No.783367

司馬日記外伝 杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記3

hujisaiさん

大分空いてしまいましたが、その後のとある新米メイドの奮闘記です。
私の脳内の許攸さんはとてもおいしいです。
いつも皆様の御笑覧、コメントに心から感謝しております。

2015-06-13 16:17:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10081   閲覧ユーザー数:6446

「…ねーもー、ほんと懲りて下さいよー」

「…よ、余計なお世話よっ…」

涙目じゃんよー、と喉まで出掛かってこらえた。だってまた強がり言ってめんどくさいし。

 

「一刀様怒んないけど周りが大変なんですから…今日だって寸前だったらしいじゃないですか」

「寸前じゃないわよ!指入れられっ…」

そこまで吼えて、顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるこの人結構頭悪いな。まああたしも言わなきゃいいのに思わず呟いちゃったのも余計だけど。

「…そっかー、初体験は斗詩の指だったかー…かわいそ」

「う、奪われてないわよ!」

「へ?でも今指入れられたって」

「…あ…あっ、あっちだからノーカンよっ」

「うげ」

色白なのにここまで顔は赤くなるんだって実例がちょっと面白いけど、そっちから責めようとした斗詩に戦慄する。

「縛りつけられて顔を覗き込まれながらあんな事されてみなさいよ、一生もんの恐怖よ…」

「ひィ」

あたしのちっちゃくって(多分)可愛らしい某所がキュッと縮こまる。同時に『逆らっちゃいけない人順位表』一位の司馬懿さんが全会一致で斗詩に書き換えられた。

 

処女相手に凄い事するねーと思わず言うと許攸さんは押し黙って部屋に入り、あたしも続くと後ろ手で閉めた。

夕飯何にしよっか。外食多かったから今日は作ろうか、もちろん手伝ってもらうけど。働かざる者食うべからずってね。

そう思って振り向くと赤みの引かない顔で睨みつけられていた。

 

「…どったの?ご飯、」

「…教えなさいよ」

「…何を?」

「仕方よ」

「何のさ?」

この人の感情わかり易いなぁ。最近慣れてきて他人事のようにそう思っていると、再び吼えた。

「だっ、だからっ…か、一刀様とする方法よっ!!」

 

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「はぁぁぁぁぁぁ!?なんでいきなりそんな話になってんの!?」

