No.791689 IS ゲッターを継ぐ者剣聖龍・零さん 2015-07-25 00:06:26 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:701 閲覧ユーザー数:693 |
~光牙side~
ドーモ、ミナ=サン。コウガ……もとい光牙です。前回のせいでニンジャスレイヤーな影響がしばらく続いています。
パーティーでの啖呵を新聞に載せられてから一週間が経ちました。その間、僕は大変な目に逢いましたよ……。
あの啖呵の内容は直ぐ様に全校生徒に伝わり、新聞が掲載された日の放課後から誰これ構わず僕にISバトルを挑んできたのだ。
理由は色々ある、男性操縦者の実力者を知りたいというもっともな理由の人。それに似て戦闘データを取りたいという人。あと、単純に戦いたいというバトルジャンキーな人もいれば、「男があんなこと言って生意気」というなんか下らない理由もあった。
それに対し、僕は最初こそ戸惑ったけど出来る限り勝負を受けた。
言いだしっぺは僕だし、挑まれた勝負に背を向けるーー相手が女の人なら猶更(男してのプライドという意味で)。ISバトルの経験も積めるし、ベーオの分からない部分も何か分かるかもしれないメリットもあったから。それに戦えるしね……。
だからこの一週間、放課後はほぼ模擬戦尽くし。
相手は一年先輩の二年生、最上級生の三年生、同級生の一年生、代表候補生や専用機持ちの人など様々。
その人達と、戦って、戦って、戦いまくって。
……結果から言うと、勝負全てに勝利した。
手加減? 勿論していない。というか、一年生はともかく二年生や三年生、代表候補生の人は強敵が殆どだった。IS操作時間の差は向こうが遥かに上、ISの技術やクセは僕より知っている。
自分を過大評価している訳じゃないけど、僕もISについては勉強した。けどまだ勉強中の段階で、女性である彼女らには叶わない。
中でも二年の代表候補生二人(内一人は専用機持ち)、三年も専用機持ちの人にはマジで危ない所まで追い詰められ、戦いには色んな形があり、まだ知らない戦いがあるのだと痛感した。僕はそれが偏っていて何処か学園の人達を見下していたんだと思う。
……反省しなければ。
ともかく、一週間の激戦を潜り抜けた僕。すると女子達も一通り満足? したのかバトルを挑まれることはなくなっていった。
「……あ、足が……腕がぁ……」
代償に待っていたのは凄まじい筋肉痛と打撲だったけどね……。
幸い今日は授業がない土曜日。パジャマのまま布団の上に寝っ転がり、痛みに呻く。
ガチャッ。
「光牙~。いる? 入っていいわよね?」
「入りながら何言ってるんですか……」
すると開かれるドア、決定口調で部屋に入ってくる茶髪ツインテールの女子、鈴さんが来襲であります。
あの啖呵に大笑いのあまり鈴さんは「一夏がこんなこと言う訳ない」という僕には意味不明な解釈で、僕を他人だと認めた。以来、普通の友達の感じの様な関係になっている。
例えば、僕の部屋が空いている教員部屋だと知っても普通に遊びに来て、持ってきた漫画やゲームで遊んだりすること。
え、まるで通い妻? ……何アホなこと言ってんですか、トマホークと葵とチャージアックスと太刀で寸切りにしますよ?
「どうしたのよ光牙、そんなどっかのイタい独身女教師の休日みたいな格好して」
……なんちゅーメタかつピンポイントな疑問ですか……。
「……ふぇっくしょん!」
「会長、風邪ですか?」
「いや、なんか私を呼ばれた気がして……」
「それより光牙、今ヒマ? ヒマならモンハンのギルクエ手伝ってよ」
「えぇ、またですか……」
「いいじゃないのよ、アンタも一段落ついたみたいって噂だったけど、本当みたいだし」
なんでそんなことまで知ってるんだろうか……。
「ほおら、寝てないで起きる!」
「ちょ、あー」
抵抗する間もなく、僕が寝ているにも関わらず布団を引っ張る鈴さん。それに従い、転がって畳とべしゃりと叩き付けられる。
「う~……分かりましたよ。じゃあ着替えたりしますから、少し待っててください」
「OK。じゃあ待ってるから!」
そう言い布団を脇に置くと軽快な足取りで部屋から出る鈴さん。会ってまだ少ししか経ってないけどフットワークが軽い人だ。あの様は前の世界にいた“あの子”に似てる。
無邪気なあの笑顔を思い出しつつ、待たせてはいけないので布団を畳み備え付けの押し入れに入れ、パジャマから普段着の半袖Tシャツ、半ズボンに着替えて、外の鈴さんに言った。
「じゃ、早速行くわよ~」
部屋に戻ってきた鈴さんがポケットからゲーム機を取り出してソフトを起動させる。ちなみに専用ゲーム機のデザインは中国限定の黒地に金の龍が描かれたやつだ。カッコいい。
僕も同機種のゲーム機をこの間買った、ソフトが同梱している限定版でゲーム機のカラーは下地が赤、それに白い翼が描かれたタイプ。
鈴さんにならい、僕もゲーム機動。通信プレイのモードに切り替え、準備を整え早速クエストに出発。
この後、十二時までゲームをプレイし続けた。
最上級のクエストに行きまくり、超強敵の相手モンスター達ーー極限なセルやラージャン、古龍のクシャルにテオ。シークレットモンスターのミラ三体とかを相手にし続け、僕と鈴さんは何回も落ちながらも狩りまくり素材をしこたまゲットした。天鱗系素材神おま神武器も勿論、所持金もがっぽり稼ぎ装備もかーなーり強化出来た。
だから、十二時というキリの良いタイミングで一旦ゲームは中断。
昼飯は部屋のキッチンを使い、簡単にチャーハンを作った。と言ってもご飯炒めてそこに市販のチャーハンの粉を入れるタイプだけども。
「はい鈴さん、どうぞ」
「ん、ありがと」
鈴さんの分のチャーハンを渡し、レンゲですくって口に運ぶ。
「……………」
レンゲを咥えたまま無反応の鈴さん。あれ、失敗したかな?
