完成した。
だが絶大な力を得られる反面、
そこでそのリスクの対策として、ネクストシステムを部分的に経験した女神の魂をその身に宿す事となった。
その為に用いられたのが、死者の魂を宿してその力を用いるグレイヴシステム・・・・・グレイヴはその試作として造られたものだった。
ネクストシステムによる進化と同時にゲハバーンの欠片と融合する事によって、そこに宿っていたそれぞれの姉の女神の魂を宿す試みが行われた。
それでもリスク和らぐ程度だったが、ユニはノワールに憧れ追いかけ続けていた自分自身と決別して、ロムとラムは半人前の自分自身と決別して、
そして迷わず立ち止まらなくなったネプギアはあっさりなれる筈だったのだが・・・・・彼女の強すぎる
それでもネプギアは今更後戻りは出来ないとして、自らの名をリラと改めた・・・・本当は、やっと手にした【父】を手放したくなかったからかもしれないが。
そして
「分かった?つまりあんたがどんなに頑張っても、あんたの相方がどんなに真実を広めても、わたし達にはノーダメージってわけ・・・・ぶっちゃけ、
「ちょっとメリー!それ言いすぎよ!いくらコイツが中々倒れないからって・・・・」
「ふんっ、良いのよ。どうせ国のみんなには聞かれないんだし、こいつも直ぐに「そいつはつまり・・・・俺たちは要らないって事か?」そーよ、だからあんた達の思い通りになんか「なっちまったんだなこれが!!」はぁ?」
チータが二人の女神に不適な笑みを浮かべる。メリーは頭に血が上ってて気づかなかったが、ユニはある違和感に気づいた・・・・・【シェアエナジーが減っている】
「あんた・・・・何したの!?」
「・・・・ユニちゃんどうしたの?血相が悪いほうに変わってるよ?」
「今更気付いても遅ぇんだよ・・・・てめぇらのありがた~い自己解説含め、ここやユウザんとこでの事は絶賛
「え?何ですって!?」
「お前ら・・・・あの連中はトップがいなきゃ何も出来ないと思った?残念!今のも含め、てめ~らんとこの秘密を現在進行系で暴露且つ拡散中でしたぁ!ユウザニハナイショダヨ!!」
インターセンターの住民は、出て行った者達も含めて何もして無いわけではなかった。
たとえば手先の器用な者達が総出で迷彩付きのライブカメラ付きビットを作り、ほぼ何処にでも潜めるスライヌ種等が隠れながらそれを運送して設置、一部はユウザやチータ達が女神と戦っているところを直接撮影。
それを機械種や霊族が国の放送局にハッキングを仕掛けて撮影している映像をテレビに映していた。
決戦前には飛龍種等の空を飛べる者達が野良の振りして飛びながら国外に出た女神の様子を見て報告し、戦闘員は離れた女神が合流するのを防ぐ為の防衛線を密かに張った。
更にそれよりもっと前には当主の女神が自室に引き篭ってて他国との繋がりも断っており、内政がガッタガタなリーンボックスを外にバレずに且つ迅速に
それらの指揮をしたのは
元々レスは国政について色々学んでおり、将来はインターセンターを治め、【国としてのみんなの居場所】を作るという夢があったが、その予行演習と称されて「何事も経験だ」と国を押し付けられる事になるとは本人も思わなかっただろう。
そして「上手くやれるかな」と思いつつ、他の国にはバレずに国を治めるという胃に穴が開きそうになる日々を送っていた・・・・・この日を待ちながら。
「因みに俺は人間じゃねぇ、分かりやすい言い方だと・・・そう、【改造人間】だよ。」
「「っ!!」」
そう言いながらニヤケるチータの顔に気を取られていた一瞬を突かれ、ユニとメリーは脚を払われた。
チータはその直後に素早く拳銃を引き抜いて連射したが、瞬時に体勢を立て直した二人に全て弾かれてしまった。
「おーおーやっぱ反応速度がパネェなぁマジで・・・・いたた」
そう言ってチータは揺らめきながら立ち上がって砂埃を払っていたが、ユニとメリーはまるで得体の知れないものを見るような目で見ているだけで仕掛けなかった。
「何をそんなに警戒してるんだ?ご覧のとおり頑丈なだけが取り柄の無能ですぜ」とチータが挑発しても、様子を伺うだけだった。
二人には目の前にいる男が、姉の女神達を殺したあの男に見えた。
それは死に掛けた事があるからか、姉達の死を姉の魂にある記憶で見たからか、或いはその両方か、その男から目を離さなかった。
「いいのかよ?お友達との事もあるし、作戦を遂行中なんだろ?それなのに・・・・【俺一人だけを見てて良いのか?】」
