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真・恋姫無双 季流√ 第46話 呉勢編 猛け立つ想い~前編~

雨傘さん

どうも雨傘です。呉編4話が始まります。
一刀も季衣も流琉もでてこないので、あしからず。
サイトhttp://amagasa.red/ です、よろしくお願いします。
では。

2015-01-03 14:48:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5702   閲覧ユーザー数:4578

「孫呉の未来を祝して……乾杯!」

 

そのかけ声とともに、天へと掲げられるいくつもの杯。

 

活気が場に満ちていて、笑い声が響きあう。

 

今宵は祝宴。

 

城内に設置された宴会場では、呉に与する人達が大いに騒いでいた。

 

「まったく、お姉様ったらあんなに騒いで」

 

いつもは一歩引いたところで構える蓮華だが、今日は皆の輪の中で思春と共に杯をゆっくりと煽っていた。

 

甘露のようなお酒が、口内に芳醇な香りを満たすのを鼻で楽しむ。

 

「っふぅ、おいし」

 

自然とこぼれるため息には、彼女が持つ独特な艶がある。

 

それを横目で見ていた思春は、薄く微笑んでいた。

 

「これだけお酒が美味しく感じられるのも、ようやく一息がつけるからですよね~」

 

静かに飲む2人の背後から、気配を消して現れたのは穏であった。

 

2人の首を抱き寄せ、嬉しそうに大きな胸へと埋める。

 

「穏……貴様、不敬罪で斬られたいのか」

 

頬を押しのけるくらいに弾力のある豊満な胸に、思春の視線が剣呑に細まり、いらつきが増していく。

 

「ふふ、思春いいのよ。

 今日は無礼講なのだから、楽しくやりましょう。

 でも穏、飲み過ぎは駄目よ?」

 

「あらら~、バレてしまいましたか~?」

 

うふふと朗らかに笑いながら穏は、ふらふら右へ左へと体を揺らしている。

 

その乳の動きに釣られて、思春と蓮華の視界も、右へ左へと揺らされていた。

 

どうやら、珍しくかなり酔っているらしい。

 

さきほどの優しい微笑みはどこへいったのか、思春はむっすりと唇を尖らせながら、杯へと口をつける。

 

「おい、穏。

 どうせならば、雪蓮様達のほうで飲んできたらどうだ?」

 

「ん~、そうなんですけどねぇ。

 ほら、あれを見てくださいよ思春ちゃん」

 

穏が乳を駆使してグイッと頬を押してくるので、仕方なく視線を移すと、そこでは雪蓮と祭、そして小蓮に絡まれる亞莎のあられもない姿があった。

 

祭に背中から羽交い絞めにされ取り押さえられた亞莎が、にぎにぎと怪しげに手を開け閉めする雪蓮と小蓮に迫られていた。

 

「ああああ! なななな何をするんですかぁ~!!?」

 

3人に自分の体を弄られ、普段は大人しい亞莎の悲鳴が木霊していた。

 

「ね~?」

 

「……ふぅ」

 

これでわかったでしょと穏が顔を覗き込むと、思春は浅くため息をついた

 

「ふふ、こんな空気も久しぶりね。

 お姉様達も楽しそう」

 

大きな胸に遮られて見えないが、恐らく蓮華様も酔い始めているのだろう。

 

そのことに思春は、不機嫌な顔つきながらも安堵していた。

 

最近、一人思いつめるように俯く時間が増えていることに、蓮華のお側を預かる身としては心配していたのだ。

 

このようにお酒で気分を発散してくれれば、言うことはないだろう。

 

穏もその辺りを察して、このように振舞ってくれているのかもしれない。

 

そう思うと、思春としても腹を立てるわけにはいかない。

 

このたゆんたゆんと揺れる豊満な胸に揺らさられるのも、渋々だが許容するしかなかった。

 

「ようやく呉も形になってきましたからね~、建業、呉、会稽、櫨江を手中にし、反抗していた豪族も、とりあえずは大人しくなりましたし……」

 

「だが、問題はここからだ。

 ここまではある種、我々の見通し通りとも言えるが、ここから先はそうはいかないだろうな」

 

「そうですねぇ、いくらまとまった領土を得たとはいいましても、楊州と交州をちょっとといったところですからね~。

 ……既に8州を手に入れている魏がいる限り、とても安心は出来ませんよ~」

 

穏の声色がわずかに変わると、懐から地図を取り出した。

 

大陸の区分を、大雑把に示している地図である。

 

華琳達が持つ地図とは違い、陳腐な地図であった。

 

3人の前に広げられた地図は、各国の領土を色分けで示していた。

 

「……領土の広さで言えば、同じくらいに見えるんだがな」

 

思春が地図上に示された、赤と青で分けられた広さを比べる。

 

大陸の右下は呉を示す赤、そして北方は魏を示す青色であった。

 

確かに地図上では、大きさでいえばそう大差がないように見える。

 

「広さではそうですねぇ。 でも、人口でいうと……」

 

「魏は圧倒的だわね」

 

蓮華の指摘に、3人は押し黙った。

 

酒の席で無粋だろうが、いくら酒を飲んでも気がかりなこともある。

 

今まではかつてない忙しさに追われ、目前のことを処理するという現実に日々忙殺されてきたが、そろそろ最優先に考えねばならないだろう。

 

どうせ気になるのならば、楽に話せる今宵がいいのかもしれない。

 

「どうしても、北方の方がすごしやすいですからねぇ。

 土地から採れる収穫物の量も比較になりませんし、黄河は大きいですから」

 

「だが、問題はそこじゃあないだろう?」

 

「あら、蓮鳴様じゃないですか」

 

穏の頭に顎を乗せるようにして、江東の虎と称される孫堅こと蓮鳴が、ニヤリと笑っていた。

 

穏の脳天をグリグリと顎で押し付ける蓮鳴は、両手で蓮華と思春の頭をグリグリとかき回している。

 

「お母様、髪が乱れるので止めてくれませんか?」

 

「おやおや、いいじゃないかい。 ……それにしても、ほんと妙な話だよねぇ」

 

蓮鳴は恥ずかしがる蓮華を無視して、思春の頭から左手を離して地図の上を指先で撫でる。

 

無造作に撫でているようだが、青色の陣地を基点に、大陸のあらゆる方面へと先を伸ばしていた。

 

「曹魏ならば、いくら袁紹と袁術嬢ちゃんの軍を取り囲んだからといって、こうも後手に回るのはおかしい。

 何より曹操の小生意気ちゃんらしくもない」

 

蓮鳴がなぞる指先には、徐州、楊州、荊州、益州、涼州へと伸びていた。

 

つまり徐州の陶謙、揚州の孫堅、荊州の劉表、益州の劉璋、涼州の馬騰。

 

これに南方の交州と、李儒が率いる天水を含んだ擁州の約半分……数多あった勢力も、もはやこれしか存在していないのだ。

 

14州の内、7州と半。

 

これが魏の国力である。

 

しかもこれに人口比を考えれば、深いため息をつきたくなる。

 

単純な数の差でもそうだが、管理の問題でも歴然の差なのだ。

 

同じくらいの国土でありながら、魏の人口密度は高いし、開墾も進んでいる都市部だ。

 