「しょしょしょっしょうがないでしょ!?あそこでハイ分かりましたって言わなかったらもうどうなってたかわかんないのよ!?」

あ、それはありそう。

「…一刀さん助けに来てくれたんでしょ?」

「来てくれてなかったら今頃あたしまだあの拷問室よ…一刀様が何言っても『二度目ですよね?』の一点張り!言いながらひ、人の、っ…を、ぐにぐにぐにぐにっ」

「お尻押さえながら言うくらいならその話やめて、聞いてるこっちまでなんかお尻に違和感しますから!つーかやることになった経緯教えて下さいよ」

「斗詩が言ったのよ。一刀様にその…身体も心も御奉仕するなら今度だけ見逃してやるって」

「おー…」

言いそうだ。

「一刀様がそういうことはちょっと、俺と詠でよく指導するからって取り成してくれたんだけど」

「うんうん」

それも言いそうだ。でもなんで月さんじゃないんだろ。

「『凌遅ですよね?凌遅ならいいですよ』って言うのよ、それ結局死罪じゃない!」

「あー…うん、そこはちょっと違うんだけどね…」

「何が違うのよ?」

「ここで言う凌遅ってね、うーんとあの、要は昔の椿(審配)が今の椿みたいになっちゃう教育…みたいなもの?」

教育対象は主に体にだけど。

「なぁんだ…じゃあ別に必死に抵抗する必要もなかったのね、一刀様がそれだけはどうしてもって一生懸命斗詩にお願いしてたけど」

「いやそこは一刀さんに死ぬほど感謝するところ」

あの偏屈な椿が妙な大人しさと色気を醸し出すようになったような教育を変だとは思わないのかこの人は。

「その後もなんやかんや言ってたんだけど、一刀様業を煮やしたみたいでその…斗詩抱き寄せて、その、い、イチャイチャし始めたのよ!斗詩と!」

「ほほう」

色仕掛けか、正しいな一刀さん。

「たら斗詩、なんか赤くなってなよなよっとして。一刀さんがそこまで言うなら仕方ありませんね、体で御奉仕するって誓うならって言って、あ、あたしの…っ…をぐにぐに」

「それもういいから!それでハイわかりましたつって解放されたんですね!?」

「そ、そうよ!手枷足枷外してもらって逃げ帰ってきたわよ!一刀様と斗詩は知らない、二人でなんか別の部屋に入ってったわ」

「…許攸さんに使った首輪とか持ったまま?」

「そう言えばそうね?」

そんな状況でも縮み上がらない一刀さんマジ一刀さん。そして他人に使った道具でそのままお仕置きプレイが出来る斗詩もマジ斗詩。どうしてああなった。

 

「まぁでも良かったじゃないですか、恵まれてますよ超恵まれてますよ」

「なにがよ!?単純に殺されるよりよっぽど恐ろしい目にあったのよ、あんたもやられてみる!?」

「あーうんそれはそうですしあたしは御免ですけど。こんなあっさり抱かれる事になるなんて珍しいですよ今時」

「そ、そうなの?」

「許攸さんだって満更でもないんでしょ?一刀さんのこと」

「う…そ、そうね…あんなに一生懸命あたしの事を庇ってくれて…ま、まあ抱かれてあげてもなくもないわ、これものし上がる為には必要なことだしねっ」

ッち。

赤くなって指ちょんちょんするなっつーの、可愛くてムカつくしごちそーさん。つーか一刀さん絡みになると誰も彼も可愛くなるのって一体何なの?私的残念美人女王の猪々子といい、いつか見た幼児化してた酔っ払いの金髪くるくるといい…

 

「…採用の時に月様に向かって『一刀様にやらしてあげなくもないわ』みたいな事吹いたって聞いてますけどそんな人ならヨユーなんじゃないですかぁ?」

「あ、あれは言葉の綾よ!ま、まああたしも知識はそれなりに豊富なんだけど折角だからここの決まりみたいなものも参考にしてあげるって言ってんのよ!」

「何その上から目線?そういう言い方するなら教えてあげなーい、ここの『あの決まり』知らずにしようとする女とか流石の一刀さんでもマジ吹いちゃうかもなぁー?あーいや『あの技』出来ずに寝床行っても一刀さん萎えちゃう方が問題かもねぇ」

「あ、あるのね?やっぱり何か普通はこうするみたいなのがあるのね!?」

「…」

ウェヒヒ、これ面白い。

 

「かた焼そば」

「かた焼きそば?それは何かの隠語なの?」

「んな訳無いでしょ、かた焼きそば食べたいなーって。許攸さんの作ったかた焼きそばが。そしたらあたしもちょっとは口が滑らかになるかなぁ?」

「な…強請る気!?」

「いーえーぶぇっつにぃー?あたしは許攸さんがここの常識知らずに一刀さんから『何この女wwwマジ勃たないwww』とか言われるのが可愛そおだなぁーって思うのとかた焼きそばが食べたいなぁって言っただけでぇー?」

 

やばいあたしって悪女の才能あるかも。顎に手当てて足とか組んじゃう。

「く…分かったわよ!作ればいいんでしょ作れば!」

「餡は壷の中だからねぇー♪」

 

ぷんすかして台所に向かう面倒くさんの後ろ姿にチョロ子臭を感じる。まあ人の事言えた義理でもないけど。

来た当初はもぉどうなることかと思ったけど、ま、日々の生活は楽しまないとね?

