No.761188

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~21話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます
希望はあるのか、救いはあるのか。
それは…
稚拙な文章、展開、口調がおかしい所があるかもしれません。
それでも、暇な時間に読んで頂けたら嬉しいです。

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2015-02-28 05:28:07 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:7643   閲覧ユーザー数:6067

 

 

天は自ら助くる者を助く。と言う諺。有り体に意味を訳すと、

 

人に頼らず頑張っている者には、天からの助けを得られ、幸福になると言う意味、

 

しかし、その頑張っている内容が、天の意に反するものだったら、

 

天はどの様な判断を下すのだろうか。答えは助けなどせず敵と見なし、

 

外史からの強制退去、もしくは、逆鱗に触れた事により存在そのものの抹消、

 

すなわち、死を与える。だいたい、この二点が該当している答えだろう。

 

今、冷静に振り返ると、恐ろしい事をしたなと思う。

 

でも、俺はあの時、外史の理を超え、記憶を継承したからこそ恐怖を乗り越え変改を望んだ。

 

人は大切な人の為に命を賭す事ができる。それを、改めて知り、成功に導けた。

 

その証拠に目の前に助けられた大切な彼女、傍らには、血の盟約を交わした、

 

莫逆の友と、大器底知れぬ妹。本当に良かった。

 

外史に抗い変改できて、後は、もう一人の因果を貰うだけ。

 

 

「…遅かったじゃないか。雪蓮、冥琳、蓮華」

 

 

各々の名を呼び、微笑む。上手く笑えているだろうか、

 

自分ではよくわからないが、どうだろう。

 

だが、一つだけわかる事は、名を呼んだ三人が

 

辛酸を甞めたかの様な表情を浮かべている事だけ。

 

 

「…一刀。貴方」

 

 

一番に開口したのは意外にも蓮華だった。彼女は力が抜け切った俺の手を取り、

 

優しく包む様に握ってきた。蓮華の温かさが伝わる。

 

そして、繋いだ手から不思議と蓮華の思想が流れ、頭の中で鮮明に駆けて来た。

 

 

「…蓮華の思っている通りだ」

 

 

もう、助からない事、曹操ではなく第三者が暗殺を企てた事に気付いていた事、

 

だが、一つだけ予想外だったのは、許貢が存命で本人が、暗殺を実行に移した

 

この事だけだった、でも、それほど脅威にあたるほどではなかった。

 

これも、枝分かれた外史の一つで、結局、許貢は因果を乗り越えなれなかったのだから。

 

 

「…北郷。曹操は軍を退け居城に帰っていった。

 これで、もう……大役の荷を降ろせるな」

 

「…ああ。でも全てを手放す事になるけどね。そう、全てを…」

 

雪蓮:「……!!」

 

「…そんな事言うな。わかっているとは言え。その様に言われると…辛くなる」

 

「…ごめん。配慮が足りなかった」

 

「それでいい。

 …北郷。お前の意地を通した血脈。私が色濃く継承していく。

 今まで出会った男の中で最高の男だったよ。お前は」

 

「…当たり前さ。大陸広し、とは言え、こんな格好良く、

 機転が利く男は俺位なものだよ」

 

「自分で言うな。…しかし北郷の言う通りだ」

 

「だろ。なら重畳」

 

 

お互い軽口を吐きつつ、普段の何気ない日常の如く会話する。

 

流石は冥琳。幾分楽になったよ。俺の心が…

 

でも、直ぐ翳りある元の感情に戻ってしまった。

 

やっぱり気付くものなんだな。その心の裏側に常駐している罪に

 

冥琳も、また皆に黙秘していた事に罪悪を感じてしまったんだな。

 

全ては俺の所為だ…

 

 

「…ごめんな、冥琳」

 

「……謝るな。これは私が選択した結果、自ら進んで共犯者になったんだ。

 後悔はない」

 