これならば徴兵もしやすいし、土着の反抗勢力の管理もたやすい。

 

それにくらべ楊州は人々が土地土地に散っているせいか、わずかでも気を緩めれば、地方ですぐさま反抗の芽が出やすいのだ。

 

この広さを完璧に管理するだけの兵力確保も難しく、どうしても力技が増えていく。

 

長江の都市部である建業などを押さえ、そこに強靭な兵を配置することで威圧しているのだ。

 

”反抗をすれば、すぐさま川を使って討伐しにいく”と。

 

しかし、この状態がいいとも蓮鳴は思ってもいなかった。

 

__領土内において一体感が薄い……都市部は私達の影響が濃いが、細部となると……

 

実に頭の痛い問題であった。

 

そして……

 

「どうして、曹操は攻めないんだろうねぇ」

 

これが一番の大きな問題であった。

 

これに関しては冥琳や穏、亞莎という、呉軍の頭脳達が日々論議をかわしているのだが、はっきりとした結論が出ないのだ。

 

一番妥当な見解としては、袁紹と袁術の勢力を併合した際の混乱が予想以上に大きかった、という事なのだが、皆が皆、素直に頷くことが出来ない。

 

あの曹操が、そんな間抜けを踏むだろうか?

 

「混乱は必ずあった……が、こうも消極的になる理由はない。

 曹操の勢力ならば、片手間でどの州を攻めることも、出来るはずなんだけどねぇ」

 

蓮鳴が首を捻ると、釣られて顎の下の穏も頭を捻った。

 

そのせいで左側に座っている思春の頭も、穏の胸圧に押されて傾いていく。

 

3人が仲良く頭を捻ったので、蓮鳴は右手に握っている蓮華も力を入れて頭を捻らせた。

 

「曹操嬢ちゃんは、洛陽で一体何を考えているんだかなぁ、細策は帰ってこないんだろ?」

 

「そうですねぇ……一生懸命鍛え上げた精鋭達がこうも帰ってこないので、流石に明命ちゃんも肩を落としてますよ~」

 

穏が視線を上げると、呑んだくれ3人によって亞莎の姿が変わり果てていた。

 

片眼鏡を外され、頭には赤毛猫の耳を模した髪飾りを乗せられた亞莎は、最後の締めにと尻尾を握っている小蓮に、精一杯抵抗していた。

 

「し、ししし下、下着にぃ!?」

 

「ほら、亞莎! 大人しくしなさい!」

 

「恥ずかしいですよ~~~!!!」

 

どうやら亞莎は、3人の手によって猫娘化されているようだ。

 

その完成をわくわくしながら、明命が瞳を輝かせている。

 

今にも飛び掛りそうだ。

 

「……肩を落としているんだよな?」

 

蓮鳴の言葉に、穏はあはははと苦笑するだけだった。

 

「他の魏領は、そこそこ細策さんも帰ってくるんですけどねぇ」

 

「肝心の洛陽だけが、どうしてもわからん、か。 曹操は一体どんな手を使っているんだろうね。 動きの少なさといい、気味が悪いよ」

 

「……蓮鳴様の反則的な勘で、何かわかりませんかぁ?」

 

酔いの回っているはずの穏の瞳に、光が灯る。

 

蓮鳴も穏の言いたい事はわかったが、特に返事はしなかった。

 

「穏。 貴方、軍師たるものが勘に頼るだなんて……どういう気なのかしら?」

 

「その声は~……冥琳様、ですか?」

 

不味いところを聞かれた、と穏は平静を装ってそっと後ろへ視線を送ると、俯き加減に胸前で腕を組み、眼鏡を押し上げている黒髪の美女がいた。

 

もう少し仕事で遅くなると聞いていたのだが、どうやら急いで片付けてきたようだ。

 

「大体穏、貴方はもう少”猫娘(大人)いっちょ入りました~!”……って、ちょっ?!」

 

冥琳の長~い小言が始まりそうだったので、瞬時に背後へと回った蓮鳴が、冥琳をひょいっと抱えあげて、雪蓮達の方へと投げた。

 

長年の無茶振りに完璧に順応している祭が、飛んでくる冥琳を受け止めると、雪蓮と小蓮が新たに用意した黒猫の耳を手に持ち、キラリと瞳を輝かせる。

 

「ちょっと雪蓮! 止めなさっ!」

 

「やっぱり冥琳には黒猫よねぇ~、ほらほらほらほら! よいではないかー!」

 

「きゃ~! 冥琳ってば、尻尾が似合う!」

 

はしゃぐ雪蓮と小蓮が、冥琳の豊かな体を弄りだした。

 

先ほどまでの亞莎はというと、すでに赤猫娘の格好にされており、解禁された明命によってじゃれつかれていた。

 

「亞莎は、お猫様なのです! その気高い瞳が、お猫様のツンとした感じに、ピッタリなのです!」

 

すでに疲れきって抵抗する気も起きないのか、亞莎は明命にされるがままだ。

 

小煩いのがいなくなったと、蓮鳴は杯に酒をついで一気に煽る。

 

実をいえば、蓮鳴は呉の中で唯一、曹操の不審な行動について思い当たる節があった。

 

しかし他の可能性を排除できていない以上、軽々しく口にするわけにはいかない。

 

杯を煽った蓮鳴が、鋭い視線で城の高い天井を見上げて止まっている。

 

そのことに蓮華も、穏も、思春も気づいているが、あえて声をかける真似はしなかった。

 

孫堅こと蓮鳴にとって、普段の即断即決からはほど遠い思考法だが、時折このように停止することがある。

 

集中し過ぎて、周りが見えなくなるのだ。

 

__北郷……一刀か。

 

蓮鳴にとって、理性と感性の両方をもって捕われる青年の名。

 

孫堅と北郷一刀の邂逅は、過去に”2度”ある。

 

1度は、まだ皇帝と十常時が健在の頃。

 

洛陽で行われた定年報告会において、陳留の曹操代理で遣わされた夏侯惇の隣に控えていたのがそうだ。

 

あの時はまだ、夏侯惇の方へと目が向いていたが、例年の如く緊張の張らない報告会が行われている時、その認識を改めなくてはならなかった。

 

誰にとって意味のある報告かわからぬ中、己の肌はかすかな視線の細波を感じ取ったのだ。

 

その因が、あの男だった。

 

誰もが早く時間が過ぎないかと、退屈にあくびをかみ殺して顔を俯かせる中、あの青年は各勢力の著名人をつぶさに観察していたのだ。

 

それだけならば偵察の一環とも考えられるが、興味を引いたのはその観察している対象であった。

 

__あの男は、確かに観察する対象を選んでいた。

 

よく見て察しなければ気づけなかったが、あの男は将来名を馳せるであろう人物達を中心に観察したのだ。

 

勢力が有力であるだけならば他にもいたのに、まだ中小の勢力まできっちりと的確に、将来性のある人物を見分けているようであった。

 

それは当時、自分が目をつけていた人物達でもあったから、どうにかわかったのだが……

 

だからあの時、袁術軍の後方に控える自分達へと視線が向いてきたときは、思わず心が躍った。

 

