<第18話末文より抜粋>
ミク「え!?!?!?????」
ルカ「さぁ~、これからは、ミクのターンです!!!!!」
この瞬間から、テル、ミク、ルカ側の反撃が始まったのだった。
<Dear My Friends! ルカの受難 第19話 ルカの遺伝子>
(アフス城内・開発武器試験場・闘技スペース)
ミクはとにかく立ち上がったが、闘技スペースのルカコピーと、特別観覧席のルカを何度もキョロキョロして見比べていた。
(これは一体、どういうことなの?)
ミクがそう思うのも無理はない。テルの話ではルカは特別な部屋で待っている=幽閉されている、はずだ。しかし、一応敵側のミキとイロハ皇帝と共に、この闘技場に来ているのだ。本物であることは間違いない。それは納得したのだが、何故、ここに来れたのだ?
それと同じ事を思い、それ以外の事で驚愕していたのが、ユキとアルだった。ユキは、ルカの声が聞こえた後、すぐにマイクに噛みつくような勢いで、怒鳴り散らしたのだった。
ユキ「こ・・・・・・皇帝!!!!! ルカはあの部屋に幽閉していたはず! それとミキも何でここに! ま、まさか二人とも裏切ったのか!!!」
イロハ皇帝は、特別観覧室のマイクをルカと交代して、横にミキを立たせて、おもむろに返答し始めた。
イロハ「ミキも私も、裏切ったのとは少し違う。ルカを助けたのは間違いない。しかしここに来るのを決めたのは、この本物のルカさん自身だ。もし私が完全に裏切ったのなら、ルカさんの意見を聞く以前に、ルカさんをミクさん陣営に即刻帰して、この試合そのものをノーゲームにし、完全魔法陣を諦めて、全てを強制的に終わらせるだろう」
ミキ「私は当初は、ルカさんをミクさんの所に帰す意志はあった。が、今は違う」
イロハ「そう。私もミキもルカさん自身も、そういう意志はない。あくまで最終試合に準じた上で、ルカさんの考えを尊重し、この特別観覧席で、ルカさんがミクさんを応援する場を設けただけだ。この試合そのものに、皇帝としての権利を利用するのは、それだけだ」
ユキ「応援する場って、皇帝! そういうのを“加勢する”っていうんですよ!」
イロハ「しかし、応援するのはルカさんだけだ。私とミキはあくまで試合を見ているだけだ。お前達は今どうなのか、怪しいところだが、私やミキは、ルカさんを大切に思っている。それに戦っているのはミクさん自身で、ルールの通り、ルカさんがミクさんへかけられるのは、テル達と同じく声をかける事だけ。そもそもルカさんはミクさん側の仲間、コレくらいするのは、むしろ当然ではないか?」
ユキ「あ、あなただって、ルカコピーの製造の許可を下ろしたではないですか!!! それなのに、ルカさん・・・・いや、テルやミク達に付くんですか!」
イロハ「…試合は続行しているし、おまえ自身もノーゲームにするつもりがないのだから、そんなに私やミキを追求したいのなら、この試合が終わった後、私達やお前達自身も含めて、“ルカコピー事件に関する裁判”でも起こすか? 私の特権無しで、受けてやろう」
ミキ「私も異論はない。受けてたつ」
ユキ「ぬぬぬ・・・・・し、試合は中止できないし、そっちも試合の勝負に介入しない、助力もしない、あくまで“ルカの意志と権利”を尊重した扱いを行ったのみ…と言い張る…いいだろう、この事はこの場の全員が証言できる故、試合後の裁判に持ち越すことにしよう。せいぜい“今だけの皇帝の地位“を楽しむがいい」
イロハ「私もミキも暴言を受けることは覚悟の上だ。今の失言は聞かなかったことにしよう。では、最終確認だ。ルカさんがここからミクさんを応援するのは、進行的、ルール的にいいんだな?」
ユキ「ああ、構わない。どうせ、言葉の応援だけだ。それにこの程度で、こちらに利が転がり込むのなら、むしろウェルカムとも言える。いいですね? アル皇帝」
アル「あ、ああ。良いだろう」
イロハ「よし。ではルカさん、『存分に』ミクさんを応援してやってください」
ルカ「長い喧嘩だったけど、許可は下りたわけだし、たっぷり応援させていただきます」
そういうと、イロハ皇帝とミキは横の観覧席に移動し、ルカのみ、マイクの前の席に移動して、再びミクに声をかけたのだった。
ルカ「ふぅ。さーて、ミク! 許可が下りたから、これから・・・そうね、追加セコンド的な位置づけで応援するから! とにかく、気持ちを切り替えて! シャキっとしなさい!」
かなり頭の整理が出来てきたミクだが、それでもこれまでの経緯があるため、一応本物のルカに訊いてみた。
ミク「あ、あの、ルカ? あなたは、本当に本物のルカだよね?」
ルカ「さっきの問答、聞いてなかったの? 偽物なら、こんな事志願しないし、皇帝も許さないでしょ? 本当に、ほ・ん・も・の・よ」
その声をしっかり聞いたミクは、もう涙が止まらなかった!
