「御無事ですか!ご主人様!」
「あ、あぁ。」
「そうですか、良かったです。本当に・・・。」
俺の身を心底案じてくれた、優しい女の子の顔がそこにはあった。
「貴様らああああああああっ!生きてこの森から抜けられると思うなよ!」
これが本気の愛紗の怒りだと俺はこの時知った、俺の時に叱ってくれるものとは全く異質の怒り、味方であるはずの俺でさえ恐怖で体が動かない、その怒りを向けられている山賊達にとってはもっとだろうか、まもなく山賊達はこの世のものではなくなった。
「えっと、そのありがとうな、愛紗。」
とりあえずは労わないとな、うん。
「見ないで!」
両肩を抱き、後ろを向いてうつむく愛紗。何故?
「え・・・?どうしてそんなことを言うのさ。意味がわからないよ。」
「意味ならあります!私はもうこれ以上貴方に怖がられて嫌われたくなんかない!」
「こ、怖がってなんか・・・しかも、嫌うなんてあるはずがないよ。」
「嘘、さっきだって腰を抜かして全く動けないでいたではありませんか。それに、私のようながさつ者より、朱理や桃香様のような優しく、可愛らしいの子のほうが好きなのでしょう?」
愛紗・・・そんなにまで思いつめてたのか。
「ああ、そうだな。全くその通りだ。否定はしないよ。」
「ほら、やっぱりそうなのではありませんか。私に何かかまわずにいておいてもらえませんか。一時の優しさで抱かれた所で悲しいだけですから。」
「いや、そういう意味じゃないよ。俺は確かに優しい、可愛らしい女の子が好きだよ。けどね愛紗。その中には愛紗も含まれているんだよ。」
「え・・・?またそんな冗談を言って。とても先ほど腰を抜かしていた人の発言とは思えません。」
「ウッ。それを言われると辛いけど、愛紗は優しくて可愛らしい女の子。これは絶対に自信を持って言えるよ。」
「何を根拠にそんなことを?さっきだって見たでしょう?私は血も涙もない鬼です。」
「根拠?そんなのいくらでもある。まず、優しさ。いつもいつも愛紗は俺のために叱ってくれる。甘やかすことは簡単だし、誰だって怒るよりは優しくしたい、そんなの当然。けど愛紗はあえて叱って憎まれ役を買うことで俺・・・いや俺だけじゃなくみんなのためにそれをやってくれる、これを優しさと呼ばずに何て呼ぶんだい?次に可愛らしさ、それは、さっきみたいに他の娘と仲良くしてる時に嫉妬したり、後は、そうだな。それを指摘されて真っ赤になっている時とか、かな。」
「なっ!よくもそんなことを抜けぬけといえますね!人の気もしらないで!」
真っ赤になって否定するなよ。そういうところが可愛いんだよなぁ。
「あと、最後に。血も涙もない鬼ならどうしてそこで泣いているんだい?」
「そ、それはその・・・そう返り血です!山賊達の!」
「そんな透明な帰り血何か見たことないよ。」
「暗がりですからそう見えるんじゃありませんか?」
暗がりなのに?言ってることがめちゃくちゃだな。まぁ、そこは気にせず。
「血ならふき取らないとな。」
「っ!近づかないで!」
「嫌だね。」
「お願い来ないで・・・・・・。」
「ごめんな、愛紗。でも俺、愛紗のこと好きだからさ。怒ったり笑ったりいろんなところをひっくるめて愛紗が好きなんだ。今日1日愛紗のことずっと考えさ、そう思ったんだ。」
「そのようなこと!・・・他の娘にも言うのでしょう?」
「今は愛紗しか見えないよ。」
「ずるい・・・。そう言われてしまったら拒めないじゃないですか。」
そういった愛紗はどこか困ったような、嬉しいような面白い顔をしている。
「愛紗!」
そういって、俺は愛紗を抱きしめ・・・る。そうおもって前のめりになった矢先、目前に愛紗ではなくエアー愛紗のかほりだけ・・・。そのまま地面と接吻。
