No.815497 九番目の熾天使・外伝 ~短編㉕~竜神丸さん 2015-11-24 17:23:53 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1699 閲覧ユーザー数:849 |
「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
廃工場内部にて、戦闘を開始したアーマードライダー達。斬月と龍星はシカインベス、カミキリインベスの二体を相手取り、龍刃は影武を相手取る形になる。斬月と龍星が上級インベス達と取っ組み合いになって地下の階層へと飛び降りていく中、地上1階に残った龍刃と影武は互いの武器が何度もぶつかり合う。
「私は平穏が欲しかった……だから私は、今度こそ本当の平穏を手に入れる!! そんな私の気持ちが、どうしてあなたには理解出来ない!?」
「えぇ、理解出来ませんねぇ……三流の考える理屈など!!」
「ッ…!!」
龍刃は影武が構えている二本の剣を弾いて後退し、マスカット風刃をブーメランのように投擲。影武はそれを無双セイバーで弾き飛ばした後、無双セイバー柄とブラック大橙丸の柄を接続。無双セイバー・ナギナタモードとなったそれにブラックオレンジロックシードを装填する。
≪一・十・百……オレンジチャージ!≫
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うぉっと…!」
≪ロック・オフ≫
影武が無双セイバー・ナギナタモードを片手で回転させ、周囲のパイプや柱を次々と切断。龍刃はその場で仰向けに倒れる事で斬撃を回避し、戦極ドライバーからマスカットロックシードを取り外してから別のロックシードを取り出す。
「せっかくなので、これも実戦データを取っておきましょうかね」
≪キワノ!≫
開錠した錠前―――キワノロックシードを戦極ドライバーに装填。影武の飛ばして来る斬撃をかわしながらカッティングブレードを倒し、頭上から降下して来たキワノアームズを頭に被る。
≪ハイィ~! キワノアームズ! 鉄・龍・ヤッハッハッ!≫
変形したキワノアームズが鎧として装着され、“アーマードライダー龍刃・キワノアームズ”は右手に出現した狼牙棒型のアームズウェポン―――キワノ
「ぐっ…!?」
≪キワノスカッシュ!≫
「吹き飛びなさい」
「うぁああぁっ!?」
カッティングブレードを倒し、龍刃は大きく振りかぶったキワノ鉄龍を影武目掛けて振り下ろす。影武は無双セイバー・ナギナタモードで防ごうとするも弾き飛ばされ、パイプが複数ある方向へと突っ込んでしまい、壊れたパイプから白い煙がブシューッと勢い良く吹き始める。
「ふむ、威力は上々……さて、奴はどうでしょうかねぇ…」
≪パイン!≫
「!? 何…ッ!!」
≪パインアームズ! 粉砕・デストロイ!≫
別のロックシードの音声が聞こえた龍刃が警戒すると同時に、噴き出している白い煙の中から鎖鉄球型アームズウェポン―――ブラックパインアイアンが飛び出し、龍刃のキワノ鉄龍と衝突。そして影武・ブラックパインアームズも飛び出し、龍刃を右足で強く蹴りつけて後退させる。
「ッ…他のロックシードも所有してるとは…!!」
≪キワノオーレ!≫
「無駄です!!」
≪パインスカッシュ!≫
「な…」
カッティングブレードを二回倒し、キワノ鉄龍を振り上げようとする龍刃。それよりに先にカッティングブレードを倒した影武がブラックパインアイアンを投げ、キワノ鉄龍の柄部分に巻きつけて動きを封じてしまう。その隙に影武が跳躍して飛び蹴りを放ち、龍刃はキワノ鉄龍を手放して飛び蹴りをかわす。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「チィ…!!」
「ブルゥアァァァァァァッ!!」
「ッ…だぁもう、この無駄にタフな鹿野郎め…!!」
地下では龍星がカミキリインベスと、斬月がシカインベスと対峙していた。龍星は順調にカミキリインベスを圧倒しているのに対し、斬月は何処か動きがぎこちなく、シカインベス相手に苦戦してしまっていた。普段なら並の上級インベス相手に苦戦などあり得ない彼が、何故ここまで苦戦しているかというと…
(ッ……ウォーターメロンの時のダメージ、まだ僅かに残ってるか…!!)