ミク「えぐっ・・・・えぐっ・・・・・・ルカーーーーー!!!!!」
ルカ「はいはい、泣くのは試合に勝ってから! とにかく、私自身もいい気持ちになれない、その目の前の“私の偽物”を倒しちゃいましょう!!
しかし、これを黙って聞いていた“ルカコピー”が動き出した。
ルカコピー「・・・・ふぅ。本物が見えるところに来ちゃったか~、でもね、私は最初から偽物だ、って言った上で戦っているの。本物が出てこようが、『ルカの姿』をした私を、これからも撃てるの?」
チャキッ!
ミクの銃口は、今度はルカコピーの本体に向けられていた。そして、それほど銃口は揺れてなかった。
ミク「本物が見ているの。ミキさんも皇帝さんも全てをかけて観覧している、みんなの力も備わっている、これで私が迷っていたら、それこそ、なんもかんも“無にする”事になる! もう迷わない! 目の前の“敵”は、『完全な偽物』だ!」
ルカコピー(まずい、揺さぶりが足りなかったか… なら作戦変更だ)
バシュッ!!!!!
疾風弾にセットされた“今度の弾丸”には、迷いがなかった。真っ直ぐにルカコピーの胸部アーマーを狙って飛んでいった。しかし、撃たれる前に作戦を変更していたルカコピーは、“バックラー”と呼ばれる“左手の小型の盾”を胸部の目の前に翳して、今度は“ガードする”行動に切り替えていた。疾風弾はバックラーに直撃し、“かまいたちの傷”を無数に作って、消えてしまった。
ルカコピー「ふぅ~危ない危ない」
しかし目が覚めたミクは、今度こそ“ためらう”ことがなかった。銃口はルカコピーに向けられたままだった。
ミク「お前なんか! お前なんか!」
バシュ! バシュ! バシュ! バシュ!
今度は疾風弾4発を連射した。しかし今度はルカコピーの大きな左右移動で回避されてしまった。ホーミング能力でも当たらなかったので、今度の4発は、怒りで大きくルカコピー本体からはずれてしまったのだろう。それでもミクは銃口の向きをルカコピーに合わせたままだった。
しかしこの状態は、ルカコピーの新しい作戦にはまった形だった。それを見抜いたテルとルカは、同時に“忠告”を与えた。
テル「ミク! だめだ! もっと照準を絞って、連続発射弾数を減らすんだ!」
ルカ「そう! ルカコピーの策は“相手のエネルギーの大量消費”からの“長時間チャージ”よ! もう相手は“戦闘戦略”に切り替えたの!!」
テルの言葉はともかく、ルカの言葉の効果は大きかった。ミクはすぐに照準をルカコピーからはずして、一呼吸置いて、ルカに目線を移した。
ミク「わ、わかった。相手、開き直ったのね」
ルカ「そう。ここから先、問題になってくるのは、貴方とルカコピーの“戦闘能力の差”なの! 落ち着いて、頭を切り換えて!」
ミク「わ、わかったよ、落ち着く」
テルは一息ついて、目をつむってうつむき、ニコっと笑って、一言呟いた。
テル「私の助言は、どうも必要ないみたいだな。ルカさんに任せよう」
ルカコピー(ぬぬぬ・・・・自分の事ながら、あのセコンドはまずいな・・・一気に接近戦に持ち込んで、まず銃撃を封じないといかん)
ルカコピー自身も一呼吸置いてから、剣を構え直し、ミクへ左右にステップしながらジグザグダッシュで近づいていった!
ルカコピー「銃撃は接近戦と左右移動に弱い! 剣術で圧倒する!」
ミク「うわっ!」
いきなり強襲されたため、そして左右にステップ移動してきたため、ミクは銃撃の準備をすることができなかった。咄嗟に“銃剣”の剣を構えて、接近戦の構えを取るのだけで精一杯だった。
ルカコピー「よし! これでホーミング銃撃は封じたぞ!」
ミク「しかし、レンさんと学歩さんの剣術の力がある!」
ルカコピーがミクの目の前に来た瞬間、ルカコピーの剣とミクの銃剣の剣が鍔迫り合いを起こしたのだった!
