混乱する連合軍の中を一刀は訪れていた。供も引き連れてはいない。
正真正銘の単身で。それもこれも
「ここは魏の本陣でいいのかな?」
全ては曹操に会うため
「・・・・誰だ貴様は、所属と名、用向きを言え!」
その兵すらも
「曹操に呼ばれてみればこの仕打ちか、いいだろう俺はこのまま帰る、貴様が報告しておけ」
そう言っておけば
「な!?・・・用向きと名だけ言え!」
「一刀、明日のことについてだ」
「確認してくる!少し待っていろ!」
(一兵卒が客人を追い払ったなんていえないもんなぁ)
そンな他愛も無いことを考えつつ少し待てば
「全く・・・あんたは一体なんなのよ!?こんなところまで一人でくるなんて!」
猫耳軍師が姿を現した、悪態とともに
「なに、明日のことについて確認しておきたいことがあってね。供は外で待たせているからなるべ
く早くしたいんだけどいいかな?」
ついてきなさい!その声の主の背を突き従うように追い。一つの天幕までたどり着く
「華琳様!奴をお連れしました」
「いいわ、入りなさい」
そして通らされた先には
(真桜に沙和と流琉に季衣以外のほぼ全員か、まさか凪までいるとは思わなかったな)
「あら?たった一人でこれだけの武将に囲まれる天幕は流石の貴方も怖いかしら?」
そう言って嬉しそうに笑む顔を・・・見返すために笑みを持って天幕へと足を運ぶ
「いや?仮にも覇王を目指す曹孟徳がこんな不意打ち紛いのことはしないと思っているよ?」
そこで区切りさらに笑み
「もっとも、こうでもして俺を殺さなきゃいけないほどの理由があるならそれを聞きたいけどね?
まさか俺程度に恐怖するわけも無いだろう?」
「貴様!華琳様を侮辱するか!」
そう発して大剣を抜くまでにはものの数秒もいらない、そして彼女がその剣を振りかぶったところ
で
「なるほど、曹操の大剣、夏侯惇がそう来るのならこれが総意ってことでいいのかな?曹操さん?」
「やめなさい!春蘭!私に恥をかかせたいの?」
そういわれ渋々と大剣を収め・・・部屋の隅でいじけた。妹がその姿を凝視しているのはこの際置
いておこう。
「あれの暴走はひとまず謝るわ。それで?何で来たのかしら一刀?」
「明日のことでね、ねね、軍師だけどそれと一緒に立てた策がある、出来れば孫策さんと劉備さん
も呼んできてもらえると嬉しいんだけどいいかな?」
その言葉に一度頷き右手を挙げると凪、楽進が出て行き・・・
2刻程で劉備、そしてその供の孔明、関羽、鳳統、張飛が姿を現し、それとほぼ同じ時に
孫策、その供として、周喩、黄蓋、陸遜、孫権、周泰、甘寧がやってきた。
(流石にこの人数だとかなりの迫力だよなぁ・・・)
その様はさながら彼が体験した三国での新たなる旅立ちの日の情景に少し似ている、にているだけ
でただの別物とその考えを打ち払い・・・
「まずは、集まっていただきありがとうございます。早速ですが本題に・・・
孫策さん、劉備さん、貴女達にも明日前衛へと回って欲しいのです。」
その声にただ一様は黙する、この人は人を驚かす言動を取るがそこには理と利があるとしっている
から。
「今日の袁家に対して派手にやりすぎたこともありますが、袁家のあの大軍が幾ら弱卒といえど、
あの数全てで抜けないことを証明した虎牢関、それを曹操さんの兵がいくら精兵といえど、たった
一軍で抜いてしまうのは不自然極まりない。もしその不自然さに気づき、此方の動きを調べようとするものがいれば、私達は逆に曹操さんを貶めてしまうことになる。だからこそ、劉備さんのところと孫策さんのところにも参加していただきたい。