実は、昼間にウォーターメロンアームズで戦った時の反動によるダメージが、まだ彼の身体から完全には消えていなかったのだ。その所為でシカインベスすらさっさと仕留める事すら出来ないなど、今の斬月の体内に残っているダメージはかなり大きかったのだ。
「グルァッ!!」
「がっ!? ぐ、ぅぅ…!!」
シカインベスの鋭利な角で攻撃され、後退した斬月は苦しそうに呻きながら膝を突いてしまう。それに気付いた龍星はカミキリインベスを双星刃で一閃してから、斬月の後ろに立つ。
「支配人さん、大丈夫ですか!」
「ディア……すまん、まだ微妙に回復し切れてなかったみたいだ…!!」
「後は僕に任せて下さい。この程度の敵なら、僕だけでも大丈夫ですから!」
≪レモンエナジー!≫
龍星は戦極ドライバーにゲネシスコアを取りつけた後、レモンエナジーロックシードを開錠。分離したスターアームズと出現したレモンエナジーアームズが融合して黒いアームズに変化し、龍星は再び戦極ドライバーのカッティングブレードを倒し、黒いアームズが龍星の頭に覆い被さる。
≪ミックス! ジンバーレモン! ハハァッ!≫
「! なるほど、ジンバーアームズか…」
「そういう事です……はぁっ!!」
「ブルァ!?」
「ギギギィッ!?」
龍星・ジンバーレモンアームズはソニックアローを構えてしゃがみ込み、飛びかかって来たシカインベスを真下から斬りつけ、走って来たカミキリインベスにはソニックアローのトリガーを引いて放った一撃を命中させる。二体の上級インベスが倒れる中、龍星はレモンエナジーロックシードをソニックアローに装填する。
≪ロック・オン…≫
「これで終わらせます…!!」
≪レモンエナジー!≫
「「グギャァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」
ソニックアローから放たれた強力な一撃が、シカインベスとカミキリインベスを纏めて貫く。二体が呆気なく爆散した後、龍星と斬月が立っている場所の上方向から爆発音が響き渡る。
「!? 上では確か、竜神丸さんがあの女と…!!」
≪イチゴアームズ! シュシュッとスパーク!≫
「ハァッ!!」
「な…ぐぁっ!?」
「ぐっ!?」
上の階層から飛び降りて来た影武・ブラックイチゴアームズは二本のクナイ型アームズウェポン―――ブラックイチゴクナイを投擲し、龍星と斬月に命中させる。二人が怯まされる一方で、地下一階に着地した影武は無双セイバーを構え、自身の後方に着地した龍刃の方へと振り返る。
「…なるほど、確かに強い」
龍刃は戦極ドライバーに装填しているキワノロックシードを閉じ、変身を解除。竜神丸の姿に戻り、彼は戦極ドライバーを腰から取り外した。
一方、海鳴市の大通りでは…
「グッ!?」
「ガハッ!?」
「ゴワァ!?」
「…弱い」
桜花が変身した黒影・真は構えていた影松・真を振り回し、周囲にいた三人の黒影トルーパー達を纏めて蹴散らしているところだった。ベルトを除き、外見は黒影・真も黒影トルーパーもほとんど変わらないが、その外見に反して黒影・真は通常の黒影トルーパーよりも圧倒的にスペックが向上しており、初期型のアーマードライダー相手ならば問題なく戦える強さを誇っているのである。
「ッ…フン!!」
「しつこい」
「ッ!?」
≪マツボックリエナジースカッシュ!≫
しつこく攻撃して来る黒影トルーパーには右足で蹴りつけ、建物の壁に押さえつける黒影・真。彼女はそのままゲネシスドライバーのハンドルシーボルコンプレッサーを一回押し込み、押さえつけていた黒影トルーパーから右足を退かしてから影松・真で斬りつけ、変身解除に追い込んだ。
「ガァァァァァァァァァァァァッ!?」
「一人目」
「ヌグワ!?」
「二人目……そして」
「グハァアッ!?」
「…三人目」
続いて二人目の黒影トルーパーも、影松・真で斜めに斬りつけて撃破。残った三人目は突き立てた影松・真で装甲を破壊し、三人目も同じように変身が解除され、その場に力なく倒れ込んだ。
「…これでおしまい」
黒影・真は気絶した民間人から戦極ドライバーとマツボックリロックシード、そして彼等が所持していたザクロロックシードも回収していく。
一方、その上空では…
-ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!-
「チッ!!」
