「しっかしまぁ縁があるもんだなぁ俺達」
白服の金髪青年は呟くと、隣にいた黒服の黒髪青年は「今更すぎないか」とツッコミを入れられるが「そうじゃねぇ」と返した。
この二人は一見すると、普通の人間とまったく同じ容姿ではあるが人間ではない。
人神と呼ばれる別次元のゲイムギョウ界に存在していた後天的に女神と似た力を得た者達であり、簡単に言うと改造人間である。
諸事情で元いた世界にいられなくなった二人は、停戦中のピリピリムード真っ只中なこの次元に移ったとの事らしい。
教会付近に降り立った為に襲撃者と勘違いされて逃亡し、飢餓に苦しむ中でインターセンターに流れ着いた所でそこに住んでる
その旦那さんが人間で元は大国の兵士だった事に衝撃を受けたり、人神二人にとってトラウマものの夫婦の惚気話を延々と聞かされて精神的にダメージを食らったが、一宿一飯の恩義もあってインターセンターに協力する事になった。
互いの身の上話をしたら勘違いし合って剣とか銃とか魔法とかで
そしてモンスターと人間が共存している事に今更カルチャーショックならぬディメンジョンショックを受ける人神二人なのであった。
「ほら、元いた
彼らは元いた世界でも奇妙な出来事に何度も遭遇しているようで、世界存亡の危機とか天変地異などと言った多少のことなら経験済みだが、四大国と
そんな二人の人神の黒い方、デバッカ・マイスと、白い方、チータ・プラーが最初に受けた依頼は、その当時行方不明だった担徒有座の捜索だった。
<あれは今から数ヶ月前>
「・・・・・・?(きょとん」
「・・・・・・・こいつ・・・・・だよな?」
「・・・・・・・写真で確認したから合ってる筈だ。だがこれは・・・・・」
見つかった。チータが安請け合いで引き受けたクエスト開始からまだ半日、あっさりとユウザが見つかった。
「あの・・・・お二人はどちら様で?」
「ああ、俺達はインターセンターの依頼でお前を捜していたチー「インターセンター!?」ちょっ!お、おい!待て!お前ユウザだろ!?
「何を言ってるんだ?ボクはプラネテューヌ所属のユウザ・リーオンだ!」
「ハァ!?」
事情を話そうとした所、錆付いたような黒い剣を構えられてチータは動揺した。
デバッカは手に持っていた写真をもう一度見返すが、「そっくりさんとは考えにくい・・・・やはり同一人物としか・・・・」と意外と冷静。
「んな事言ってる場合じゃねぇだろ!って言うかてめぇも何なんだよ取り敢えず一発ぶん殴って・・・・ほぶぅっ!?」
チータは殴りかかろうとしたが、デバッカの無言の
<それから・・・・>
デバッカの距離を取りながらの事情説明に納得したユウザは、目的が戦闘でない事で一息ついて剣を納めた。
「話はわかったけど・・・・ボクはインターセンターにいた覚えもないし、ましてやプラネテューヌから出たのもつい最近だ。」
「そうか・・・・それは悪かったが、構えは解いて良かったのか?一応敵なんだが。」
「敵意も殺意も戦意もないくせに何を・・・・自分から争う気なんてありませんし、話し合いで済むならそれで良しとします。幸い近くには女神様もおいでになられてません」
「(やはり写真と合致するな・・・・と言うことは洗脳?或いはクローンか?)さっきはこの馬鹿がすまなかった、後でしっかり躾けておくから許してくれ」
「躾ってペットじゃあるまいし・・・・・・」
「いや、狂犬d「だぁあれが
「おめぇも直ぐ手を出すじゃねぇか!!寧ろ俺よりも手が早いくせに何言ってやがる!」
「直ぐに喧嘩腰になる奴が何を言っている」
「あんだとコラ!」
話をしていた筈なのにいつの間にか置いていかれたユウザだったが、とりあえず気持ちを切り替えて仲裁をしようとした。
しかし会って間もないのに対応なんて出来るはずもなくあうあうと慌てるユウザをよそに、二人の口げんかはヒートアップしそうになったその時だった。
「「「っ!!!」」」
殺気に気づいた三人はその場から離れて武器を構える。会って間もないのに呼吸ががぴったり揃っていたが、誰一人気づいてなかった。
すると三人の背後から黒い骸骨ヘルメットを被った黒コートの男が現れ、三人は思わず振り向きざまに距離を取って武器を構えた・・・が、ユウザだけが構えを解いた。