具体的にいうのなら・・・私達は明日も打って出ます、愚かな指揮者が昨日の勝ちに気持ちをよくして、今日も一当てして勝ってやろうと欲をかきます。ですから・・・足止めをお願いしたいのです。当然私達の武器は刃を殺しますし其方を殺す気では挑まぬようにします。劉備さんのところには霞・・・張遼と趙雲を。孫策さんのところには呂布を。
そしてその足止めの間に曹操さん、貴女が虎牢関を落としに来てください。一応不自然にならぬように曹操さんには華雄を当てます。・・・軍師の方々はこれであと、どう動くかの予想が出来ると思います、長居しては危険が及びますし疑いもされますので、俺は先に戻らせていただきます」
そう言って消えた一刀の言葉通りの布陣。一刀の望みどおりの布陣。
それが次の日に一刀の目の前に広がっていた。
前方には孫と劉の旗、その少しだけ後方に曹の旗。
「しかしいいのですか?華琳様?あんな奴の要望どおりにしてしまって」
その曹旗の下で不安な声をあげる春蘭に
「いいのよ、もしこれが成功すれば、無償で虎牢関を落とした功績が手に入り・・・そしてもし、
失敗するようなことがあるならば・・・それを理由に一刀を引き込めばいいわ」
そう言って笑む
「楽しそうですね、華琳様」
「えぇ!相手は無償で名声と、そして情報をくれるというのだもの!嬉しくないわけがないわ。さ
ぁ春蘭?秋蘭?虎牢関を落とす役目は貴方達二人に任せたから・・・しっかりやり遂げなさい」
「「っは!(御意!)」」
自信に溢れた余裕の王の顔が
孫旗の下では
「あの呂布か・・・ねぇ?冥琳?私も前線に出ちゃ・・・『だめです!』・・・うぅ~」
「あの呂布の強さは尋常ではない、我等の中でまともに相手が出来るのは祭様だけ・・・かろうじ
て相手に出来たとして雪蓮と思春、明命の3人・・・けれど貴女は呉の王なのだから出すわけには行
かない・・・わかって頂戴」
「・・・ぶ~分ったわよ・・・」
不貞腐れている王の顔が
そして劉旗の下では
「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、危なくなったらちゃんと下がらないと駄目だよ?」
「分っていますよ桃香様!」
「お姉ちゃんは心配性なのだー」
「そうかもしれないけど~」と頬を膨らませる桃香。
「大丈夫ですよ、桃香様、私達がそうまけることなどありません」
「今度は星にも勝つのだ!」
そんな3義理姉妹の和気藹々といた様子と
「ねぇ朱里ちゃん」
「なに?雛里ちゃん?」
「・・・一刀様って民衆のことも考えているし掲げている理想も私達が望んでいたものに近いよ
ね?」
「・・・そう考えれば・・・けどどうしたの雛里ちゃん?」
「あわ・・・その・・・カッコいいなって」
「雛里ちゃん!」
「あわわ・・・・」
「はわわ!雛里ちゃーーーーん!?」
どこか頬を上気させ、あわわという軍師と、それを見てはわわと慌てる軍師の姿。
「そんれじゃあ皆、ここでの最後の戦いだ、よろしく頼む・・・勝ち戦にして挙げられなくて申し訳ないと思うけれど・・・」
そこで一刀の言葉は遮られ
「言うなです、今回の策はこのねねも太鼓判を押してやったものですぞ?ここでの負けは次の勝利
へと確実につながるのです、なのでここでの敗戦は皆其れほど気にはしていないと思っとけです!一刀!」
「せや!ウチらのこと考えて一騎打ちの全力は恋以外許してもらったしな」
「・・・・・・なんで?ご主人様?」
(上目遣いで涙目、けれど顔を少しだけむくれているとかやめてください、恋さん!)