ダンデライナーに乗った鎧武が、三機のスイカアームズ・ジャイロモードに追い掛け回されていた。スイカアームズ達が乱射する弾丸を回避し続ける鎧武だったが、スイカアームズ達の連携が取れている為に、なかなか反撃の隙を見出せずにいた。
「ハッ!!」
-ドガァンッ!!-
「ぬぉわ!?」
スイカアームズの弾丸がダンデライナーに命中し、ダンデライナーは海鳴海岸へと墜落。しかし墜落する直前で鎧武は飛び降りて砂浜に着地し、墜落したダンデライナーも砂浜に落ちて爆発。そして追って来たスイカアームズ達も地面に降り立つ。
≪ヨロイモード!≫
「…やってくれるじゃねぇか」
三機のスイカアームズ・ヨロイモードがナギナタ状の武器―――スイカ
「あの時、紘汰に複製して貰った力……試させて貰う!!」
≪カチドキ!≫
開錠したカチドキロックシードを戦極ドライバーに装填し、カッティングブレードを倒す。そして頭上のクラックからは特殊な形状の鎧が降下し、鎧武の頭に被さってから大きく変形。鎧が形成される。
≪カチドキアームズ! いざ、出陣! エイ・エイ・オー!≫
額部分の二本角。上半身から下半身にまで形成された装甲。背中に装備された、鎧武のマークが描かれた二本のオレンジ色の旗。そして右手に出現した、ディスク状のプレートが付いた火縄銃型のアームズウェポン―――
“アーマードライダー鎧武・カチドキアームズ”。
それが鎧武の強化された姿だった。
「…さぁ来い!!」
「「「…フンッ!!」」」
-ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!-
スイカアームズ達は左手の指先から一斉に弾丸を掃射し、鎧武の全身に弾丸が炸裂し始める。収まる事の無い弾丸の嵐。鎧武はその場から一歩も動く気配が無く、ただその全身に弾丸を浴び続けていく。次第に煙でその姿も見えなくなっていく。
「「「……」」」
煙で姿が見えないが、鎧武は特に反応が無い。これで確実に仕留めたと思ったスイカアームズ達は、構えていた左手を一斉に降ろし―――
「―――何だ、これで終わりか?」
「「「…ッ!?」」」
―――そして驚愕させられる。
煙が晴れると、そこには無傷の鎧武が仁王立ちしていたのだ。
そう、これこそがカチドキアームズの真髄の一つである。並の攻撃では傷つくどころか怯みもしない、あまりに頑強過ぎるその装甲は、対峙したあらゆる敵に恐怖心を抱かせるのだ。
「「「…!!」」」
「…さて」
≪~♪≫
これにはスイカアームズ達も驚愕し、今度はスイカ双刃刀を構えて鎧武の周囲を取り囲む。そんな中、鎧武は構えていた火縄大橙DJ銃のプレート部分を、まるでDJがスクラッチするかのように操作。法螺貝のような音声が鳴り響く中、鎧武はグリップ部分のピッチを回してから再びプレート部分を操作し…
「―――うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
-ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!-
「「「ッ!!?」」」
鎧武はその場で回転し、自身の周囲を取り囲んでいるスイカアームズ達に無数の弾丸を浴びせ始めた。しかしその弾丸の破壊力はスイカアームズよりも遥かに上回っており、その圧倒的火力にスイカアームズ達は逆に怯まされるという事態に陥る。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「ッ…ヌァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
何十発もの弾丸を浴びていく内に、一機のスイカアームズが木端微塵に爆発。投げ出された黒影トルーパーは地面に落ち、変身が解けてから気絶してしまった。
「さぁ、お次はコレだ」
『~♪』
「…だりゃあっ!!!」
-ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-
「…ッ!?」
再びプレート部分を操作し、ピッチを切り替えてからまた同じ操作を繰り返す。すると今度は火縄大橙DJ銃の銃口から強力な火炎弾が発射され、一機のスイカアームズの左腕に掠って破損させる。掠っただけで破壊してしまうほどの火力……これこそがカチドキアームズのもう一つの真髄だ。
「そして今度はこうだ!!」
