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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第六十三回 第四章:潼関攻防編⑥・碧緑の十旗

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回は碧緑の十旗、ついに我らが主人公の旗印がお披露目か、、、!?


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2015-04-26 00:04:42 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4003   閲覧ユーザー数:3362

 

張遼が馬岱の元に駆けつけるほんの少し前のこと。

 

二人の女性を先頭にした一団が潼関の地を駆けていた。

 

一人は真紅の髪をなびかせ、巨大な方天画戟を持ち、並々ならぬ闘気を身にまとった女性。

 

もう一人は、小柄な体に長いブロンドヘアをポニーテイルに結った、無駄に長い黒を基調とした着物の袖をなびかせた少女である。

 

 

 

高順「恋様、馬超様をお救いするのは良いのですが、このままでは曹操軍に正面から突っ込むことになりますよ?」

 

呂布「・・・・・・構わない・・・誰が来ようと、恋がみんな倒す」

 

 

 

馬で駆けながら呂布に訴えかけた高順であったが、しかし、呂布は気にせず馬の足を速めた。

 

本来であれば呂布の発言は無謀以外の何ものでもないのだが、呂布ならそれを可能にしてしまえるから恐ろしい。

 

 

 

高順「恋様は構わないかもしれませんが後ろの兵たちが構います。ここはひとつ、私に考えがあります」

 

呂布「・・・・・・??」

 

 

 

しかし、呂布の能力を知ってなお、高順は待ったをかけた。

 

高順の言葉に呂布は首をかしげるばかりである。

 

 

 

高順「馬超様を確実にお救いするには、やはり敵に気づかれずに近くまで接近する必要があります。なら私たちがすべきことはこれしか

 

ありません。木の葉を隠すなら森の中です・・・」

 

 

 

そのように告げた高順の瞳が絶対零度の冷たさを放った。

 

高順。

 

人は彼女のことを陥陣営と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

【司隷、潼関・曹操軍本陣】

 

 

許緒がゆっくりと馬超の元に近づき、巨大な鉄球をまさに振り上げようとしたのだが、

 

しかしその時、慌てた様子で本陣へと駆け戻ってきた一人の曹操兵の一言でその場の空気が変わった。

 

 

 

曹操兵「申し上げます!西方より涼州に味方する軍団が出現!我が軍を退けながら本陣へと向かっております!旗印は碧緑の十旗です!」

 

曹操「碧緑の十旗?見ない旗印ね・・・。いったいどこの誰だというの?」

 

 

 

曹操は兵士の口から出た聞いたこともない旗印に、疑問を浮かべると共に、言いようもない胸騒ぎを覚えるのであった。

 

そして、同時に事態は大きく動き出す。

 

 

 

許緒「あれ、馬超が消えた?」

 

 

 

許緒が放った一撃は、馬超がいたはずの場所に大きなひび割れを作っていた。

 

つまり、馬超には当たらなかった。

 

 

 

??「ふぅ、なんとか間に合いましたね」

 

馬超「なっ・・・!?」

 

??「・・・・・・無謀」

 

 

 

そして、驚きの声を上げた馬超は、曹操軍の兵士に抱えられ包囲網の外にいた。

 

そばには、曹操軍の兜をかぶっているが、鎧の類は一切身に着けていない奇妙な女性と、

 

青藍の夏候旗を掲げる、夏侯淵隊の兵士たちがいた。

 

その数約1万。

 

しかし、それら夏侯淵隊の兵士たちは一斉に旗を投げ捨てると、懐から新たな旗を取り出し掲げ直した。

 

風にあおられて激しく靡いているのは、紺碧の高旗。

 

そして、深紅の呂旗。

 

さらに、小柄な人物と兜だけの女性が兜を取り外すと、ブロンドのポニーテイルの少女と深紅の髪の女性が顔をさらした。

 

 

 

許緒「あー!あいつらは・・・!」

 

夏候惇「高順・・・と・・・呂布・・・だと・・・!?秋蘭の隊ではないのか!?なぜキサマらがこのようなところにいる!?キサマら、

 

秋蘭に何をしたァアアアッ!?」

 

 

 

夏侯淵隊と思っていた兵士たちが突然敵軍に変わったところで、珍しく頭が回り、

 

恐らく本物の夏侯淵隊から奪ったであろう鎧兜や旗を見て、妹の夏侯淵がやられたと悟った夏候惇は、

 

怒りの咆哮と共に呂布と高順のもとに突っ込んでいったが、

 