「恋の手加減とか出来ないんじゃないかと思ってね・・・だから恋今回は俺のお願いだ。」
その言葉にピクリと反応する恋は
「・・・・・・ご主人様のお願い?」
「そう、誰も殺さずに、孫策軍の足を止めて欲しい」
「・・・・・頭なでなで・・・」
「帰ってきてちゃんと出来てたら一杯してあげるよ!」
その言葉で満足したのか
「・・・・・・・ん」
その一言だけ頬を赤くして頷いた。
周りから冷ややかな視線が飛んでくるのは気にしない、気にしちゃいけない
「っとそうだ、華雄。」
「なんだ?」
つつっと一刀は華雄のほうに近づいて、何の前触れも無く抱きしめた
「な、なにを!」
「・・・・・・・・時は・・・・・・・」
「な!・・・分った・・・だが私は・・・いや、言うまい。だが其れは頭に止めておこう」
一刀が華雄の耳元で何事か囁くと華雄がそれに静かに反応を示す。
周りはそれに介入することを許されない雰囲気で
「ん。それじゃあ皆、各自足止めよろしくね!」
一刀の声でその雰囲気は壊れる。
ただ一人華雄だけがその目に決意の色をこめて。
そして数刻の時が過ぎ・・・
連合にとってはまさに虎と狼がつめられている門が開け放たれた。
そこから出てくるは昨日の悪夢と同じ軍勢・・・そしてまた同じように青年が刀を手にして前に出
て・・・声を高らかに叫ぶ。
「皆のものよ!昨日で懲りず我等を逆撫でする敵が来たぞ!奴等に思い知らせよう!
ここが何人たりともを受け付けぬ場所であると。昨日のように思い知らせてやれ!」
そこでやはり一呼吸置き・・・今度は華琳へと視線を向ける、人に遮られ届かぬものと知っていて
も・・・だからこそ叫ぶ。
「皆の武運を!全軍突撃!」
その声とともに、華雄隊だけを残し、他の3人は最前衛の劉備、孫策へと喰らいつく。
恋の部隊の突撃に、屈強な呉の兵は一度怯むが
「何を恐れる!貴様等は昨日の奴等の如く産湯に浸かったばかりのようなひよっこか!?
否!私は知っておるぞ!わしの訓練に耐え抜いた貴様等を!ならば何を恐れる!全軍、向かい討てぇい!」
その黄蓋の声でその場にとどまり。
オォ!っという気迫と共に両軍はぶつかる。そして
「我が名は黄蓋!だれぞ戦う勇気のあるものはおるか!」
そう声を放ち、そこへ静かに・・・・ただ静かに
「・・・・・・・・いる」
一人の少女が相対した。
「ふ・・・飛将軍呂布か!相手にとって不足なし!くらえい!」
そう言って放たれる弓は2射そして放たれた矢は4本。しかしそれだけの瞬撃すら
「・・・・・・おそい」
彼女にはただの児戯!
「・・・あれを防ぎよるか・・・」
「「祭様!」」
そこに二人の少女、甘寧と周泰が駆けつけ。
「おぉ、すまぬな、ちぃと手を貸してもらうぞ!」
「「っは!」」
当初の計画通り、呂布は呉を押さえに掛かっていた
「ひ!っは!っきゃん!・・・あの?」
「・・・・・・・なに?」
「何で私が重点的に狙われているのでしょうか・・・?」
その疑問は周泰のものそして答える呂布は
「・・・・・・ご主人さま・・・恋の、だから、あげない」
(逆恨みですよ!?)
そういいつつも手の抜かれた(猛攻)をかわし、耐えて・・・?
「ひゃん!・・・あの・・・策は分っていますよね?」
「・・・・・・・・・?」
彼女は可愛らしく首をかしげた。
幾ら手加減をしても彼女はどこまでも最強の武を誇るのだから。
(一刀様!お猫様!私を助けてください!!)
