No.820955

Free Trigger 第4話「醜い人間」

Nobuさん

4話目。戦闘シーンがありますが、割とあっさり目?

2015-12-26 14:25:59 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:365   閲覧ユーザー数:365

「ホント、人間って醜いわよねー」

「え? なんでですか?」

「だって、何も悪い事なんかしてないのに、あたし達をこんな場所に閉じ込めたのよ?

 ぷんすかぷん! おかんむりだわ!」

 この世界の吸血鬼は善人も悪人も普通に存在する。

 なので、優しい者もいれば、凶暴な者もいる。

 もっとも、生命維持のために血液が必要なので、好戦的な者が多いのだが……。

 

 一方で、人間にも様々な性格の者が存在する。

 慈悲深い者、天真爛漫な者、温厚な者などなど。

 恐らく、自分達をこの教会に閉じ込めた者は、吸血鬼を激しく憎んでいる人間だろう。

「よーし、脱出したらそんな不届き者な人間は容赦なくぶち殺してやるわよ!」

「あの、言い過ぎじゃないですか?」

「人間にはこれくらいきつくないと♪」

「……なるほど」

 男は、ミロとユミルの様子をじっくり見ていた。

 それを見たユミルは男の方を見てこう言った。

「……何、ボク達の方をじろじろ見てるんですか?」

「いや、なんでもない」

 

「……さて、と」

「うん?」

「ちょっと、向こうを見るわね」

 ミロは、教会の方をじっと見た。

 あちこちを武僧達が見張っていて、普通に階段に行けば、まず見つかるだろう。

 なので、隙を突いて行かなければならない。

 

(あれは……?)

 階段の傍には、白い鎧の騎士がいた。

 見た感じ、闇の者を忌み嫌っていそうだ。

 慎重に相手をしなければならない。

(まともに相手をしたらまず死ぬわね。どうすればいいのかしら……)

 ミロは頭脳労働は得意ではない。

 なので、ここを通るための秘策が思い浮かばない。

 そこで、彼女は男に小声でこう言った。

「あの騎士をどうにかしてほしいわ」

「ふむ、だが武僧達が見張っているのだぞ?」

「その武僧達を何とかしてほしいのよ」

「分かった」

 

 男は、ゆっくりと武僧達の方へ向かった。

「誰だ貴様は! 吸血鬼か!?」

「半分はそうだ。……半分はな」

「つまり、貴様は半吸血鬼か! 半吸血鬼だろうと吸血鬼は一匹残らず殲滅する!」

 そう言って、武僧はメイスを振り下ろした。

 しかし、男はそれを素手で受け止めた。

「!?」

 男は武僧のメイスを掴み、投げ飛ばす。

 メイスは、回転しながら武僧達を次々と薙ぎ倒す。

「それだけか?」

「う……うわああああああ!!」

 男の威圧感となすすべなく倒されていく武僧達を見て、怯え、戦き、逃げ出す武僧達であった。

 

「凄いですね! 武僧達を倒すなんて!」

「お前達がなかなか戦わないからな」

「何気に辛辣ですね……まぁいいでしょう。さあ、先に進みますよ、ミロさん!」

「ええ!」

 三人は、階段の方へ向かった。

 

 白い騎士と対峙する三人。

「ここは、通さんぞ……」

「……誰!?」

「吸血鬼に名乗る名はない」

「それはこっちの台詞よ。人間に名乗る名はないわ。さあ、あたしの爪の塵になりなさい!」

「ミロさんはボクが守ります!」

 三人は、戦闘態勢に入った。

 ユミルは杖を抜き、騎士は槍を抜く。

 吸血鬼と人間の戦いが、始まった。

「ふっ!」

「うわっ!」

 騎士の槍がユミルに当たり、動きが止まる。

「邪魔よ!」

 ミロは騎士に近付き、爪を一閃する。

 彼女の攻撃は魔力を帯びているため、通常の鎧で防ぐ事は難しいのだ。

 しかし、それでもこの場所で戦うのか、威力はかなり落ちている。

「magie pierre」

「うぐっ!」

 騎士が呪文を詠唱すると、魔法の石がユミルに飛んでくる。

 ユミルはそれを食らい、ダメージを受けた。

「ま、まだですよ! ハール・カウィー!」

 ユミルが精霊魔法を唱え、ミロの筋力を強化する。

「ありがとう! それっ!」

「まだだ」

 強化されたミロの爪が騎士を一閃する。

 その隙に騎士がミロを槍で攻撃する。

 ユミルは相手の出方を伺いつつ杖で攻撃する。

 ミロもそれに合わせるように爪で攻撃する。

「うわああああっ!」

「ユミル!」

 と、その時、騎士の槍がユミルを貫く。

 ユミルはかなりの傷を負ってしまった。

「大丈夫ですよ、ド・オヴァ・デ・シー!」

 ユミルが回復魔法を唱え、傷を癒す。

 しかし騎士は連続で槍で攻撃する。

「負けないわよ!」

「念のために回復します!」

 ミロが負けじと騎士を攻撃する。

 ユミルは彼女の補助のため回復魔法を唱える。

「magie pierre」

「うぐっ!」

 回復の途中で魔法の石がミロに飛んできた。

 避けられず、ミロはダメージを受けてしまう。

「ミロさん!」

「大丈夫よ、このくらい。さあ、行きましょう?」

「ええ!」

 再びユミルは杖を構え直す。

 ミロは後ろに下がった後、爪で攻撃した。

 これにより、騎士はかなりのダメージを受ける。

「これくらいの傷……vie force!」

 騎士が回復魔法を唱え、傷を癒す。

 だが魔法はあまり得意ではないらしく、その効果は微々たるものであった。

「このまま攻め続ければ勝てるわね」

「ええ」

 ミロとユミルは攻撃の手を緩めない。

 騎士も徐々に追い詰められていく。

「く、やはり吸血鬼は強い……!」

「これでとどめよ!」

 そして、ミロのとどめの一撃が入り、騎士は戦闘不能になった。

 

「へー、案外やるじゃないのこいつ」

「結構手こずりましたね……」

 騎士を倒した二人。

「でも、どうしましょう……」

 ユミルはこの騎士の処遇をどうするか悩んでいた。

 騎士にはまだ息があり、死んでいない。

 ミロならば、間違いなく殺すと思うのだが、ユミルは元人間なのであまり残虐ではないのだ。

「……ミロさん」

「え?」

「この人は教会の傍に置いていいですか?」

「なんで? とどめを刺さないの?」

「だってボク、元々は人間だったんですよ? ……人間が人間を殺すなんて、嫌ですよね?」

「……まぁ、確かに」

「だから、この人は殺さないでください。分かりましたね? ミロさん」

「はいはい」

「はい、は一回です!」

「うぐっ」

 ユミルに言われ、ミロは騎士を階段の横に置いた。

 

「さあ、行きますよ、ミロさん!」

「わ、分かったわ」

「俺も忘れてないか?」

「「あ」」


 
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