鎧武は火縄大橙DJ銃のジョイントを展開した後、そこに抜刀していた無双セイバーを差し込む。するとグリップ部分からオレンジ色の刃先がせり上がり、火縄大橙DJ銃・大剣モードに変化する。
「そぉいっ!!」
「ッ!?」
「ヌゥ…!?」
≪大玉モード!≫
鎧武が両手で振り回す火縄大橙DJ銃の刀身は、スイカアームズ達の振るうスイカ双刃刀をまるでそれが当たり前であるかのように弾き返していく。焦ったスイカアームズ達は巨大なスイカ状の大玉モードに変形し、跳躍して鎧武を押し潰そうとするが…
「効くかぁっ!!!」
「「…ッ!?」」
大玉モードによる押し潰しすらも、カチドキアームズの装甲は破壊出来なかった。跳ね返されたスイカアームズ達が地面に落ちると同時に、鎧武は火縄大橙DJ銃にカチドキロックシードを装填する。
≪ロック・オン! 一・十・百・千・万・億・兆…≫
火縄大橙DJ銃の刀身から、赤い炎が燃え上がる。スイカアームズ達が大玉モードのまま転がって来る中、鎧武は勢い良く燃えるそれを両手で構えながら姿勢を低くした後…
≪無量大数!≫
「―――ぜりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「「グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」
襲い来るスイカアームズ達を、灼熱の刃で横に一閃した。高い防御力を誇る大玉モードであったにも関わらず、スイカアームズ達は真っ二つに斬り裂かれて大爆発を引き起こし、投げ出された黒影トルーパー達は変身を解除されて気絶するのだった。
「…うっし、一丁上がり!」
場所は戻り、廃工場内部地下…
「フフフ……私の力、理解して頂けましたか…?」
戦極ドライバーを外した竜神丸を見て、ブラックオレンジアームズに戻った影武はまるで勝ち誇ったかのように無双セイバーを彼に向ける。
しかし彼女は気付いていない。
自身が現在対峙している人物は、未だ本気を出して戦っていないという事に。
「えぇ、理解しましたよ……あなたが所詮、その程度の存在でしかないという事が」
「…何ですって?」
竜神丸は興味の無さそうな表情を浮かべながら、新たに取り出したゲネシスドライバーを腰に装着。そして彼の右手に握られていた赤色の錠前―――ドラゴンフルーツエナジーロックシードが開錠される。
≪ドラゴンフルーツエナジー!≫
「変身」
≪ロック・オン……ソーダァ!≫
竜神丸の頭上のクラックからは、ドラゴンフルーツを模したドラゴンエナジーアームズが出現。竜神丸は眼鏡をクイッと上げてから特定のポーズを取った後、ドラゴンフルーツエナジーロックシードをゲネシスドライバーに装填し、ハンドルシーボルコンプレッサーを押し込む……ここまでの動作が右手だけで素早く行われた。
≪ドラゴンエナジーアームズ!≫
頭上のドラゴンエナジーアームズが展開し、竜神丸の頭に被さる。竜神丸の全身に青いゲネティックライドウェアが纏われた後、ドラゴンエナジーアームズが変形し、鎧として装着が完了される。
「!? 何ですか、その姿は…!!」
「…ふぅ」
竜神丸が変身した、“公爵”の名を持つ戦士―――“アーマードライダーデューク・ドラゴンエナジーアームズ”は大きく息を吐き捨てた後、デュークの姿を見て驚愕している影武を見据え、ソニックアローを構える。
「お見せしましょう。私が特別にチューニングした、ゲネシスドライバーの力を」
「ッ…」
デュークと影武が同時に身構える。
一瞬の静寂の後…
「―――でやぁっ!!」
先に動いたのは影武だった。無双セイバーから斬撃を放ち、デュークはそれをソニックアローで一閃。それを合図に二人は同時に左方向へと駆け出し、パイプや柱の隙間を通じて互いに斬撃や矢を放ちながら走り続ける。
「チンケな攻撃ですねぇ、この程度で私を倒せるとでも?」
「うるさい!!」
パイプや柱のある通路を走り抜けた後、広い空間に出た二人はそれぞれソニックアロー、無双セイバーから射撃を繰り出し、同時に回避。そして影武は壁を蹴って真上のパイプに着地し、高所からデュークを狙い撃つ。
「おやおや…」
「思い知りなさい……私の全力の一撃を!!」
≪ロック・オン! 一・十・百・千・万……オレンジチャージ!≫
再びブラックオレンジロックシードを無双セイバーに装填し、影武は無双セイバーを振り下ろして斬撃を発射。繰り出された斬撃はデューク目掛けて飛んでいき、そのボディを無惨に斬り裂く―――