「脅かさないでくださいよグレイヴさん、いつも本気で命の危機を感じますから」
「「(いつもこんな感じなんだ・・・・)」」
「仕事が来たから予備にきただけなのだが・・・・「「(無自覚で!?)」」ところでそこの二人は?」
「ああ、偶々出会った旅の人だそうです」
インターセンターの関係者と言うと一触即発
「そうか・・・・ユウザはどこか抜けているところはあるが「「「保護者か!!」」」・・・・?」
「「(そしてまた無自覚っ!?)」」
「そんな事より任務に向かうぞ、今日も護衛だそうだ。」
「あ、はい。それじゃあ二人とも」
「お、おう・・・・」
こうしてツッコミ疲れた二人は、インターセンターに帰ることとなった。
その日の二人の収穫は、「どう見ても本人な自称赤の他人、ユウザ・リーオンがいた」という事だけだった。
あと「無自覚で気配が消えているグレイヴなる黒い骸骨男と遭遇した、ユウザ・リーオンと知り合いらしい」という事もついでに報告した。
そのついでの報告で、竜人にして武人の老人の源は「やはりか・・・・」とため息をついた。それもそのはず、その黒い骸骨男は、ユウザを攫って行った張本人だからだった。
瀕死の状態でグレイヴに止めを刺される所をユウザにかばわれ、そして倒れたユウザが連れ去られる所を見る事しか出来なかった。
「儂はあやつを孫のように思っていた・・・・なのにあの時、連れ去られているのを見ておきながら動けなかった自分がふがいない・・・・・っ」
暗い表情をする源を「萎れ顔で孫自慢するジジイなんて見てらんねぇぜ」と言って出て行ってしまった・・・・・それを源は「そりゃそうじゃのぉ・・・・」と言うしかなかった。
・・・・・だがデバッカは知っている、こういう捨て台詞を吐いて単独行動をする時のチータは、これ以上ないほどに頼りになることを。
<一方その頃>
「あの・・・・今日も護衛と聞きましたが」
「そだよ~」
「その・・・・・ここ自室ですよね?」
「うん!何事も休息は必要だと思うんだー」
「護衛必要ないですよね!?と言うか毎度毎度ごろごろしてるだけじゃないですか!」
「いーじゃんけちー(ー3ー)=3」
「また義母さんが怒りますよ?」
「いーじゃんいーじゃん!あのデカブツだって私が倒したんだから敬ってよー!褒めてよー!養ってよー!」
「・・・・・・・(この
護衛任務を行っていた筈のユウザだったが、プラネテューヌ代表の女神ネプテューヌの遊び相手になっている現状に頭を抱えていた。
どうしてこうなっているのかと言うと・・・・・ネプテューヌが仕事を現在進行形でサボっているのだ。良くあることなのでもう皆さじを投げている状態である。
ユウザは護衛をしている身としては早く終わらせたい気持ちはあるが、それ以上に慣れない女の子の部屋から早く出たがっていた。
ぐーたらな性格の為に部屋も散らかっていると思われがちだが、妹の女神候補生のネプギアがまめに片付けている事もあってかそこまで散らかってない・・・・それでいいのか妹よ。
だがそんな事よりも、部屋中からする女の子の匂いは、
そしてごろごろと無防備に転がる女の子の姿を見せられている為、ユウザの理性の限界が近い。
「むー・・・・どーしてそんなに仕事をさせたがるかな~・・・・・あ、わかった~・・・・」
「・・・・・っ」
突然妖しく微笑んで、ネプテューヌがユウザにじりじりと近づき、それとは対照的にユウザは身の危険を感じたのか離れる。
壁際に追い詰められてこれ以上離れられなくなっても近づかれて焦るユウザに、ネプテューヌが「どうして逃げるのかな~?」とくすくす笑う。
「な、何のつもりですか」
「何ってなにが?」
「だ、だから・・・・・」
「うんうん解るよ男の子。誰だって異性の部屋には興味深々だもんね~」
「いや、そういうわけじゃなくて・・・・居辛いって言うか何て言うか・・・・・」
「内緒にしてあげるから、素直になって・・・・そしたらあなたの望むこと、何でもしてあ・げ・る(はぁと)」
「~~~~~~っ!!!!!!」
ネプテューヌは女神固有の能力である女神化で美しい大人の姿、パープルハートに返信して、ユウザの耳元に優しく甘く囁いた。こうかはばつぐんだ!