視線を隠すのも忘れ、笑みを返してしまったほどだ。

 

__それに、2度目に会ったとき、確かにあの男はこう言っていた。

 

”自分は、曹操とは別に目的がある”と。

 

勘がかつてないほどに、体中で騒ぎ立てる。

 

”要注意”だと。

 

決して意識を外すな、と。

 

”要警戒”ではなく、”要注意”という微妙な安堵感が、また不思議で面白い。

 

わずかな間しか言葉を交わす時は無かったが、それだけでも得るものはあったのだ。

 

蓮鳴は静かに仰いでいた杯を戻すと、黙っている3人にまた体重を預けた。

 

「それで~、蓮鳴様はこれからいかがなさるおつもりですかぁ?」

 

「……徐州か、荊州、もしくは残りの交州を併呑して南蛮まで目指すか」

 

孫堅が治める揚州と面しているのは北か西、もしくは南を目指すかだ。

 

「今までの相手は豪族に毛が生えた程度だったが、これからは正式な軍を相手にせにゃらなん。

 となると、私達がやりやすいのは荊州の劉表だろうね。

 何より……荊州は大陸の最後の要だ」

 

各地方を治めている統治者達の顔を思い浮かべて、孫堅こと蓮鳴はため息をついた。

 

__静海……あんたなら降伏してくれると思うんだけどねぇ。

 

旧知の仲である劉表こと静海の涼しげな顔を思い浮かべる。

 

憎たらしいくらいに容喙で、飄々と掴み所のない女だが、出来ればこちらに協力してほしい。

 

彼女の柔軟な気質は、呉の次の世代を担う者達にとって欠けている、必要なものだ。

 

同じ苦労をした仲でもあるし、その力を貸してもらえるならば心強い。

 

大陸の中央に座る劉表こと静海、秋の空よりも移ろぎな心を持つ女。

 

孫堅自身の中では、もし荊州が北部の魏に協力をすれば、どう足掻いたところで勝ち目はないと、そう考えていた。

 

大人し過ぎる魏の態度、その思惑はつともしれないが、自分達がやれることは残った諸勢力を纏め上げることだ。

 

どのみち劉表こと静海には、乱世を乗り越える気はハナからないのだ、ならばその要所は自分達が頂く。

 

今は乱世。

 

それならば自分が……

 

「さて! 湿っぽい話もそろそろ終わりにしようかね」

 

蓮鳴はスッと立ち上がると、持っていた瓢箪を穏の口へと押し込んだ。

 

「れんべいざば?」

 

突然のことに慌てた穏が視線を上げると、上から覗き込むようにして蓮鳴が二ヤリと笑っていた。

 

「ったく、酔ってるフリなんてしおって。 私は今日、誰も寝かせないって決めてんだよ」

 

ゴク……ゴクゴク……

 

蓮鳴好みの度のきっつい酒が、穏の喉を焼け焦がしながら胃へと下っていく。

 

かあっと松明を投げ入れられたかのように、穏のお腹が熱で踊った。

 

「っぷはぁあ! ケホッ!」

 

呼吸が乱れて穏が思いっきり下へと俯くと、蓮華と思春の鼻腔に酒精の香りが広がった。

 

「……穏、大丈夫?」

 

心配そうに蓮華が穏の表情を伺うと、穏の顔がばっと上がる。

 

目尻がこれほどかと垂れ下がり、呉で羨まれる肌の白さには、ほんのりと赤みがさしていた。

 

穏の胸に頬をつけている思春の耳に、ドクンドクンという激しい血流の叩く音が響きだした。

 

蓮鳴はぽや~っとしている穏を持ち上げると、また祭の方へと投げ込む。

 

「発情猫(デカ乳)入りました~!」

 

祭に抱きとめられた穏は、空中に投げ飛ばされたショックで、さらに目が回っている。

 

「あ~れ~~~? 祭様がぐりゅぐりゅ回っていらっしゃる~~~~?」

 

ふらふらの穏に祭は愛しそうに頭をなでると、抑える必要もないので、手早く肉付きの良い体をまさぐりだした。

 

「うふふ~~~、くすぐったい~~~ですよ~~~~」

 

もはやされるがままだ。

 

既に黒猫化された冥琳は、クタクタの亞莎を介抱しながら、じゃれついてくる明命に抱きつかれていた。

 

「冥琳様は黒猫様です! お黒猫様です~~~!!!」

 

ハイハイと苦笑しながら、冥琳は明命の頭を撫でる。

 

既にかなり飲まされているのだろう。

 

明命は冥琳に撫でられると、絶叫していた。

 

「あはははは! ほら、お前達もそんなことろにいないで、さっさとこっちへ来な!」

 

「え?! ……いや、あの中に私達はちょっと」

 

「………………」

 

蓮鳴が蓮華と思春の首根っこを掴むと、ズルズルと引きずる。

 

視界の先では、祭と雪蓮、小蓮の3名によって牛柄の猫娘にされた穏が、冥琳達の方へと送られていた。

 

もはや猫娘まみれの明命は、幸せの絶頂だ。

 

「はうあああああああ!!!! 幸せです~~~~!!!!」

 

今宵は、まだ長い。

 

 

 

 

「さて、それじゃあ荊州に入ろうかね」

 

ここは荊州と揚州の境目、つまりここから先は劉表の領地であり、後ろが孫堅の地となる。

 

益州ほどではないとはいえ、険しい山々がそびえる北荊州だが、益州とは違い水源資源が豊富であった。

 

住み易い大陸の中央部に近く、近年は劉表の政治力の高さからか、知識人や学者がこの地へと集っている。

 

王朝が倒れた現在においても、荊州の太守劉表は静かに沈黙を保っており、中立都市の姿勢を貫いていた。

 

持ち前の政治力を駆使し、魏の曹操を除けば、ここ数年のあいだ戦という戦が起きていない。

 

治世という面でいえば、大陸で2番目の安全を誇っていた。

 

黄巾の被害も比較的少なく、彼女が学者達を呼びつけて、無理に仕官しろとも言わない辺りも評判が高い。

 

そこの領主劉表は、この乱世において未だ静かに沈黙しており、自分の立場を明確にはしていない。

 

よくよく振り返ってみれば、反董卓連合にも参加はしていない、ただ自分の領土を守っているだけだった。

 

この袁紹から始まった大陸の動乱でも、国を名乗らず、かといって王朝の臣らしい事も何もしないという、人にとってはひどく消極的な姿勢であった。

 

街の中心には、立て看板にて、面倒ごとを起こさなければ、好きに居ついていいよ、という方針が打ち出されている。

 

特に劉表こと静海の功績をあげよと言われると、市井の者は返答に困るのだが、落ち着いて暮らせているという事実が、何よりもの証拠であった。

 

しかし、近年の戦乱の兆しに対して何もしない劉表に、流石に民達も不安を抱えていた。

 

突如、他勢力から襲われて、この生活が容赦なく踏みにじられるのではないかと。

 

そして来るべくして来る日がきた。

 

孫堅達呉が足を踏み入れたのだ。

 

廬江を攻め落とし、孫堅はわずか一月という息もつかせぬ早業で、北荊州にその鋭い牙を向けてきたのだ。

 

