No.759282

【獣機特警K-9ⅡG】しろいぬ園大ピンチ(後編)【交流】

古淵工機さん

2015-02-18 21:19:56 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:897   閲覧ユーザー数:868

さて、ファンガルド・プラネットポリス本部。

例のハイウェイ建設をめぐる事件に関連し、ラミナ警察署で会議を行っていたフュアが総監室に戻ってきた。

「A・S・ファルトめ、なにか裏があるのは違いないが…問題はヤツが公共事業を盾に、この暴挙に出た根拠だ。証拠がないことには…?」

ふと、フュアは彼女の机に、ひとつの封筒が置いてあるのに気づいた。

封筒の書面には、こう書いてあった。

 

『親愛なるフュア警察総監へ トリッカーズより愛を込めて』

「ふむ…トリッカーズがわざわざ私宛にとはな…」

そう言いながらフュアが封筒を開けると、中には一枚のディスク。

同封されていた一枚のカードには『ハイウェイ建設と強制接収の事案について』と書かれていた。

フュアはそのディスクを自室のパソコンにセットし、再生を試みた。

 

「こ…これは!?…そうか、そういうことだったのか!!」

翌日、ラミナ警察署。

会議室ではフュアが、警察職員を集めて話をしていた。

「…というわけで、今回の事件で我々は決定的な証拠を入手するに到った」

「総監、その決定的な証拠とは?」

「ああ。とんでもないものがこのディスクに記録されていたんだよ。道路局長のA・S・ファルト…ヤツの闇がな」

その言葉に、周囲がざわつく。

「ちくしょう、やっぱりアイツはクロだったってわけか!」

「前々から気に入らなかったんだよねアイツ。交通違反をしても『局長権限だ』とか屁理屈こねてそのまま行っちゃうし…」

と、騒ぐ警官たちを署長のエルザ・アインリヒトが引き止める。

「まあ待て。みんな思うこともあるだろうがとにかく資料を見てからだ。総監(ねえさん)直ちにその映像を見せてもらえないか?」

「ああ、きっとみんな度肝を抜かれると思うがな…」

 

そう言いながらフュアは、モニターパネルにそのディスクの映像を映し出した。

「これは?」

「なにやら料亭のようだ…複数の建設会社とFHA、それに道路局の職員たちが会食中というわけだな」

と、しばらくモニターを進めていると、K-9隊の久遠・ココノエが声を上げた。

「…あの女は!ゴクセイカイ残党の氷雨・キクガオカ!?」

クオンに続くように、次々と声が上がっていく。

「そんなバカな!どうも裏があると思ったらヤグザが噛んでやがったか!」

「でもなんでファルト局長が氷雨と話をしているんだ!?」

「ここからなんだ。本当に恐ろしいのはな…音声をONにしてみよう」

 

<ホホホ、しかし道路局長殿も考えましたね>

<ええ、周囲の用地も確保してしまえばこちらのものです。なにしろ今度建設するハイウェイは一大事業ですからなあ>

<我々FHAとしても、これだけ安い経費で造れるとあれば儲けものですよ>

<何より建設工程のメニューは一本化されていますからね。どの会社の受け持ちかを事細かに指導していただいて、ファルト先生様々ですわ>

<まあまあ、これもブラックスターさんあっての話ですがね。リベートは契約書記載金額の半額ということで>

<かしこまりました。それにしても貴方って立派なおツノでいらっしゃいますのね>

<いやいや、褒めても何も出ませんよキクガオカさん…>

フュアは映像の再生を止める。

 

「なんてことだ!多額のリベート欲しさに談合を仕掛けてたってわけか!」

「そういうことだ…同様の書類はマスコミにもリークされていてな。今頃は蜂の巣をつついたような騒ぎになっているはずだ」

「なんか知らんが、これでヤツの悪事は白日の下に晒されたってわけだな…」

「エルザ」

「ああ。…各捜査官に告ぐ。これより談合にかかわった全ての団体ならびに企業への捜索を開始する!これ以上やつらの暴挙を許すな!」

「ですが署長」

イシス・ミツザワがエルザに尋ねた。

「なんだイシス?」

「ファルト局長はどうするのですか?」

「そのことなんだが…」

と、エルザが言いかけたところで、会議室のドアが開き、司法省刑事局のアイヴィー長官が入ってきた。

 

「話は全て聞かせてもらったわ」

「長官!」

「私のところにもちょうど、トリッカーズからの手紙が着てね。もしやと思ってたら案の定ってわけ。ファルト局長は我々刑事局に任せてちょうだい」

「了解しました」

…さて、それから数時間後、会食が終わったあとの料亭。

「お嬢、どうやら上手くいったみたいですぜ」

「フン、まあちょろいもんさ。あの施設もジャマくさかったしね」

「しかしなぜしろいぬ園をつぶそうとなさったので?」

「そうすればガキどもはまた身寄りをなくすだろ?それをアタシらが引き取って一流のヤグザに育て上げるってワケさね」

「なるほど、道路の周囲の土地は手に入る、それに将来の戦闘力も確保できるってワケですかい」

「ま、そういうことだ…」

と、一人のヤグザと氷雨が話し合っていたその時。

 

