「…どうかしらん。ご主人様の容態は」
「貂蝉か。孫策達は如何したか?」
「春眠香をつかって、ぐっすりと夢の中」
「そうか。…北郷殿だが……」
「待ってくれ、卑弥呼。ここからは俺が話す」
「ダーリン」
「貂蝉。結論から言う。俺には北郷を治すのは…不可能に近い」
「…やっぱり、そうなの。薄々は予想していたけれど」
「北郷の身体に蔓延している悪しき毒は、侵攻を食い止めることは出来た。
しかし、未だ浄化するのには至らず、治る見込みは無いに等しい。
最悪、今の状態を保つ術を心得ているが、その治療を施すと、
意識は完全に亡くなり、謂わば北郷は、
植物人間と化してしまうだろう…」
「…脳は死ぬという事ね」
「ああ。…しかし、あの時俺は北郷を治せると確信していた。
過去の症例に当て嵌まった、事例があったからな。
だが、蓋を開けてみると、どうしても、治す事が出来ないんだ。
何度も気を込めた針を刺そうとするが、直前で気が雲散してしまう。
まるで、気針に抗体ができ、見えない防壁が俺の邪魔をして、北郷の治療をさせまいと
しているかの様だ」
「…ダーリン。それは呪いだ」
「呪い…?」
「外史の呪い。運命を変えた代償として、もう、受け取った因果から逃れる事は出来ない。
必ずや死に至らしめる。北郷一刀は、もう患者ではなく烙印を押された呪われし者。
故にダーリンの気が北郷一刀に届かず、治療が施せないのだ。
…もう、賽は投げ終えた後、出目は変えられはしない。万策は尽きた」
「…それじゃあ、駄目だ。何としても北郷を治療しなければ、孫呉の奴等はどうなる。
俺は医術を心得ている師。あの、悲しみに満ちた瞳に光明を与えなければならない。
だから、治す!!どんな病も、外傷も、毒も!!はあああああぁぁぁ……」
「…ダーリン」
「止めないでくれ、卑弥呼!!元気になれええええ!!!!!
…くそ!!もう一度だ!!元気になれええええ!!!……まだだ!!」
「………」
「元気になれえええええ!!!!!……くそおおおおおおおおお!!!!!!」
「貂蝉!!貴様は知っていた筈だ、因果の瘴気を身に受けた末路を。
だが、貴様は孫策と約束を交わしてしまった、北郷一刀を必ず助けると!!
なのに、何故約束した、結局は悲しみを広げているだけではないか!!」
「…希望はまだ、残されているわ」
「…何じゃと」
「さっき、向こうのご主人様の話を終え、各々の将から可能性の光を感じたわ。
誰一人、諦めないでご主人様を信じて止まなかった可能性の光。
そして、その皆の光が想いの結晶となり空へと駆けて行ったわ。
私は、まだ奇跡が起こると思っている。それと、もう一つ起こるという
理由があるの、それは………」
『………お待ち下さい』
『あら、まだ私に何か用なの?』
『…向こうの私は、もう助かる術はないのでしょうか?』
『…そうね。先程も言ったけど、二人分の因果を受け取るんだから、犠牲は免れず、
手の施し様は最早無い。もう、結果は変わらないわ』
『それは、二人の因果が原因だからですか?』
『ええ。一般的な軽い風邪や熱、軽傷ですら、外史の因果が活発に働き、
運命を変えし者に罰を与える。それ故、死に至らしめるのよ』
『…成る程。私に一計があるのですが…』
『………前例は無い。でも理論上は可能だと思う。
けど、幾つもの弊害があるのも事実、貴方はそれをどうやって行うの?』
『…呪いに対抗する方法は一つしかない。貂蝉は直ぐ様、向こうの外史に華佗と共に赴いて
頂きたい。私は、その方法の下準備に取り掛かります。
…奇跡を起こしてみせますよ。もう一度…!!
雪蓮と冥琳に私と同じく、残される悲しみを知って欲しくはありませんから…!!』
「…向こうの北郷一刀がその様な事を」
「ええ。だから、私は信じる。最後まで諦めない意志がこそが、
新たな扉の取っ手を掴むのだから」
「…俺も、まだ諦める訳にはいかないな。皆が奇跡を信じ、いや、起こそうとしているんだ。
この腕が動く限り、何度でも立ち向かわないと、医師の名折れだ」
「…ダーリン」
「止めるなよ、卑弥呼。俺は今、猛烈に熱血しているんだ。
触れたら火傷じゃすまされないかもな」
(…不思議ね。絶望の淵に立たされ、奈落の底に何度も突き落とされそうになっているのに、
その都度、ご主人様が手を差し伸べ、微力ではあるが光差す場所へと引き寄せてくれる。
先の雪蓮ちゃんが最後の最後で踏みとどまってくれた事や、今、心が折れ欠けていた
華佗ちゃんだって、そう。ご主人様の意志が模範となり奇跡を信じ起こそうとしている。
…やっぱり、ご主人様の居場所は恋姫武将の中心なのよ。
私も外史とは関係なく私の意思で、ご主人様を信じる。だから、奇跡を起こして頂戴。
私だって湿った終演よりハッピーエンドの方が好きなんだからん、ご主人様)
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
向こうの一刀だって、こう言った結末は望んでなかった。
だから抗う。
稚拙な文章、展開、口調がおかしい所があるかもしれません。
それでも、暇な時間に読んで頂けたら嬉しいです。
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