ルカコピー「さすが力が込められた銃剣、とっさに反応できたか」
ミク「銃剣が・・・・自動で動いた!」
ギリギリギリ・・・・・
とても初陣に近い者の剣裁きではなかった。さすが勇者レンと学歩の能力。しかし、ルカコピーは“ルカの能力”が入れられた戦士。これだけでは終わらなかったのである。
ルカコピーはミクの近くでボソッと呟いた。
ルカコピー「・・・ミク?」
ミク「なんだ! もう何言われても騙されないよ!」
ルカコピー「そうじゃないよ。ミク、あなた、“人が斬れる”の?」
ミク「!?」
ルカコピー「私がルカのコピーであろうとなかろうと、相手は人間、ミクがその力にこのまま従ったら、私は斬られることになるんだよね」
ミク「て、敵なんだから、私に斬られるのは、と、当然じゃないか!」
ルカコピーは、姿でだませなくても、ルカの“声”で“当然のこと”を語りかければ、まだ揺さぶれると思ったのだ。
ルカコピー「…そっか、ミクは“人を撃てるし、剣で斬ることも出来るんだ”」
ミク「そ、そ、そうしなきゃ、私は勝てないじゃないか!」
ルカコピー「ミク、人を斬ったら、殺したら、理由を問わず、重い十字架を背負うことになるんだよ?」
ジャキ! ザッ!
ミクは我慢できなくなって、鍔迫り合いを起こしている剣先をスライドさせて解除し、バックステップでルカコピーと距離を取った。
ミク「はぁ・・・はぁ・・・私はこの世界に来ると決めたとき、アペンドさんに誓ったんだ! 何か起こって重い十字架を背負うことになっても、後悔しないって!」
ルカコピー「・・・・・・人って、勢いが付いている時は、大きな事、威勢のいい事を言えちゃうんだよ? でも、“その時”が本当に来る事を実感したら、ほとんどは逃げ出すか、発言を撤回するんだよ。最後まで言ったことを守れる人って、ほとんどいないこと位、わかるでしょ? さっきの銃撃はある意味、ルカの言葉で応援されたため、勢いで出来たこと」
ルカ「ミク! そいつは私の遺伝子を持った人間、言葉に惑わされちゃダメ!」
ミク「ル・・・・ルカ・・・・私・・・・本当にあいつを倒せるのかな・・・・」
アペンド「ミク! 君はこっちに来るとき、魔弾銃を受け取って、覚悟を決めたのでは無かったのか? 私はちゃんと聞いたぞ?
ルカ「ミク! アペンドさんの話が本当なら、あなたなら出来る! アイツの姿に騙されずに引き金を引けたんだから・・・そう! 距離を必ず取って、銃撃で攻めなさい! ホーミング性能で当たってくれるし、それなら出来るでしょ!?」
ルカコピー「そうはいかないな! 絶対、弾は撃たせん!」
ルカコピーはまたダッシュで近づいてきた。さすがルカの遺伝子を組む戦士、ミクの出来る攻撃を完全に封じる作戦に出た!
ミク「う、うわ!」
ガキン!
再び、鍔迫り合いが起こった! ミクの力はレンや学歩の力でまかなえているが、どうもミク本人が辛そうな顔つきに変わってきた。自動で戦える、絶対武器が離れない、この“利点”が“欠点”に変わってきてしまったような雰囲気だった。
ミク「ぐ・・・わ、私は・・・・・た・・・・戦いたく・・・・ない・・・・・」
ルカコピー(くっくっくっ、策の毒牙が効いてきたようだな)
ルカ「ミク!!! ヤツの策にはまっちゃダメ! 距離を取って!!!!」
ルカコピー「そうはいかんな! 接近戦を維持してやる!」
ミク「ぐ・・・・ル・・・・ルカ・・・・ど・・・どうしよう・・・・・」
ルカ「くっ・・・さすが私の遺伝子・・・巧妙な策を立てる・・・・・」
ミクもルカも、反撃から転じて、窮地に陥ってしまったのだった。
どうする? 初音ミク! 巡音ルカ!
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
魔導師テル:氷山キヨテル
皇帝イロハ:猫村いろは
神官ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
ルカコピー:巡音ルカ
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
変身兵士 ソニカ:SONiKA
皇帝アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
***
<残りのバトルアリーナの対戦カード>
EX最終戦 : ミク vs ルカコピー
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☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第18話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。
☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。
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