「あの・・・ですね。その前に、返り血がついたり、泥だらけなのでちょっと水浴びをしたいのですが、大丈夫ですか?」
「あ~い~し~ゃ~?」
「す、すすすすいません。ご主人様!」
「駄目。許さない。」
「心配そうに近寄ってきた愛紗にそのままのしかかった。
「ご、ご主人様。やめてください!血とかついちゃいますよ!」
「かまうもんか。血なら俺が取ってやる。」
「何を言って・・・んぅ!ん・・・ちゅ・・・はぅ・・・んん~ん。」
そのまま、愛紗に口付けて、舌を差し込む。久しぶりの愛紗の味を堪能する。ずっと堪能していたかったのだが、息苦しくてついには口を離してしまう。
「ハァハァ。ご主人様ぁ・・・。」
目が虚ろで焦点が合ってない。激しくしすぎたか、でもまだ終わらせるつもりはないぜ。
口以外に照準を合わせ、口を鳥のように尖らせついばむようにそこに口付けた。
「・・・・あ。ち、ちょっと、どこに口付けているのですか!?ひぃあん!」
「・・・・ちゅ。・・・言わなかったっけ。血なら俺が取ってやるって。」
「だからって、こんなやり方。ん・・・くぅ・・・はぁぁん。」
テンション上がってきたぜぇ・・・。おっしゃあ、ガンガン責めたてるぜ!!
そう思い、熱り立った俺の目の前には、先ほど愛紗の手によってミンチにされた山賊達の山。さっきまでは全然気づかなかったが、血やらなんやらで酷い臭いがする。
「えーと・・・その愛紗。」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・。何ですか、ご主人様。」
「場所を替えないか・・・?」
その後、俺の言いたい事を察したのか。付近に愛紗らの部隊が見回りをしている際に休憩に使っている水場があるというので移動した。
「おお・・・・綺麗な所だな。愛紗。」
そこは先ほどの鬱蒼とした森と違い、月明かりで明るく、それでいて明るすぎず水面に月が映っている光景がなんとも幻想的でまるで物語の中のワンシーンのようだった。
「はい、私もこのような時間に来たことがないので大変驚いています。」
そういって嬉しそうに微笑み、顔を濯ぐ愛紗。黒髪が水に濡れ、さらに輝きが増す。幻想的な湖と美少女の共演。しばらく眺めていて、とある事に気づいた。
「愛紗・・・。その傷はどこで?まさか山賊達の戦いで?」
「ああ、これですか?これは、森の中でご主人様を探している時に枝で切ってしまったときについたもので山賊達につけられたものではありませんよ。」
城へ帰っていたわけじゃなかったんだ。はぐれてから、俺が居なくなったのに気づいてずっとずっと探しててくれたんだ。それなのに、俺と来たら・・・!
「愛紗ぁ!!」
嬉しさのあまり愛紗を抱き寄せる。
「ひゃああっ!ど、どうしたんですか。突然!」
「ありがとう、愛紗。本当にありがとう!」
「本当にどうしたんですか、急に。そんなの当然じゃありませんか。」
「いやー。俺が傷つけてしまったのに、しかも、おれからはぐれた挙句にそんな傷つくってまで俺のこと探してくれたんだろう。これを感謝しなかったら罰が当たるよ。」
「勿体無いお言葉です・・・。」
そう答えた愛紗の顔にまた見とれてしまう。赤く染まった頬、潤んだ目、辛抱できそうにありません。
「愛紗、あらためて言うよ、好きだ。1つになろう。」
愛紗がゆっくりと頷くのを見て、今度こそ俺たちは1つになった。
気づくと湖は朝の顔になっていた、俺は走りまわった疲労感と、ちょっと気だるさを感じながら眠りについてしまったようだ。愛紗もそれは同じだったようで既に俺の横で寝息を立てている。
昨日はいろいろあったけど、元の鞘に収まって本当に良かったと思う。皆には迷惑もかけただろうしな・・・・・・・皆?