 

 

夏侯淵「待て姉じゃ!私ならここにいる!」

 

 

 

潼関大門の方向から声がしたかと思うと、いったいどうやって呂布たちを抜き去ったのか、曹操の目の前に夏侯淵が立っていた。

 

その頭からは血が流れている。

 

 

 

高順「・・・さすがに回復が早いですね」

 

 

 

高順は夏侯淵の姿を確認すると、苦い表情を作ってみせた。

 

 

 

夏候惇「秋蘭!無事であったか!」

 

夏侯淵「無事なものか・・・高順、それに、呂布め・・・油断した・・・!」

 

 

 

夏侯淵は目にかかりそうになった血をぬぐいながら自身の失態を振り返っていた。

 

 

 

 

 

 

<申し上げます!未確認の一団の旗印を確認!紺碧の高旗です!>

 

<紺碧の高旗だと?陥陣営ではないか。なぜヤツがこのようなところに?>

 

 

 

しかし、疑問に思ったところで高順たちが止まることはなく、徐々に近づいていく。

 

仕方なしに夏侯淵はそのまま頭をよぎった疑問をそのままの形でぶつけた。

 

 

 

<高順、貴様、これはいったいどういうことだ?>

 

<どういうことも何も、見た通り理解していただいて構いませんよ>

 

 

 

夏侯淵にしては珍しく大きな声で投げかけられた疑問であったが、

 

同様に高順にしては珍しく大きな声で帰ってきた返事は、言い訳の一切ない、正直な答えであった。

 

つまり、高順は曹操軍に牙をむいているのだということを認めたということである。

 

そのことを理解し、全身に怒りの気が廻った夏侯淵であったが、それも一瞬のこと。

 

 

 

<ふん、我が弓隊に正面から突っ込んでくるとは、舐められたものだな。周りの見えぬ愚か者め、弓隊構え!放てぇっ!>

 

 

 

すぐに冷静さを取り戻した夏侯淵は、高順に向かって冷徹に言い放った。

 

夏侯淵の号令と共に、高順隊に向かって夏侯淵隊の弓隊は一斉に弓を発射する。

 

一斉射撃された矢の雨は当然そのまま高順隊を襲うのだが、しかし、

 

 

 

<舐めてなんかいませんよ。相手は魏武の閃光なのです。当然、考えなしに突っ込むなどありえません。寧ろ、周りが見えていないのは

 

あなたの方では?>

 

 

 

夏侯淵隊の矢を受け倒れ行く兵士たちのことなど目もくれず、高順は落ち着きを保ったまま告げた。

 

 

 

<何を言――――――ッ!!??>

 

 

 

しかし、夏侯淵が高順の言葉に反論しようとした時には、すでに夏侯淵の体はものすごい勢いで宙を舞っていた。

 

そして、そのままの勢い殺されることないまま、夏侯淵は近くの瓦礫の中へと吹き飛ばされた。

 

何が起きたのかまったく理解できなかった。

 

ただ、瓦礫に突っ込み薄れゆく意識の中、ジワリと頭の中に流れ込んできたのは、

 

何者かがいつの間にか自身の背後を獲り一撃を加えたということ。

 

そして、その何者かの正体が、目の隅にかろうじて映った、見覚えのある深紅の髪をなびかせた女性の姿だということか。

 

 

 

 

 

 

夏侯淵「呂布め・・・それだけの悍ましい闘気を殺すこともできるとは、相変わらずの化け物ぶりだな」

 

呂布「・・・・・・コツさえつかめば、誰でもできる」

 

 

 

つまり、夏侯淵は高順隊に気を取られているうちに、気配を消した呂布に背後を取られ、

 

手痛い一撃を喰らって意識を飛ばされたということなのだろう。

 

その後は、呂布や高順らが曹操軍の鎧兜を身に着けていたことからも、

 

残された夏侯淵隊の兵士たちがどのような目にあったのかは想像に難くないだろう。

 

 

 

馬超「呂布に、高順・・・ってことは、アンタらもしかして益州の・・・」

 

 

 

いったい何が起きたのか一瞬分からなかった馬超であったが、聞き覚えのある名前を耳にし、彼女らが援軍として駆けつけたのだと悟る。

 

 

 

呂布「・・・(コクッ)」

 

高順「馬超様、あとで韓遂様に謝った方がいいですよ。韓遂様はあなたのことを裏切ってなどいなかったのですから」

 

 

 