 

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「ねえ」

「何ですかぁ?」

庁内食堂で向かいに座る許攸さんに答える。私は甲定食、向かいは乙定食。

「あんたさぁ、生協にも勤めてるって言ってたわよね」

「ええ」

「あたしたまに買い物行くんだけどあんたのこと全然見かけないのは何で?今日も行ったんだけど居ないし」

「たまたまですよ。それより来週の夜勤どうします?」

いらんことを気にするな。話題変え変え。

 

「――――嘘はいけないわねぇ、杏さぁん?」

「ここは先輩としていろいろ教えてあげるとこじゃないのかしら?直属メイドとしては」

ポン、とお盆を片手に後ろから肩を叩いてきた女が彩(張郃)と恵(高覧)だってことは振り向かずに分かった。

いつかここの食堂で、猫耳ちゃんが友達選びなさいよって言ってたのを突然思い出した。

すいません猫耳さん。私貴女の言ってた事なにも守れちゃいませんでした。

 

「隣空いてるわよね?杏、許攸さんにあの店案内してないの?」

「冷たいわねぇ、後宮御用達なのに!」

「知る必要ないでしょあんなとこ!」

「な、何なに?御用達のお店って!?」

あーもー食いつかれた…。

「…あんたら何かあたしに恨みでもあんの?」

「ううん♪あたしがいくら総務室の一般事務の試験受けろって言っても聞かずにいつのまにかのほほんとメイド事務に収まったことなんて全然恨んでないわ♪」

「めっちゃ恨んでるじゃん!?」

「いま彩、予算編成ですっごい修羅場だからね…」

「それよりあんたたち、御用達のお店ってなんなのよ教えなさいよ!」

まあ、その日の甲定食は今までで一番味がしなかったとだけ言っておこう。

 

「こっこっこれって下着なの!?なんでこんなとこに穴が開いてるのよ!?」

「そりゃあ入れるためよ当たり前じゃない」

「破る用のもあるわよ」

「ずらす用のもあるけどね」

三国一は我慢出来る。ってか有難いってとこもあるし。

「あ、これすっごい可愛い刺繍…って全部透けてるじゃない!?」

「透けてなきゃ駄目でしょ!?」

「最近は逆に透けない方がってのも流行ってるらしいわよ、あたしが杏にあげて使ったやつだってそうだし、ねえ杏」

しかしこっちに知り合いが来るのはガチで困る。あとあたしに振るな。

「あら陳琳の本だわ。『三国志』…あの娘の本私結構知ってるけど、これは街の本屋では見た事無い本ね」

「らぶらぶものが多いしこの辺お勧めかなぁ」

「張勲さんのとか桐花(荀攸)のとかは上級者向けだしねぇ」

「あ、でも『チョロ子の弟子』ちゃんが書いてる『はじめてのう・ふ・ふ』がいいんじゃない、あれ初心者向けだし。この二冊買っときなよ」

「そ、そうなの?お金足りたかしら…ところで三国塾の体操服まで売ってるのね」

「これは誰しもが一度は通る道かな」

「ここで売ってるほうはすごい伸びるからずらしても痛くないよ。あと上は極薄だから」

「こ、これも買わなきゃいけないってこと?」

「あのお客様方お静かにお願いしますね、って言うか出てけ」

「やだ、ガラの悪い店員さんね。生協の仲達さんに投書しようかしら」

ああもぉ…友達は選ぼう。誰にしよう。そうだええっとあの人、名前なんだっけ。そうだ白蓮さん白蓮さん。

 

「そうだ思い出した、逢紀貴女こないだ教えてくれるって言ってた決まり教えてくれてないじゃない!」

「うえっ!?」

ここで余計なことを!

「あらなぁに決まりって?」

「斯く斯く云々で技だか決まりだかを教えてくれるって言ってたのに」

「あらそぉ、それは私も知りたいわぁ」

「私も私も、例の部屋で見学させて?」

「真っ平御免でお願いします」

でも許攸さんには夜仕事終わったらって言っといたらスカッと忘れてくれてた。(チョロい)

 

