No.767940 とある傭兵と戦闘機 IS編第15話 ”真実と片羽の紡ぎ”雪下 夾矢さん 2015-03-31 04:03:47 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:3393 閲覧ユーザー数:3237 |
「・・・これは・・・」
鳥が教えてくれた場所は、格納室に並ぶ打鉄の一つ
その奥の壁を鳥は示していた
「この壁の向こう・・・」
そうしてその壁に手を触れる
だが、触れたはずの手に感覚が無い。
それどころか、腕すらも壁に溶け込んでいく
「・・・VR立体ホログラム・・・」
質量の無い壁、見せ掛けだけのまやかしの壁
その壁を、私は通り抜けてその奥へと入る
そこにあったのはーーー
「・・・これは・・・卵?」
光を放つ、幾多もの六角形の殻で形成された卵がそこに鎮座していた
人が一人蹲れば入るサイズ・・・恐らく、そういう卵だと思う
と、じいっと見ていたら小鳥が頭の上に止まった
それと同時に、卵に変化が起こった
強い輝きに包まれた卵は、その殻を頂点から消滅させていく
そしてその殻の中からはーーーー
”白イ何カ”が現れた
「フィ・・・」
そこで、私は疑問に思った
果たして、この姿をしていて・・・
彼女と、断定していいのか
その姿は、純白の制服・・・向こうの世界で着ていた私服。シンプルな白いワンピース
蒼く綺麗だった彼女の長髪は真っ白に、まるで全てが抜け去ったような白髪になっていた
白い帽子を頭に乗せたその存在は、まったく澱みない真っ白な存在へとなっていた
そうこうしていると、彼女は口を開いた
「あら・・・こんなにもすんなり・・・」
と、彼女は体の感触を確かめるようにしながら溜息を漏らした
「・・・あのっ・・・」
思わず出た声に反応したその人は、視線を私に向けた
そしてーーー私は目を逸らせなかった
その瞳に宿る光が、彼女であると認識させる事を阻害する
それほどに、あまりにも透明で透き通った水色の瞳をしていた
「一応、始めましてと言っておきましょう
私の名はーーーーフィレイア・ヴィリタニィ・リーファフロイス
彼女が忘れてしまい、心で隔離されたまま成長した
”捨てられた”フィリア・フェイリールド」
「真直ぐ・・・か・・・。山田先生、フェイリールドについて何か思う所は無いか?」
職員室、ふとした疑問が私の中で渦巻いていた
それを確かめるべく、私は山田先生に言葉をかけていた
「私は・・・・正直、怖かったです」
「・・・その理由を教えてくれないだろうか?」
「・・・フェイリールドさんは、私達から見ればすごく優秀で模範的な生徒ではないですか?
でも、彼女の過去を知った時からです
言われた事を許否せず完璧以上にこなす姿は、私達にとってつまらないような”指示”が
彼女にとっての断る事の許されない”命令”になっているんじゃないかと・・・」
否定できない
現に私は、個人的なお願いを彼女に押し付けていた
しかも、それは彼女の身を危険に晒していた物もあった
最初の、機体を返す時もそうだ
私は彼女が嫌がる戦闘を、”押し付けていた”のだ
何があっても、彼女ならなんとかなる
そんな甘い根拠の無い暴論で、私は私自身の不安を彼女を用いて拭っていた
それこそ最初は、この学園を守る為の戦力として考えていたのだ
やはり私じゃないか
結局、私は機械として彼女を見ていたのだ
身の回りの心配を拭う為の、単なる道具にしていた
真直ぐ・・・それもそのはずだ
自身の行く先を握る操縦桿を、自身が握っていない
ただ命令通りに真直ぐ、その任務を果たすために空を真直ぐ突き進む
手に握るマグカップのコーヒーをゆっくりと啜る
いつも以上に深い香りにーーーー不快な塩味に顔をしかめる
「織斑先生、それ・・・塩です」
「・・・だから誰だ。砂糖の横に塩を置いているのは」
だが、お陰で考える事を止める事ができた
「ああ、ここは気持ちがいいですね」
打鉄・・・蒼羽鋼の鳥を指に止まらせて
医療棟の屋上で、彼女は空を見ていた
それを、黙って見るしかない私はただ呆然とその姿を見ていた
彼女は、恐らく誰もが持っているはずの”自身の制御”
ありとあらゆる事に対する制御ができていないのが彼女だった
優しさにしろ、攻撃にしろ、彼女には手加減と言う物がなかった
だったら今までの彼女の不殺の制御を行っていたのは何か?