二人の女神は後ろに気配を感じてすぐさま振り向いた時には・・・・・
「じゃーな
「全身全霊全力全開・・・・・豪火!剣ッ!嵐ッ!!」
デバッカが女神二人を背後から切り刻み抜けた後だった。
「・・・・・最も、それ以上は成長しねぇんだったっけな、お前らは」
<一方その頃・・・・>
チータとデバッカも逆転を決め、後はユウザが勝利するだけだったのだが・・・・そうは問屋がおろさなかった。
剣では吸収出来ない事を右腕を切り落とした後で悟ったユウザは、一度剣を背負って戦うことにした。
元々ユウザはリンク・ワーカーに憧れ、それを真似た
更に見るからに我を忘れているリラの様子を見て、「これを殺さず倒すのは難しい」と判断しながらも、方針は変えなかった。
そこでユウザは、あの厄介な変幻自在の四肢をどうにかして損失させようと考え、接近法を見出すために先ずは走って接近した。
「パパは渡さない・・・・ワタシのパパはワタシのなんだから!!」
それを見て反応したのか、リラは右腕を銃に変えて、光弾を連射する。
規則の無い出鱈目なものかと思いきや、その想いは本物なのか、ユウザに狙いを澄まして正確に撃っていた。
光弾もユウザを追うように軌道を曲げる為、突破するのは至難の業だった。
その為ユウザは、すぐさま別の手段に移項する。今度は離れた場所からの飛び道具を試みた。
物は試しということで、ユウザは投剣を投げ続ける。リラは無意識に且つ常に障壁を張る為、投剣は通る事はなく弾かれ続ける。
一見無意味な行動だが、それでもユウザはそれを続ける・・・・あの障壁が常に張り続けているのか否かを試すためだ。
常に張っているなら高威力で継続した攻撃を与え続ける、張っていない瞬間があるならその一瞬に最大火力をぶつける。
絶え間ない投剣によるけん制は、その内のどちらが有効なのかを判断するための布石である。
その結果、リラが攻撃する間には展開されてない事が分かり、その一瞬に可能な限りの最大火力をぶつけることに決めた。
ユウザが出せる最大火力を出す手段は、リラの左腕を爆発させた魔法・・・・
特性上発生して直ぐに消えてしまうため、至近距離でないと有効でないのと爆発する前に離れないと自分も巻き添えを食らって吹っ飛ぶという欠点はあるものの、生きているなら当てれば必殺というトンデモ魔法である。
しかし必殺であるが故に、当てた瞬間に四肢どころか本体も吹っ飛びかねない為、可能な限りとなるとあの剣の一振りしかないが、近づくのは困難・・・・そんな時、ユウザの脳裏にネプテューヌが見せたある技が浮かんだ。
「・・・・・・・仕方が無い」
出来るかどうか分からない、出来たとしても通じるかどうかも定かではない、だがやるしかない・・・・そう心に決めたユウザは、姿勢を低くおとし、居合いと似た構えをとる。
それから深呼吸を一回した後、力を溜める、溜める、溜める。剣に魔力を、込める、込める、込める。
十分に溜めて込めた後、構えを崩さず腰を落としたまま大地を蹴り跳んだ。
襲い掛かるリラの光弾の嵐を、レーザーの雨を、斬撃の風を、ジグザグに跳んでかわす。
細かな修正が出来ないので攻撃が当たっても構わず進み、届く間合いに入った直後に更に加速し、すれ違い様に振り抜いた・・・・・が、片手で止められた。
「・・・・・ありがとう、お陰で正気に・・・・・戻れました」
正気に戻ったリラが皮肉ったようにお礼を言った・・・・・ユウザの思いついた最良の一手は、最悪の一手だった。
他の女神なら反応も出来ずに斬り抜けただろう、一刀で四肢のいずれかを両断出来ただろう・・・・・だがしかし、相手が悪かった。
相手は技の元の使い手・・・・ネプテューヌの戦いぶりを、ユウザよりもずっと・・・・どころか、この世界の中で最も見てきたネプテューヌの妹、ネプギアだったのだから。
しかもリラはネプテューヌと似た動きを見たことで姉との思い出と、その姉を殺したユウザへの復讐心によって我に返ってしまった。
そのリラに剣を摑まれたユウザは、打つ手が無い為死を覚悟した・・・・とリラは思っていた。
認めたくは無いが、根が自分と良く似ているユウザなら、この時点でそう思うと確信していた・・・・だが実際は違った。
「・・・・・
そう唱えたユウザは、何処から沸いてきたのか、魔力が急激に膨れ上がり、その勢いでリラを後ろに押し出した。