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「帰ったわよ」

「おっかえりー」

許攸さんの素っ気無い挨拶に、寝台の上で煎餅齧りつつ週刊誌めくりながら返す。

初めはわざと無愛想なのかと思ったけど、最近はこれがこの人の素なんだと分かって慣れてきた。

「来週の当番表。月さんから貰ってきたから」

「あーどーも」

おっあたし夜勤一日だけだ、やったね。休みも二日だし。たら今週一刀さんと昼間ちょこっとでもでーととか出来るかな?明日出勤したら一刀さんの予定見てみよっと。

「今日夕飯外でしょ?」

「ええ朝言った通りで」

「ならもうお風呂行きましょうよ」

「ああそうですね、じゃああたしこの本読み終わったらで」

そう、と言うと許攸さんは私服に着替え始めた。…お、陸遜さんの星占いあたし絶好調じゃん、『超豪運で困難が避けていきます』だって。諸葛亮さんの占いも載ってるけど、あっちはネタがイマイチつまんないんだよねー。

「…あんたはもう行ける用意出来てるの?」

「あーあたし直ぐ用意できるんで大丈夫ですよ」

許子将さんの『今月のいい女』来月号は『特選!冀州の女たち』かぁ、知り合い結構載るかもしれないから来月も買おうかなぁ。

「はやく行かないと混むんじゃないかしら」

「大丈夫ですよ(大浴場は)洗い場広いし」

なになに『役所の求人が両極端に』?…仕事の増大で下っ端の求人倍率は1以下で完全な売り手市場であるのに反して管理職級以上は十倍以上?事実上の後宮入り窓口であることが原因か…かぁ。まああたしなんか下っ端だけど一刀さんのお嫁さんの一人になれちゃったけどねぇ。

「ねえ!早く行きましょうったら!」

「ちょっと位待ってくださいよなんなんですかそのお風呂推し!?」

流石に週刊誌から顔を上げると、焦れたような表情を妙に赤らめていた。

「じゃ、じゃあ…直ぐ行かなくてもいいから!ちょっとその…見せなさいよ」

「?何を」

わけがわかんない思いを素直に言葉にしたら、もっと顔を紅くして口をぱくぱくさせている。

「…い…いいから!黙ってパンツ下ろしなさいって言ってんの!」

あたしの口から齧りかけの特売で買った煎餅が零れ落ちる瞬間だった。

 

「なっなっなっなっ何言ってんの!?あたしそういう趣味ありませんから、そういうの斗詩とかでお願いします(偏見)!っていうか今日から相部屋勘弁して下さい本気で!」

「ああああたしだってないわよ!そうじゃなくて、その…手入れしてんのかってことよ!」

「はあ…」

また答えにくい事を…。

「まそりゃ、彼氏とそーゆー関係なんでそれなりには…」

「だ、だって!恵(高覧)が『抜けて一刀様の口に入ったら超顰蹙だからね』って!彩(張郃)も『つるつるにしといた方がいいんじゃない』って言うし…それに口に入るって事はなっ、舐められるの?舐められちゃうの!?あたし恥ずかしくて死ぬんだけど!」

「知りませんよそんなこと!」

嘘です。めっちゃ気持ちいいです。もっと気持ちいい事も知ってます。

「つか、あたしじゃなくてもお風呂行って他の人のをチラチラッと見てくればいいじゃないですか」

「あたし眼が悪いのよ。それにそんなとこじろじろ眺めてたら不審者じゃない、だから早く行こうって言ってたのよ」

この人風呂であたしのを至近距離でまじまじ眺める気だったのか。

 

「…燕よ」

「は?」

「あ、あたしの真名よ!教えたんだから見せなさいよ!」

「無茶言わないで下さいよ、何が悲しくて女相手にくぱぁしなきゃいけないの!?」

「一刀様にはするのね!?」

「黙秘しますよ!」

正直あんときのあたしはどうかしていた今思い出しても頭抱えて逃げ出したい。一度すると脳ミソの理性が焼き切れるのはどうにかならんの?

「つるつるなの?ねえつるつるにしなきゃいけないの?あたし肌弱いから剃刀駄目なのよ!」

「しーりーまーせーんーってばー!って言うか寄るな触るな近づくなぁー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この後滅茶苦茶見せ合いっこさせられた 恐ろしく微妙な空気だった 自分のが変じゃないってお互い確認できたことだけが救いだった)

 


 
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