孫堅たちにしても、大陸の中央である北荊州を手に入れられれば、長江を挟んだ向こう側の陸地に、確かな前哨基地を持つことが出来る。

 

魏と本格的に事を構えることになった時、切り札である水軍を使う前に、相手を削るための距離が必要だった。

 

荊州を手に入れることは、北の曹操と接地することにも繋がるが、それ以上の旨味もあるだろう。

 

何より洛陽がグッと近くなるので、今以上に魏の情報を探れるかもしれない。

 

孫堅こと蓮鳴は、大人しくしている曹操の事はいったん無視して、各地方へ睨みを利かせようというのだ。

 

呉軍の誇る何百艘もの戦艇が、静かに襄陽を目指し進んでいる。

 

船団の先頭には、江賊出身の思春が中心となって、雪蓮と共に指揮をとっていた。

 

これで水上は、まず安心だろう。

 

蓮鳴は軽く風を浴びると、船室に用意された会議室へと足を踏み入れる。

 

そこでは穏と冥琳が顔を突き合わせ、亞莎が書類の整理をしていた。

 

「どうだい? 劉表……っていうか静海に何か動きはあるか?」

 

冥琳が矢継ぎ早に渡される書簡に目を通しながら、簡潔に報告する。

 

「現状、船上から見える範囲内には、敵影は確認されません」

 

「そうか……でもこれだけ陸地が森で覆われているとなると、ひどく見通しが悪いねぇ」

 

「本来ならば偵察隊を陸地に放っておきたいのですが……今回の策は進軍速度が要ですからね。

 思春たちによる強襲、襄陽の川に囲まれた地形を利用しない手はありません。

 それにしてもよろしいのですか?」

 

「ん? 何がだい?」

 

「劉表……静海さんとは、旧知なのでは?」

 

「私が目指すのは天下統一だよ。

 ましてや私らはジリ貧を通り越して極貧だ、少しでも力を蓄えないと、あっというまに呉が喰われちまう。

 それに…………静海の奴は、乱世を乗り越える気がないはずだ」

 

「そうですか、ではこのまま進軍を続けます」

 

「ああ、気をつけろよ。

静海は戦には向かん上に変人だが、決して馬鹿じゃあない……いや、むしろ油断できん奴だ」

 

蓮鳴は地図と睨みあう冥琳達と策の詳細を詰めていくが、突然船がガタリと揺れた。

 

「何事だ?」

 

蓮鳴が飛び込んできた兵へと問いかける。

 

どうやら巡邏艇が急いで帰ってきて本船に乗り入れたために、船体が揺れたようだ。

 

巡邏艇を見ると、矢が多く船体に刺さり、傷ついた兵達が息絶え絶えに肩を貸し合っている。

 

「そ、孫堅様……これ、を」

 

倒れかけた兵を支えると、懐から取り出した書状を孫堅に渡した。

 

その報告書をシュルリと紐解くと、蓮鳴の顔が露骨に嫌そうな顔へと変わった。

 

「しちメンドウな……報告ご苦労、おい穏! すぐに医者に見せてやりな! 1人も死なすんじゃないよ!」

 

傷ついた兵を穏に任せた蓮鳴は、立ち上がって報告書をいらただしく握り潰した。

 

クシャリと音を立てる紙を眺めながら、冥琳が声をかける。

 

「いかがなさいましたか?」

 

「不味い事になった。

 私らの後方……廬江に正体不明の部隊が進行を開始している。

 このままだと、河での退路と補給を塞がれちまうね」

 

その言葉を受けた冥琳は、軽く目を見開くとわずかに俯いた。

 

このまま進軍を続ければ正面の襄陽を劉表に、後背の廬江をどこぞの部隊に挟まれてしまう。

 

先日、手中にいれたばかりの廬江だったので、まだ兵の常駐数が配備しきれていなかったのだ。

 

すでに長江を登り初めて4日が経つ。

 

呉において最前線、そして自分達が本国へと帰還するために、必ず通らなければならない後背の廬江。

 

まさに要衝ともいえる場だったが、今回の電撃作戦において、守備は手を抜いていた。

 

曹操は相変わらず動かないし、他の勢力だってそんな廬江を落としている場合ではないだろうとの判断だったのだ。

 

それは孫堅達にとっても言える事なのだが、あえて孫堅こと蓮鳴はその中での他国侵略を選んだ。

 

まだ彼女達は、呉による天下を諦めてはいないのだ。

 

「いかがなさいますか?

 このまま進軍を続ければ、後背に大きな不安要素を残してしまいます。

 私の意見としては、帰路と補給の確保のために反転して迎撃……まずは廬江の守備をこそ優先すべきだと考えますが」

 

冥琳の考えは至極当然のものだ。

 

しかし蓮鳴は口元を手で覆い隠し、険しい表情で思案している。

 

「……冥琳、私達の兵数で2部隊に分けられることは可能か?」

 

問われた冥琳は軽く視線を横に振ってから、また戻す。

 

「不可能ではない、あくまでそう言った感じですよ。

 戦力分散の愚を承知で行うのですか?

 静海さんの戦力が我々程とはないであれ、侮れるほど余裕はありませんよ」

 

「わかっている。

 しかし、これは恐らく……時が合いすぎだ」

 

「と、いいますと?」

 

「今私達は長江を上っている、そうだな?」

 

「え? …………なるほど、そういうことですか」

 

蓮鳴の少ない言葉に、明晰な冥琳が理解した。

 

理解が早くて助かると蓮鳴は心に浮かべながら、すぐさま指示を下す。

 

「部隊を2手に分けるよ。 静海へは私と祭が直接指揮を執る。

 後は明命と亞莎をつれていくよ! こちらは先にいって陣地を敷いておく。

 冥琳は雪蓮と蓮華、思春達をつれて廬江へ一気に下りなさい。 迎撃後は連戦になるけれど直ぐに反転し、こちらの援護へ向かうように」

 

「……わかりました、それではすぐに雪蓮達を呼び戻します」

 

冥琳がそっと離れていったのを見送って、蓮鳴はため息をついた。

 

劉表こと静海の政治力、軍略は秀逸だ。

 

この度の廬江へ現れた謎の奇襲部隊……これは恐らく、劉表こと静海が、裏で呉内の反抗勢力達でも唆したに違いないと思う。

 

美辞麗句を飾る、あの特徴的な薄くて長い口元が思い返される。

 

呉は現在、荊州の要地である襄陽を目指している。

 

長江を使って、一気に大部隊での襄陽強襲、この電撃作戦がジリ貧である呉が取った策であった。

 

襄陽側の陸地にろくな拠点を持たない蓮鳴達にとって、廬江から時間をかけてゆっくりと内地を攻略するほどの余裕はないのである。

 

最大戦力をもっての短期決戦、しかも相手の首を狙う。

 

蓮鳴としては、静海は呉軍の大軍勢を一目見れば、すぐさま降参すると考えていた。

 

戦闘を好まない彼女は、自分の考え方に理解は示さずとも、協力をして貰えると思っていた。

 

__私の考えが甘かった、という事なんだろうかねぇ。

 

ギリっと蓮鳴は歯噛みした。

 

自分達は長江の流れに逆らって河を上っている。

 

