第14話:何が生まれる?不思議な卵
「気持ちいい潮風だなー」
クウヤは船の上でくつろいでいる。
今から数分前。
港で船を探していると、カナシダトンネルでであった老人と再会した。
その老人はハギという名でありクウヤがその時助けたポケモンはキャモメの「ピーコちゃん」だった。
ムロ島に行きたい、とクウヤが事情を話すとハギ老人が元漁師で今でもたまに船を出しているという。
ピーコちゃんの礼として老人はなんとクウヤをムロ島まで連れて行ってくれるというのだ。
クウヤはその厚意に甘え船の整備が終わるまで彼の実家に上がっていた。
そこで出会ったのは元ポケモントレーナーだというハギ老人の奥さんだった。
「貴方ですね、主人とポケモンを助けてくれたのは・・・その接は本当にありがとうございます」
「気にすんなよ、オレは当たり前のことをしただけだし」
「この子達はみんな、坊やの子?」
「そうだぜ」
「みんな可愛くて元気ですねぇ」
老婆はピーカを抱き上げると、そっと優しく撫でた。
撫でられているピーかもとても気持ちよさそうだ。
そんな様子を見てクウヤは思った。
「オレもっとこいつらと仲良くなりたいかも」
「あらあら、今でも十分仲良しじゃないですか」
「だってピーカ、オレが撫でてもこんな気持ちよさそうにしないし。」
「うふふ、やきもちですか?」
「あぅ」
図星をつかれ赤面するクウヤ。
隠し事してても気持ちとかがすぐ顔に出てしまう彼らしい反応だ。
老婆は微笑むとピーカをクウヤの膝の上に置く。
すると、ピーカは安心したように寝てしまった。
「それで大丈夫」
「え?」
「貴方のポケモンはみんな貴方に懐いてますよ。
みんな、貴方の側にいてとても幸せそうです」
「そ・・・そかな」
「はい」
テレながらもどこか嬉しそうに笑うクウヤに応えるようにアーチとナークは彼の肩に乗る。
擦り寄ってくる2匹にびっくりしつつもクウヤ自身も笑っていた。
ふと老婆は閃いたようにクウヤにあるものを手渡す。
「クウヤくん、よろしければこのポケモンの卵・・・もらってくれないかしら」
「ポケモンのタマゴ!?
何が生まれるの?」
「それは生まれてからのお楽しみ」
受け取ったタマゴは割れないように
頑丈なケースに大事に入っていた。
生まれて始めてみるポケモンのタマゴにクウヤは自分の胸の高鳴りを感じた。
これからこのタマゴから何が生まれるのか、今からわくわくする・・・。
「ばあちゃん!ありがとう!」
「生まれてきたポケモンを大事にしてあげてくださいね」
「あぁ!もちろんだぜ!」
そのときちょうどハギ老人の声がした。
「おーいクウヤくん!準備できたぞー!」
「うんっ!!
じゃあな!ばーちゃん!」
「頑張ってくださいねー」
漁船に乗り込み出発した彼を見て老婆は1人呟いた。
その顔は優しい笑顔だった。
「孫がいるような楽しい時間だったわ・・・」
そして、今に至る
漁船はスピードを出しながら海を進む。
普通なら酔うのだが、クウヤはそんなことは全然なくむしろやたらと楽しそうだ。
「ムロタウンまで半日かかるからの~酔わないでくれよぉ~」
「ああ!」
目の前に下りてきたキャモメに気付くとその羽をそっと撫でた。
クウヤも、そのキャモメに見覚えがあるのだ。
「お前あの時、オレが助けたキャモメだろ。
・・・・・・・・・えと、ピーコちゃん?」
「きゃぁ!」
「よろしくな」
船の隅でピーカが酔ってるのに気付きクウヤは駆け寄りエールを送る。
「ピーカ頑張れ!
かみなりのいしのためだ!」
「ぴ、ぴっかぁ・・・!」
余程その石が欲しいのかピーカは必死に酔いに耐え戦っている。
何故そこまであの石が欲しいのかクウヤには分からず、図鑑を開いてみる。
すると・・・
「へぇ、ピカチュウて雷の石でライチュウに進化するのか!
・・・・ピーカは進化がしたいのか。
よし、この手紙を絶対そのダイゴって人に届けような!」
彼の言葉に頷いたものの未だ酔ってるピーカに苦笑いしつつとりあえず休ませるため彼をボールに戻す。
アーチは全然へっちゃらという感じで彼の肩にとまっておりナークは船の揺れよりも海が怖い、といった様子だ。
三者三様でそれぞれ性格が違う。
ポケモン図鑑を見た感じでは
アーチは勇敢、ピーカはいじっぱり、ナークはせっかち
そしてさらに負けず嫌い、気が強い、食べるのがすき。
見事にばらばらな性格だ。
ふと思い出すのは、今朝の通信。
義兄のセイからポケナビに通信が入ってクウヤの様子を聞いてきたのだ。
あのとき、彼は確かに言った。
『これからポケナビでキミをフォローする、何か分からない事があったら僕にきいて』
それだけ伝えるとすぐに通信を切った。
恐らく彼の両親が彼の通信時間を短くしてしまっているのだろう。
「あいつにはいつも、助けられっぱなしだな」
思いつめた表情でクウヤは自分の名の由来―かもしれない―空を見上げ潮の香りが混じった風をその身に感じた。
その瞬間。
ブワッーーー
「!?」
突風が起こり目を丸くしてると上空を何かが過ぎった。
長く巨大な・・・・不思議なポケモンだ。
僅かに見えた姿は、まるで・・・
「今のって、ドラゴン・・・?」
驚きのあまり、ただ空を見てそう呟くしか出来なかった。
やがて、この出会いが後の再会へ繋がる事も、
彼はまだ、知らない。
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また昨日の更新忘れてた・・・どうも私の中でTINAMIって影薄いんだよね・・・(おい