「あ、あ、あ、ああああああああ!しまったああああああああああああ!」
「・・・あぁ。どうかしたんですか、ご主人様。朝から大声など出されて。」
俺の大声で愛紗も起きたか。好都合だ。
「どうかした?じゃないって、愛紗!まずいよ。大事だ!」
「はぁ?何がです?」
「あぁもう!いいか、愛紗?愛紗は俺を探す時、誰かに連絡したか?」
「いえ?森の中ではぐれたとわかった地点で探しに行きましたから、そんな余裕はありませんでした。」
そうだよなぁ。そうしてくれてなかったら今ごろ俺は死んでたんだけど、そこはおいといて。
「そうなると、だ。今ごろ、城の中では太守が帰らなかったと大騒ぎなんじゃあ・・・?」
「あ、あ、あ、あああああああああああああ!」
どうやら愛紗も事の重大さに気づいたようだ。うむ、結構結構。さぁどうしよう。
「で、どうしようか。愛紗・・・。」
「どうするもなにも、早く戻らない事にはどうしようもありません。ご主人様と何をされていたかなど、皆に聞かれてしまうのだけは避けなければ!」
「ええ!?そっちなの!?」
てっきり、皆に心配をかけたことを悔いるのかと思ったのに。
「ふふ、しかしこれでは朱里のことはとやかく言えなくなってしまった。後で謝っておかなければいけませんね。」
「大事だという割には楽しそうだね、愛紗?」
「はい、ご主人様が私の事を愛してると言っていただきましたから。今は幸せな気持ちです。」
良い顔をしている。一点の曇りもない瞳、強い意志。こうなった時の愛紗は強い。
「愛紗・・・。そういってもらえて俺も嬉しいよ。男冥利に尽きる。」
「ご主人様・・・。」
そして、2人距離は縮まっていき・・・・。
「って、イカンイカン。早く戻らなければって話をしてた所じゃないか。」
「・・・・・・・・・はぁ。そのとおりですね。では、先を急ぎましょうか。」
ってあれ、さっきまでの雰囲気はどこに。何故に大股でズンズンと先をいかれますか、愛紗さん?
そういったのは、半刻ほど前の話で、今では2人とも歩幅を合わせて城門の前まで着た。さりげなく、歩く速さを緩めて横を寄り添おうとしてくるのがなんともいじらしい、敢えてそれをいじるような野暮な真似はせず緩やかな時間が流れた。
いざ、町の中にはいると朝が早いこともあって、人はまばらにしかいない。朝市での仕入れなんかも終わって町の人も店を帰り、朝食でも摂っているんだろうか。人目を避け、城の中に戻る事には成功した、成功したのだが・・・。
「おかしい・・・。」
「何がですか、ご主人様。」
「そりゃ、愛紗。自分でいうのもなんだが、国の太守が居なくなったのにここまで誰に見つかるわけでもなく侵入してこれた。誰にも、だ。」
「そう言われてみればそうですね。自分たちがなるべく人目に付くのを避けたのがあるのでしょうが、簡単すぎますね。」
そう、城で働く者をのぞいて、何もなさすぎるのだ。捜索隊の結成等などの動きが軍師や各武将が指揮を取ってたりしてもおかしくないし、愛紗の言葉を借りるなら朝帰りの俺たちを待ち受けようと星あたりが待ち構えててもおかしくはない・・・はずなのだが。
「とりあえず、玉座に行ってみようか。」
この状況が奇妙ではあるが、気にしててもしょうがないし、そう促すことにした。
「私は、嫌な予感しかしないのですが・・・。」
とは言うものの、行くしかないのはわかっているようで愛紗も渋々ではあるがついて来てくれた。
そんなわけで、玉座までいくと武将が集まって話をしているところに出くわしてしまった。
ああ、よかった。まだ出発前のようだ。正直、捜索隊を結成直後とかだったらどうしようかと思ったんだけど間に合ったみたいだ。ところが愛紗のほうはしまった、という顔になっている。さっきから俺の後ろの隠れて様子を伺っている。