そんな涙声は彼女には届かない。
周泰には一生忘れられない日となっただろう・・・
そして張遼と趙雲の組は
「はあああああああ!」
「でやああああああ!」
二つの偃月刀が踊り、跳ねて、またぶつかり、弾けて、そしてまた空を切る。
其れの繰り返し、そう、ただそれだけの繰り返し。
「楽しいなぁ!関羽!ウチと同じ武器を使って・・・ウチと同等に渡り合える!楽しいな!?関
羽!」
「あぁ!敵ということも忘れてしまいそうだ!だが忘れるな張遼!勝つのは私だ!」
「っは!抜かせや!ウチがあんたを倒したる!」
そう言って笑みを浮かべ、また高速の武技のやり取りを始める。あるいは力で、あるいは技で、そ
して速さで互いを競う。だからこの楽しい時を一刻も【早く】終わらせようと彼女達はまたさらに
速さをあげ、力を増し、技を吊り上げる。それでもなお決着はつかない。ここまで見るに二人の実
力は伯仲。見劣りすらさせず、その二人の姿に戦場はそこだけ見惚れているのだから。自らが仰ぐ
者の最も輝く瞬間、其れを見て、なぜ止まらずにいられよう?ただ呆然とするものはいない、自ら
の将軍が勝つことを信じて彼らは声をあげる
その声すら「っは!」「っふ!」
この二人には届かない、ガギィンと金属の弾かれる音は幾度聞こえたか、何刻経ったのかすら判ら
ないほど彼女達は美しい。そしてその姿に触発されて
「私達もやるか?鈴々!」
「もちろんなのだ!」
また二人の将軍が刃を交える。その戦いは関羽と霞の戦いの隣で行われるのに相応しいほど
に・・・あらあらしく美しい。ただそこに響くは、剣戟と彼女達の笑みの声のみ。
曹操はこの機に両軍の真ん中を割って入るように突撃をかけ・・・そこでただ一軍待ち構える華雄
と相対する。
「春蘭!秋蘭!あなた達は行きなさい!」
その声に二人は華雄の脇を駆け抜け・・・
「いやなに、少し貴女と会ってみたくてな、曹操よ。・・・私の名は華雄!さぁ!私の武について
こられるものはいるか!」
今の華雄は
「ボクがいきます!流琉!一緒に行こう!」
「・・・えぇ!」
「二人がかりか・・・面白い!」
・・・負けることなど許されないと焦らずに・・・しかし負けることを拒むように
己の武を最大まで感じ引き上げそして吊り上げて・・・
「来い、今日の私は・・少し負ける理由が無くてな」
そして飛んでくる鉄球を
「っはあぁ!」
その強力と斧で弾き返す、投げられたものを打ち返す力。
「うわわ!?」
その力はいくら許緒といえど・・・自身の武器に釣られて吹き飛ぶほどには強かった。
「季衣!よくも!ってぇぇい!」
異質な形の武器は・・・
「っふん!」
華雄の一撃で地面に縫い合わせられた。
「な!?」
そのまま武器を掴み挙げられ・・・ッグン!という音と共に引っ張られる。
「悪く思うな!」
そして
「かは・・・」
鳩尾に思い切りのいい拳がめり込んだ。
「お返しする!」
その言葉で流琉は解放され・・・
「次は私だ!」
「ウチもや!」
「しょうがないから沙和も行くの~」
3人で・・・けれど
「後から出た二人・・・貴様等ではだめだ、殺しかねん。最初の一人、名は?」
「・・・楽進だ!」
「そうか・・・来い」
あとの二人を完璧に無視して華雄は凪と相対する。
「ちょ?ウチら無視かいな!」
「流石にむかつくの!」そう言って後ろからの不意打ちを仕掛けるも
「・・・あぁぁぁぁあああああ!」
彼女の戦斧の振りかざされた真一文字の横なぎ払い一閃。ただそれだけで
「きゃん!」「うわ!?」
その二人は吹き飛ばされた。
「そこ・・・だああああぁ!」
そしてその隙を見て突きをいれようとする凪を
「甘い!」体を反転させてその一撃をかわし、同時にその重い斧を・・・
「おぉぉ!」
凪の顔の眼前で寸止めとする。
「勝負ありだ」
その言葉だけを残して華雄は背を向けて
「待ちなさい!華雄!・・・・貴女私のところにくる気は無いかしら?」
華琳に勧誘を受けた。一刀の予想通りに