「だけど、俺は自分勝手な考えで、冥琳を大いに傷つけてしまった」

 

「言った筈だ。自分で決めた結果だと。全ては承知の上、

 北郷が自分の為ではなく、私達や孫呉の為に直隠し、常人には耐え難い痛みと闘った。

 それなら私も、抱えなければならない。罪の意識を一生背負う事になろうとも。

 それにな北郷、最期は謝罪ではなく謝辞を貰いたい…」

 

「…ありがとう。冥琳」

 

「ああ。私には、その言葉だけで十分だ」

 

「…一刀、どうして私には黙っていたの。

 貴方にとって私は頼りにならない存在だったの」

 

「…蓮華」

 

 

神妙な面持ちで何かに懇願するように答えを求めてきた蓮華。

 

頼りにならないなんて一度も思った事はない。

 

だけど、黙っていたと言う行為そのものが、そう思わせてしまっていたと、痛感した。

 

 

「そんな事はない。俺は蓮華を信頼してるよ」

 

「けど、冥琳には隠さず、私には黙っていたじゃない…!!」

 

「…冥琳に真実を伝えたのは、たまたま巡り合わせが悪かったとしか言えない。

 俺は信頼していないから黙っていたのではなく、皆の足枷になりたくないから

 黙っていたんだ。俺の所為で戦に支障を来たしたくなかったから」

 

「でも、それでも、私には口にして欲しかった、伝えて欲しかった。

 過酷な真実なら、尚更…」

 

 

覚悟はしていた、その想いがひしひしと伝わる。蓮華の成長。これ程の英傑に

 

なっていたとは思わなかった。…蓮華に黙っていたのは、間違いだったかもしれない。

 

それにしても、手が届かないと思っていた存在は、もう、背中すら見えなくなったのか。

 

嬉しくもあり少し、寂しく感じる。…でもやっぱり嬉しいな。

 

これなら芯がぶれる事無く、尚且つ、明日を見失わずにすみそうだから。

 

 

「…ごめん。俺、蓮華を見誤ってた。早くに伝えるべきだったみたいだ」

 

「……」

 

「蓮華、今の蓮華なら、あらゆる事を託せる。皆を頼んだ」

 

「…一刀」

 

 

笑みを蓮華に差し向ける、だが覇気無き微笑み、限界が近いと悟り、それに呼応して

 

徐々に視界がぼやけてきた。意識が朦朧としてきた中、一つだけ気掛かりがあった。

 

それは、雪蓮が黙秘していた事、この場に来て俺の名を口にして以来、一言も喋っていない。

 

嫌われてしまったのだろうか、無理もない。毒を喰らわば皿まで、

 

罪を犯した者には、相応の罰が下されると言うもの。

 

雪蓮が口も聞きたくないのなら、それもまた、詮無き事。

 

 

「…冥琳」

 

 

呼吸が乱れ、いよいよ冥琳にも隠していた事を口にする。

 

俺の最期の使命、そして因果を受け取る希望の浄化。

 

この瞬間を待っていた、体内の気脈が失われ、死が目の前に迫っている、この瞬間を。

 

 

「いつまで、皆に隠してるんだ」

 

「…何を、だ」

 

「決まっている。冥琳の体内に潜伏している病魔だよ」

 

「!!!!」

 

「えっ!!」

 

「なんじゃと!!!!」

 

「ほ、本当なのですか!!冥琳様!!」

 

「そんな!!」

 

 

辺りが騒然となり、冥琳に視線が集まる。肝心の本人は普段通りに

 

冷静さを保ち、何事もなかったかの様に腕を組んだまま。

 

 

「…馬鹿げた事を。私は病魔などに侵されてなどいない。

 そう言った類の妄想を吐くんじゃない」

 