「ご主人様。どうやら取り込み中みたいですし、出直しましょう。」
「いや、流石に駄目だろ。」
「ですが・・・・・・・・。」
そんなやり取りをしていると、こっちの様子に気づいたのか、星と目があった。
「これはこれは、主ではござらぬか。愛紗も一緒か。その様子では、どうやら上手くいったようですな。愛紗よ、この貸しは大きいぞ。」
「どうしたんだよ、星。こんな所で油売ってないで、大事な話の途中だろ・・・。って、あああああ!ご主人様!!」
星の様子をおかしくおもった翠もこっちに気づいて大声をあげるもんだから皆気づいてしまったようだ。愛紗はこの世の終わりみたいな顔をしている。
口々に皆が自分の無事と愛紗との仲が戻ったことを祝福してくれてる。その中で、いるはずの人がいないことに気づいた。
「ところで、朱里はどこへ?姿が見当たらないんだけど。」
全員出席の会議の場で筆頭軍師である朱里がいないのはおかしい、おまけに雛里の姿も見えない。
「あー、それはな、お館・・・・。」
「ま、待て、焔耶。その話は不味い。い、いやそれよりも、昨日は大変でしたなー。愛紗が居なくなってしまい、軍務が滞りましてな、私たちにその皺寄せが来て苦労したものですよ。ハッハッハッハ。」
あ、あやしい。あやしすぎる。愛紗もつっこみみたいところだが、自分の立場故、それが出来ないで居る。
「何が、苦労したですよ、だ。星は、町の皆が呼んでいるとかで途中で消えてしまったじゃないか。おかげのその分の皺寄せまでこっちにきて、私や蒲公英に焔耶、白蓮まで借り出してまでどうにか処理できたんじゃないか。その矢先に華蝶仮面まで現れてひどい目にあったぜ。ったくよー。」
翠が、星の隠したがる正体を暴いてくれた。
「バ、バカ者。翠、何も主の前でバラさなくても良いではないか。」
「うっせ。こっちにしてみりゃ言わなきゃやってらんねーっての。」
「むぅ・・・。」
「大よその事情はわかったけど、それと朱里とどういう関係が・・・まさか!」
「はい、ご主人様の想像している通りだと思いますわ。」
紫苑がなんともいえない表情でそう答えた。
「ただでさえ、激務なのに、俺の分の仕事までやってくれたのか・・・。朱里の奴。」
「あぁ、やってくれたことには違いはないんですけれども。」
あれ、紫苑までなんだか歯切れが悪いよ。どういうこと?と皆に顔を向けると皆、目を合わせようとしない。何があったんだ・・・?ここは一番まともに答えてくれそうな桃香に聞いてみよう。
「どういうことなんだ。桃香、教えてくれよ。もし、俺が原因だというのなら謝罪したいし、謝罪しようにも原因がわからないんじゃどうしようもない。頼む。」
「うう・・・。そういう風にお願いされると、弱いなぁ。ここで断ると悪者みたいだし・・・みんなごめん!」
皆が、ああ!といった顔になっている・・・。とにかくどういうことか聞いて見るか。
―先日の愛紗ら退出後にて(桃香による供述)
「えーと、さてさて。ご主人様も愛紗さんも不在になってしまったことですし、ここは解散ということで。お先に失礼しますね。」
そういって、退散しようとする朱里ちゃん。うーん、きっと皆許してくれないと思うなぁ。私だってご主人様に可愛がってもらいたいのにぃ。
「まさか、孔明ともあろうものがこのまま帰してもらえる思っているのではあるまいな。」
ほらきた。星ちゃんの厳しい追及、あれをかわすのは至難の業なんだよねぇ。
「はわわ。やっぱり・・・ダメ?ですか。」