馬超の息を切らしながらの呟きのような問いかけに、呂布は無言で頷き、高順は特に答えることなく、真っ先に韓遂のことを持ち出した。

 

 

 

馬超「え?それってどういう―――」

 

高順「と、おしゃべりはここまでです。詳しくは、この難局を脱してからにしましょう」

 

 

 

突然出てきた韓遂の名前に、馬超は不安げな表情を作ってその詳細を聞こうとしたが、

 

その時、曹操がゆっくりと一歩前に出たのを見て、高順が話を打ち切った。

 

 

 

曹操「呂布よ、これはいったいどういうことかしら?」

 

 

 

長い間沈黙を保っていた曹操であったが、やがて、ゆっくりとした口調で呂布に尋ねた。

 

その様子からは、呂布が敵軍として現れたことに対する動揺は見て取れない。

 

 

 

呂布「・・・・・・馬騰に助けを求められた・・・恋たちは、涼州に味方する」

 

夏候惇「キサマたち!下邳での曹操様の恩義を忘れたというのか!?」

 

 

 

呂布の静かなる主張に、夏候惇は頭部から噴火でも起きるのではと思えるほど怒り心頭で問いかけた。

 

 

 

高順「下邳での借りは、合肥でお返ししたはずですが?」

 

 

 

そして、そのような夏候惇の挑発に、呂布と同様落ち着いた様子で高順は当然というように答えた。

 

 

 

夏侯淵「ふむ、合肥でやけに素直に戦功を我らに譲った時から恐らくとは思っていたが」

 

典韋「やはりそうきましたか・・・!」

 

 

 

曹操軍側としても、北郷軍が合肥にて孫策軍の大軍を寡兵で撃ち破ったという戦功を曹操軍に素直に譲ったという件について、

 

当然何か裏があるものと見ていたようであり、その裏がこのタイミングで発揮されるのかと、やや苦い顔をした。

 

 

 

張郃「きゃははは、何でもいいネ!曹操サマ、こいつらまとめテ片付けテ、それデおしまいネ!」

 

 

 

一方、呂布と高順の登場から、なぜここにいるだとか、下邳での諸事情などお構いなしに、

 

ただ一人だけ身震いをするとともに、早く斬り刻みたいと興奮する張郃。

 

それは新参者ゆえであるかもしれないが、なによりも、張郃の性格そのものが影響していた。

 

 

 

曹操「そういうことよ、張郃。夏候惇、夏侯淵、貴方たちは呂布を。双狼の本領を見せつけ古龍を食いつぶしなさい!張郃は高順を。相手

 

にとって不足はないはずよ。全力で切り刻みなさい!許緒は馬超を。手早くちゃんととどめを刺しなさい!そして各自目の前の敵を屠り

 

次第、碧緑の十旗の迎撃に向かいなさい!」

 

 

夏候惇・夏侯淵「「御意!!」」

張郃「了解ネ!」

許緒「了解です!」

 

曹操「典韋、一度下がるわ」

 

典韋「了解しました!」

 

 

 

そして、そのような諸々の事情にとらわれない張郃を是とした曹操は、

 

各将たちにそれぞれ目の前の敵を潰すよう命じ、自身は護衛に典韋を伴い一度本陣に退いた。

 

 

 

 

 

 

【司隷、潼関、side北郷・陳宮】

 

 

 

北郷「ほら、見てみろよねね!オレの旗印に曹操軍がざわついてるぞ!これぞ北郷十字の本領だぜっ!」

 

陳宮「それは旗に対する反応ではなく、援軍が現れたことに対する反応なのです」

 

 

 

潼関の西方で戦場の様子をうかがっていた碧緑の十旗を靡かせる一団、北郷軍の大将、北郷一刀は、

 

仲間に散々貶された、自分の考案した旗印に対する曹操軍の反応に、鬱陶しいほどのドヤ顔で隣に並ぶ陳宮に喜びを表したが、

 

陳宮はそのような北郷の様子を極めて冷めた様子で一瞥すると、厳しい現実をオブラートに包むことなくそのまま叩き込んだ。

 

 

 

北郷「・・・・・・お、おぅ・・・ま、まぁ、分かってたけどな・・・はぁ~~~・・・」

 

 

 

陳宮から突き付けられた現実に、北郷は徐々に冷静さを取り戻すと、

 

この世の終わりかと思えるような落ち込みっぷりで肩を深く落とし、大きなため息をついた。

 

 

 

北郷「・・・・・・みんな、大丈夫だよな・・・」

 