それは・・・信条だ
彼女が曲げない信条を持ってしまったからこそ、この人が切り離されたんだろう
「貴女は、なぜ戦うのですか?」
「そ、それは・・・」
「この世界は、彼女が守った世界のはず
でも、彼女は今だ私を受け入れられない
それは、どうしてだと思います?」
そして、彼女は聞いてきた
その言葉一つ一つに意味があり、恐ろしい程の説得力がこめられている
「・・・・・・」
「答えられませんか・・・それもいいでしょう
しかし、この世界は彼女に再び戦う事を強要している」
ヒュオッ
私達を、風が凪ぐ
それと同時に、海鳥や鳥達が彼女の周りに集まり始める
「あらあら、羽休めですか?ーーーーわかりました
ありがとう。ではすぐにお逃げなさい」
と、会話するように彼女は鳥達を羽ばたかせた
その鳥達は一斉に空に舞い、そして沿岸へと飛んでいった
「東から鋼鳥がきます・・・フィリア、起きなさいーーー」
そうして、彼女が空を見上げる
すると不思議な事に、彼女の髪が本来の色に戻り始めた
「ーーーーーーまた、会いましょう」
その言葉と共に、彼女は糸が切れたかのように倒れた
「っ!!」
咄嗟に倒れる彼女を抱える
「・・・・あ・・・れ・・・へい・・・と?」
「はい・・・フィリアさん」
そうして、私は再会した
IS学園レーダー管制室
「離島設置防空監視レーダーに感!!方位東南、距離、学園より340000に所属不明飛行物体接近!!
学園に向け、時速約3100kmで接近中!!」
室内の空気の静けさが一変し、慌しくモニターを睨む人員が異常を報告する
学園以来、初の警戒区域への不審侵入が認められたのだ
以前にあったのは、警戒空域への唐突な反応
いきなり学園の防空識別区域への反応だった
その為、今回の”飛んできた”は初めてなのだ
「衛星映像受信・・・っ!!機種確認!!
戦闘機”F-34EGストライク・イングラム”!!
国籍不明!!各部ハードポイントに誘導弾と思しき大型巡航ミサイルを懸架!!
間違いなく対地破壊用の爆撃装備です!!」
「護衛機はF-41Dアドヴァンス・ホーク・・・制空戦闘機が三機」
「対空照準レーダー起動、迎撃システムオンライン!!」
「搭乗者確認できず!!FACS自立制御による無人戦闘モードと思われます!!」
「所属不明機更に接近!!警報発令!!」
「特務戦闘機隊スクランブ・・・え?」
「どうした!?」
「学園より、既に迎撃機が発進した模様!!