「妄想に駆られてはいないさ。確信を以って俺は言っている。

 それに、冥琳。この現状を、俺の姿を見て、それでも、虚を貫くのか。

 俺自身同じ轍を踏んで欲しくない。

 もし。これでも何も思わずしらばっくれるのなら、それはそれで、構わない。

 けど、俺は死して尚、冥琳を軽蔑する…!!」

 

 

自分が言えた義理はないのは、わかっている。身勝手で何故、自分に対して

 

そう言った気概を見せなかったのかと。でも、俺には圧倒的に時間が足りなかったし、

 

それに、因果律を変えるには代償を支払わなければならない。

 

生命を救うには生命をと言った代償交換を。

 

 

「…わかった、認める。確かに私は病魔に侵されている。

 …私も、また治る見込みがないらしい」

 

「…どうして、どうして黙っていたのよ、冥琳!!」

 

 

この直面でやっと開口した雪蓮。その鬼気迫る行動から冥琳の肩を両手で強く掴み

 

そこから血が滴り始めた。冥琳の顔が苦痛に歪む。

 

これを見ていた皆が止めに入るが、雪蓮は酷く狼狽え、錯乱状態に陥ったかの様に

 

自我を失っている。俺の目にはそう見えた。

 

 

「…北郷と同じ理由だ」

 

「どうして…二人は……」

 

「…落ち着いてくれ、雪蓮。少なくとも冥琳は助かる」

 

「…何故その様な事が言える。医師から宣告されたのだぞ。

 もう…助からないと」

 

「いや、助ける。俺が因果を受け取る事によって」

 

「…因果、だと」

 

「…俺の手を握ってくれ、冥琳」

 

 

手を空に差し出すと、冥琳は俺の手を壊れ物を扱う様に繊細に握ってきた。

 

こうして繋がると、嫌でも感じる、因果の波動を。

 

何て禍々しいんだろう。底知れぬ闇の様で、それでいて冥琳に蔓延している大いなる邪気。

 

これだ。これさえ受け取れば、冥琳の運命は決定的に変わる。

 

医師が治せないと言ったのは、因果に邪魔されていたからだろう。

 

だが、因果を受け取ったとしても、病魔自体は消え去りはしない。

 

俺は医術の素養なんて持ち合わせていないし、もし因果を受け取る事によって、

 

病魔をも浄化できるのなら、それはもう、外史同等の存在といえる。

 

冥琳を治療する人物は名医中の名医でなければならない。

 

でないと、完璧に消し去る事は到底不可能。

 

…俺の記憶の中で一人だけ心当たりがいる。そいつは…

 

 

「…北郷。一体何をした?病魔の息吹を感じるものの、

 身体の中の不快感が消え、久方ぶりに楽になる感覚を覚える」

 

「因果継承。天の御使いのみに使える奇跡。

 これで、冥琳の因果は俺に蔓延り、運命が変わった。

 …後は、冥琳。華佗を探せ、華佗の治療を受ければ、必ず治…っつ!!?

 ぐぁぁっぁああああ!!」

 

「北郷!?」

 

 

麻痺して痛みを感じていなかった身体に、鋭利な刃物で何度も刺される鋭い痛みが襲い掛かってきた。

 

痛い。それでいて身体が焼け付くように熱い。

 

これが二人分の因果を受け取った運命、だが、こうなる事は予期していた。覚悟していた。

 

 

「一刀!!…一刀!!!!」

 

「…やっと、話、掛けてくれた、ね…雪蓮。嫌われたかと思った」

 

「私が、一刀を嫌う訳ないじゃない…!!」

 

「……顔を、良く見せてくれ…雪蓮」

 

 

口角から血が伝う中、雪蓮の顔に震える手を伸ばし、そっと、頬に添える。

 

そして、親指でなぞる様に涙を拭き、雪蓮が目の前、現実に存在する事を確かめる。

 

 

「夢じゃ、ないんだな…こうして、雪蓮が、居るのは」

 

「私はここに居る。ずっと一刀の隣に居るから、だから…!!」

 

 

 

 

…泣かないでくれ、雪蓮。君に涙は似合わない。

俺は君の笑っている姿が好きなんだ。最後は君の温かな笑顔で――逝きたい。

…だから……笑ってくれ……雪蓮

 

 

 

 

「…俺の、物語はここまでだけど。最期に雪蓮という名の太陽、

 冥琳と言う名の月を沈ませずにすんだ。これで、もう俺は…」

 

「嫌、嫌!!一刀、お願いだから私の前から居なくならないで!!!!