「はい残念」
―――事は無かった。
斬撃がデュークのボディに当たる直前で、デュークの全身が赤い煙状に変化。斬撃はデュークを擦り抜け、その後方の壁を斬り裂くだけに終わる。
「!? ば、馬鹿な…」
「さて……そこから降りて貰いましょうか」
「キャアッ!?」
赤い煙状になったデュークは素早い動きであちこちに移動し、影武を翻弄する。そして一瞬の内にパイプの上にいる影武の目の前に現れ、ソニックアローで斬りつけた影武を容赦なく地面に蹴り落とす。
「く…!!」
「さて…」
≪ロック・オン…≫
赤い煙状から元に戻ったデュークは地面に着地した後、ゲネシスドライバーから取り外したドラゴンフルーツエナジーロックシードをソニックアローに装填。そのトリガーをゆっくり引き始め、無双セイバーから斬撃を放とうとする影武に狙いを定め…
≪ドラゴンフルーツエナジー!≫
「―――はぁっ!!!」
「く…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
放たれた一撃と共に、赤いドラゴンのようなエネルギー弾が影武に向かって飛来。最初に放たれた一撃が影武の無双セイバーを弾き落とした後、そこへドラゴン状のエネルギー弾が追い打ちの如く襲い掛かり、大きく吹き飛ばされた影武が何度も地面を転がされる。
「ッ……く、ぁ……ぁ…」
「何が偽りの平穏ですか、下らない」
≪ソーダァ…≫
フラフラ状態の影武に歩み寄りながら、デュークがゲネシスドライバーのハンドルシーボルコンプレッサーを再び押し込む。
「この腐り果てた世界を…」
デュークが影武の目の前に立ち…
「…私が気に入った現実を、貴様のような三流が否定してくれるなぁっ!!!!!」
≪ドラゴンフルーツエナジースカッシュ!≫
「ッ…ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
真下から振り上げられたソニックアローが、影武のボディを戦極ドライバーごと一閃。影武は大きく吹き飛ばされて壁に叩きつけられた後、戦極ドライバーを破損した事により、変身解除された彼女はリーゼの姿に戻ってから地面に倒れ伏すのだった。
「…さて」
デュークは変身を解除して竜神丸の姿に戻り、倒れているリーゼの下へと歩み寄っていき、彼女の頭を右手で無理やり掴み上げる。
「く、ぅ…!」
「
竜神丸は
『うわ、近寄るなよ化け物!』
『化け物がボール遊びなんかやってんじゃねぇよ!』
『大丈夫だリーゼ、私達を信じろ』
『たとえどれだけ皆から嫌われても、私達が守ってあげるからね』
『お父ざん、お母ざぁんっ!!』
『父親と母親は始末した。彼女を機関まで連行しろ』
『嫌だ……怖いよ……誰か、助けて…!』
『おい、他の実験体達まで脱走しているぞ!?』
『クハハハ……これで機関もおしまいさ…!!』
『私は、これからどうすれば…』
『お、おい、コイツ変な力を使いやがったぞ!?』
『コイツ、人間じゃねぇ!!』
『そ、そんな…!? 私はただ、怪我をしていたあなたを助けたくて…』
『来るな化け物!!』
『この街から出て行け!!』
『ッ…!!』
『へぇ、割と可愛い女じゃねぇかよ?』
『犯っちまいやしょうぜ兄貴!』
『ひっ!? い、嫌……やめて下さい…!』
『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』
『こ、この女、超能力者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
『…私は許さない……私から全てを奪った、この世界を…!!』
『私の名は狗道供界。黒の菩提樹の創始者にして、この世界を導く者だ』
『今の君は迷える者として、自分の進むべき道を分からないでいる…』
『私が君に、力を与えよう』
『その力で、君が世界を導くのだ』
『私が、世界を…』
『終焉の時は来たれり…』
『迷える者達に、親愛なる救済を―――』
「―――ふむ」
リーゼの記憶を一通り覗き込んだ竜神丸。彼は掴んでいたリーゼの頭を乱暴に手放す。
「狗道供界については、あまり大した情報は持っていませんか…………使えない役立たずですね」
「く……は、ぁ…あ…」
「自爆テロの首謀者を始末するのが今回の任務の最終目的でしたが……一応、元は同じ実験体仲間。せめて楽な死に方をさせてあげましょう」