コールサイン、ガルム1・ガルム2・ガルム3!!」
管制塔の判断よりも早く、迎撃機は空に上がっていた
歴戦のパイロット達の即応能力に、管制員は驚く一方であるのだ
そして、通信が管制塔に入った
「”こちらガルム隊 敵機迎撃に向かう”」
少女の声がーーーー管制室に響き渡った
「・・・・あ、アクティブボイスチェンジャー入れるの忘れてた」
自衛隊から貨与されたF-15Jに搭乗する私は久しぶりのコックピットに感傷に浸っていた
操縦桿から感じる微細な振動やスロットルの反応
そしてーーーイーグル特有の操作感に私は安心を覚えた
この機体は、有事の際に使えるように自衛隊が保存していた所謂”型落ち”の戦闘機
でも、それでも私は満足だ
「ガルム2より各機へ。これより所属不明機迎撃へと向かう
メビウス1 貴機はこれより一時的にガルム隊に所属する
コールサインは、ガルム3だ。間違えるな」
F-45の超タイトでクセのある機体を数分で我が物にしたラリーから無線が飛んでくる
その間に私はFACSのセットアップを設定していく
このFACS、私が壊したF-45の物を流用しているので、制御系を今は機体が持つ本来のシステムを使用している
片手で操縦桿を操りながら、HMDの思考コントロールモジュールで設定を平行して行っていく
「・・・また、私は操縦桿を握っている」
「・・・ガルム1、どうした?」
「ガルム2・・・今回の戦闘が終ったら・・・もう、飛ばない」
「・・・・・」
「だから・・・ガルム1より各機へ。みんなで生き残るよ」
「「・・・了解!!」」
さあ、これで最後にするよ
だからそれまで付き合ってね。”サムライイーグル”
set up complite
control sistem F-45----F-15J sift upping
FACS sistem online______open controling.....
機体のシステムが切り替わり、補助システムだったFACSが本格的に機能し始める
「接敵予想区域まで約二分。各機、火器管制に火を入れろ」
「了解」
「マスターアームオン」
最終安全装置であるスイッチを入れ、武装チェックを行い
AIM-9L・・・サイドワインダー
M61 20mmバルカンの確認
AAM-4空対空誘導弾のレーダーリンク
全武装の状況を確認
「レーダーに所属不明機確認、反応は12機。
・・・・IFFが自衛隊を示し始めた!?」
IFFの赤点が突如緑に変わった
攻撃不可能のアイコンが表示される
「・・・FACSコントロール。対象機をFACS個別操作によってIFFの指定を変更
レーダーに映る所属不明機を敵機に指定。言うまでもない、レッドサインだ!!」
その時、無線から声が聞こえ始めた
「こちらIS学園防空監視室。オペレーターの水崎です。
これよりガルム隊の援護をします
学園側は所属不明機の迎撃を許可
これよりレーダー目標指示をーーーー」
「こちらガルム1 五月蝿い。必要ない。首を突っ込むな」
この時、水崎はレーダーを見た瞬間
レーダーの不明機が、一斉に消えた
「ガルム1、目標アルファとチャーリーを撃墜。スプラッシュ1」
「ガルム2、同じくブラヴォーを撃墜。スプラッシュ1」
「ガルム3、目標デルタとエコー、それ以降二機の目標を撃破。スプラッシュ1」
目視距離に入ってから。相手はミサイルを撃たずにドッグファイトを挑んできた
「・・・ぬる過ぎる」
「ああ・・・拍子抜けだな」
「これでいて戦闘機ですか?」
三機編隊を組み直し、そして無線で口々に思ったことを吐き出す
「「「こんな錬度で、守れる物なんて何も無い」」」
爆弾を抱えたまま発射せずに墜ちるなんて愚の骨頂。
それも勿体無いと思ったのか。短距離近接ミサイル兵装を全く使用しなかった
「そもそも。遠隔操縦なんて使ってる時点でパイロットの実力と根性はたかが知れているんだよ」
「学園側の防衛網も脆いですね。人員不足かは知らないですが、生徒にAWACSと同等の仕事を任せるなんて」
「スカスカのド素人だったしな。まあ慣れてくれるまで待ってやれ」
「・・・ガルム1より各機へ低空を飛行する物体に注意せよ」
私は高度を落とし、700フィートを学園に向け飛行する
「(あまりにも解りやすすぎる・・・あれが本命ならもっと低空をレーダーを避けて飛ぶはず
アヴァロンの時、私がそうしたように・・・さっきの戦闘もそうだ
こちらには最新鋭機一機と高性能だけど旧型機が二機
相手は安定量産新鋭機が12機。ファーストルック・ファーストキルが可能な程射程が優れているのにも関わらず
それなのに、ミサイルを一発も使わず。機銃を牽制程度に撃つ程度でドックファイトを行ってきた
・・・・・・最初から、爆装機を守ろうとしていない?・・・だったとするとーーーーーー!!)」
私は海面スレスレまで高度を落とし、アフターバーナー全開、最高速度を出して学園に向かう
「サイファー!!どうした!?」
「さっき墜とした戦闘機隊は”デコイ”時間稼ぎだ!!”メインは既に学園に向かっていると思う!!」
と、FACSの熱源体監視装置が航跡を捉えた
それと同時に目標の航跡と移動速度を割り出す
「・・・くそっ!!MIGー31!!対地爆装ユニットを積んでる!!」
「フォックスハウンドだと!?相対速度は!?」
「2934km・・・駄目だ。早すぎる!!」
追いつけない・・・
イーグルの速度じゃ・・・追いつけない
皆が・・・・危ない
ふと、少佐を思い出してしまう
あの時の光景が、頭の中で蘇り
その一つ一つの情景が、IS学園の施設で塗り替えられる
そしてーーー吹き飛んだ死体もーーー
気が付けば、スロットルを強く握り締めていた
そして、超低空飛行・・・海面スレスレを飛んでいく
「がんばって・・・!!”ムラマサ”!!」
思わず口から出た名前に、FACSが反応した
”ありがとう”
sisttem over output
limtter braking.....