 私が太陽と言うなら、貴方は青空。青空が無ければ私は輝けも照らせもしない!!!」

 

「…姉様、一刀を、もう…」

 

「…雪蓮。北郷をもう、楽にさせてあげろ」

 

「二人供、どうしてそんなに平気なの!!

 特に冥琳、私達は一刀に救われてるのよ!!何も思わないの!!

 一刀が、一刀が……死ぬのよ!!辛くないの!!!!!」

 

「…辛くない訳が無い!!」

 

「…っつ!!」

 

「私だって、北郷と共に泰平の世を掴み平和を謳歌したいと、誰よりもそう思っている!!」

 

 

涙、あの冥琳が人目を憚らず涙を流し、心に押し込めていた生の感情を吐き出した。

 

その姿に先程の冷静さが見る影も無く、普段とは真逆の激情家の様に、

 

苛烈さを増し、声を荒げる。

 

 

「だが、一番、辛いと感じているのは、他ならぬ、北郷自身…なんだ!!

 けど、北郷はその想いを、ひた隠し、私達の為に……」

 

 

そして、冥琳は視線を俺へと移し、俺もまた、裏側の想いを吐露して欲しい

 

と言う瞳で訴えかけてきた。

 

・・・そうだな、今更包み隠しても、意味は無い、か。

 

それなら、言葉を紡ごう。

 

 

「……不公平、だよな。命と引き換えじゃないと、救えない、なんて。

 でも、人生ってそんなもので…その、不公平が、まかり通ってしまうんだよな。

 …本音を漏らせば、皆と…もっと居たかった。何気ない日常を楽しんで…

 深く繋がり合い、過ぎ去りし…時の日々の中、良き思い出を振り返ってさ」

 

 

語っていると今まで過ごしてきた日々が走馬灯の様に、鮮明に流れてきた。

 

煌いてた日々、夢中になって駆け抜けて、それでいて充実に囚われていた。

 

何て幸せだったのだろう。そう、思うと…涙が溢れてくる。

 

情けない、泣かないと決めていたのに…

 

 

「雪蓮、冥琳、皆。俺の分だけ…生きてくれ。さっき、雪蓮が俺を、青空と例えた…けど

 俺が青空なら、何時も皆を上から見守っている。

 …皆も辛くなったら、青空を…見上げてくれ、でも、もし、俺を思い出し、

 見上げる…事が、出来ないのなら、その時は正面、前に目を向けて欲しい。

 世界は、大きく…広がっている。それこそ、地平線の彼方まで……

 その、広大さの中から…生きる希望を見出せる筈。

 それで…希望を見出して…叶うならば、青空に報告、して、く、れ…」

 

 

青空に例えたからか、語っている最中に身体に残されていた、活力の粒子が

 

青空へと昇華される感覚に陥った。

 

もう…空っぽ。いよいよ、最期

 

 

「…雪、蓮」

 

 

名を口にし手を重ね合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、逢おう。次なる外史で………」

 

 

 

 

―――――そう、きっと俺達は再び逢えるさ。平行世界の外史で、君と…再び―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「かず、と…?一刀!!」

 

 

一刀から、どんどん血の気が失われていく。私は…私は……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一刀の死と言う現実を受け止め、希望を見出し生きていく

 

 

 

 一刀と共に生きる夢を最期の最期まで諦めない、奇跡を信じる←

 

 

 

 

 

 


 
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