無理やり記憶を覗かれて苦しむリーゼ。しかし竜神丸は、今度は左手でリーゼの頭を再び掴み上げる。
「
「あ―――」
その瞬間、竜神丸はリーゼの記憶を消去し始めた。周囲から忌み嫌われる記憶、両親と共に過ごした記憶、異能力研究機関に囚われていた頃の記憶、狗道供界と接触した時の記憶……それらの記憶が次々と消失していく。
「今ある現実を認めたくないのでしょう? こうすれば、認めなくて済みますよ。何せ、何もかも全て忘れてしまうのですから」
「ぁ…あぁ……ぁ…」
(わ、わた、し……は…)
記憶がどんどん消えていく中、リーゼの目に映ったのは…
『No.13、一緒にここから出よう? 自由になる為に』
かつて機関に囚われていた自身を助けてくれた、若き頃の竜神丸―――No.01の姿だった。
(私は……あなた、に…)
(愛して、欲し……かった…)
そして、彼女の目から光は消える―――
その後、
(あれから、海鳴市の自爆テロの首謀者である実験体No.13―――リーゼ・ガルバンディアは捕縛された。彼女が所有していたザクロロックシードも全て回収した為、ひとまず海鳴市に再び平穏は戻った)
海鳴市から帰還したokakaが、団長に渡す為の報告書を纏めていた。
(黒の菩提樹の創始者である狗道供界については、残念ながらそれらしい情報は特に得られないまま。今後も黒の菩提樹の残党に対して警戒態勢を強めるべし。ちなみに、今回の任務で捕らえた自爆テロの首謀者―――リーゼ・ガルバンディアは今…)
okakaは横目でチラリと見る。彼の視線の先には…
「あ、ぁ……ぅ…ぁ…」
目から光の消えたリーゼが、実験用の座席に座ったまま厳重に拘束されていた。そう、現在okakaがいるのは竜神丸の研究室である。okakaは実験室に拘束されている彼女を強化ガラス越しに眺めながら、報告書を更に書き進めていく。
「ぁ~……ぁ~ぅ~…」
(…リーゼ・ガルバンディアは今、全ての記憶を竜神丸に消去され、何もかも忘れてしまっていた。自分が起こした事件の事も、自分以外のサイキッカー仲間の事も、かつて家族と平穏に過ごしていた頃の事も……そして、
「…哀れな」
無表情のまま、赤ん坊のようにア~ウ~言葉を発しているリーゼ。自分がこれから竜神丸のウイルス実験に利用される事など知りもしない彼女を見て、okakaはただその一言を発する。しかし今回の自爆テロで海鳴市に被害を出てしまっている以上、okakaは彼女を哀れと思いつつも、それ以上同情はしない。
(この数十分後、彼女には竜神丸のウイルス実験で死亡するか、もしくは人ならざる異形に成り果てるか、いずれかの結末が待っている。人として扱われない現実を認められないでいた彼女が、結局は人ならざる存在に成り果てて死ぬとは、何たる皮肉か…)
「さぁ、実験を始めましょう。イーリスさん」
「了解」
(そんな彼女を……かつての実験体仲間を実験台にする竜神丸の心情は、俺にも、ディアーリーズにも、支配人にも、増してや他のどのナンバーズメンバーにも分かる事は無い。分かるとすれば精々、キーラさんやスノーズ・ウィンチェスターを始めとする、かつての実験体型サイキッカーくらいしかいないだろう…)
「…何なんだろうな、このスッキリしない感じは」
実験が始まり、注射器の取りつけられたアームがリーゼに接近していく。この後に起こる事態をある程度予測しながら、okakaはそれ以上先を見る事なく竜神丸の研究室を後にするのだった。
とある平行世界、夜の街…
「ギギャァァァァァァァァァッ!!?」
狭い路地裏にて、一体の初級インベスが退治されていた。初級インベスが爆発した後、燃え盛る爆炎の中から姿を現したのは…………okakaが変身したのと、全く同じ姿をした鎧武・オレンジアームズだった。
「よし、これでここらのインベスは倒し終えたな」
鎧武はオレンジロックシードを閉じ、変身を解除して銀髪の青年の姿へと戻る。
「おっと、こうしちゃいられねぇな。早く帰らねぇと、舞に何を言われるか分かんねぇしな」
何かを慌てたように走り去っていく銀髪の青年。そんな彼が着ている青い服の背中には、円形になった『鎧武』の文字を日本刀が貫いたようなマークが描かれていた…
END
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闇のアーマードライダー その5