途端、体に急激な加速Gが加わった
「ぐっ・・・!!」
機体が軋み、更に機体ノーズから蒼い気流がキャノピーの後方へと流れていく
「駄目・・・!!このままじゃ・・・」
”あなた”が、死んでしまう!!
スロットルレバーを戻そうとするが、ロックがかかっていて出力を絞れない
そうこうしているうちに、速度計の表記が3400を突破する
・・・・がんばってくれている
がんばってくれてる”あなた”を、私は死なせたくない
強く、強く私は願うーーー
「サイファー!!くッ・・・追いつけねぇ!!」
低空を音速の三倍以上のスピードで突っ切っていくイーグルを見て、俺はある事を理解した
本来は音速の2.5倍が限界のF-15のポテンシャルを遥かに超越した速度なのだ
そう、機体設計上”本来なら空中分解してもおかしくない”速度だったのだ
それを実現可能な力・・・・
そして機体が振りまく蒼く煌く風と衝撃波を見て確信する
「魔法力・・・!!」
海面を衝撃波が叩き、大きな水柱を上げて航跡を残す
「後方警戒装置に反応?ミサイルかーーー」
MIG-31のパイロットは突如鳴り響いたレーダーアラートに驚く
世界でも屈指の最高速度が出る機体で既に迎撃機を振り切った
大方ミサイルだろうと思って回避行動を取ったーーー瞬間!!
ガガガガガガッ
機体に何かが刺さる音と同時にキャノピーに亀裂が入るが、構わず突き進む
「戦闘機!?馬鹿な・・・迎撃機が追いついたとでもーーー」
その瞬間、頭上を通過して行く戦闘機
「・・・おいおい、冗談は止してくれよ」
無理も無い、本来追いつけるはずのないF-15が通過して行ったのだ
音速の三倍近くで突き進むこの機体を、だ。
・・・だが、俺が驚いた所はそこじゃなかった
俺が驚いたのはーーー
「・・・此処まで来て・・・
お前は”また”・・・邪魔をするのかッ!!」
円卓の鬼神ッ!!
そしてF-15はノーズアップ。
そのまま反転してーーーーー
コックピットに・・・20mm機銃の弾丸を狙って10発
正確に、そして無感情に叩き付ける
その砲弾はコックピットを貫き
機首と機体を分離した
弾け飛んだ敵機が海面に落下し、大きな水柱を上げたのを確認して海面を這うように機体を維持する・・・が
「速度が・・・落ちない!!」
スロットルを戻そうとしても、溶接されたみたいに硬くて動かない
「くっ・・・FACS燃調制御!!」
FACSの燃料噴射調節機能を使って出力を絞る
やがて、タービンの回転音が収まる音が響き渡った
「ふぅ・・・あぶなーーーー!!」
ピピピ・・・ピーーーーーー!!
ミサイルアラートが突然耳に突き刺さる
どこから!?
