No.780722

超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス

さん

V2全員レベルMAXにしてやることなくなってしまった…。

2015-05-31 09:16:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:801   閲覧ユーザー数:790

あ、ぁぁ………!」

 

手を幾度伸ばそうと既に遅かった。ネプギアの一撃によって切り裂かれ、砕かれた『女神を要求する未来(ゲハバーン)』は力を失ったただの鉄屑となってモンスターの蠢く、黒き大海へと落ちていった。

 

「これが私の選んだ道です。誰も失わせない、全員が生きて犯罪神を倒すその結末に魔剣は必要ないんです。必要になってはいけないんです」

 

ネプギアの声にアイン・アルは反応を見せなかった。

これほどの衝撃は目の前で両親を目の前で食い殺された時か『守護武将』に選ばれた時だけだ。夢の中で選んだ結末の根底から覆ってしまった。唯一女神が絶対的指導権を握るそんな輝かしい未来の為に、魔剣は必要不可欠の存在、あれを無くして幾ら女神を滅ぼしても、残された女神がネクストフォームに至ったブラッディハードを抹殺することは出来ない。絶対的な差を水平にするための魔剣を失ったアイン・アルは今にも泣きだしそうな表情で消えていく刃の欠片を見つめていた。

 

「犠牲があれば確かに事は簡単に進みますよ。人だって簡単に納得してくれます。それでも、私は嫌なんです犠牲前提の未来なんて、絶対に認めたくありません」

「………世迷言だ」

「そうかもしれません。だけど、後悔だけは、したくないから」

 

静かに、意志の強さを心の奥に留めたネプギアの言葉がアイン・アルを現実へと戻した。

 

「………なら」

 

黒ずんだ瞳がネプギアを映した。瞬間、嫌な気配を感じ取ったネプギアが後ろに下がったが目の前には瞬間移動を錯覚するほどの速さで肉薄して、鬼の様な腕の先からビームブレイドを発生させたバックプロセッサが、左手を切り裂かれた空間から、ネプギアの体を突き刺した。

 

「ぐ、うぅぅ……!?」

 

咄嗟にM.P.B.L(マルチプルビームランチャー)で幾つか弾くが、一部のビームブレイドはネプギアの体を貫通した。臓器を幾つか損傷したのか口の中が鉄味が充満するが、直ぐに腕の関節部分を撃ち抜き事で追撃を躱す。反応が遅れれば突き刺さった部分を広げる事で更なる体中にビームブレイドの軌跡が走ることは容易であったが故に判断。それくらいの技量は空が彼女と共に連れてくることを許可した時点から知っていた、アイン・アルは血黒いアームプロセッサをネプギアの喉へと握りつぶすように掴んだ。

 

「……!………!」

「貴様の都合のいい夢の中で死んでゆけ、女神ッ!!」

 

弾かれたビームブレイドを匠に操作してM.P.B.L(マルチプルビームランチャー)を突き刺して機能を停止させた。反撃の繰り出した拳、蹴りがアイン・アルの体に打ち込まれるが、眉一つ動かず静かな狂気を宿した瞳で首を絞める右手の強さを高める。

 

「(こ、このままじゃ……)」

 

空だからこそ戦えたネクストブラッディ・ベルセルクシフト。

ネプギア自身、最初に邂逅した時に真面に戦ったら負けると本能で分かっていたが、逃げたとしても逃げ切れるはずがないのは分かっていた。もし奇跡的に見逃されたとしても、バーチェフォレストを埋め尽くすほどの【汚染化】モンスター達をアイン・アルが親切に冥獄界へ帰すなんて事は絶対にありえなかった。彼女の目的は女神の唯一化、理由は知らないが彼女が信仰しているノワール以外の女神は殺される事も予想が付く。

 

「(お……お姉ちゃん……)」

 

薄れていく意識の中で懐かしい記憶が走馬灯のように見えた。

目の前のアイン・アルと名乗る体の持ち主である紅夜と共に最愛の姉であるネプテューヌが事務室から逃げて、プラネテューヌの街中に人に話を聞いて探し回ったり、空の訓練によってボロボロになった紅夜とネプテューヌを回復させるために回復魔法を習得した時は涙を流して喜ばれたり、楽しかった記憶達が次々に映しだされる。

 

「……………!」

 

---ダメだ。

ここで倒れたら、何のために生き返った。

女神を要求する未来(ゲハバーン)を破壊する為に命を賭けてくれた空の行為は塵となる。薄れて意識の中でネプギアは自身の舌を力の限り噛んだ。形状し難い激痛によって意識は覚醒、首を絞める腕に両手を掴んで口から、体の至る所を突き刺され血を流しても折れない瞳でアイン・アルを睨みながら、その力で拘束から逃げだろうとしていた。

 

「いいだろう。そこまで抗うのなら」

 

空によって切り裂かれた袖から先がない左腕の先が蠢き、骨から肉体をそして()重なり合って再構築されていく。

完成したそれは、全てを切り裂く鋭利で逆立った甲殻を纏い、指先には血が固まって黒く染まった禍々しい赤黒い生爪、脈動するように点々と怪しい光を甲殻の間から点々と光る。それは人の腕でもアームプロセッサを装着しているようにも見えない。それほどまでに生々しいそれは、ドラゴンの腕。ブラッディハードがモンスター化した姿である大禍津日神の一片の姿。この世のネガティブエネルギーを超圧縮して、罪遺物を使って再構成されたそれはまさしく女神殺しの腕。絶対的な力の象徴が、今まさに消えようとしている炎を懸命に燃やし続けているネプギアを消し去ろうと、闇に光る龍腕を手刀に構えた。

 