「それは、そうよねぇ。ご主人様もあそこまでふらふらにさせる技巧。お姉さんとても気になるわぁ。ねぇ、桔梗?」
「うむ。小柄な身ながらあの布団の上での豪傑をああまで消耗させるとは誠に天晴れ。是非ともその手管ご教授いただきたいものですなぁ。」
「わ、わたしはどうでもいいけど、ご主人様が喜んでくれるんならその・・・」
「はいはい。お姉さまはそこで待ってればー?蒲公英は全部聞かせてもらうけどねー!」
うわぁ、皆で朱里ちゃんを囲んじゃってる。可哀想ではあるけど・・・私も気になるので参加♪
「はわわ、はわわ、はわわ。雛里ちゃ~ん。助けて~。」
「ごめんね、朱里ちゃん。私も気になるの。」
「そんなぁ~。」
それから先は、朱里ちゃんの昨夜の暴露大会がはじまったのでした。
「ですから・・・あそこをこうしてこうするときに・・・・こっちでは・・・あれを・・・そうして・・・・。」
「おお、なんと。そのような方法があったとは。」
「しかし、そんなことをして大丈夫なの。朱里ちゃんが壊れてしまうんじゃないかしら。」
星ちゃんと紫苑さんは関心しきり、翠ちゃんはあまりのことに顔がお猿さんみたいにまっ赤になって固まっている。蒲公英ちゃんや雛里ちゃんは聞き入ってるみたい。焔耶ちゃんは興味ないような顔してるけど、耳だけは傾けてる、素直じゃないなぁ。
「・・・コホン。ありがとう、朱里。何をしていたのか、とても良くわかった。」
顔を赤く染めながらも、とりあえず、締めにはいる星ちゃん。可愛いところあるなぁ。
「そ、そうですか。それは何よりで。ではでは今度失礼致します・・・ね、って何で肩を掴むんですか!星さん!?」
「いやいや、朱里よ。貴女には、今日のこの出来事の責任を取ってもらわねばいかん。」
「えぇ!?責任ってそんな大げさな・・・。」
慌てふためく朱里ちゃんを尻目に星ちゃんは言葉を続ける。
「だってなぁ。愛紗は怒っていってしまい、主はあの性分。恐らく、仕事など手につくまい。今日は恐らく仕事にならぬであろうな。」
「うぅ・・・。それはそうですが。」
「そこで、だ。朱里よ。あの2人には仲良くなってもらいたい。おぬしにその気持ちはおありかな?」
「そ、そんなの、あるに決まってるじゃないですか!」
「そうなれば、話が早い。朱里よ、おぬしには、今日の主の仕事を肩代わりしてもらおうと思う。」
「はわわ!し、し、し、仕事って!私にも仕事があるのに、ご主人様の仕事までしてたら、私倒れちゃいますよぉ!」
うーん、星ちゃんってば、何気にきついことをいうなぁ。そりゃ、まぁ確かにご主人様を独占されて悔しいのはわかるけど・・・。人のためというより自分のためというのも含まれているような気がする。皆もそんな節があるのか、誰も止めない。
「だ、大丈夫だよ。朱里ちゃん。私も手伝うから元気出して。」
うぅ、違った。雛里ちゃん優しいなぁ。私も手伝ってあげたいけど、力になれそうにないよぉ~。
―場所は再び玉座の間
「それからね、朱里ちゃん頑張ったんだけど、自分のに加えてご主人様のお仕事でしょう?それから、寝不足なのも祟って、途中で倒れちゃったの・・・。」
うわぁ・・・桃香から告げられる衝撃の真実。そりゃ、確かに星も隠したくなるわなぁ。
「それでね、雛里ちゃんが代わりにやってくれて、今は朱里ちゃんの看病をしてるの。」
なるほど、それで2人ともこの場に居なかったのか。
「そうか、ありがとうな。みんな、俺や愛紗のためにここまでしてもらって本当ありがとう!」
「ああ、本当に皆。ありがとう。私からも礼を言わせてくれ。今日はその分しっかり取り戻したいと思う。では早速失礼する!」
「愛紗よ。さっきの桃香様の話で想像できない、御主ではないだろう。逃がさんよ?」