(いいか?曹操の足止めに成功したら彼女は君を勧誘するだろう・・・その時は、華雄、君の行きたいところへ行け。そして・・・俺のところに戻るのなら・・・其れ相応の覚悟を持ってくるんだ)
一刀は華雄を抱きしめた時にそう囁いた、暗に自分は要らないのかとも思ったが・・・一刀はそん
なことなどしない・・・ならば
(私は試されている)そう結論付け
「悪いな曹操よ、私の愛しい主が待っているんだ。それゆえに其方につくことは出来ない」
そう苦笑を持って
「あなたの兵は無事かしらね?」
その脅しすら
「武には武を持ってあたるのが私の部隊だ、包囲ひとつ抜けられない甘い指導はしていない・・・
囲めば死ぬぞ?曹操」
そう言って斧を地面へと叩きつける。
「・・・そう、残念だわ。あぁ包囲などはする気も無いから、もし来てくれたらそれでいいくらい
の話だしね・・・いきなさい」
その答えに満足をして
「また逢おう、曹操!」
華雄の部隊は虎牢関へとその身を翻した。
「・・・本当に惜しいわね。」
その呟きだけがその場には残る。
はあああああああ
その掛け声が遠くから聞こえて・・・春蘭が虎牢関の中へと飛び込んできた。
そしてそのまま「天の御使いの一刀!どこだ!その頸貰い受ける!」
物騒な暴走をしていた。
「夏侯惇さん・・・おちつ・・・『そこだああああ』・・・ちょっと待て!」
大降りの初撃ゆえにギリギリ回避できた。
「っち!避けるでないばか者が!」
「馬鹿は姉者だ!」
そしてぽかりと春蘭を叱りつける
「もう忘れたのか?姉者、殺してはいけないんだ。」
「・・・・・・おぉ」
(あはは・・・変わらないなぁ・・・)
その思いは胸の中・・・
「さて・・・俺たちはそろそろ撤退の銅鑼鳴らして洛陽に逃げますかね・・・けどまぁ逃げるため
にも正当な理由がいるか・・・」
そう言って。
「夏侯惇よ!俺と一騎打ちでもしないか?」
そう申し出てみたら
「その頸を叩き落してやる!」
異常なほどの食いつかれた(俺なんかしたっけ?)
そんな疑問もどこ吹く風というように
「構えろ!其れくらいの慈悲は私にもある!」
やれやれというように刀を抜き、青眼へと構え
「いくぞ!」
その声で一刀が先に一手入れるために動くも
「遅い!」
春蘭に見越され、すかされ、受けられ、弾き飛ばされる。
何もかもの次元が違う。
「これで終わりだ!」
その一撃を受けたら終わる、そう思った一刀は刀を二本構え、その二本で精一杯いなす。
ガガガガガという嫌な音が響き・・・ボキンと逆刃のほうの刀がその重みに耐え切れずに折れる。
そして一刀の体ごとその一撃は吹き飛ばし・・・
「やりすぎだ姉者・・・」
「・・・そうか?」
「北郷が埋もれてしまう・・・助け出してあげてくれ」
「・・・うむ」
そんな会話の末助け起こされた一刀は
「てて・・・流石は夏侯惇だな・・・さて・・・皆!俺達の負けってことで死なないうちにとっと
と洛陽に行くぞ!」
その声であたりが一気に騒がしくなる。皆が洛陽に帰る準備を進めるために。
「しかし一本折られるかぁ・・・」
「う・・・す、すまん!だがあれは貴様の武器がだな!」
「あぁいいよ、気にしないで、幸いなことに本命は残ったから」
そんな雑談の中皆が油断している中で・・・一つの不穏の影が動く
影は思う
(あの大将首を挙げればきっと一生食うには困らない・・・)
そんな私利私欲。だからこそ、そいつは・・・自身の持っている弓矢に手をかけ・・・ゆっくりと
標準を定める。
周りの奴等が気づいたときには遅かった。
「死ねや天の御使い様よ!」
「!?」その声にかすかに反応できたのは、偶然秋蘭のほうに振り向いていた春蘭だけ
そしてその狙いが一刀であるとわかると・・・ドンっという音と共に彼女は一刀を倒れこむように
押し出して・・・トサ
その矢は・・・彼女の左目に突き刺さった
「ぁ・・・あぁぁぁぁぁぁあああああああ!」
「!?貴様!なんのつもりだ!」