このまま長江を急がせて上らせても、それで襄陽を攻略し終わる頃には後背の廬江は落ちている。

 

ここでどうして、蓮鳴が裏で静海が動いているのかが判るかというと、その互いの位置関係があまりに絶妙であったからだ。

 

前に進みきるには時間が足りなく、かといってただ後ろに戻ったのでは、まさに劉表の思う壺。

 

時間稼ぎ……静海の考えが透けて見えるからこそ腹が立つ。

 

全軍をもって反転、廬江へ河下りをすれば、すぐに奇襲部隊は蜘蛛の子を散らしたように退散するだろう。

 

土地勘のある連中の隠れ場所なんていくらでもある……土着の有力家、豪族達が部隊を隠し匿う可能性すらあるのだ。

 

そしてまた一から、長江を上りなおさなければならない。

 

そんな事をしている糧食の余裕などはない。

 

力で呉を平定してきた歪が、ここに現れてきているのだ。

 

こうなると部隊を2つに分けるしかない。

 

廬江に部隊を派遣しつつ、襄陽に睨みを利かせ続けるしかないのだ。

 

希望としては、雪蓮達が上手く連中を探し出して始末してくれるしか……

 

一つ深いため息が漏れる……また、結局は力技だ。

 

蓮鳴は額に指を当てた。

 

鋭い頭痛。

 

__勘? 不吉? それともこれは、吉兆?

 

濁った感覚が蓮鳴に働きかける。

 

彼女らしくもなく、それははっきりとはわからず、何かモヤモヤとした濁りが感じられた。

 

どちらに転ぶのかがわからない、が何かが起きる。

 

__まぁ、雪蓮の奴なら大丈夫か。

 

娘の長女を、母である孫堅こと蓮鳴は信頼していた。

 

家族において、もっとも自分の血を濃く受けついでしまった雪蓮。

 

そのことに自責の念はあるが、戦場ではこの上なく頼りになる存在となった。

 

何より、自分の後を継ぐ次世代の育成のために、雪蓮には大いに期待している。

 

雪蓮では自分の後を継げない理由がある。

 

だからこそ、次女の孫権……つまり蓮華を次世代の王へと押し上げるのだ。

 

それは雪蓮自身も理解しているので、親子の暗黙の了解となっていた。

 

まだ、雪蓮の力は表だって出ていない……しかし、このまま戦場に立ち続ければいつ、発露するか……

 

そうなってからは、戦場から遠ざける他あるまい。

 

王としての自分と、母としての感情が、虎の内で鬩ぎ合っていた。

 

どうにも趨勢のつかぬ気持ちを振り切るように頭をきると、ふと、あの劉表……静海の笑みが浮かんだ。

 

あの飄々とした笑顔だ。

 

心に妙なひっかかりがある。

 

何か、もっと根本から、自分は間違っていないだろうか。

 

「……それにしても静海、あんたはどうして私とやる気なんだ?」

 

蓮鳴の呟いた小さな言葉は、部隊が分かれていく呉の軍勢の中へと消えた。

 

 

 

 

「黄ー君、蓮鳴君達はどうなったかね?」

 

「はい、静海様! 孫堅めは、部隊を2隊に分けた模様と報告が入っております! です。

 どうやら太ちゃんは上手く言っているよう! です」

 

低頭のまま報告する黄祖こと練樹は、ちらりと視線を上げた。

 

そこには長身で、薄い青髪を長過ぎるというほどにまで伸ばしきった麗人が立っていて、雄大な長江の流れを眺めていた。

 

劉表景升、荊州の襄陽を本拠地とする太守、真名を静海。

 

ほっそりとした長身に、長い手足、そして長過ぎる青髪。

 

全てが長細く見える彼女は、花魁のような華美な服を着ていた。

 

服の袖から伸びる長くスラリとした腕、手には鈍く輝く鉄扇が握られている。

 

劉表は長細く切れる瞳を薄っすらと開くと、ほっそりとした指でバサリと長い鉄扇を広げた。

 

その鉄扇の表面に刻まれるのは黒字で”事勿主義”(ことなかれ主義)実にシンプルな4文字だ。

 

しかし、彼女には唯一”長い”という形容詞が付かないモノがあった。

 

それは胸である。

 

大陸の化物達には敵わないだろうが、十分に大きいほうに入るだろう。

 

痩身の上、非常に極端な撫で肩の彼女だと、その揺れる胸は余計に大きく見えていた。

 

「あらま、蓮鳴君らしくないな。

 私が言うのもなんだけど……彼女なら問答無用で攻め込んでくるかと思っていたよ」

 

大きく開いた”事勿主義”の鉄扇で口元を隠し、背後へお手本のような綺麗な流し目を送る。

 

ゾクリと背筋が震える流し目を受けた黄祖こと練樹は、およよよよと両手で顔を覆い泣き始めた。

 

「ああ! おいたわしや静海様! ウォは悲しみの余り、目の前が濁ってみえません! です」

 

やや大仰で演技かかった練樹の動作だったが、静海は微笑んで流し目を元に戻した。

 

「黄ー君、蓮鳴君がこちら側へ引き連れてくる兵力は、いかほどになるかな?」

 

問われた黄祖こと練樹は、報告書とは思えないほどの長い巻物を背中から取り出すと、シュルリと紐解いて勢いよく開いた。

 

慣性によりコロコロと転がっていく巻物には、字がビッシリと書き込まれており、その膨大な量の中から、必要な情報を目ざとく見つけてくる。

 

「予想値ですが、こちらへは約10万が派兵される見込み! です。

 孫堅めはご自分の担当する襄陽攻略への兵を少なくしました! です。

 ちなみに分かれた軍団を指揮する孫策めは、5万もの兵を引き連れていったので、ウォが愚考しますは、どうやら後背の憂いである太ちゃんを早急に排除し、反転する気配! です」

 

転がした巻物をせっせと巻き直す彼女の名は、黄祖孟博、真名を練樹という。

 

劉表こと静海の長すぎる髪とは違い、頬の辺りで栗色の髪を短く切り揃えていた。

 

体格も高長身の静海とは対極のような小柄であり、並んで立つと、まるで親子のようである。

 

その小柄な練樹が頭を低くして跪いているのだから、もはや天と地だ。

 

大きな巻物を背負い直し、犬目のようなクリクリとした瞳を静海へと向けている。

 

上着は忍び装束に近いぴったりとした服を着ており、下は際どいスリットの入った大き目の中華服を改造したものを着用しているのが印象的だ。

 

「黄-君、見事な御明察。

 堅実的で現実的で、かつ小賢しい策……どうせ冥琳君辺りが、ガリガリベンベンと机に噛り付いて、適正な兵数でも割り振ったんでしょうな。 だけれど……」

 

静海は一呼吸分、胸に空気を入れると、声を張り上げた。

 

「しかーし! 隙は少ないし安全性も高いが、それ故に面白みがないと言わざるを得ない! はっきりいって、そんなものは読み易い!」

 

突如、鉄扇を大きく振った静海に合わせて、控える練樹はどこからか取り出した紙吹雪を宙へと撒いた。

 

色とりどりな紙吹雪が、静海の周りを舞い踊る。

 

わざわざこの時代で高価な紙に色を入れて持ち歩いている辺り、練樹もかなり手慣れているといえよう。

 

ヒラヒラと綺麗に舞い落ちる紙吹雪を静海は眺めながら、遠い瞳で言葉を綴った。

 

「慌てて”世界”という名の舞台に挑んで、得など何一つもないというのに、蓮鳴君はどうして生き急ぐのか?