「どうしてこんな碌でもないことに女神化使ってるんですか!それパワーアップの手段ですよね!?使い方【間違って】ますよ!!!」
「―――――――――【間違って】・・・・・・」
瞬間、時間が止まったかのように、フリーズしたかのように、ネプテューヌが固まった。それを見たユウザが「しまった」と思わず口を塞ぐ。
「間違って・・・・・違って・・・・・・・がって・・・・・・・・」
そしてしゃべりだしたかと思えば、壊れた機械のように何度も何度も呟きだした。
ユウザは自身の義母でもあるプラネテューヌ教祖、イストワールに注意された事が一つあった。それはある禁句を言わない事。
【間違ってる】・・・・その一言を聞いた瞬間、女神ネプテューヌは人間で言うアレルギー発作を起こしてしまうという。
【何時から】そうなったのかは教祖である彼女ですら知らない。と言うか知っていたら今頃克服する方法を編み出しているのだろう。
かと言って本人に聞き出す事も不可能だ、質問に答えている最中に発作を起こしかねない。
もし発作が起きた場合、【その時近くにいる人がなんとかして抑えるしかない】。【もし放っておけば暴走しかねない】からだ。
こうなった以上、誰も彼もがなりふり構っては居られない・・・・とは言うが、ユウザには口説き術も説得術も皆無な為、最早絶望的だったが・・・・・・
「!?」
「がって・・・・・間違って・・・・・・・・まちがって・・・・・・・・・」
怖い悪夢にうなされる子供が、お気に入りのぬいぐるみ、若しくは抱き枕にしがみつくように、ネプテューヌは直ぐ近くに居たユウザにしがみついた。
女神化した状態のまま爪を立てて本気でつかんでいるために冗談抜きで痛いが、そうも言っていられなかった為、慰めるようにユウザは頭を撫でた。
すると安心したのか呟く声も小さくなり、そのまま深い眠りについてしまった・・・・・
「・・・・・・ふぅ」
危機が去ったために息を撫で下ろしたユウザだったが、ネプテューヌが何故か女神化したまましがみ続けていた為に抜け出せず、観念した瞬間に一気に疲れが来て眠ってしまった。
<その頃妹は>
「ふぅ・・・・・・・」
「これでネプテューヌがサボった分も終わったか」
「きっとお姉ちゃん、あの大きいロボットを【消した】反動で疲れちゃったんですよ。あの時はまだ、ネクストシステムが出来たばっかりだったから・・・・・・」
ネクストシステム・・・・終戦の為に開発された女神の新たな
世界と接続して力を得る為か、対女神用の兵器や魔法等に対して完全な耐性を誇る。
現在実装されているのは四女神だけだが、近いうちに候補生にも実装される予定だそうだ。
そしてネクストシステムによって進化した女神はネクストフォームと呼ばれ、個々に強力な能力を行使できる。
ネプテューヌの場合は対称を【その概念ごと】斬る一撃必殺型の能力だ。
「あれから一ヶ月以上は経つ・・・・・休息は十分のはずだが」
「だとしたら・・・・アイエフさんの事でしょうね」
アイエフ・・・・プラネテューヌの諜報員にしてネプテューヌの友達だった人物だった。
インターセンターとの戦いで命を落としたという知らせが停戦直後に入った時、最も悲しんだのはネプテューヌだった。
そしてもう一人の友達のコンパは、敵の捕虜になっている模様。
「あの人は、お姉ちゃんの大切な友達でしたから・・・・」
「・・・・・・・そうか、だがお前は大丈夫なのか?」
「はい・・・・大切な人が死んだあの日から、もう泣かないって決めましたから」
ネプギアの決意は熱く堅かった。それを見てグレイヴは何かを思っていたのか、空を見上げた。
「決意・・・・か・・・・・」
<数日後>
討伐任務を終えたユウザは、刀を持ったチータと出会った。
「ほれ」とチータが刀を投げ渡し、ユウザは反射的に受け取った。
「これは・・・・・ッ!!」
刀の刃を見た瞬間、ユウザに頭痛が走った。魔法がかけられていたわけでもなく、呪いがあるわけでもない。
まるで自分の中の【何か】が反応したような、はたまた爆睡中にたたき起こされて目を覚ましたかのような感覚だった。
「それ、持っとけ・・・・・さっきの侘びだ」