その隙を突いてユウザはリラに向けて剣を投げた・・・・・が、リラはスラスターを噴射して間一髪でかわした・・・・しかし、ユウザが狙っていたのは【その先】だった。
「・・・・・・あ」
後ろから声がしたのでリラが振り向くと、いつの間にか次元の穴が開けられていて、更にその先にはイストワールが剣に突き刺さっていた。
いつの間に開けられた事とイストワールが刺さっていた事に驚いたが、更にそこからユウザが自分と通り過ぎてその穴を潜ろうとした事にも驚いた。
何か嫌な予感がしたリラはユウザを止めようと、且つその先にいるイストワールを巻き込まないように右腕をワイヤー付きクローに変えて飛ばした・・・・がその時、ユウザが振り向いてリラの方に左手を向けた。
「
そうユウザが呟くと、ユウザの左手から赤い障壁が発生して、クローを弾いた後、そのまま振り返ってイストワールの元へ走り去り、次元の穴も閉じた。
<プラネタワー、その地下深く>
「どうして・・・・貴方が・・・・」
剣に刺され、標本のように壁に留められた状態のイストワールが、直ぐ後ろで立っているユウザに問いかける・・・・「どうして貴方がここに来た」と
「始めから・・・・標的はあんただったんだよ・・・・【お義母さん】」
皮肉った言い方でイストワールの事をお義母さんと呼ぶユウザ・・・・・再教育の披験体として、最終兵器候補として、都合の良い人格の時のユウザにとって、その元凶であるイストワールは確かにある意味母親のような存在ではあった。
それでも義理の意味を含めたのは、やはり心から母と認めなかったからだろう。
「私を・・・・使って・・・・・どうする・・・・つもりですか・・・・・・」
ユウザはイストワールに刺さった剣を握り、小さく呟く。
「かつて黒歴史と称された女神の力を使うのさ・・・・・今、ここで・・・・・」
イストワールには覚えが無かった、記録にすらなかった・・・・・だが、ユウザは知っている、覚えている・・・・その力は、今もユウザを生かしてくれたのだから。
ユウザは剣を介して、イストワールと接続して同調すると、そこから世界の記録を読み取りながら、子供が書類に落書きするかのように、読み取った世界の記録を書き換える。
女神が存在しない世界、想いが力にならない世界、自分を生んでおきながら、自分に酷い仕打ちをしたこの世界に復讐を・・・・・と。
「
呟くように小さく唱えると、ユウザから発し空色の光が地下を覆い、タワーを覆い、都市を覆い、国を覆い、そして世界を覆いつくした・・・・・
・・・・人々の記憶が変わらぬまま【女神が存在しない世界】に変わって早二年、その間に様々なことがあった。
先ず改変前まで女神がプラネテューヌ、ラステイション、ルウィーの三国は、女神に見限られたとヤケになった人々が暴徒となり、女神あっての教会でも暴徒化が起きて壊滅した。
それを止めて統一する為にレスがリーンボックスから各国の暴徒を鎮圧すべく兵を出した。
それに対して各国の教会の残党は、適当な孤児に全身整形を施してかつて女神だった子、
その後は教祖だった者達を筆頭に反乱軍が結成され、自分達は肥大化した紛い物にもみ消された女神を愛し敬うかつての真のインターセンターだった者達だと名乗るも、本当の起源が既に常識として知られていた為に信用されなかったものの、しぶとく抵抗を続けた。
・・・・そしてとうとう、反乱軍の拠点を追い詰め、当主の元教祖達は自ら命を絶ち、内通者の元教祖も拘束して一先ず区切りが付いた。
その時レスはユウザの行方を各地に渡って尋ねたが、それらしき者を見た者は誰一人としておらず、結局仕事に戻らざるをえなくなり、ユウザ捜索は頓挫した。
・・・・その途中、女神候補生と酷似した少女四人を発見し、新たな混乱と被害の元にならないように保護した後で親元を捜したが、本人達が何も覚えてないこともあって結局レスが保護者となった・・・・引取り先もないしほっとけないからとの事。
こうしてユウザと女神がいなくなり、伝承だけのものとなったゲイムギョウ界は、何時の日からか人々にこう呼ばれることになった。
・・・・・あらゆるものが中心となり、中心同士が繋がっていくと言う意味が込められたとされている世界・・・・インターセンターと。
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詰め込み、アンチ、ヘイト注意。
頭の中のイメージが膨らんで納まらなかった