 

 

ひと時間の空いたのち、北郷が心配そうな様子で言葉を漏らした。

 

 

 

陳宮「何も心配する必要などないのですよ。それよりも、ねねは一刀殿がここにいることの方が心配なのです。最終的に一刀殿の意思を

 

尊重して皆を説得しましたが、やはり、桔梗たちと共に成都に残っていた方がよかったのでは・・・」

 

 

北郷「いや、やっぱり皆が戦場で体を張って頑張ってるのに、オレだけ安全な場所でのんびりしているわけにもいかないからな。それに

 

馬騰さんも病の体にムチ打って大将自ら成都まで来てくれたんだ。オレだって相応の動きは見せたいってもんさ」

 

 

 

本来、今回の涼州勢の援軍に参加する主力は、呂布、高順、張遼、陳宮だけのはずであったが、北郷が自らを出陣すると言い張り、

 

結果、陳宮が北郷の意志を汲んで渋っていた仲間たちを説得し、前線に出ないことを絶対条件として、

 

北郷の出陣が認められたわけであるが、やはりそれでも、内心心配は払拭されていないのであった。

 

 

 

陳宮「ですが~」

 

 

北郷「ははは、心配してくれてありがとう、ねね。でも大丈夫だ、オレだっていつまでも馬鹿じゃないさ。自分の立場くらい分かってる。

 

無茶は絶対しないよ」

 

 

 

北郷の言葉に、それでも今更になって引き下がれなくなっている陳宮であったが、そのような陳宮を安心させるためか、

 

北郷は優しく微笑みかけながらポンと陳宮の頭に手を添えながら、ゆっくりと語りかける。

 

 

 

北郷「まして、オレが動けなくなったらねねを守れないしな。意地でも極力危険は避けるさ」

 

 

 

そして、最後はやや悪戯っぽくニッと笑うと、優しく陳宮の頭を撫でた。

 

 

 

陳宮「べ、別にねねの身を案じて言っているのではありませんぞ―――というか、いちいち頭を撫でるなです!」

 

 

 

そのような北郷の通常運転の不意打ちに、陳宮は文句を言うものの、特段北郷の手を払いのけたり、

 

逃れようとしたりすることはせず、頬を朱に染めながらされるがまま撫でられていた。

 

 

 

陳宮「と、とにかく、韓遂殿の情報によると、馬超殿が単騎曹操軍本隊に突撃しているはずなのです。馬岱殿のところには霞に向かって

 

もらっているので、ねね達は早く馬超殿の救出に向かった恋殿たちの後を追い、気候が変わらないうちに手筈通り計を発動しますぞ」

 

 

 

陳宮は頭に満ちていたフワフワしたものを一度胸の奥底に大事にしまうと、

 

先行している呂布、張遼、高順の状況と、これから自分たちが行うべき行動を再確認した。

 

 

 

北郷「韓遂さんか・・・」

 

 

 

そんな中、不意に出てきた韓遂の名前に、北郷は先ほど遭遇した韓遂のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

【涼州、天水付近】

 

 

北郷軍は馬騰の援軍要請を受け、戦支度の完了した後、成都から北上、

 

涼州の天水に入ると、そこから東にある潼関を目指すところであった。

 

出陣しているのは呂布、張遼、高順、陳宮、そして北郷である。

 

成都から潼関という長距離遠征に伴う軍備兵糧等の準備、

 

また、相手が曹操軍ということもあり万全の状態で臨む必要もあったため、出陣には数週間の時間を要していた。

 

 

 

北郷「急ごう、曹操軍がいつ潼関に攻め込んでくるかわからないけど、早いに越したことはない。もしかしたら、もう攻められてるかも

 

しれないし、手遅れだったら最悪だ」

 

 

 

しかしその時、北郷軍のはるか向こう、ちょうど視認できるほどのところに、ある一軍がこちらに接近しているのを北郷たちは見つけた。

 

 

 

北郷「おい、向こうから誰かくるぞ?」

 

陳宮「気をつけてください一刀殿、みな警戒態勢に入るです!」

 

 

 

陳宮の号令で、一気に北郷軍に緊張が走ったが、しかしその時、

 

張遼が目の前の一団を目を細めながら睨み付けていると、何か気づいたのか、ふと言葉を漏らした。

 

 

 

張遼「ちょい待ち、あれは薄緑の韓旗ちゃうか?」

 

高順「そのようですね。薄緑の韓旗といえば、涼州の乱雄・韓遂でしょうか・・・」

 