「邪気も何も無い・・・・それどころかこの熱い感じは一体・・・・・どうしてこれを?敵のはずじゃ・・・」
「さてな、用はそれだけだ、じゃあな」
そう言ってチータは去っていった。ユウザは戸惑っていた、今まで義母のイストワールに、女神達に、そして国の皆から「インターセンターは卑劣な組織だ」と聞かされていた。
けれど実際はちゃんと話せるし、お詫びに物をくれるし、思っていたのとはイメージが全然違っていた。
それに刀を手にしたときの頭痛も気にかかっていたが、気にしないようにした・・・・・・これまでの穏やかな時間が壊れそうな気がしたから。
<更に一週間後のとある夜>
刀を持って任務をこなす事一週間、その中で頭痛と共に何かを思い出しつつもあった。
ただそれがどういう物なのかは全然解らなかった・・・・・或いは目を背けていたのかもしれない。
自室のベットで悶々と頭の中に靄が立ち込める中で寝ようとしてうなっていたとき、ドアをたたく音を聞いた。
ドアを開けると赤く目を光らせる黒い髑髏が・・・・・・
「ヒャワァ・・・・・グ!?」
女々しい悲鳴を上げようとしたところで口を塞ぎ、「私だ」と髑髏はしゃべる・・・・
「脅かさないでくださいよ・・・・夜中にその格好はホラーですから」
「緊急事態だ、急いでこれを装備して行くぞ」
そう言ってグレイヴが渡したのは、担徒有座が着ていたものだった。
言われるがまま着替えて同行することになったユウザは、それはそれとして装備についていた暗器に関しての知識は皆無だったため、剣と刀は持って行った。
<そして・・・・・・>
ひっそりと教会を抜け、市街に出たグレイヴは、同行していたユウザに語り始めた。
自分ではない何者かの記憶が時折浮かぶ事をきっかけに、自分が何者なのかを知ろうとした事、その為に四大国の命令を遂行してきていたと言う事、そして各国の情報を集めていたこと・・・・
そしてその末にさまざまな事を知った・・・・・自分が人間の遺体を
「私をベースとした人間を部品とするアンドロイドの製作が、近日ある事を知った・・・・その素体名にユウザ、お前の名前が記入されていた。」
「えっ」
信じられなかった、自分が部品になる?ロボットになる?自分に良くしてくれた人たちが?
ユウザ・リーオンには義母がいた。プラネテューヌの教祖であるがゆえに、仕事に明け暮れていながらも自分を育ててくれた、厳しいけど優しい義母が居た。
そんな義母がいるこの国で、そんな計画があるわけない。ユウザはそう思っていた。そう思いながらも自分の中の記憶に違和感を感じていた。
7歳の頃に両親が死んで教会に預けられて、それから義母から愛情をもらって育ってきた。
女神様たちにもその関係者や友達にも良くしてもらってきたし、その恩返しにと日々鍛錬を続けて女神様の護衛も任されるぐらいになった。
教会のみんなには、女神様には、教祖である義母には、自分を育ててくれた恩があって、自分はその恩に報いろうと・・・・・
『・・・・・本当に?』
「っ!」
突然、激しい頭痛がユウザを襲う。そして浮かびに浮かぶ映像、風景、匂い、声、音・・・・
「・・・・・っ!ぐっ・・・・・・あ・・・・!」
「・・・・?どうした、ユウザ?」
普段ふぉんどん先に行ってしまうグレイヴが足を止めて気にかける程に苦しみだすユウザ。
そんなユウザの中では、これまで信じていた思い出と突然浮かんだものがせめぎあっていた。
「ボク、ボ、ボク・・・?ボク?ボ・・・・・・ク・・・・・・オ・・・・・・・・」
『俺の意思や想い、お前に託す・・・・・強くあれ』
「・・・・俺・・・・・は・・・・・・・?」
・・・・そしてユウザは、自分が担徒有座であることを思い出した。それと同時に手馴れた手つきで投剣を取り出しグレイヴに向けた。
「アンタ・・・・どういうつもりだ・・・・・・」
「さてな・・・・・私の中身がそうしたかったから・・・・・かもしれない・・・・・」
「アンタの・・・・中身?」
「そうだ・・・・私の中身は・・・部品となっているのは・・・・・お前の――」
言おうとした瞬間、突然グレイヴがユウザを突き飛ばした。その直後、グレイヴは頭を打ちぬかれた。