「ッヒ!?ちが、俺は!」
「問答無用!」そこで放たれた矢は彼を絶命まで追いやり
「あね『春蘭!!!!』」
秋蘭の声は一刀に遮られた。
「っく・・・誰か!水と綺麗な布をもってこい!」
それだけ言い放った一刀はぎゅっと春蘭を抱きしめる。
その血に汚れるのは厭わない。ただ彼女の口元に肩を差し出し
「っぐぅ!・・・」
春蘭に噛み付かせる、そうすることで少しは和らげと・・・ただ切実に祈りながら。
フーッフーと荒い息を続ける彼女の髪を・・・ただ丁寧に梳いていく。
目に刺さったままの矢が痛々しい、だが其れを抜くことは誰にも出来ない。
長い時間が経ったかのように思える・・・ようやく綺麗な水と布が届く。その時には春蘭も少しだ
け正気を取り戻し・・・
「・・・放せ・・・もう平気だ」
その声に一刀は素直に従う。そして春蘭は・・・静かにその矢に手をかけて叫ぶ
「天よ!地よ!我が体に流れる血、そしてこの体は私が尊敬する親より賜ったもの!そしてこの身、この心の全てに至るまで今は華琳様のもの!ならば我が体において捨て置くことの出来るものなどあろうものか!・・・故にだ!とくとみよ!我が体にこの魂の欠片を再び取り入れて見せよう!」
そう叫び・・・彼女は矢を引き抜く、それに付随している自身の眼を
「っぐ・・っふ・・・はぐ・・うぐ・・がは・・・く・・・」ただ貪るように
自らの体の中に押し込んでいく。その姿は・・・その情景に反して・・・何かの儀式のように酷く
静かで・・・そして美しかった。
その後春蘭の血は一刀が持ってこさせた水と布で綺麗に拭い、その目を隠すように布で彼女の眼を
片方だけ覆った。
「・・・すまなかった北郷・・・私達の部隊で欲に走るものがいるとは」
それが秋蘭の一刀に対する第一声、そして
「・・・姉者をあそこまで思ってくれたことに礼を言う、そしてこれがその証だ・・・私の真名は
秋蘭、好きに呼んでくれ、一刀」
その声に一刀は恐縮するが
「それと・・・姉者を咄嗟に真名で呼んだことも今回だけは多めに見ておいてやる。あの表情
は・・・そうできるものではないからな。」
それだけ言って彼女は背を向ける。そして一刀たちの退却準備がととのっていく最中に
「・・・すまなかったな、あそこで真名を呼んだことも・・・その許す・・・服を汚してしまっ
た・・・それに肩は平気か?・・・思い切り噛み付いてしまったからな」
「いや・・・俺こそ、助けてくれてありがとう、夏侯『春蘭でいい』・・・春蘭」
その会話だけを残して春蘭も背を向けどこかへと歩く。そこに
「北郷様!華雄隊、張遼隊、趙雲隊、呂布隊、退却準備整いました!」
その声で一刀はするべきことを思い
「全軍!洛陽へ退却!」
その言葉だけを残して、董卓軍は虎牢関から立ち退いた・・・代償は一体誰が払ったのか。
ただそれだけを一刀は悔いている。
-side連合曹操本陣-
戦いに勝った・・・それは当初の予定通り。そして唯一の違いは
「春蘭・・・こちらに来て其れを見せなさい」
「しかし!『見せなさい!』・・・はい」
春蘭の目が片方なくなってしまったこと、このことに対し始めは董卓軍の裏切りかと思った
が・・・秋蘭の悲痛な顔とその口が語った事実から・・・彼女の怒りの矛先は彼女以外にいなくな
った。
(欲に走った兵が・・・まさか私の宝よりも大切な春蘭を傷つけるなんてね)
そしてその春蘭は目を失ったことで「自分はもう華琳さまのものではいられない」とまで言い出す
始末。華雄も説得は出来ない、名声は手に入れられても払った代償が・・・いや、これは代償とも
いえぬことか、と彼女はただ考え・・・
「春蘭?」
「・・・はい」
そこで華琳は春蘭の無くなった眼にキスを一つ落として
「貴女は全て私のもの・・・どこかに行くのは許さないわ・・・私のそばにいなさい!」
その言葉だけで春蘭は感極まり・・・「か・・・華琳様!」
その曹操のひざへと崩れ落ちた。