「なるほどな。これで全部分かったぜ」

と、K-9隊のジョナサン・ボーイングの声が響いた。

「…きさまらはK-9隊!なぜここがわかった!!」

氷雨が振り向くと、そこにはK-9隊のクオン、イシス、ジョニーの3人の姿があった。

 

「ちゃんと書いてあったよ。トリッカーズからの手紙にね」

「氷雨・キクガオカ、あなたの野望もこれで終わりよ!」

「おとなしくお縄につきな!さもねえとイタい目に遭うぜ!!」

「ちっ…今はあいにくアンタらの相手をしてる暇はないんだ!やっちまいな!!」

しかし、氷雨が号令を飛ばしてもヤグザは出てこない。

「ざんねんでしたー!アンタの部下たちはとっくにとっちめてやったもんね!」

「でかした、ミライ!!」

後ろの壁から、筑波未来が顔を出す。

 

「お、お嬢…」

「ちっ!今日はこのぐらいにしておいてやる。けどね…止められるものなら止めてみろってんだ!行くよ!」

「ヘイ!」

「あっ!待…」

氷雨は煙玉を叩きつけると、そのまま身を翻しどこへともなく去っていった。

 

「ま、前が見えないわ!!」

「くそーっ!氷雨のヤツ!どこへ行きやがった!!」

「こちらクオン…氷雨の確保に失敗…!」

『なんだと!?あいつは逃げ足が速いからな…まあいい、周囲のヤグザどもを確保しろ』

「了解!…でも氷雨のヤツ、止められるものなら止めてみろって言ってましたけど…」

『フフ、残念ながら何をたくらんでもムダだよ。首謀者のもとにはアイヴィー長官が向かっているはずだ』

同じ頃、ファンガルド道路局…。

「邪魔するわよ」

「これはこれは刑事局のアイヴィー長官殿。相変わらずお美しい」

「ありがとう。それにしても、ご立派な部屋してるのね」

「まあそれはそうと、本日はどういったご用件で?」

「ええ。その用件なんだけど…」

にこやかに応対していたファルトに、アイヴィーは不敵な笑みを浮かべ、懐から一枚の紙を取り出した。それは…!

 

「…た…逮捕状…!?」

ファルトは青ざめた。

「そう。今回の件、官製談合と建造物破壊の容疑でね。証拠だってあるのよ。なんならここで見せてあげましょうか?」

「な、なぜだ…なぜこんなこと…イヤだ!助けてくれ!!」

「いまさら言い逃れをしようったってそうも行かないわ。もうすでにマスコミは大騒ぎ。あなたたちと談合を行った会社の役員も次々逮捕されているわ」

「嘘だ!嘘だって言ってくれ!俺は何も悪くないんだ!何かの間違いなんだ、何かの…」

と、言いかけたファルトの胸倉を掴むアイヴィー。

 

「甘えるのもいい加減にしなさい!これはあなたの犯した罪なのよ!ゴクセイカイ残党とどういう関係なの!?」

「ぐ、苦しい…」

「答えなさい!答えるまで離さないわよ!!」

「話す!なんでも話しますからぁぁぁぁぁ!!!」

 

…そしてこの日、道路局長A・S・ファルトは逮捕。

同日中には談合を行っていた複数の会社役員も相次ぎ逮捕となり、建設計画も白紙に戻された。

…そもそも、この建設計画自体、採算性があるかどうかも疑わしいということで永久に放棄されることとなったのは言うまでもない。

…しろいぬ園。智美、ミウ、テムナが話していた。

「いやぁ、やっぱり子供たちは笑顔がイチバンですよ」

「ええ。あんな事があってトラウマになるかと思ったんですが…」

「たくましいモンですなあ。そうそう、ハイウェイですけどね。白紙になったみたいですよ。ゴクセイカイ残党が絡んでた言うことで」

 

その言葉を聞いた智美は、安堵のため息をついた。

「本当、一時はどうなることかと思いましたわ。でも、壊れた建物も復旧しないといけないですし、道路局への損害賠償もしていかなきゃ…」

「そういうことだったら力になりますよ。ね、テムナ!」

「ま、そういうこっちゃな。戦いはこれからですもんねセンセ!」

すると、どこからともなく野太い声が聞こえた。

「復旧工事なら任せてください!」

「げ、熊崎さん…」

現れたのはクマザキ建設の社長、熊崎熊造だった。

「ゲってなんですかゲって」

「え、あの方やばいんですか?」

「いや、真面目なんだけど一言多いんです。めんどくさいっていうかw」

「まあとにかくしろいぬ園復旧工事ですが、子供に手を出そうとする輩を完全撃退する防衛システムをですね!」

「いいです!普通にやってください!!」

何はともあれ、子供たちの未来は救われたのだった。


 
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