「あぁぁぁ。やっぱりこうなる予感はしていたのだ・・・。」
と、愛紗の言う悪い予感が的中したのだった。まさか、さっきのって愛紗を問い詰めるための相談・・・?静かだったのは、嵐の前の静けさに過ぎなかったのね・・・・・・・。
皆で、愛紗を問い詰めてるのを遠巻きに見ていると、朱里と雛里が姿を見せた。
「朱里!もう大丈夫なのか?」
「ご主人様・・・。私は平気ですから、それよりも愛紗さんの所へ行かなくていいんですか?私なんかにかまっているとまた昨日のようなことになりますよ。」
うっわぁ。今度はこっちがおかんむりだーい。
「朱里。怒らないで、ね。愛紗と仲良くなれた朱里のおかげだってわかってるし感謝してるから、ね。この通り。」
「えぇー。本当ですかー?」
「ああ、本当、本当。ね、このとおり!」
「どうしようっかなー・・・・・・・・。ぷっ、冗談ですよ。ご主人様、怒ってなんかいませんよ。」
あれ、よくよく見ると、朱里の奴、笑ってる?
「ご主人様は皆のご主人様ですから、今更そんなの気にしてもしょうがありませんし、ただ、ほんのちょっとだけ私を多めに愛してください・・・ね?」
うう、朱里。本当によく出来た娘だ・・・。
「わかったよ、今日はご褒美に朱里の好きなものなんでも買ってあげるよ。」
「鈴々は、肉まんがいいのだー!」
「うわぁ!」
「はわわ!」
鈴々の登場で気づいたが、いつのまにか視線が俺と朱里に集中している。
「ご・・ご主人様・・・?」
あ、やばい、またしても愛紗が・・・これはデジャビュですか?前にもこんなことあったよね・・・?
「コラッ!」
「ひぃ、ごめんよ。愛紗!」
「と、怒りたいところではありますが、朱里には世話になったことですし、今日のところは勘弁してあげます。」
「あ、愛紗さん!」
「うむ、次は負けぬぞ。朱里!」
「それから、鈴々もな。昨日はちと感情的になって言い過ぎた、すまぬ」
「うぅん。鈴々は全然気にしてないのだ。こっちこそ御免。愛紗は鈴々のために言ってくれたのにあんな態度を取ってしまって、桃香姉ちゃんに怒られちゃったのだ。」
良かった。この2人の仲も戻ったようだ。桃香にも後でお礼いっておかないとな。まぁ、めでたしめでたしっと。
「よっしゃ、こうなったら朱里と愛紗が仲直り、鈴々と愛紗も仲直りしたお祝いだ。何食ってもいいぞ!」
「おお、流石は主。大盤振る舞いですな。」
「お館様、酒はもちろんあるのでしょうな?」
「うーし、ガンガン食うぞぉ!」
「・・・・・・・・じー。」
ゲッ、星に桔梗に翠まで、匂いをかぎつけたのか恋とか他の皆さんまで勢揃いだ。
「やれやれ。どうするのですか、ご主人様。確か、ご主人様にはそこまで皆に奢ってやれるほどの路銀は渡してなかったと思うのですが?」
うう、流石は愛紗だ。俺の財布の中身もよくご存知だ。覚なる上は!
「ごめん、愛紗!お金貸してっ!」
うぅ、女の子にお金借りるなんて情けない。
「うちにはそのようなゆとりはないというのに・・・。本当仕方ありませんね。今回は私にも原因がありますし、特別ですよ?」
そういった愛紗の顔は、呆れながらも笑っていてくれていた・・・。
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中篇とまとめたら長くなりそうだなと思いわけたんですが・・・。
あまり意味がなかった!あと、多分大丈夫だとは思うけど、年齢制限・・・セーフだよね?ね?
というわけでひっぱってしまいましたが愛紗メイン話、最終回!
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