今日だけはと桂花すら外に出た天幕でただ春蘭の嬌声と泣き声だけがその天幕の中で響いているさ
ながら春蘭の聖地か。・・・近づく男は秋蘭に射殺されるが。
秋蘭から聞いた事実。咄嗟に真名を叫び彼女に施した彼の行為の数々。
彼女達が真名を許したことを聞き驚きも得た。
だから華琳は思う、一体彼は何者なのかと。
超おまけ(本編には関係ありません)
詠は洛陽の自室で、自分が一人きりであることを殊更こまめに確認していた。
普段自分の身辺を守らせている者たちも今日だけは心持遠めで守らせるように言いつけた。
だからこそ、彼女は机の中から書簡の間に挟んである紙を取り出す。
其れは何通もの手紙。
その全てが一刀から詠に当てられているもの。
そう、伝令などを使った情報交換の際に、詠は自分の手紙を一通一刀のところへと紛れ込ませた。
其れが事の発端。
それ以来書簡や木簡に互いに手紙を潜り込ませてやり取りを続けていた。
その手紙の束。
一通一通が大事にしまわれているそれらを、詠は自身の顔がにやけていることも気に留めず開いて
返し読んでいく。
策が浮かばなくて困ったり、それこそまとめが一人で弱っている一刀は素でとんでもないことを手
紙に書き込んでいく
「早く詠に会いたい」「詠のほうが好きだな」「詠に色々教えてもらいたい」
等など、話の前後をつなげれば、なるほど、普通の手紙かもしれないが
あの朴念仁の一刀から唐突に送られてくる甘い言葉の書かれた(一部)手紙。
だから詠は其れを読み返して・・・
「ふふ・・・」
普段月にも見せない嬉しそうな笑みを浮かべる。
そして手紙を仕舞い込めばそのまま寝台へと突っ込み枕で自分を覆って
「早く僕に会いたいんだって・・僕のほうが好きなんだって・・・僕に・・その色々・・・色々っ
てなんなのよ。一刀。」
そんな風に幸せそうに言葉を紡ぐ。
「早く帰ってきなさい、一刀・・・その時は」
(そう、その時は)
「添い寝の一つでもしてあげちゃうんだから」
(最近たくましく、そして頑張っている彼に其れくらいのご褒美はいいだろう。)
「そうよ、これはあくまでご褒美なんだから!・・・本当なんだから・・・」
そう言って眠りに就く詠は・・・とても幸せそうに微笑んでいた。
朝起こしに来た侍従に驚かれるくらいに幸せそうにしていたのだ。
-あとがき-
・・・一気に書いてしまった・・・本来は@2回に分ける予定だった虎牢関編・・・
質が落ちてないことを祈りつつ投稿です。
しかし一気に書いてしまった分だけ時間もオーバーしてしまいました・・・
申し訳ない。
おまけは本編が少しだけ暗かったからあえて入れました!・・・空気読め?
さて。恒例の問答を先に
1、お前長い台詞入れるの好きなの?特に一刀:
・・・うん、好きだな・・・なんでだろう?演説とかは色々あるけど・・自分でもよくわかんね。
2、それで?拠点は誰と誰のを入れるんだい?:
アンケートとるからその結果次第。
3、貴様に絵を書かせた俺が馬鹿だったよ:
・・・惨めにさせるなよ・・・知ってるよ自分の絵心の無さは!
そんなところで。アンケートを!そろそろ反董卓連合編も終わります。
そこで拠点を入れるのですが流石に全員分はネタががが。なので現在いる面子のなかから番号で4つ
選んでください。多いの人の拠点を書こうと思います。
本来なら全員書くのがいいのですが・・・ごめんなさいネタだけはどうしようも。
1:月 2:詠
3:霞 4:千影
5:星 6:恋
7:ねね 8:華琳
9:明命 10:???
この中から選んでくださいな。え?いない奴がいる?ネタがあるからいいじゃないですか(ナニ
はい、こんなところで。それではまた次のお話で!
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ついやっちゃうんだ。
少しながめかも?
時間のほうはまたごめんなさいコース;
鈍亀は変わらずですが
楽しんでいただければ幸いです。