 世の遍く事物は事も無し。

 成される時に全ては成され、成されぬ時には何も成されぬもの。

 江東の虎などと大層に呼ばれる英雄には、それを解せないのか?

 これではせっかくの立派な毛並みの虎が、可愛い可愛い三毛猫になってしまう。

 それじゃあ人生という名の舞台までが、説教じみたしょうもない悲劇へと変わり果てるというに!」

 

「はい! さい! はい! さい! 静海様ーーーー!!! ほら、そこの貴方達も早く拍手をするの! です」

 

やんややんやと辺りを飛び回っている練樹は、籠の中の色紙を撒き続けている。

 

その飛んでる最中に指名された兵士達は、辺りを軽く見回してから、空気を読んで一人、また一人とぎこちない笑顔付きで拍手を始めた。

 

パチパチパチと、お世辞にも盛大とは言えない拍手の音が流れる中、劉表こと静海は優雅に扇を回してクルリクルリと踊った。

 

花魁のように派手な着物が、色彩鮮やかな紙吹雪の中で映える。

 

「ああ、浮世の非情な河流れ……このままでは友の運命が、急流に流される枯葉の如く、あれよあれよと滝壺へと落ちてしまう、下らない、ああなんて下らない!

 ……是非もないか、ここに、黄-君」

 

ピタリと静海が舞いを止めると、すぐに練樹が傍へと控えた。

 

2人の持つ独特な気性の切り替えについていけない兵士達は、疲れたように拍手をしていた腕をおろした。

 

このように、2人はとんでもなくふざけているように感じるのに、荊州は大陸でも栄えていて非常に穏やかではあった。

 

それはやはり、この2人の能力が高い事へと繋がるはずなのだが……

 

兵士達は長年共通して心に残る残念な気持ちを、何故か払拭できないでいる。

 

「どうやら蓮鳴君と直接会って、色々と確かめる必要があるな。

 しかし頼まれたことも、一応は善処しないと……」

 

鉄扇で口元を隠す静海は、瞳をつぶると軽く俯く。

 

「はい! ウォもそう予想する! です」

 

元気な練樹の声が返る。

 

少しだけ思案をした静海は、思い立ったようにパチンと鉄扇を閉じると、跪く黄祖へと鉄扇の先を向けた。

 

「蓮鳴君の戦力分散に太史慈君は成功したようでなによりなにより。

 雪蓮君達の方は、裏の彼女が精一杯知恵でもなんでも振り絞って、どうにかするだろうよ。

 その間までに、こちらでは頼まれた用件をこなしつつ、ゆっくりと終らせる事にしましょうか。

 この事なかれ主義の静海が、野生の虎に”人生”とは一体なんなのかというものを教えてあげよう。

 たまには一息ついて、縁側で自然を愛でるといいのだ。

 さぁ……宴会を始めようか黄ー君」

 

はっはっはと笑う静海が歩きだすと、練樹がチンドンチンドンと楽器を鳴らし始めた。

 

いつのまにか小太鼓や金楽器を装備しており、愉快そうに歩く静海の後ろをついていく。

 

その派手やかな2人の背中を見送った残された兵士達は、皆一斉にため息をついた。

 

__この国は……大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

「孫堅様! ここは山間になってしまいますが、ここで陣地を本格的に設営しても宜しいのでしょうか?」

 

敏く気づいた兵がそう問うてきたので、蓮鳴と祭は空を見上げた。

 

確かに、西の空には重くて厚い雲がかかっている。

 

しかし風向きを考えれば、あの雲は外れていくと思われた。

 

「……仕方ないだろ、どのみち襄陽へ通じる道で10万の兵を収容できる場所なんざ、この辺りにしかない。

 だけど気をつけな、両隣が山に挟まれてるからね、下手に雨が降り出したら事だよ。

 山が崩れるなんてこたぁ、これほど木々が茂ってればまずないだろうが、それでも用心はしとくんだ。

 いざって時は、一旦引くぐらいの気持ちで警戒を緩めるんじゃないよ」

 

「はっ! 了解しました、それでは各隊へ報告をしてきます!」

 

「うむ、ご苦労じゃ」

 

兵を下がらせると、蓮鳴はまたも静海が敷く陣地へと目を向けた。

 

今お互いの軍の位置関係は対照的なものとなっている。

 

孫堅こと蓮鳴が率いる呉軍は、山と山の間に空いた崖を切り開いた、大きな街道であり、劉表こと静海が陣を展開したのは、正面に向き合った山の上であった。

 

山の底に位置するここでは、静海の軍の灯りしか見えなく、陣の全貌は望めないが、それでも大群が展開されているのはよくわかった。

 

地元の人間による聞き込みによると、山の上には大分昔に打ち捨てられた古城があるのだという。

 

様子を探りに偵察隊を送り込んだのだが、山中には大量の罠が仕掛けられており、そうやすやすと陣地へは近寄れなかった。

 

唯一、明命直属の部隊が古城まで辿りついたのだが、その城壁は非常に高く、門も頑丈に閉じられて隙がないとの事。

 

しかし、城内から溢れ出る光量と、宴会をしているかのようなドンチャン騒ぎの音は聞こえたというのだ。

 

何日か場外から偵察を続けたところ、時折多数の輜重隊が城内に運ばれていくので、その量から逆算するに、10万ほどの兵はいるのではないかとの事。

 

そろそろ夕刻に差し掛かる時分になるが、蓮鳴が望む上空の古城では、派手に明かりが灯り始めている。

 

祭もその光景を、首を上げながら眺めているが、どうにもわからんと眉を潜めた。

 

「あの静海が儂らと本気でやりあう気とはのう……そもそもあ奴は、太守の任などめんどくさがっておらんかったか?

 以前は蓮鳴、お主に押し付けようとした位ではないか」

 

「そうなんだけどねぇ……静海の事なかれ主義は筋金入りだからね。

 あの青鼬が、今更この時代で何をするつもりなのか」

 

「まぁ、あまり顔を合わせたくはない奴だがの。

 蓮鳴……静海を呉へ取り込むつもりなのか?」

 

「出来ればね……静海は変人だけど、思考法が常人と違うからね。

 うちの軍師達は皆優秀なんだが、どうにも理詰めで考える癖がある。

 それは冥琳の弟子として穏も亞莎もついているから、仕方がないんだが……静海のあの適当さを、うちの若い連中にも学ばせたい。

 あの訳のわからない性格を、伝播されないように気をつけねばならんがな」

 

腕を組む2人は苦笑いを浮かべながらも、難しい視線を襄陽の城へと向けている。

 

あの静海の事だ、予想外の手を打ってくるに違いない。

 

そうなると頼りは孫家印の勘の良さなのだが、自分の勘が鈍っている事を蓮鳴は理解していた。

 