「あの、鈴さん? 口に合いませんでしたか?」
「……そんなことないわよ。ま、まあまあってとこね」
そう言いチャーハンを食べ始めてくれた。良かった、ちょっとくどくないかと思ったけど大丈夫っぽい。
「いただきます」
僕も自分のチャーハンを食べる。うん、我ながら美味しいな。
「(……なんか、もしかしたらうちのやつより美味しいかも……)……光牙」
「? なんですか?」
「アンタ、今度のクラス対抗戦に出るわよね」
「はい」
「……二組の代表私なの。絶対負けないからねっ!!」
ビシィ! という効果音が聞こえそうな勢いで、急に立ち上がった鈴さんは僕に右人差し指を突きつけた。
……あの、何がありましたか?
突然の宣戦布告、僕は首を傾げるしかできなかった。
チャーハンに何にも入れてませんよ? 市販のチャーハン粉以外。
「実は私の専用機『甲龍』も近接型なの。アンタのも似てるみたいだし、良い勝負が出来ると思うわ」
「鈴さんの機体が?」
鈴さんが右手にはめた赤と黒のブレスレットを見せ、自分の手の内ネタバレが炸裂する。……手だけに。
「……それは面白いですね。仰る通り良いバトルが出来そうです」
「ふふん。そうでしょ? でも、勝つのは私だから」
「まだやってみなきゃわかりませんよ? 僕だって負けるつもりなんか1gもありませんからね」
そういうと、鈴さんは不敵に笑みを見せる。ちょっと見える八重歯と合わさって、好戦的な印象を与えるそれに、僕も不敵な笑みで返したのだった。
よし……対抗戦までに、ベーオの調整をしとこう。近接重視で。
~光牙sideout~
~ナレーションside~
光牙と鈴が互いに宣戦布告してあってから数日後。
二人が自分の愛機の調整をしている中、学園側でも対抗戦の準備が着々と進められていた。
「そこの機材は第五アリーナに、そっちは第三アリーナに運んで頂戴」
対抗戦の舞台となる第四アリーナ。そこに備え付けられた倉庫では、学園の一教師である女性が作業員達に指示を飛ばしていた。舞台となるアリーナ、その倉庫にはISや機材が格納されているが、対抗戦の時までその訳にはいかない。何かあって事故でも発生したら大変だ。ちなみに作業員の方達は女性もいるが男性の方が多い。
ISが普及したとはいえ、男と女の根本的な違いーー力の差などは変わらない。
こういう力仕事には、やはり男性が駆り出されるのだ。
第四アリーナの機材やISは、一時的に他のアリーナの倉庫へと移される。
「ーーほらそこ! もっと丁寧に運びなさい!! 傷でもつけたら、どうなるか分かってるの!」
「す、すみません」
「ったく、これだから男は……」
打鉄をカートに乗せゆっくり運んでいた作業員を女性教師は怒鳴りつけ、小声で悪態をつく。この女性教師、学園の中では評価が高く生徒にも信頼されているが、それは女性、しかも実力のあるものにだけであり、男性や自分の中で決めた基準に達さない女性には高圧的な態度を取っていた。最後の悪態も、仕事のストレスとISを男性が動かし尚且つ活躍していることにイラついていることも含まれていた。
しかし、その小声は作業員全員の耳に聞こえており、女性には見えないように歯を食いしばったり、拳を握りしめたりしていた。
「(なんだよ、威張りくさりやがって……)」
「(ISに乗っかてるだけの癖に……)」
そもそも女性教師が怒鳴った作業員も、カートの打鉄を傷つけまいと丁寧に運んでいたのだ。まあ女性教師にしたら怒った理由などストレス解消が含まれているので滅茶苦茶なもの。
天下のIS学園でも、いやだからこそ、女尊男卑の影響をしっかりと受けていたのだった。
「……ふう。これで、よしっと」
先程怒鳴られた男性。あれから他の作業員共々いちいち文句を言われたが、丁寧に仕事をし、運んだISには傷一つつけずに他のアリーナへ運び終えることが出来た。力と根気、集中力を大量に消費したとても大変な作業であった。
にも関わらず、あの女性教師は一言の礼すら言わず、さも当然とばかりの視線を浴びせ、鼻を鳴らしてさっさと帰ってしまった。
これには上司の男性作業員は勿論、同僚の女性作業員も文句を漏らしたものだ。
そもそも、ISを使えばこんなことしなくて済むじゃないか。
男性達はそう思っていた。
まあそれは規則云々で色々出来ない理由があるのだが。
「………………」
男性は最後に運んだラファールを見つめる。
ーーお前らが俺達にも使えりゃ、良かったのによ……。
無駄だと分かってはいるが、忌々しげな視線でラファールを一瞥し、男性は倉庫の電気を落とし、倉庫に鍵と電子ロックをかけやっと仕事を終えたのだった。
だが、この時気づかなかった。
今男性が鍵をかけた第五アリーナの倉庫。
その内部、第四アリーナから運び入れた機材の中に、緑と黒のガントレットがあったことを。
それから昆虫の脚のようなものが生え、独りでに蠢き出したことを。
誰も気づくことが出来なかった。
ーーやがて、更に数日が過ぎ、クラス対抗戦の日を迎える。
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第十一話です、どうぞ。