北郷「けどそれっておかしくないか?韓遂っていえば涼州軍の主力だろ?なんでこんなところにいるんだ?」

 

陳宮「・・・怪しいですが、向うも我が方に気づいているはずです。ここはこのまま近づくしかありませんな」

 

 

 

もし本物の韓遂であれば、本来このような場所にはおらず、潼関で曹操軍との戦いに備えているか、

 

或はすでに戦っているはずなだけに、果たして本物なのか、それとも旗だけを掲げる偽物なのかは判断が難しいところであったが、

 

北郷たちは警戒を解くことなく、用心しながら接近していった。

 

相手の方も同様に警戒していたようだが、やがて、同様にこちらの旗印を見てその正体に気づいたようである。

 

そして、ついにお互い会話が交わせるほどの距離になった。

 

相手方の先頭の馬にまたがるのは、幅広の斬馬刀を背中に差し、鎧兜に緑翠色のマントを羽織り、

 

鼻下に特徴的な三日月形の髭をたくわえ、首や腕、足といった要所要所に毛皮をあしらっている壮年の男である。

 

 

 

??「むむむ、深紅の呂旗に、紺碧の高旗、そして、紺碧の張旗。お主たち、もしや益州の・・・」

 

 

陳宮「そうなのです。我らは馬騰殿の要請により、涼州軍に加勢するために潼関に向かっているところです。あなたは、涼州の韓遂殿と

 

お見受けするですが?」

 

 

韓遂「(馬騰殿・・・感謝するぞ・・・!)いかにも、私が韓遂ぞ」

 

 

 

呂布たちの旗印に反応したようなので、陳宮は特に隠し立てすることなく素直に応え、同様に韓遂本人であるかを確認した。

 

すると、韓遂と思しき男は、小さな声で何かをつぶやいたのち、頷いた。

 

しかし、次の瞬間誰もが予想だにしない出来事が起こった。

 

韓遂は馬から降りたかと思うと、その場に土下座し始めたのだ。

 

 

 

北郷「ちょっ・・・韓遂さん!?」

 

 

 

当然北郷は驚くばかりである。

 

 

 

韓遂「お頼みするぞ!どうか、どうか馬超殿を救ってほしいぞ!」

 

北郷「ちょっと韓遂さん、頭を上げてください!あーもう!どうしてこう涼州の人たちっていうのはすぐに頭を下げるかな!」

 

 

 

韓遂の行動に、北郷は動揺しながら止めに入り、普段自分がやっているのを棚に上げながら頭を抱えた。

 

 

 

陳宮「いったいどういうことなのですか?」

 

韓遂「実は――――――」

 

 

 

ゆっくりと頭を上げた韓遂は、噛みしめるように潼関で起きた出来事を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

陳宮「・・・・・・なるほど、それは間違いなく曹操軍の謀でしょうな」

 

 

 

韓遂から聞かされた、曹操軍からの書状の話のくだりを静かに聞いていた陳宮は、

 

少しも考えるそぶりを見せず、瞬時に曹操軍の策略であると断言した。

 

 

 

北郷(そうか、潼関の戦いといえば、確か曹操軍の軍師・賈駆の離間の計で馬超と韓遂が不仲になって涼州軍が負ける戦いじゃないか・・・)

 

 

 

北郷も、韓遂の話から三国志での話を思い浮かべていた。

 

 

 

北郷(けど、この世界じゃ賈駆は董卓と一緒に曹操に討たれたはずだから、荀彧とか郭嘉とか、他の軍師が仕掛けたってことかな)

 

高順「一刀殿も何か思い当たる節があるのですか?」

 

北郷「ん?あ、ああ。間違いなく曹操軍の仕掛けた離間の計だよ」

 

 

韓遂「しかし、馬超殿は常に真っ直ぐで、清らかな心の持ち主ぞ。そのせいかよく謀にかかってしまうぞ。今回私が戦場を追われたのも、

 

誰よりも涼州の地を、そして涼州の民たちのことを愛する馬超殿が、私がそのような愛する涼州を裏切ったと思い込んでしまっての行動、

 

気持ちは痛いほどわかる事ぞ。むしろその場で私を処分しなかった馬超殿の優しさすら感じることができるぞ。だから、どうか馬超殿を、

 

そして、涼州を曹操から救ってほしいぞ!」

 

 

 

計にかかったとはいえ、自身が馬超に不当な扱いを受けたにもかかわらず、

 