妙な感覚が混じる違和感が拭えない。

 

嫌な予感というほどでもない、しかし良いことが起きる予兆でもない。

 

どうにもはっきりしない勘の働きにイラつきながら、蓮鳴は部隊の設営を指揮していた。

 

「荊州軍、一体兵力はどれほどなのかのぅ。

 穏の報告では10万程度と聞いていたが……」

 

「あまりその数字は当てにしないほうがいいよ、祭。 荊州では今までろくに徴兵をしてこなかったんだ。 つまり、それだけ若い連中に余剰があると見たほうがいい」

 

「そうはいってもな蓮鳴、いくら若い男達が村や町に残っているとはいっても、いきなり徴兵したてでの新兵なんぞ、ものの数ではないだろう」

 

それはそうだ、いきなり鎧と槍を手渡されて、兵士になれるわけではない。

 

兵士が正確に将の言葉を聞き、的確に動けるようになるには、長い訓練の時間が必要なのだ。

 

しかし、数の暴力という言葉もある。

 

圧倒的な兵数差であれば、質を量が喰い破る。

 

だが、此度の戦いにおいて、それは心配ないように思われた。

 

穏が始めに荊州軍の総数を計算したのは、約10万。

 

明命の調査でも、城内へ運ばれる輜重隊の規模は10万と少し超えるくらい。

 

仮に一時的な徴兵により、荊州中から若者を集めたとしても、15万に届けばいいほうだ。

 

それでは圧倒的とは到底言えない。

 

孫堅こと蓮鳴が率いる呉軍の本体は、それだけで10万の精強達である。

 

しかもここで慎重に待っていさえすれば、やがて廬江を始末した雪蓮が指揮する、部隊5万が加わり量でも並べる。

 

せめて2倍以上もの戦力を用意せねば、この優秀な呉の兵質を数量で覆すのは不可能であった。

 

「ま、私らはここでただ策殿達が戻ってくるのを待っておればよい。 おい炊事班、今夜の飯はなんだ? 特別に儂も手伝ってやるぞ?」

 

祭が袖をまくって炊事班の方へ歩いていくのを、蓮鳴は静かに見送った。

 

一人になった蓮鳴だが、やはりその視線は荊州軍の陣地を睨んでいる。

 

__静海の奴にしては、やり方が洗練されていないね。

 

静海のことをよく知っている蓮鳴は、やはり違和感を感じる。

 

確かに彼女ならば、兵の数を集める事は出来るだろう。

 

しかしそれは、”やや”洗練さに欠ける。

 

あの変わり者の女は、結果と同じくらい過程を重視する。

 

やり方がわかりやすく、簡明に結果を求め、尚且つ人を喰ったかのような人物だ。

 

下手に兵数を集めたからといって、自分達を相手に綺麗に勝つことは出来ない。

 

泥臭い戦いの展開になるくらいならば、静海はその手を取らないはずだ。

 

降参降参と言いながら、出頭してくるに決まっている。

 

しかし蓮鳴の勘がよく働かない今では、答えはでない。

 

自分らしくないとため息をつきながら、蓮鳴も夕餉を取りに天幕へと戻ることにした。

 

「お、今日はバンバンジーか。

 祭の味付けだから、期待出来るね」

 

 

 

 

 

「思春! そっちでは見つかった?!」

 

「はい! こちらには100程の兵が隠れておりました!」

 

「っく! 一体……どれほどいるというの、敵は!?」

 

「落ち着きなさい蓮華! まだまだ続くわよ」

 

雪蓮達は、皆が非常に慌てていた。

 

だが別に苦戦しているわけではない。

 

ただ慌てていたのだ。

 

蓮鳴達本隊と分かれた分隊は、河を下るという条件に思春の指揮を加えて、一気に廬江の街にまで降りてこれた。

 

そこまではとても順調であった。

 

思春の河下りの操船技術は目を見張るものがあったし、5万という大軍を、母である蓮鳴から託された雪蓮もやる気に満ち溢れていた。

 

蓮華もその姉の足手纏いにならないように気を張るが、いざ廬江の街に辿りついて見ると、尋常でない事態が進行していたのだ。

 

「頼もう! すぐに門を開けよ! 我等は孫堅文台の名代であるぞ! 協力すべし!」

 

思春の部隊が、また新たに屋敷の門を叩く、それに合わせて門を挟んだ押し問答が始まるのだ。

 

そのやり取りが、すでに数百にも続いている。

 

街中の屋敷という屋敷が、戸を閉じるという異常。

 

明らかに廬江という街に迎え入れられていない、呉軍の現状。

 

最近、勢力下に入ったばかりの廬江では、まだ孫堅の名が通用しないのだ。

 

一つの門を開けるのに、いちいち時間と手間がかかる。

 

しかも開ければ、例外なく不明の部隊が隠れており、まるで街中を使っての、大規模なかくれんぼをしているかのようであった。

 

「も~~、早く開けなさいよね!」

 

気が長いほうではない小蓮が、門を挟んだ問答にイラついて門を蹴り飛ばす。

 

彼女達としては、早く廬江の掃除を終えて、孫堅達が待っているであろう襄陽へと向かいたいのだ。

 

しかし、このあからさまな時間稼ぎに、誰もがイラついていた。

 

「冥琳、これでどれくらいの敵兵を捕虜にした?」

 

腕を組む雪蓮が、隣で報告書を捲っている冥琳に問いかける。

 

「さきほどの思春で、ちょうど1万5千といったところだな。

 これで西区と北区はなんとか終ったと見ていいだろう。

 連中、屋敷の中から見つかれば、大して抵抗せずに捕虜になってい”報告します!”……なんだ?」

 

冥琳が声をしたほうへ視線を向けると、偵察に行っていた兵が何十人もの男達を縄にかけていた。

 

「先ほど街の裏手において、怪しい一団を小船にて発見、捕縛しました!」

 

その報告に、ピクリと冥琳の眉が動いた。

 

冥琳はその捕縛されたという男達へ振り向くと、氷をさらに凍てつかせたような瞳で、詰め寄った。

 

その男達は冥琳の形相に、冷や汗を浮かべてしまう。

 

冥琳は眼鏡をクイッと上げて、瞳の色を隠して問うた。

 

「お前達に一つ問う。 ……お前達はどこを目指していた」

 

男達は互いに一度視線を見合わせると、余裕をもった笑みで返す。

 

「俺達は、西区の屋敷を目指していたんですよ」

 

「西区……だと?」

 

「ええ、貴方達が西区の我々の仲間を捕らえてしまったようなので、我々が補充されたのです」

 

余裕の張り付いた笑みに、ギリッと冥琳が歯噛みする。

 

「お前達の仲間は後どれほどいる?」

 

「さぁ? それは私にも計りかねますね」

 

「っ貴様!」

 

冥琳が手を上げようとしたのを、雪蓮が止めた。

 

止めた当人を睨むが、雪蓮の厳しい視線を受ける。

 

「落ち着いて冥琳。

 貴方が落ち着かないでどうするの?」

 

握られる冥琳の手から、震えが伝わる。

 

雪蓮も耐えているのだ。

 

冥琳は長くふーっと息を吐ききると、もう大丈夫だと手を離させる。

 

確かに、軍師である自分が動揺していては仕方がない。

 

不安が伝播してしまう。

 

「向こうの目的は時間稼ぎよ、いわば我慢比べとも言えるわ。

 さぁ、もう一度西区を調べなおしましょう?

