No.813872

超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス

さん

長らくお待たせしました!(待ってくれた人いるか分からないけど!)
これからちょっとずつでありますが、更新していきますのでよろしくお願いします!

2015-11-15 20:58:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:668   閲覧ユーザー数:662

地獄の業火のように燃え滾る様な憎悪による怨念が聞こえた。

悪意に満ちた空間が立ち並んだ工場から放出される排気ガスのように見えた。

死んでも死にきれない深淵の如き未練の気が空を覆う闇のように広がっている。

それら全てはこの世の地獄目指して集まっていく。

その世界に繋がっているこの体に無尽蔵に入っていく人のネガティブエネルギー。

人で満ちた街並みを遠くから見ながら、思う。

 

どうして、女神はこんな世界を守ろうとしたのだろう。

どうして、こんな世界を守っている女神を助けようとしたのか。

 

零崎 紅夜は零崎 紅夜であるがための目的を見失っている。

その空っぽの器は誰かの意志、他人の心、彼の体の特異性がその浸食をさらに加速させている。

 

どこまでも続くネガティブエネルギーが満たす黒い空を見ながら、思う。

苦しみ、悲しみ、怒り、憎んで、正気を削られていくことすら自覚を無くしてしまった。

ブラッディハードの進化形態であるネクストブラッディへと変身できるようになり、大量のネガティブエネルギーの消費によって保たれている意識の中で、彼はイストワールの『貴方は貴方自身を救ってください』その言葉の意味を答えを同類であるモンスターの屍の山に座って考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

freeze(フリーズ)burn(バーン)!!!』

 

宝玉から放たれるデウスの声と共に肉を裂き、食いちぎる爪牙を剥き出した【汚染化】モンスターの群れは空亡に触れる目の鼻の先で物言わぬ氷像と化して、ある物は灼熱の抱擁に何が起き方理解できぬ間に地面の黒ずみとなった。振り返ると同時に氷漬けにされたモンスター達は一斉に砕け散り、氷の欠片の舞う幻想的な空間の中で、赤子を捻るようにモンスターを絶滅させた空亡に彼女達は目を合わせて苦笑する。

 

「任務、完了しました」

「あ、うん」

 

一応退院したネプギアや日本一のリハビリ的に弱いモンスターを狩りつつ、ネクストブラッディの影響で【汚染化】モンスターの大量出現地で予想以上の数に一時撤退を考えた瞬間にモンスターを凍らせ戦闘不能に、更に他のモンスターを氷で閉じ込めて、紅蓮の炎で蒸し焼きにするという二桁も言ってない幼い少女とは思えない鮮やかな手口にアイエフは思わず生返事をする。

 

「なんとうか、ティシフォネの件といいレイス・グレイブハードといい空に関わる奴って大半貴方みたいなチート能力者なの?」

「みんなが、みんなって、理不尽な程強くはありませんよ……。アイエフさんより弱い人たちも大勢います。あと私はどちらかと言えば、中の中です」

神殺しの頂点(パンテオン・エヘクトル)を使えばまた変わってくるが、あれは見境ないからな。主と夜天空は有事の際にしか使ってはいけないという約束を交わしている』

 

彼女の本来の力である『神殺しの頂点(パンテオン・エヘクトル)』の詳細は空によって聞いている。一度発動すれば、神を確実に撃ち滅ぼす虚無と畏怖を体現する禁断の力。もしゲイムギョウ界で十全に使われれば間違いなく、大陸中に付与された女神の加護は一瞬にして殺され、女神の力によって本来弱体化している筈のモンスターはネガティブエネルギーで満ちている冥獄界で荒れ狂う本来の姿へとなる。そうなれば、マジェコンヌ所ではない。

それ故に空亡は契約したドラゴンの力を借りて戦うことが主になる。それでも彼女と一番付き合いが長い、デウスは物理法則を完全に無視した灼熱と氷結の技で敵を絶滅する様は、例え別次元の記録と経験を得てパワーアップしたネプギアであっても、全ての行動を回避と防御に振り分けて時間稼ぎが出来るか、出来ないか怪しい程だ。

 

「約束、ですか」

 

コクリと頷き小指だけを立てて神殺しの少女は皆で見せた。

全く別の世界からやってきたという事は知っている。そしてこの世界より別の世界がどれほどの数があるのか、大砂漠からたった一粒を探す様な作業だったかもしれない。それでもなお、ここにたどり着いたのはどれだけ空をそして父親であった筈の紅夜に思いを寄せているのか、考えただけで胸が苦しくなる。

 

「……父さんは父さんじゃなくて他人になったから、先生と一緒に帰ることが今の目標です…」

「…………」

 

本来ならこの討伐任務も紅夜も同行する予定だったが、空亡と紅夜が目を合わせて同じタイミングで別行動を指定してきた。

記憶を失って新たな道を歩む紅夜にとって空亡という存在は受け入れがたい存在で、取り戻したい空亡からしても知っている紅夜が死んで新しい道を進んでいる紅夜と言う存在は受け入れがたい存在で、そんな反発する同士の磁石のような関係で、二人が近くにいるほど空気が重くなるのは彼女達からしても、どうにかしたいが子供すらいない彼女達からすれば、この複雑な親子関係に上手くフォローできる自信はなかった。

 

「……気にしなくても、いいですよ」

 

気まずい空間を察した様に空亡はダンジョンの出口目指して歩き出した。

 