「……ぐっ、な、アブネスッ!?」

『逃げるわよ』

「ふ、ふざけるな!!人間と一匹を見逃してこいつも見逃すのか、憎む女神をどうして貴様が庇おうとしている!!」

『人の話聞いてないでしょ?殺されるから逃げろって言っているのよ脳筋』

「(……今だッ!)」

 

首を握りしめた力が弱ったのを逃さず、ネプギアは最後の力を振り絞ってアイン・アルの腹部に蹴りをねじ込みその反動で拘束から抜け出した。ゲホゲホっと呼吸をするごとに吐血するが、構う事はなかった。どれほど体中が痛もうと、歯を食い縛って耐える。どういう事か相手が混乱している隙を見逃さずにシェアエネルギーを込めた拳打が見えない誰かと会話して無防備なアイン・アルの顔面を捉えた。布で叩いたような音と共に、アイン・アルは大きく後退して、憤怒の瞳をこちらに向けた。

 

「失せろッ」

 

目前の下。バーチェフォレストを蠢くモンスター達がアイン・アルの指令の一つで混ざった。数えるのがバカバカしくなるほどの大地を覆うモンスター達が互いを喰らい始め一つの生者のように、大木のような太さをした蛇の如く蠢く黒柱が重なって、凶悪な牙を幾多に伸びた鋭角、彼女と同じ憤怒に満ちた紅目をしたドラゴンの顔が圧巻するほどの巨大な口を空け、周囲のモンスターを吸い込みネガティブエネルギーへと変換した黒炎の巨弾が凄まじい速度で膨張する。

対してネプギアは肌を焼くほどのネガティブエネルギーを前に拳を突き出したままだった。

どれほどの強固な意志を持っても、体はもうとっくに限界を超えていた。

 

『相手している暇なんてないわよッ!?何を考えているのよ!』

「煩い黙れぇ、これが私とこいつの闘争だ!手を出すなぁぁ!!」

 

アブネスと呼んだ彼女の制止を振り切って、モンスターを喰い合わせて作り上げた超巨大なドラゴンの口の中で大陸を一撃で吹き飛ばす程の熱量を持った全てを焼き尽くす黒き炎弾を、狂気を感じさせるほどの意志の強さを示したネプギアを消し飛ばす為に形成された。

 

「バッハムート・テラフレア!!!塵ひとつ残さず地獄の炎に飲まれ消え失せろォォォ!!!」

 

大きく仰け反り、発射された超熱量の黒炎弾は触れなくてもバーチェフォレストが発火するほどであり、ゲイムキャラの恩恵によって近づく前から軽傷しているネプギアもただでは済まないが、彼女はもうすでに全てを出し尽くして、立ったまま気絶している。

それを知ってもなお、アイン・アルは一切の慢心を捨てて排除に掛かった。それは彼女の意志がいつかネクストフォームに至るブラッディハードすら打倒し、本当に世界を救ってしまう期待を抱く程であったから、だからこそ力を、現実を示した。少なくなくても、この一撃に耐えきれなければ、世界を救うなど譫言でしかない。

 

「----なに?」

 

その破壊力は正に巨大な隕石が地表に激突する程。だからこそ次の瞬間に訪れた現実を理解する為に数秒の時間を要した。

 

皇天后土を支配した魔剱(ゲハバーン・ブラックハート・エンド)……間に合った」

『流石、我が主よ。神殺しの武器を創造するだけではなく、刻まれた経験か可能性を元に再構築するとは』

 

ネプギアを抱え、ドラゴンを象ったような鎧を身に纏った存在はその手に手に握った黒き一本の剣で大陸を消し飛ばす程の熱量を持った黒炎弾を一刀で切り裂き、分散したエネルギーは凄まじい速度で、氷で構成された枯れた木の枝のような翼の間から溢れる炎の翼膜に吸収されていく。

 

『……遅かったわね』

 

アブネスが停止した理由が分かった。分かってしまった。

目の前に存在するのは、『女神を要求する未来(ゲハバーン)』など比べならない程の神殺しの力を持つ存在。このような存在が許されるのかと訴えても答える者はいない。数十妙であの全てを吸収し終えた龍の鎧を纏い者はアイン・アルの存在を捉えた。

 

「あれは……父さんの……偽物?」

『体は同じ様だ。ただ別の存在を上書きしている所為で分かりづらいな』

「……ふーん…」

『所でその娘はどうするつもりだ?』

「ユニ様と似た香りしたから助ける。……悪い神様じゃないよ」

『……そうだといいのだがな』

 

幼い子供の声と厳つい大人の声は、親切の子供を心配するようなやり取りをしながら、その二つの視線はアイン・アルを見たままだ。動けば直ぐにそれを潰されると頬に冷や汗が流れる。押し潰される様な戦意のオーラに圧倒されたアイン・アルはその場から様子を見る事しか出来ず、漸く震える口で声を出した。

 

「きさま、貴様たちは、何者だッ…!」

『我は熾凍逆龍、デウスヴァテイン』

「私は『神殺しの頂点(パンテオン・エヘクトル)』、零崎 空亡」

 

ゆらりとその手にアイン・アルの記憶に刻まれた黒き女神の武器をゲハバーン化した大剣の先を向ける。

 

「私は貴方と戦う……貴方は、私の大切な人を傷付けた」

『ということだ。精々足掻け神様よ。こうなってしまった以上、貴様は手遅れだ』

 

抱えたネプギアに炎と氷が渦巻く結界をアイン・アルから目をは離さず隠すと二人の声が重なって、身構えた。

 

 

『「神殺し---執行する」』

 

その言葉と同時にアイン・アルの意識は無限に思えるほど剣閃によって一瞬で切り捨てられた。

 

 

 


 
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