「・・・IS学園から!?」
と、突然エンジンが停止・・・ストールする
「・・・!!フレア散布!!」
ボボボボボッ
機体に搭載された赤外線ミサイル対策用のフレアが射出される
既に熱量が下がり始めたエンジン排気に、それよりも高い発熱量を示すフレア
ふたつが合わさって、ミサイルがフレアを誤認して全てのミサイルが機体の横に流れていった
それを確認した途端、推力を失った機体が降下を始める
「・・・ああ、学園が近い・・・」
でも、届かない。
着水地点は・・・学園の砂浜海岸のちょっと手前ら辺かな
「でも、諦めないから・・・」
操縦桿を握り、海面に着陸するようにフラップ操作を行う
そしてーーー
ザッバァァン・・・!!
着水。そのまま勢いを保ったまま砂浜に辿り着いた
「ガルム1の着水、及び陸への到達を確認。これより帰等する」
無線でガルム1の無事を確認して機首を反転させようとする
だが、操縦桿を傾けようとした時ーーーそれに気が付いた
・・・砂浜に一人、学園の生徒が居たのだ
それも背の高い・・・よりにもよってな人物だ
そして、止めたくても止められない位置に今、俺は居る
「ガルム3、急いで戻るぞ」
「ガルム3了解」
機首を反転させ、着陸の体勢を取る
・・・・ホント、運に恵まれてねぇなぁ俺・・・
地上ーーーその生徒
「はぁ・・・何でこんな事になったんだろうな」
地上で、昼休みに息抜きで砂浜を歩いていた
ここはIS学園の沿岸。昼休みに誰も来る事はなくゆったりとできる唯一の場所
そこで俺は、先程まで暴れ回っていたクラスメイト達を思い出していた
「ハハ・・・女子ってつぇぇなぁ・・・」
頭を抱える
・・・あいつ、どうやってあの猛者達を抑えてたんだ?
フィリアは、何で休学になったんだ?
せめてクラスメイトに何か言って欲しかったもんだ
「ハァ・・・言っても仕方がねーか」
高校生が砂浜で体育座りをしてるってのも中々シュールな絵図だな
やめたやめたっと
ケツに付いた砂を落とし、踵を翻して校舎に戻ろうとした時だった
ヒュィィィィィーーーザバァンッ!!
何かが飛んでくる音と共に海から飛沫が飛んできた
「なっ・・・!?何だ!?」
ザザザッ
目の前に姿を現したのは・・・戦闘機だった
翼の端を塗られた・・・日の丸の入った戦闘機だ
「墜落!?パイロットはーーー」
言った矢先にパイロットは操縦席から降りてきた
「大丈夫ですかーーーーッ!?」
駆け寄ろうとした瞬間に、パイロットは銃口を向けていた
ザリッ・・・ザリッ・・・
おぼつかない足取りで、パイロットは俺の足元に向け発砲する
「おわっ!?何するんだ!!」
しばらく続く沈黙の間
そしてーーー
「・・・・・・・ゴホッ・・・」
と、そのパイロットが咳き込んだ
その時だった
砂浜に、赤い液体が飛び散った
それとほぼ同時に、そのパイロットが砂浜に膝を付き、そのまま倒れた
「っ!!大丈夫か!?」
先程銃を向けられたのにも関わらず
俺は、その人を助けようとしていた
何故かは解らない
直感的に、俺はそのパイロットを助けようとしていた
ヘルメットのあご紐をはずし、そのままヘルメットを上に外していく
そして・・・パイロットの顔が視界に入るーーー
「ーーーーーーーっ!?!?」
そこにあったのは・・・見まごう事は無い
今日からいないはずの・・・今日から休学になったはずの
「・・・・フィリア・・・?」
フィリア・フェイリールドという名の、クラスメイトだった
「・・・・・・・・」
目覚めたのは、見覚えのある天井の薬臭い部屋だった
起き上がり、辺りを見回す
目に入ったのは、専用機持ち達とラリー達
そして、織斑先生と木里先生・・・そして、私のパイロットスーツがかけてある所を見ると
・・・バレたんだ・・・
「・・・・・・・起きたようだな」