「で、でも空亡ちゃん凄く困っている顔してるし、ヒーローである私からすれば放って置けないっていうか……」

「日本一、これは私達がどうこう言える様な案件じゃないですの」

「……そうですよ。私達は世界を救う旅をしているです。あの親子がお互いに牽制し合っても、最悪の事態になっていない以上は放っておくのが大切です」

「ギアちゃん、それはそうかもしれません……それでも」

 

コンパはまだ親の温もりに守られる筈の小さい背中を見ながら悲しげに呟く。

 

「今この瞬間、捕まっているお姉ちゃんが酷い目に合っているかもしれないんです。明確な改善案が無い以上は、私達に出来る事はありません」

 

冷たく言い放つネプギアは空亡の後を追いかける。

残された四人はお互いに目を合わせた。

 

「プラネテューヌの女神候補生はいつもあんな感じですの?正直、ちょっと怖いですの」

「全然違うわ。紅夜とねぷねぷの影響で結構なお人よしだったんだけど……」

「……可笑しくなったのは、蘇生した時からです。やっぱり空さんが原因だと思うです……間違いないです」

 

暗い瞳で苦虫を噛み潰した顔でコンパはぶつぶつと怪しく呟きながら、その場から離れていく。その背中をがすとを見つめてアイエフへと移す。

 

「このパーティー崩壊しているように思うですの。このままで本当に世界なんて救えるですの?」

「え、えっと困ったことが合ったら相談に乗るよ。なにせ私はヒーローだからね!!」

「……………」

 

胃がねじ切れるような痛みを感じながらアイエフはバラバラになりつつこの状況に頭を悩ませた。

 

 

 

 

 

『ぶっちゃけて空亡のお嬢と仲良く出来ない?』

「あっちからすれば俺は偽物なんだろ?俺からは無理だ」

 

何より俺自身余裕がない。とプラネテューヌの首都から少し離れた小さな森の木に背を預け紅夜は呟いた。

 

『そこをなんとかさー……空気が最悪なんだけど』

「お前、自分が一番慕っている奴の偽物を見たらどう思う?」

『うぐぐ……』

 

紅夜の正論に黙るデペア。

 

「どうしようもないさ。俺は彼女に何を伝えても結局それは虚ろから出た戯言でしかない。俺が彼女の父親とそっくりである以上は割り切れるはずがない」

 

この世界に来るまでに彼女がどれほど苦労をしたのか、自身が記憶がない状態でゲイムギョウ界に彷徨っているのは六年ほど、その全てを彼女は探索の時間に使っていたと考えると、どれほど彼女が空たちを大事に思っていたのか、それらを考えれば自分と言う存在が彼女にとってどれだけ苦痛を作り出す者になってしまっているのか予想が付く。

 

「正直、このまま単独で動いた方がいいじゃないか?」

『君はまだまだ不安定で次暴走すれば今度こそゲイムギョウ界が終わる。一度ネクストブラッディになっただけで【汚染化】モンスター出現確率は一気に上がったの知らない訳じゃないでしょ?その時に君を確実に排除できる存在がいるんだよ』

 

再度ネクストブラッディがゲイムギョウ界に顕現してしまった際には、それを扱う意思が邪悪な物であれば本当に終末が訪れる。

そして今、|世界を新たな舞台《ネクスト》へと押し上げる力を持ち、ネクストブラッディを打倒できる女神は囚われの身であり、力の差を補うための女神を要求する未来(ゲハバーン)は既に破壊されている。今確実に災厄の権化である紅夜を滅ぼせるのは絶対的な神殺しの能力を持つ空亡しかいない。

 

『正直な所、女神候補生が集まっても君を殺せない。実力的な意味でも覚悟的な意味でもね』

「………そうだな」

 

どこまでも黒ずんだ天と地を見ながら紅夜はため息を吐き、全ての生き者を跪けさせるほどの凶悪な存在感に空を見上げた。

凍るような超低温の氷と燃える超高熱の炎を纏った二律背反を体現した一匹のドラゴン。

荘厳なる白銀の翼を翻し、天使のように降臨して地面に接触した瞬間に溢れる熱波を感じながら、氷山の様に荒々しく生えた神々しい氷角。心臓の脈動のように光る怪しい王の冠のような突起が関節部分と胸から生えている。その存在感はまるで世界を犯す災厄が形した生物としてのカテゴリーに入れていいのかすら怪しいほど。その背中からこちらを観察する小さな影。

 

「……用意は出来たのか」

「はい」

「分かった」

 

ドラゴンがこちらを睨んでいる。たったそれだけ冷や汗が止まらない。心臓を鷲掴みにされているような恐ろしさと、その視線が主をこれ以上悲しませたら殺すと語っていた。下ろされた翼から登るとネプギア達もいた。

 

「怪我はありませんか?」

「……あるわけないだろ。これでもモンスターの王さまだ」

 

寧ろ会っただけで逃げる奴を追いかけて殺す方が苦労した。と愚痴りながら場所を空けてくれたネプギアの隣に腰を下ろす。ラステイションの方で依頼された全ての素材はイストワールに渡されているので、これでゲイムキャラの居場所を教えてくれるとネプギアは笑顔で紅夜に伝える。

 

「お兄ちゃん、覚えていますか?ここはお姉ちゃんが良く仕事から逃げてここで昼寝していた場所なんです」

「……すまない」

 

どこか影が差している笑顔から話してくれる内容に紅夜は首を振るった。

それにネプギアは痛い程に紅夜の手を握りしめて、いいよ。と優しく答えた。

 

「……行きます。デウスお願い」

『承知した』

 

白銀の双翼は大気を掴み、大空へと舞う。

目指すはラステイション。

様々な事があり歪になってしまった彼女達に待ち受けるのは更なる激情の嵐だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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