 伏兵がまた隠れているに違いないわ」

 

「ああ、そうだな。 すまない、私としたことがつい熱くなってしまった」

 

「そうそう! 冥琳はいつも涼しい顔をしながら、どっしり構えてくれればいいのよ」

 

こういうとき、雪蓮の屈託のない笑顔とお気楽な言葉に、いつも助けられる。

 

冥琳は自分の半身に感謝をしながら、この如何ともしない状況を改善せねばと思考を巡らせた。

 

問題は連中に敵意が無いと言う事だ。

 

毎日2千人ほどの捕虜が、広い廬江の街の至る所から現れる。

 

見つかれば抵抗はしない。

 

すぐさま武器を地へと投げ捨て、捕虜になると進んで諸手を上げるのだ。

 

”戦わない”という戦略。

 

それがこれほどまでに厄介なことかと、冥琳の明晰な頭脳は苦悩していた。

 

徐々に膨れ上がる捕虜達……勿論、ただ捕まえて放っておくわけにもいかない。

 

大量の捕虜を監視するために、こちらも大勢の人員を割かれるし、その上で捜索の手も緩められない。

 

廬江の街は漁業が盛んなためか、城壁というものがなく、代わりに街の至るところに流れる長江の河の支流が走っていた。

 

その支流を使って、どこからか敵兵が流れ込んできている。

 

そして街の反抗的な豪族の屋敷に忍び込んで匿ってもらい、息を潜めるのだ。

 

これではまるで鼬ごっこ……この言葉が浮かんだとき、冥琳は額に汗が流れるのを感じた。

 

このような方法を思いつく人間など、恐らく他にはいまい。

 

荊州の太守、劉表こと静海……通称”青鼬”。

 

青鼬と呼ばれる、あの変人の顔が思い浮かんだ。

 

「静海さんの仕業ね……多分」

 

「そうでしょうね。

 こんな珍妙な戦法、あの変人にしか無理でしょうよ」

 

雪蓮も冥琳に同意した。

 

「でも、このままにしておくわけいにはいかないわ。

 小船で街に紛れ込んでいるなら、相手は外の樹海地帯に潜んでいると見て間違いない。

 相手の残りの規模がわかれば、討伐隊を組むのはそう難しくないが……」

 

「地の利は完全に向こうのものだものね、それにすでに捕虜が1万を超えて2万に近づきつつある、か。

 まるで兵数がわからないわね。

 まさかこちらの5万人よりも多いとは思わないけれど……」

 

「そうであってたまるものか。

 第一、兵数がこちらよりも多いのならば、ただ攻めてくればいいのだ。

 それをしないのだから、連中の兵数は3万超えがいいところのはずだ。

 もうすぐこの状況だって終わる」

 

力強く言い切る冥琳だったが、雪蓮とともに表情は優れなかった。

 

すでに孫堅との本隊と分かれてから、2週間以上が経つ。

 

もうすでに何度も孫堅こと蓮鳴からの状況催促が送られてきている。

 

向こうは向こうで、進むに進めない膠着した状況に、痺れを切らしているのだ。

 

しかし此方も精一杯やっている。

 

そして、徐々に表面化してきている大きな問題があった。

 

それは努力ではどうしようもなく、どのような知恵者でも解決出来ない、原始的で冷たい壁。

 

糧食の問題である。

 

いくら捕虜とて、食わせずにはいられない。

 

どれだけ穏が糧食の節約に奔走しても、日々加速度的に増えていく消費量に悲鳴を上げている。

 

かといって連中を人手として、こちらの軍に吸収することも出来ない。

 

連中は投降者ではなく、あくまで”捕虜”なのだ。

 

説得を試みても、誰一人恭順をしない。

 

持ってきた糧食は、5万人が3ヶ月食べられるだけの量……つまり90~100日分である。

 

実際、それが現状の呉が用意できる限界値でもあった。

 

だからこその奇襲まがいの戦略だったのだが、その余裕の無さを上手くついてきている。

 

それが捕虜が2万人弱増えたことで消費量が1,3倍。

 

まだ余裕はあるが、このままジリジリと時間をかければ、孫堅が首を長くして待っている襄陽攻略戦において、作戦行動に支障が出るだろう。

 

早くこの廬江の街の安全性を確保し、後背の憂い無しに荊州攻略をしたい。

 

だが、さきほどの男の言葉で、また更に時間がかかりそうだ。

 

調査を終えた西区に、また人が送られている。

 

下手をすればすでに、北区にも送られているだろう。

 

積み上げてきた努力を、また無に帰される。

 

そのような空虚さがあった。

 

「仕方がない……私の部隊を更に細分化して、西区と北区を並列して処理しよう。

 雪蓮、お前にも中隊を指揮してもらうぞ、ただし無理はするな」

 

「はいはい、心配性ね冥琳は。

 だーいじょうぶよ、私がそこらの人間にやられるわけないでしょ。

 じゃあちょっと行ってくるわね」

 

ヒラヒラと手を振っていく雪蓮。

 

その背中を、冥琳は心配そうな瞳で見つめるのだった。

 

__本当に無理をするなよ雪蓮……わかっているとは思うが、お前の体はいつ……

 

冥琳は振り払うように頭を振ると、新たに指示を下すために歩き出した。

 

 

 

 

それから更に2週間弱、毎日のように捕虜を縛り上げた雪蓮達は、ここにきて事の異常性に気づき始めていた。

 

それはいくら捕まえてもきりが無いと言う事である。

 

気づけば、捕らえた敵兵はゆうに3万を超え、4万へ届こうとしているのであった。

 

「ほ、報告です。

 また新たに50の兵が……」

 

「……適当に繋いでおけ」

 

「は、はぁ。 あのぅ、ですが……」

 

「なんだ?」

 

「そろそろ、縄が尽きそうなのですが」

 

「適当な牢屋にでも押し込んでおけ!」

 

「は、はひぃ!?」

 

怒鳴られた兵は慌てて走り去っていく。

 

声を荒立てる冥琳に、流石の雪蓮もどう声をかけていいかわからなかった。

 

何故ならば、自分も結構腹に据えかねてきているのである。

 

呉の他の将達も、焦りと苛立ちを隠せるものはいなかった。

 

引きつった笑みを浮かべる雪蓮は、この惨状ともいえる状況を見て、ついに本音を吐露してしまった。

 

もう……限界だ。

 

「これは、本気でヤッヴァイわね」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

どうも雨傘です。

 

皆さん応援ありがとうございます!!!

 

ご支援、コメント、メール、ご指摘、お待ちしております!

 

批判でもOKです! 厳しくても全然大丈夫です!

 

貴方様からの反応が私の力になります、のでよろしくお願いします。

 

個人メールも受け付けております。 小生でよければ友達になってください、ホントマジで。

 

あとがきは最終話に纏めて書こうと思います。 多分、数時間後には次の話が投稿できるかと。

少々お待ちください。

 

 

ではまた。

 


 
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