誰が撃ったのか辺りを見回そうとしたその時、グレイヴの骸骨ヘルメットが吹き飛ばされたことで露になった顔を見て、息を呑んだ。
グレイヴの中身は、グレイヴの部品となっていたのは、ユウザの義父でインターセンターの当主だったリンク・ワーカーその人だったのだから。
「まったく・・・・余計なことをしてくれたわne「父さんっ!!」ってちょっと!?」
「なにやってるのよ!危うくアレも巻き添え食らうところだったでしょ!?」
「いや、で、でも・・・・・」
「アレは最終兵器の為のパーツなんだから、丁重に扱いなさい!」
「・・・・・・はい」
グレイヴを撃ち抜いた張本人を無視して、ユウザは倒れたワーカーのもとへ駆けつけた。
「父さん!父さん!」
「う・・・・あ・・・・・・」
ワーカーは目を開くと、弱弱しく「ユウ・・・・ザ・・・・?」と問いかけ、ユウザは頷いた。
「そいつに何を吹き込まれたかしらないけど安心して、全部出鱈目だk「俺・・・僕・・・・強くなったよ・・・・・あれから大きくなったんだよ・・・・・」って聞いてないし・・・・」
「先ずは他の皆に連絡しましょう、説得はその後でも出来るわ」
「・・・・・了解」
ユウザはここからしばらく動かないと見た二人の少女は、他の仲間に連絡をとって、包囲網を張る。
その間、ワーカーは最後の力を振り絞り、「大きく・・・・なったんだな・・・・・強く・・・・なったんだな・・・・・」とユウザを抱きしめて頭を撫でた。
本当は穏やかな生活を送って欲しかった、普通に育って欲しかった、暗殺者である自分の後を追って欲しくなかった。
けれどそれらはすべて叶わず、それでもユウザが立派になったことを心から喜んだ。
そしてユウザも、ワーカーの死によって欠けていた心が埋まり、その証拠に涙を流した。
「ごめんよぉ・・・・やくそく・・・・・・・」
「良いんだよ・・・・助けてくれて・・・・・ありがとう・・・・・・」
振り絞った力がもう尽きる事を悟ったワーカーは、奇跡によって一時的に蘇った父親は、今度こそ息を引き取るその前に、聞きたいことがあった。
「ユウザ・・・・・お前の将来の・・・・・・・・夢は・・・・・・・・?」
「・・・・・・・遊園地!」
ユウザは子供のように元気よく答えた。
「僕の夢は・・・・・・遊園地を作って、きてくれた皆を楽しませること!」
「そう・・・・か・・・・・とて・・・・もいい・・・・・ゆめ・・・・・だ・・・・・・」
ずっと聞きたかった息子の夢を聞けた父親は、思い残すことなく息を引き取った・・・・今度こそもう二度と、目をさまさないだろう。
そしてその安堵の表情を見たユウザも、笑顔で看取っていた・・・・目や鼻から水を垂れ流しながら。
その後ユウザは、ポケットからスイッチを取り出すと、刀と共にワーカーの遺体に持たせてスイッチを押させた。
すると遺体は刀ごと光となって消えてしまった。
今使ったのは何処にいても拠点に戻れる改良版リジェクトスイッチで、行き先はインターセンターの住宅街だ。
父を帰したユウザが涙と鼻水をふき取って振り向くと、そこには8人の女神が立っていた。
瞬間、ユウザの中に欠けていたある感情が込み上げた。
父を殺したどころか弄んでけしかけた存在に、自分達に都合のいい記憶を植えつけた挙句、父同様けしかけようとした存在に、仲間を友達を、家族を、親しい皆を殺してきた存在に・・・・・・怒りを向けた。
数年ぶりの感情は、殺意と共にあふれて来た。
「【神よ、汝らが善と語るなら、汝らが正義と語るなら】・・・・・・」
止める声が聞こえる、「諦めなさい」という声が聞こえる、「無駄よ」という声が聞こえる・・・・・・それでも少年は、この胸の中の想いを、心の声を抑え切れなかった。
「【我は悪と語り、汝らを討ち葬ろう】・・・・プロセッサユニット【
怒りを胸に、少年は力を身にまとう・・・・例え命を削るとしても、その胸にある想いを糧にすることは無い。
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長文、アンチ、ヘイト注意