韓遂は馬超をかばい、馬超ともども涼州を曹操軍から守ってほしいと再び頭を下げた。

 

 

 

北郷「・・・もちろんですよ。そのために、オレたちはここにいるんですから」

 

韓遂「おお、感謝するぞ!」

 

陳宮「ですが、韓遂殿はどうなさるのですか?韓遂殿が抜けるとなると、戦況は厳しいものとなりますぞ?」

 

 

 

確かに、ただでさえ劣勢の涼州軍から主力の韓遂が抜けるとなると、いくら北郷軍が加勢したとなっても勝つことは非常に困難である。

 

 

 

韓遂「私は、私の出来ることをするぞ。西北の異民族、荒くれ者で排他的だが、羌族の血を引く馬騰殿他、馬一族の話はまだ聞くほうぞ。

 

だがそれでもやはり自民族第一主義。恐らく馬騰殿の呼びかけに応じていないのも、馬騰殿が直接援軍要請に行ったわけでないからか、

 

或は今涼州が置かれている危機を認識しておらず、自分たちへの被害を考慮していないからぞ。だから戦場に居合わせた私が直接族長に

 

援軍を要請するぞ。私では聞かぬかもしれぬが、何とか説得して、たとえ馬超殿の命に背くことになろうとも、必ず援軍を連れて、再び

 

戦場に戻ってくるぞ」

 

 

 

涼州付近を拠点とする異民族、羌族、氐族は、その一部はすでに潼関で馬超たちと共に戦っていたが、

 

それでも部族のほんの一部だけであり、仮に残りの部族が援軍に駆けつけたとなれば、

 

強大な曹操軍にも十分抵抗しうる戦力になることが見込まれた。

 

そういう意味でも、このタイミングでたとえ主力である韓遂が抜けることになろうとも、それだけの価値があることであった。

 

ただ望むらくは、異民族が馬一族でなければあまり話を聞かないということから、

 

本来馬休や馬鉄か、せめて馬岱あたりに行ってもらいたいところなのであるが、

 

韓遂が戦場を追い出された今となっては、少しでも戦場に戦力を残すためにも韓遂が行くほか適任はおらず、

 

(本来であれば、張郃に敗れ敗走した馬休馬鉄でも良いのだが、間が悪かったのは、まだその情報が伝わっていなかったということか)

 

馬騰の盟友という立場でどこまで早期に交渉成立できるかが勝負となるところであった。

 

 

 

 

 

 

【司隷、潼関、side北郷・陳宮】

 

 

北郷「・・・・・・まったく、馬騰さんにしても、韓遂さんにしても、涼州の偉い人っていうのは、自国のためなら平気で頭下げてくるん

 

だから、困ったもんだよな」

 

 

陳宮「・・・一刀殿、その言葉、そのまま自分にぶつけてみるといいのです」

 

 

 

回想にふけりながらしみじみと漏らした北郷の言葉に、陳宮はジト目を向けながら諌めの言葉を北郷にぶつける。

 

 

 

北郷「ははは、耳が痛いよ」

 

 

 

陳宮のもっともの指摘に、北郷はいつものように力なく笑うしかなかった。

 

 

 

北郷「・・・よし、急ごう、ねね!韓遂さんもきっと援軍を引き連れて戻ってくる。それまでに、粗方曹操軍を減らしておこう!」

 

陳宮「了解なのです!」

 

 

 

そして、北郷が再度気合いを入れ直し、陳宮がそれに呼応するのを合図に、碧緑の十旗の一団は、再び行軍を開始するのであった。

 

 

 

【第六十三回 第四章:潼関攻防編⑥・碧緑の十旗 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第六十三回終了しましたがいかがだったでしょうか。

 

さて、ついに一刀君の旗印お披露目です!

 

なぜ碧緑かといいますと、単純に蜀=緑のイメージで、あとは何かグッとくる色ないかなーってことで碧緑色になりました。

 

そして何気に初登場のななの旗印。結局霞と同じで紺碧色にして、董卓軍は恋以外紺碧だったということにしました。

 

(確か霞の夢オチ回で華雄さんの旗印も紺碧色にしてたはずです)

 

 

さて、いつの間にか涼州の人たちが一刀君化してしまったわけですが、

 

次回は各武将の戦闘が激化。戦いは終盤を迎えますので投稿まで今しばらくお待ちくださいませ!

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

秋蘭が恋にやられたシーンがどうも物申したい気持ちでいっぱいな今日この頃、、、汗

 


 
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