織斑先生が私に近づく
私はテーブルに置いてあった拳銃を咄嗟に握った
そしてその銃口を・・・織斑先生に向けた
「・・・何の真似だ」
手が・・・震える
それ程、私はこの空間に居る皆が怖かった
「・・・それ以上、近づかないで・・・」
今まででは考えられないくらい・・・震えていた
怯えていた・・・
「・・・・・・・」
「・・・・・」
銃口を向けられた私は・・・思考していた
理由は・・・学園側にある
学園側が放ったミサイルは赤外線探知式、それも旧世代の長距離迎撃特化のミサイル
画像探知、ましてや構造的信頼性を最優先にした簡素なミサイルだ
それは先行して来たミグを捉えていたのだが、それを追い越す形で来たフィリアの機体を捉えてしまったのだ
撃ったらその先の制御が効かないミサイルだった為だったと言えば話は終る
だが・・・ここ数日間のフィリアの状況がこれ以上に無い程渦巻いている
自分の出生・・・そして親の死・・・自分を消そうとする者達の追撃に加え
更に学校の生徒達に向かってきた脅威・・・そして今回のミサイルの誤認追尾
そして・・・隠し通すはずだったフィリアの正体ーーー戦闘機のパイロットである事実
ここに集まる人間は、それを理解できると踏んで集めた者達だが
・・・ここに来て、フィリアの精神的キャパシティが限界を迎えたのだ
何もかも、悪い方向に重なり続けているのだ
「フィリア!!」
そう呼んだのは、織斑だった
「なんで言ってくれなかったんだ・・・?」
「・・・・・・・」
「何で黙ってたんだ・・・俺達に話せないってどういう事だよ!?」
「・・・・・・・織斑君」
「・・・お前・・・まさかーーー」
やめろ、一夏
「ーーーー人が乗った戦闘機を・・・撃った事があるのかーーー」
その言葉を発した瞬間だった
一夏が、一瞬のうちに床にねじ伏せられていた
「がっ・・・ポートマス先せ・・・」
「フォルクだ」
「「「「・・・!?」」」」
ここに居るほぼ全員が、驚愕の目でフォルクを見ていた
「ラリー・フォルク空軍大将だ。織斑一夏君」
雰囲気が変化する・・・お前も背負う気なのか
「なっ・・・何を言っているんですか・・・?」
「事実だ青年・・・君が学年別トーナメントの時に話した年寄り本人だ
そしてそれ以上君の疑問を彼女にぶつけようものならば
私は、君に容赦する事ができなくなってしまう」
真実を隠そうとするフォルクだが・・・駄目だ
私達では隠せない程、専用機持ち達は既に思考を巡らせているだろう
「彼女の負担をこれ以上増やさない為にも
君達には、真実を知って欲しい
あらかじめ言っておくが、彼女が背負っているものは
君達が想像しているものよりも暗く、重く、深いと言っておく」
全員が静まり返り、フォルクの言葉に耳を傾けている
私自身、それを詳しく聞くのは初めてなのだ
そして一呼吸置いて、”片羽の妖精”は語りを始める
「あれはーーー雪の降る寒い日だったーーー」
紐解かれるのはーーーひとりの英雄の軌跡と奇跡と
その英雄の隣を一番長く飛んだ、一人のエースパイロットの葛藤と覚悟の話ーーー
ラリー「いよいよか・・・」
作者「ああ、今日からだ」
ラリー「駄文も終りか?」
作者「そんな馬鹿な、執筆は続けるさ」
フィア「・・・帰ってきてね?(上目遣い」
作者「おう!!」
ラリー「(ロリコンなんだよなぁコイツ)」
と、言う訳で・・・二年前に諦めた夢を叶えるべく
行って参ります、航空自衛隊!!
何だかんだで大変だと思いますが・・・がんばっていきます!!
では皆さんお元気で、
”雪下” 出陣いたします!!
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何とか投稿できた・・・間に合った・・・
詰め込みすぎましたが、どうぞ~